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マカロニえんぴつ、良質な音楽を渋谷CLUB QUATTROに届けたツアーファイナルをレポート!

マカロニえんぴつ | 2018.05.02

 「目標」は、例え立てたとしても、そこに向け、ただ闇雲に突き進んでいけば達成出来るものでもない。ゴールまでに重要なものや大切なものを一つひとつ得(え)、整え、それらと一緒に成就させていく必要がある。
 今回のツアーでのマカロニえんぴつには、目標の一つとして「2度目のこの渋谷クアトロを、今度こそ完売させる!」があった。結果は大成功。メンバーたちも満足げな笑顔を、その日の去り際のステージに残してくれた。しかしあの表情は、単に目標を達成できたからだけではなかったように映った。それを達成するために、今後の自身の進退を賭け完成させた素晴らしいアルバムと、それを携えた全国ツアーを経ての出会いや得た「かけがえのないもの」と共に成就できた充足感や喜びも伴っての表情に映った。

 マカロニえんぴつが、昨年末発売した1stフルアルバム『CHOSYOKU』と共に敢行した全国ツアー『マカロックツアーvol.5 ~朝食抜いたら超SHOCK篇~』が大成功のもと幕を閉じた。彼ら史上最も濃密且つ弾丸的だった同ツアー。ファイナルは無念にも昨年埋め切れなかった同地、渋谷クラブクアトロであった。

 馴染みのThe Beatles「Hey Bulldog」をSEに、高野賢也(B)、田辺由明(G)、長谷川大喜(key)、そしてサポートドラマーの久保田潤がステージに現れる。それより少しズれ、はっとり(Vo・G)も登場。まずは嬉しそうに満場のフロアを眺望する。
 この日の口火は「鳴らせ」が切った。ドライブ感溢れる同曲を機に会場との並走が始まる。サビでのストレートさが彼ら特有の開放感を伴い、場内をここではないどこかへと連れ出していく。続いて、哀愁性を擁したイントロから「サウンドオブサイレン」に入るとライブは加速度を増していく。リリックの♪飛び出したらもう後戻りできないよ♪とは、まさに今の自身たちの心境だろう。そして、間髪置かず「哀しみロック」にインすると、高野のベースによる躍動感も加わり、サビでは上昇感も発生。田辺も情景観豊かにギターソロを弾き倒す。

 「去年の(ステージからの)景色とは全然違う。今回ソールドアウトできたのもあなたたちが来てくれたからで。本当にありがとうございます。自分たちはいつも通りのライブを演るので、みんなも今日は最後まで自由に楽しんで欲しい」と、はっとり。続けて、「改めて“バンドやってんなぁ…”と実感したツアーだった。各所で色々なものを吸収できた。今日はそれをここで放出していくから」との言葉を経て、夏へと想いを馳せさせるように、「夏恋センセイション」に入る。更に加速度も上昇、同曲の特色である楽曲のめまぐるしさにも、待ってましたの想いを込めて会場全体が同乗していく。更にライブは深部へ。ダイナミズムや展開の妙を味わえた4つ打ち16ビートの「イランイラン」がグイグイと会場を惹き込めば、ポップ感を呼び込んだ「メイビーネイビー」では、メロトロンをはじめ長谷川による様々な音色が楽曲を装飾していく。また、「girl my friend」では、勢いを基調に間にはハーフを交えたり、アウトロでは田辺、はっとりの2本のギターによるユニゾンソロを魅せるなど、このゾーンでは各人の見せ場や活躍の場も目立った。また、より感情がぶつけられた「two much pain」では、♪いかないで、ぼくの好きなひと♪のリリックと共に、今でも変わらない愛しい気持ちが実直に伝わってきた。

 中盤でのMCはフロアとのコミュニケーションが中心であった。ここでは、このツアーやこの日のライブで彼らを初めて観た方も多かったこと。中でも『CHOSYOKU』を聴いたことを機にライブに足を運んだ方も多く、改めて同作品がポピュラリティを持ち、広がりへのポテンシャルを擁していたことが確認できた。
 「今回は音楽を演ることがとても楽しい行為であることの再確認が出来たし、それらを経て、みなさんや周りの環境へも、より感謝をしながら進めたアルバム制作やツアーだった」と振り返る、はっとり。そんな気持ちの中、かつて作った、今のこの心境を代弁するかのような「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」が歌われる。時に助けてくれたり、時に鼓舞してくれたりと、自身をもう一歩進ませてくれた歌たちを全面的に肯定してくれるような同曲が、自身にとってのそのような曲を場内の各人毎に思い起こさせる。そして、ミディアムながらがっしりと力強く引張ってくれた「MUSIC」では、会場の大合唱が楽曲を完成へと導いていく様を体感し、楽曲がみんなのものになっていく瞬間を見た。また、シティポップスな「クールな女」では、アダルトでアーバンな雰囲気が会場に満ち、その中、会場もゆったりと横に揺れ、アクティブで長いイントロから入った「言い訳ばかりの男」がグイグイと会場をステージへと惹き込み、「keep me keep me」に於いては場内をガシッと力強く引き寄せた。

 後半に入る前には昨年同様、はっとりの歌とギターのみによる弾き語りも用意されていた。そこでは、「恋の中」「夕色」が歌われ、共にアコギのストロークの上、よりネイキッドに、よりダイレクトに歌の真意を響かせた。また、「夜と朝のあいだ」では曲の途中からバンドサウンドも加わり、生命力を増させた同曲が、あの時、言いたくても言えなかった「愛してる」の言葉を、今だからこその歌に乗せ、切実に場内に放たれていった。

 「今回は各地に感謝して回り、ありがとうとの気持ちを伝えるツアーでもあった。この1年、色々なことがあった中で制作されただけに、それが出せる大切さや喜びを改めて知ることができた。聴いてくれてありがとう。届いてくれてありがとう」(はっとり)の言葉のあと、更に遠くまで届けとばかりに、「ミスター・ブルースカイ」が歌われる。6/8のロッカバラードがダイナミズムと景色感を伴って、会場を突き破り、ブルースカイを想起させる地平へとみなを引き連れていく。ここでは歌詞にある♪いつか届け♪が、確実に大勢の下に届いた瞬間を見た。

 後半戦は盛り上がりナンバーのオンパレードであった。スタックスビートの「眺めがいいね」、作品より速く暴発性を見せた「洗濯機と君とラヂオ」では、楽曲が会場と共に形作られる瞬間と出会えた。また、ラストスパートと言わんばかりに入った彼ら最速ナンバー「ワンドリンク別」にも、しっかりと会場がついていき、続くカウパンクナンバー「ハートロッカー」では、牧歌的且つブレイブ感溢れる同曲を転調やテンポチェンジもなんの。その荒馬をしっかりとオーディエンスたちが乗りこなす様を見た。そして、「最後にこの歌を置いて帰ります」と入った「幸せやそれに似たもの」では、各人のソロも交え、そこには美しささえ感じることが出来た。

 「ありがとう!」の力強い言葉をステージに残し、一旦ステージを去った彼ら。続くアンコールは1曲であったが、その分それは尊く、今の時期、今の心境の彼らの気持ちや気概とも重なるものがあった。
 「またここからマカロニえんぴつが始まる。これからも一緒にもっともっと大きくなって行こう!」(はっとり)の言葉のあと鳴らされた「春の嵐」では、寂しい曲ながらどこか祝祭感溢れる同曲が、♪ここに居てもいいかな♪の歌を通した問に対して、会場が大合唱という返答で、最高のフィナーレを一緒に作り出していった。特に最後の会場交えてのスキャットのリフレインには、いつまでも耳に残るものがあり、力強く暖かく、美しい場面を共創していったシーンも印象深い。

 アルバムの制作やリリース、そしてこの全国ツアーを経て、数々のかけがえのない糧を得て、遂には昨年からの目標の一つを達成させたマカロニえんぴつ。そこで得たその糧の数々は彼らにとって、今後への確信や自信、誇りや勲章、はたまた財産へとなったに違いない。また、何か足元を見つめ直さなくてはならないタイミングが来たら、遠慮なく今ツアーで得た、その大事なものたちが入った、この宝箱を開くといい。そこにはまた次へと進ませる原動力が、いつまでも変わらないバイタリティと初々しさや瑞々しさを携え、常に待っているはずだから。
 昨年の今頃と同じステージながら、確実に昨年より強靭になり、逞しく映ったこの日の彼ら。そう、マカロニえんぴつは、これからもますます強くなっていく。彼らを信頼している者たちと共に次なる目標に向かって。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:中山優司】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル マカロニえんぴつ

リリース情報

CHOSYOKU

CHOSYOKU

2017年12月06日

TALTO/murffin discs

01. ミスター・ブルースカイ
02. 夏恋センセイション
03. MAR-Z
04. girl my friend
05. MUSIC
06. クールな女
07. 夕色
08. 眺めがいいね
09. 洗濯機と君とラヂオ
10. イランイラン
11. 春の嵐

セットリスト

「マカロックツアーvol.5 ~朝食抜いたら超SHOCK篇~」
2018.4.19@渋谷CLUB QUATTRO

  1. 1.鳴らせ
  2. 2.サウンドオブサイレン
  3. 3.哀しみロック
  4. 4.MAR-Z
  5. 5.夏恋センセイション
  6. 6.イランイラン
  7. 7.メイビーネイビー
  8. 8.girl my friend
  9. 9.two much pain
  10. 10.サンキュー・フォー・ザ・ミュージック
  11. 11.MUSIC
  12. 12.クールな女
  13. 13.言い訳ばかりの男
  14. 14.keep me keep me
  15. 15.恋の中
  16. 16.夕色
  17. 17.夜と朝のあいだ
  18. 18.ミスター・ブルースカイ
  19. 19.眺めがいいね
  20. 20.洗濯機と君とラヂオ
  21. 21.ワンドリンク別
  22. 22.ハートロッカー
  23. 23.幸せやそれに似たもの
  24. 【ENCORE】
  25. En.春の嵐

お知らせ

■ライブ情報

KOTORI Pre."HEARTLAND TOUR"
05/16(水)下北沢SHELTER

2マン公演[Bentham]
05/18(金)水戸LIGHT HOUSE

アカシック春の対バンツアー「赤船来航」
05/24(木)福岡The Voodoo Lounge
05/26(土)神戸太陽と虎

The Cheserasera Pre.『春の喧騒 2018 スリーマン Tour』
05/27(日)新代田FEVER

"ロックの向こう側2018~セカイ二ヒトツノシアワセヲイケヨ~"
05/31(木)新宿Marble

『ヤングタイガー2018 ~千日前虎の穴・虎軍奮闘編~』
06/02(土)大阪 千日前ユニバース

百万石音楽祭2018~ミリオンロックフェスティバル~ (石川)
06/03(日)石川県産業展示館(全館)

Amelie鐘フェス2018~君が為に越谷で鳴らす~
06/16(土)越谷ABBEY ROAD/越谷EASYGOINGS

め組Pre."絶対余韻"ツアー~彼らはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心の真ん中です~
07/01(日)渋谷CHEALSEA HOTEL
07/12(木)心斎橋Pangea
07/13(金)名古屋Heartlamd

JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2018 SUMMER
07/15(日)渋谷ライブハウス7会場

"マカロックおかわりツアー~しめのデザート篇~"
08/23(木)名古屋CLUB UPSET
08/24(金)梅田Shangri-La
08/31(金)渋谷eggman

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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