最新曲からデビュー曲まで様々な年代の曲を散りばめた、TRICERATOPS ツアー追加公演!
TRICERATOPS | 2018.05.18
デビューして21年間、ブレることなく、踊れる音楽の楽しさを追及してきたバンドがTRICERATOPSだ。ツアーの追加公演となるZepp DiverCity Tokyoでも、その魅力をたっぷり満喫した。オープニング・ナンバーは彼らの代表的なダンス・ミュージックのひとつ、「FEVER」。演奏が始まった瞬間から会場内が激しく波打っていく。和田唱(Vo・Gt)、林幸治(Ba)、吉田佳史(Dr)というスリーピースの奏でる音楽は“3人しかいない”のではなくて、“3人もいる”と言いたくなるほど、豊潤かつ多彩だ。ソリッドなサウンドの奥底から切なさや色気や人間味がにじむところは彼らならでは。林のベースで始まった「あのねBaby」では会場内のハンドクラップも加わっていく。
「今日は日頃の嫌なこと、憂鬱になることは全部、すっ飛ばしてください。音楽に身を委ねて、思いっ切り楽しんでいってください」と和田。様々な年代の曲を散りばめた構成になっていたのだが、どの曲も新鮮に響く。例えば、1stアルバム収録曲「オレンジライター」はファンキーさが大幅に増量されて、間奏でも白熱のセッションが繰り広げられた。瞬間、瞬間の感覚を曲の中に注ぎ込むことによって、最新の曲のようなフレッシュさとスリリングさが備わっていく。さらに間髪入れず、「FUTURE FOLDER」、「ロケットに乗って」へ。疾走し、加速し、そして宇宙へ。彼らはどんなやり方をすれば、観客が気持ち良くなるかを熟知している。
踊れるのは何も早い曲や激しい曲だけではない。和田のギターの印象的なリフで始まった「シラフの月」は憂いを帯びた主人公の表情までが見えてきそうな演奏だ。ブルージーかつグルーヴィーな歌と演奏が染みてきたのは「NEW LOVER」。体の外側だけでなく、胸の内側からも揺さぶられたのは、彼らが歌心と繊細かつ緻密な描写力を備えているからだろう。和田のアコギの弾き語りで、「if」「Walk in the Park」「Good Enough」がメドレーで演奏される場面もあった。「Walk in the Park」での追っかけコーラス、「Good Enough」での三声のハーモニーなど、観客もバンドの一員であるかのように歌に参加することで、音楽的かつ感動的な空間も出現した。
和田のアコギ、林のアコースティックベース、吉田のドラム(ロッズも使用)というアコースティック編成での「ベル」ではゆるやかなグルーヴが気持ち良かった。和田がエレピを弾いての「GUATEMALA」、「2020」での味わい深い演奏も絶妙。「2020」は2002年リリースの5thアルバム『DAWN WORLD』収録曲だ。発表当時は遠い未来を歌った歌という印象を持っていたのだが、今や、すぐそこにある未来の歌になった。そして時の流れが注ぎ込まれることで、奥行きを備えた歌となった。バンドだけでなく、曲も時を重ねて、一緒に育ってきた。彼らのステージを観ていて強く感じるのは、継続することのかけがえのなさと尊さだ。もちろんただ続ければいいのではない。彼らが常に新鮮なステージを展開しているのは、その根底に尽きることのない音楽への探究心と向上心があるからだろう。演奏者が3人と限られているからこその創意工夫が彼らの音楽をよりクリエイティブなものにしていると思うのだ。
ツアー・タイトルにも使われているニューシングルの2曲も披露された。先に演奏された「GLITTER」はTRICERATOPS流の最新のダンス・ミュージック。70年代~80年代の空気感をまとった部分もありつつも、今の感覚も備わっている。切なさと華やかさと艶やかさが混ざり合った世界が魅力的だ。続いての「FLY AWAY」はひとつひとつの言葉に意志を込めていくような歌声と未来をぐいっと引き寄せるような力強い演奏が素晴らしかった。リズム隊2人による「HAYASHI YOSHIFUMI GROOVE!!」は彼らのライブの定番となりつつあるが、毎回進化している。互いのソロも交えつつ、ロック、ファンク、ジャズなど、多彩なジャンルの音楽を吸収して、今のグルーヴを生み出しているから常に“NEW”なのだ。本編の終盤はヒューマンな開放感と高揚感を備えた「MADE IN LOVE」、パワー全開でひたすら上昇していく「GOING TO THE MOON」と、クライマックスの連続。
「次の曲は俺達にとっても思い出の曲です。みんなの声とダンスを味わいたいです。俺達も全部出すんで、みんなも全部ちょうだいね」という言葉に続いては、彼らの踊れるロックの原点とも言うべき「Raspberry」。3人の演奏とコール&レスポンス、手拍子、熱気が混ざり合い、一体となっていく。優れたダンス・ミュージックは人間の精神を開放し、自由にするだけでなく、多くの人々の心をひとつにしていく機能も備えている。開放と連帯が両立した空間がそこにあった。
アンコールではもうひとつの新曲「MIRACLE」も演奏された。彼らならではの魅力と新機軸とが詰まったダンス・ミュージックで、ラテンにも通じる躍動感あふれるリズム、光も影も飲み込んで進んでいくようなパワーが特徴的だ。この曲の中の“いびつな道のり”というフレーズはおそらくはバンドのこれまでの歴史とも対応するものだろう。幾多の壁を乗り越えてきた強靱さがバンドサウンドをより懐の深いものにしている。困難こそがバンドを大きくする栄養だ。アンコール時のMCでは別れを惜しんでか、和田がたくさんの言葉を述べていた。
「お互い、日々いろいろあると思うし、出口が見えない状況の人もいると思うけれど、ポジティブに次のステージに向かっていってほしい。いろんなことがあるのが人生だからこそ、前向きに楽しんでほしいです。俺たちもそうだけど、俺達のお客さんも音楽好きだと思います。音楽が好きで、ロックが好きだというだけで、みんなはラッキーです。だって楽しいじゃん」と和田。もう一つ付け加えるならば、TRICERATOPSのファンであることは、それだけでとてもラッキーだろう。もうひとつ印象的だったのはこんな言葉。
「きっと俺達は成長して帰ってくるから、その時を楽しみにしていてください。次に会う時までにお互いにレベルアップしよう」
バンドだけがレベルアップするのではなく、“お互いに”というところが彼ららしい。MCだけじゃなく、アンコール・ラストの曲「トランスフォーマー」も、そして予定外のアンコールの曲「GROOVE WALK」もツアーの最後ということもあってか、未来への約束の歌のように響いてきた。ミラクルと言いたくなる瞬間、光輝く瞬間がたくさんあった。ツアー・タイトルの“MIRACLE GLITTER ”とは新曲のタイトルであると同時に、ライブ空間そのものを形容する言葉としても成立していたのではないだろうか。音楽に身を委ねて、踊ることによって、出現するものがある。ミラクルとは天から降ってくるものではない。体の中から湧き上がってくるものだ。TRICERATOPSのステージを体験すると、そう結論づけたくなる。
【取材・文:長谷川 誠】
【撮影:山本倫子】
リリース情報
セットリスト
TRICERATOPS“MIRACLE GLITTER TOUR”
2018.04.29@Zepp DiverCity Tokyo
- 01.FEVER
- 02.あのねBaby
- 03.オレンジライター
- 04.FUTURE FOLDER
- 05.ロケットに乗って
- 06.シラフの月
- 07.NEW LOVER
- 08.メドレー(SHO’S SOLO)
If
Walk in the Park
Good Enough - 09.ベル
- 10.GUATEMALA
- 11.2020
- 12.GLITTER
- 13.FLY AWAY
- 14.HAYASHI YOSHIFUMI GROOVE!!
- 15.MADE IN LOVE
- 16.GOING TO THE MOON
- 17.Raspberry 【ENCORE】
- EN 01.MIRACLE
- EN 02.トランスフォーマー 【W ENCORE】
- WEN 01.GROOVE WALK
お知らせ
NORTHERN BOYS
“Music On The Radio Tour”
[林幸治参加ユニット]
05/18(金)[東京]月見ル君想フ
05/30(水)[愛知]名古屋TOKUZO
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。