前へ

次へ

結成14年目、SUPER BEAVERが日本武道館であなたに贈る圧巻のライブ

SUPER BEAVER | 2018.05.21

 会場に入り、ビッシリと埋まった客席を見渡す。すると、ステージ左右の奥まで観客が座っていた。メンバー4人の姿を横からか、せいぜい後ろ姿しか見えないようなポジションだ。SUPER BEAVERの「都会のラクダSP」と題された初の日本武道館公演は即完売となったため、注釈付きの指定席まで販売、要するに開放することになったのだ。その指定席に座っている観客の表情に曇りはなく、キラッキラに輝いているように見えた。SUPER BEAVERの武道館公演を絶対に観たい! バンドを心から祝福したくてここにいるんだ! 何が何でもこの場所の空気を一緒に共有したい! 開演前からそんな特別な空気、いや、神聖なる熱気が渦巻いていた。  ステージ背面のスクリーンに「60」の数字が浮かび上がり、そこからカウントダウンが始まると、走馬灯のごとく過去のライブ・シーンなどを描写した映像が流れ、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原"29才"広明(Dr)、最後に渋谷龍太(Vo)が姿を見せると、満杯の武道館に深くお辞儀をする。それからメンバー4人で円陣を組んだ後、「紆余曲折という言葉では表現し切れない・・・今日が一つの答え、ライブハウスから日の丸の下へ」と渋谷が言った時点で、既に涙腺が緩むのを必死でこらえるばかり。なぜだろう。演奏前から感極まってしまう。SUPER BEAVERは、そういう気持ちにさせるバンドなのだ。

 ショウ自体はアカペラ風の歌い出しから「美しい日」でスタート。武道館は即座に万雷の拍手で包まれ、至福の空間へと様変わり。間髪入れずに「証明」に移ると、「歌えー!」と柳沢も力強く煽り、場内は大きなシンガロングで満たされていく。まるでライブハウスではないかと思ったら、次に初期衝動炸裂の「うるさい」を畳み掛けてきた。剥き出しの感情と演奏で突き進む姿勢に心も体も一段と熱くなる。

「日本武道館、参上でございます! あなたがいる武道館に意味がある」という渋谷の言葉一つひとつにも重みがある。ただし、思いが溢れ過ぎて、"SUPER BEAVER"と"武道館"がぐちゃぐちゃになったのか、「スーパービドーカン」と口走る場面はご愛嬌。それから踵を返して、「14年間どんな闘い方をしてきたか、見せてやるよ!」と宣言すると、ロック度を高めた「正攻法」へ。僕の隣にいた男性が「かっこいいー!」と叫び出す。確かに同性をも魅了する一本気なかっこ良さがこの曲にある。というか、これこそザ・SUPER BEAVERの真骨頂を刻んだストレートな曲調ではないか。飾りやギミックを捨て去り、真正面から聴く者の懐に飛び込んでくる歌と演奏は、付け焼き刀の技術とは無縁の凄まじい説得力があった。  楽曲パワーをひしひしと感じる「らしさ」、渋谷がタンバリン片手に歌い上げるノリノリの「赤を塗って」に入ると、観客はクラップして体を横に揺さぶっている。会場のあちこちで笑顔が広がり、バンドと観客の心がひとつに折り重なっているようだ。「14年、わりとかかったよね。うまくいなかったときは、もっとうまく行く可能性があるってこと」と渋谷が語っていたけれど、そのMCを自分と照らし合わせながら、元気や勇気を貰った人もこの場に多くいただろう。

 中盤に差し掛かり、「27」をやり終えた後、ステージ奥の幕がゆっくりと開き始め、そこから光が零れるように明るくなると、ストリングス隊がここで登場。「人として」、「シアワセ」の2曲でバンドと共演を果たし、とりわけ前者の≪信じ続けるしかないじゃないか≫、≪人として かっこよく生きていたいじゃないか≫などの歌詞がストリングス効果と相まり、強力かつ壮大なメッセージとして胸に響き渡った。てっきり4人だけのシンプルな演奏で勝負するかと思ったが、観客と共にこの日を祝福する武道館らしい演出も実に良かった。事実、武道館は「通過点」にしなきゃいけないという気持ちから、立派な「到達点」という意識に変わり、さらにここが「終着点」ではないと渋谷は言い切っていた。続けて「これからもよろしく!」と付け加え、会場にはふっと温かい風が吹き抜けていく。

 後半はアッパーな「青い春」、ステージ上のミラーボールが輝きを放つ中で「東京流星群」、今日イチの大合唱を作り出した「秘密」と連発し、あなたがいる武道館という言葉通りの光景を見事に作り上げる。  「4人で始めた音楽が、4人じゃ成り立たなくなった。(人間は)一人で生まれて、一人で死んでいく。その間に誰と出会うか、あなたが決めていいんだよ。そばにいる人を大切に・・・」と言うと、「ありがとう」をプレイ。藤原の力強いドラムに加え、柳沢と上杉はステージを所狭しと動き回り、渋谷は魂の叫びとも言えるエモーショナルなヴォーカルで迫ってくる。「ありがとう」の5文字の歌詞に14年間の思いの丈をすべて注ぎ込んだような歌声を聴き、体の奥底から感動が突き上げてきた。武道館で聴いたこの曲は一生忘れないだろう。

 本編を「愛する」で締め括り、アンコールでは新曲「ラブソング」を披露した後、「あなたに歌うバンドでいたい」とMCすると、盛大な拍手が鳴り響く。渋谷はしばらく下を向いていたが、込み上げてくる気持ちを抑えられなかったのか、その表情からは汗とも涙とも判別付かない水分の輝きが見て取れた。しかし、瀬戸際ギリギリでこらえたのか、「今日をゴールにしないために、泣かないと決めているんだ」と発言。泣ていもいいじゃないかと心の中で思ったけど、そのワン・シーンにSUPER BEAVERというバンドの揺ぎない意志の強さを感じ取った。  その後は「それでも世界が目を覚ますのなら」、「素晴しい世界」を披露し、約2時間半に及ぶ武道館公演は盛大に幕を閉じ、バンドは再びライブハウスへと戻る。だが、そこでは一回りも二回りもでかくなった彼らを目撃することになるだろう。だって、間違いなく、この武道館の熱気をライブハウスにそのまま持ち込むようなバンドなのだから。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:青木カズロー】
【撮影:日吉"JP"純平】
【撮影:鈴木公平】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル SUPER BEAVER

リリース情報

歓声前夜

歓声前夜

2018年06月27日

[NOiD] / murffin discs

1, ふがいない夜こそ
2, 虹
3, 閃光
4, ラヴソング
5, シンプリー
6, まちがえた
7, シアワセ
8, 美しい日
9, 嬉しい涙
10, ひとこと
11, なかま
12, 全部

セットリスト

「SUPER BEAVER 都会のラクダSP at 日本武道館」
2018.4.30@日本武道館

  1. 01. 美しい日
  2. 02. 証明
  3. 03. うるさい
  4. 04. 正攻法
  5. 05. ファンファーレ
  6. 06. らしさ
  7. 07. 赤を塗って
  8. 08. →
  9. 09. 361°
  10. 10. 歓びの明日に
  11. 11. 27
  12. 12. 人として
  13. 13. シアワセ
  14. 14. 青い春
  15. 15. 東京流星群
  16. 16. 秘密
  17. 17. ありがとう
  18. 18. 愛する
  19. 【ENCORE】
  20. En-1.ラヴソング(新曲)
  21. En-2. それでも世界が目を覚ますのなら
  22. En-3.素晴らしい世界

お知らせ

■ライブ情報

SUPER BEAVER『歓声前夜』Release Tour 2018 ~初めての、ラクダ運転~
07/14(土) 京都KBSホール
07/20(金) 岡山 CRAZY MAMA KINGDOM
09/07(金) 金沢 EIGHT HALL
09/14(金) 福岡 DRUM LOGOS
09/15(土) 広島 BLUE LIVE
09/17(月) 高松 festhalle
09/21(金) 札幌 PENNY LANE24
09/23(日) 新潟LOTS
09/24(月) 仙台PIT
09/29(土) Zepp NAGOYA
09/30(日) Zepp OSAKA Bayside
10/13(土) 豊洲PIT※2days
10/14(日) 豊洲PIT※2days
10/16(火) shibuya eggman

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る