ゲスの極み乙女。の“これまで”と“これから”を同時に体感できる記念碑的ステージに
ゲスの極み乙女。 | 2018.06.28
ゲスの極み乙女。が6月22日、東京・NHKホールでワンマンライブ『ゲスの極み乙女。6th Anniversary live「乙女は変わる」』を開催した。結成6周年を記念して行なわれたこの日のライブではヒット曲、人気曲に加え、8月29日にリリースされるニューアルバム『好きなら問わない』の楽曲も披露。このバンドの“これまで”と“これから”が同時に体感できる記念碑的なステージとなった。
ステージ中央の奥に設置されたスクリーンが上がると、そこにはメンバー(川谷絵音/Vo&Gt、休日課長/Ba、ちゃんMARI/Kye、ほな・いこか/Dr)の姿が。4人は階段を降り、それぞれの定位置に到着すると、まずは「ラスカ」を披露。さらに「戦ってしまうよ」が続く。とにかく演奏が凄まじい。変拍子を取り入れたリズムアレンジ、高速かつ緻密なフレーズが刺激的に絡み合うアンサンブルは、ここにきてさらに精度を増しているようだ。演出もド派手。「私以外私じゃないの」では、ステージ後方の段上に白い衣装をまとった5人の女性ダンサー、ステージ前方にはダンサーのSHIMIZU MASHが姿を現し、コンテンポラリー・ダンスを取り入れた振り付けで楽曲の世界観を際立たせる。現代アート的な要素を反映させたシアトリカルなステージングからは、このバンドの特異性がはっきりと伝わってきた。要は“変わっていて、カッコイイ”ということだ。
「ロマンスがありあまる」などの人気曲を次々と演奏した後のMCコーナーでは、“周年”ライブにふさわしく、バンド結成時のエピソードを披露。2012年5月12日に4人で初めてスタジオに入り(川谷いわく“ぜんぜん楽しくなかった”という)、下北沢のパスタ屋に行ったとき(ほな・いこかは不参加)、ちゃんMARIのトートバックに書かれていた“ゲスの極み乙女。”をバンド名にしたこと。その次のスタジオでセッションしながら曲を作った際に「おもしろい曲が出来そう」と感じたこと。さらに川谷が「その頃はギャグみたいな曲とか、不満ばかり言ってるような曲、悲しい曲が多かった気がするけど、最近、前向きな新曲ができました」とコメントし、5月に配信がスタートした新曲「もう切ないとは言わせない」を披露。メンバーの高い演奏スキルを駆使したアレンジ、切なさのなかに前向きな意志を滲ませるようなボーカル、そして、“もう切ないとは言わせない/そのうち一緒になろうよ”という歌詞がひとつになったこの曲は、ゲスの極み乙女。の個性を突き詰め、さらに前進させた楽曲。バンドの新たな進化を感じられたことは、この日ライブのの大きな収穫だったと思う。
ライブ後半はエンターテインメント性に溢れた演出が施されていた。「煙る」ではメンバーが見えなくなるほど大量のスモークを使い、川谷が姿を消したと思ったら、次の曲「ルミリー」のときにスーツ(「もう切ないとは言わせない」のMVで着ていたスーツだそうです)に着替えて登場。その後、再びステージからいなくなると、スクリーンに楽屋で休むマスク姿の川谷が映る。えつこ(コーラス)が呼びに行き「待ってるからね!」と川谷にマイクを渡すと、その直後に「某東京」の演奏がスタート。川谷は楽屋から出て、廊下やロビーを歩きながら歌い、その様子が生中継される。客席に登場した川谷はなぜかボイスパーカッションを披露。「何? どうした?」という雰囲気が会場に広がったが、じつはこれが“にせもの”。ボイパを披露していたのはお笑いコンビ“新作のハーモニカ”の藤田隼人。ラジオで共演したときに姿形が似ていたことから川谷が「ライブに出ない?」と誘ったのだという。
そのまま藤田も参加した「ドレスを脱げ」からライブは後半のクライマックスへ。「猟奇的なキスを私にして」「両成敗でいいじゃない」などのアンセムを連発し、会場のテンションを一気に引き上げる。プログレ、ヒップホップなどの要素を反映した高度かつ実験的なサウンドに激しく反応するオーディエンスを見ていると「こんな場面を作れるバンドは絶対に他にはいない」と改めて思う。自分たちがカッコいいと感じる音を追求し、誰にも媚びることなく活動を続けてきたゲスの極み乙女。はバンドの理想像を体現しているのかもしれない。
本編ラストは「キラーボール」。「自分がいちばん尖っていた頃に書いた曲。その頃よりも柔らかい心でやります」(川谷)という言葉にリードされたこの曲では、スクリーンに誰もないNHKホールの客席に座って歌う川谷の姿が映されていた。
アンコールのMCで川谷はニューアルバム『好きなら問わない』に触れ、「アルバムを作って“このバンドをやってきてよかったな”と思いました」(川谷)というコメントからは、新作に対する自信がはっきりと伝わってきた。そしてアルバムの中から「これまでで最高難易度」(川谷)という新曲「オンナは変わる」を初披露。シャープなファンクネスを感じさせるアンサンブルとドラマティックなメロディが絡み合うこの曲は、ニューアルバムへの期待をさらに高めてくれた。
ここで川谷は再びオーディエンスに語りかけた。去年はずっと悩んでいたこと。昨年5月の活動再会のライブの際に感じた“救われた”という思い――その正直で真摯な言葉に会場からは大きな拍手と歓声が送られた。この日のラストナンバーは「この曲がずっと僕のなかにある」(川谷)という「だけど僕は」。不安と孤独を感じながら、ときに意固地になりつつも、明日に対する希望を探してしまう“僕”を主人公にしたこの曲は、川谷自身の姿と強く重なる。そう、今もさまざまな葛藤を抱えたまま、このバンドは前に進もうとしているのだと思う。
この日のライブ中にゲスの極み乙女。は、ワーナーミュージック・ジャパン内に新レーベル“TACO RECORDS”を発足することを発表。ニューアルバム『好きなら問わない』は新レーベル移籍第1弾となる。さらに9月から10月にかけて全国ツアー『ゲスなのか、タコなのか』の開催も決定。“乙女は変わる”と題された6周年記念ライブをきっかけにして、ゲスの極み乙女。は新たな変化を迎えることになる。次のフェイズに進む4人のアクションにぜひ注目してほしい。
【取材・文:森 朋之】
【撮影:猪俣 晃一朗】
リリース情報
好きなら問わない
2018年08月29日
ワーナーミュージックジャパン
02.はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
03.イメージセンリャク
04.もう切ないとは言わせない
05.戦ってしまうよ
06.sad but sweet
07.僕は芸能人じゃない
08.颯爽と走るトネガワ君
09.ゲンゲ
10.私以外私じゃないの(Remix by PARKGOLF)
11.招かれないからよ
12.ホワイトワルツ(adult ver.)
13.アオミ
セットリスト
6th Anniversary live『乙女は変わる』
2018.06.22@NHKホール
- 01. ラスカ
- 02. 戦ってしまうよ
- 03. 私以外私じゃないの
- 04. 無垢な季節
- 05. crying march
- 06. ロマンスがありあまる
- 07. いけないダンス
- 08. もう切ないとは言わせない
- 09. オトナチック
- 10. 心地艶やかに
- 11. 煙る
- 12. ルミリー
- 13. サイデンティティ
- 14. 某東京
- 15. ドレスを脱げ
- 16. 猟奇的なキスを私にして
- 17. 両成敗でいいじゃない
- 18. キラーボール 【ENCORE】
- EN 01. オンナは変わる
- EN 02. だけど僕は
お知らせ
JOIN ALIVE 2018
07/14(土)いわみざわ公園
WILD BUNCH FEST.2018
07/29(日)山口きらら博記念公園
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018
08/12(日)国営ひたち海浜公園
MONSTER baSH 2018
08/19(日)国営讃岐まんのう公園
ロックロックこんにちは!Ver.22
08/24(金)Zepp Namba(OSAKA)
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