幸運にもこの日、Halo at 四畳半の新航海への出航宣言に立ち会うことが出来た。

それはとても力強く、この祝福の現場に集った者たち、そしてその向こうに更に待っている大勢の同舟者の腕をグイッと引き寄せ、「これからも自分たちを信じてついてきてくれ」との気概と、「また新しい世界を魅せてあげるから」との誓いを我々に与えてくれるものであった。

Halo at 四畳半が日本コロムビアTRIADレーベルからメジャーデビューし、今秋、初のフルアルバムを発売する旨がこの日、満場の渋谷クラブクアトロにて伝えられた。

「東名阪 2man TOUR 2018 ARK"WANDER LIGHTS"TOUR」2日目のこの日。名古屋ではGOOD ON THE REEL、大阪ではWEAVERの先輩格バンドと、そしてこの東京では彼ら憧れのcinema staffとの2マン競演が果たされた。

先行はcinema staffが務めた。Halo at 四畳半にとってはメンバー4人揃って初めてライブを観に行ったバンドであり、結成後、新作が出来る度に熱心に贈っていた程の熱狂度を持つバンドが自身の前にプレイを始める。1年半前のcinema staffの主催イベント以来、久々の共演となったこの日。しかも遂に今回はHalo at 四畳半からの誘いであったことも感慨深い。

激しさの中のメロディアスさや叙情性といった彼ら特有の音楽性が遺憾なく放出された、この日のcinema staff。いい意味で「いつも通りのライブ」をプレイで示したかのようなステージングが印象的であった。

「HYPER CHANT」にて雄々しくライブを走り出させた彼ら。「theme of us」で更にライブを加速させ、スリリングさと艶めかしさを同居させた「pulse」や「望郷」ではシューゲイズな轟音ギターと叙情性、「熱源」に於いては変拍子も交えた多彩さを魅せつけていく。
後半に入るMCでは飯田瑞規(Vo&G)が自分たちが6年前、この渋谷クアトロでメジャーデビューの報告をした際の話を、その際の会場の祝福具合も交え感慨深く話し始める。これが後々Halo at 四畳半のメジャーデビュー報告への伏線であったこととはつゆ知らず、普通に「いい話」として聞いている筆者がいた。
そんな6年前の報告の際の想い出深い曲「into the green」で更にライブの深部へと突き進めば、会場の雄々しい歌声と共に完成させた「西南西の虹」、ラストは「希望の残骸」が、この先の未来を強く信じさせてくれ、しっかりとHalo at 四畳半へとその“熱のバトン”を繋ぐ。

対して後攻のHalo at 四畳半は、ガシッと力強く会場を抱き寄せ、「あなたが探し求めているものはここにある！」と指し示すが如く、信頼感溢れるライブを展開した。
SEに乗り、白井將人(B)、片山僚(Dr&Cho)、齋木孝平(G.&Cho)の順にメンバーがステージに現われる。そこから少し遅れて渡井翔汰(Vo&G)も登場。白井が誇らしげに自身のバンドロゴの入ったタオルを掲げる。

「ここはさまよう光の避難所。様々な人間がそれぞれの生活を、それぞれの想いを抱えてここに集まっている。現実を忘れさせたいわけではない。その現実を大きく上回るような感動をあなたに手渡しにきました。千葉県佐倉市Halo at 四畳半始めます！」

と渡井が口上を述べ、1曲目の「リバース・デイ」に入る。生命力のあるフロアタムを活かした片山のドラミングに齋木のアルペジオ、その後にガツンとしたバンドサウンドが加わりライブが色づいていく。≪何処までも飛べるだろう　その手を離さぬように　見えなくとも聴こえなくとも　向かうべき場所は解るんだ≫と同曲が誘う。そして、その色づきを更に鮮やかにすべく「カイライ旅団と海辺の街」に入ると、片山のアクセントをつけたドラミングが軽快さを場内に寄与し、アクション豊かな白井のベースが躍動感を付与していく。≪偽りのない愛情も　君となら見つけられるさ≫のラストフレーズが、この日もグッと来る。ノンストップで「ステラ・ノヴァ」に入るとライブはますます加速。遥かなる星の光に思いを馳せさせる。齋木もフロントまでせり出し景色感溢れるギターソロをキメる。

「目撃してくれるからには大きな傷跡、思い出を残して帰りたい」とは渡井。齋木のファンキーなカッティングから入った「ペイパームーン」が会場に躍動感を呼び込めば、ドラマティックなイントロから入った「劇場都市」では白井のベースの運指も冴える。その白井がベースを胸元にまで上げ、入ったミディアムで叙情的な新曲「ヒューズ」では、歌われる二人がどこまでいけるのかへと想いを馳せさせる。そして、「ここに集まった沢山の想いがあるように、ここには沢山の夢もある。それを守るための歌です」(渡井)と紹介された、その夢をもう一度しっかりと抱きしめ、離さぬように響いた「ユーフォリア」では、歌われる≪僕らは一人じゃない≫に信憑性を覚えた。

中盤での白井のMCは様々な事物への慶びが実直に伝えられた。ここに多くの人たちが集まってくれ、目撃してくれていることへの感謝。自分たちの企画にcinema staffを呼ぶ夢が4年越しで叶ったこと。その大好きな先輩とようやく２マンライブが実現し、両想いになれた気がしていること。前回の同ツアーでは完売まで至らなかったが、今回は東名阪全て完売したこと等、幾つもの慈しみを込めた感謝が満場に告げられた。

後半はそんな想いたちを背負い、更に逞しく頼もしい彼らを見ることが出来た。後半の口火を切ったのはcinema staffの「into the green」。この日、cinema staff自身も演ったのだが、それに対し、より彼らなりのライブ感と叙情性の同居させた感のある同曲を皮切りに、ここからの連射が凄まじかった。曲を追う毎にグングンとライブを走り出させていく。怒涛と激情を吐き出すように放出した「春が終わる前に」でのステージに向けて贈られた無数の拳も力強く、会場全体で素晴らしい名場面を生み出したいとの胆気を込めて放たれた「箒星について」が光の中に行こうと誘えば、「飛行船」に於いては、きっと進めば何かがあるだろう…と闇雲に進む我々の腕をグイッと引っ張り、「それがここだ！」と引き連れ、示してくれる力強さがあった。
「音楽は人から人へと伝えるもの。当たり前のものはない。あなたに全てを伝えたい。この音楽だけはあなたの味方。信じて欲しい」との渡井の言葉のあと贈られた「モールス」が、あなたは一人ぼっちなんかじゃないと、ガシッとハートを掴みにかかり、同時に「あんたはどうなんだい？」と詰問してきた。

アンコールは2曲。まずはそれらに入る前に、上述のメジャー移籍の「告白」があり、多くの温かい喜びと祝福の拍手と歓声が、場内を覆った。
「このことをみんなに会って直接伝えたかった。俺たちはこれからも変わらない」「また歌を届けにライブツアーを行う」と誓い、新曲「悲しみもいつかは」が披露される。叩きつけるような激しさの中、悲しみを超えたその向こうに待ってる光を確信させてくれる力強い楽曲だ。悲しみは忘れても悲しみがあって今があることは忘れてはいけない。そんな風に響いた。ラストは会場中が拳を掲げ一緒に歌った「シャロン」が感情たっぷりに放たれ、「あんたとどこまでも行きたい」(渡井)の言葉を残し4人はステージを降りた。

先程メジャー移籍の告知を「発表」と称さずに「告白」と称したが、まさにこの日、彼らはその事象をあえて集まった者たちの前で告げた。いささか宣言や誓いにも似たその「告白」は、ここまで連れてきてくれたファンへの感謝の辞でもあった。
「みんながここまで連れてきてくれたから、ここからは代わりに俺たちがみんなをこの先の素晴らしい景色へと連れていく！」、そんな「一緒に行こう」から、「連れていくから」への意識の変化や雄志の芽生えの場に立ち会えた感のあった、この日のライブ。今秋、彼らはまた新しいスタートラインに立つ。これまで集まった人たち、そしてこれから出会うであろう更に多くの人たちと共に、そのゴールテープを一緒に切る為に。

【取材・文：池田スカオ和宏】
【撮影：オチアイユカ】