ポルカドットスティングレイ 前代未聞、超変則的なポルカ流のレコ発ライブ!
ポルカドットスティングレイ | 2018.07.06
前代未聞、イレギュラー、通常のレコ発とは掛け離れた超・変則的な中身で駆け抜けた今回のショウ。そこもポルカドットスティングレイらしいし、何よりここに集まった観客たちが心底楽しそうだった。MVなどウェブを駆使して、常にファンを驚かせ、何かを企み続けてきたポルカのファンは、ある種の耐性が付いてきたのかもしれない。しかし、その先を行くのがポルカのポルカたる所以だ。掴めそうで掴めない、近くなった途端に突き放される。その魔性の魅力に大きく人たちが続々と吸い込まれていくのだろう。
今回、5月9日に発売された2ndミニ・アルバム『一大事』に伴うレコ発はEX THEATER ROPPONGIの1本のみ。その理由はメンバーの口から後述されるが、バンドを取り巻く現在の人気を考えると、なかなか思い切った決断だと思うし、今日のために地方から駆けつけた人もいたほど。
開演時刻19時ジャストに暗転すると、観客からハンドクラップが沸き起こり、SEが流れると、エジマハルシ(Gt)、ウエムラユウキ(Ba)、ミツヤスカズマ(Dr)、最後に雫(Vo&Gt)が登場。囁くような歌い回しで場の空気を自分色に染め上げると、新作の冒頭を飾る「少女のつづき」で始まった。軽やかなメロディとリズムで観客をふわっと包み込みながら、宙空に融けていく雫のクールな歌声にうっとり聴き入る。それから一転、「ポルカドットスティングレイ、よろしくお願いします。」と手短に挨拶を済ませると、早くも伝家の宝刀を抜く。そう、「テレキャスター・ストライプ」だ。今日はオールスタンディングの会場ということもあり、観客は飛び跳ねたりと、自由気ままに騒ぎまくっている。“オイ! オイ!”の歓声もひときわ大きく、一気に沸点を描き出す楽曲パワーは桁違いと言っていい。曲中に「さあ、みんな一緒にー!」とシンガロングを促す雫の声はほぼ絶叫に近く、感情を投げ打つアジテーションっぷりにも胸が熱くなった。
大人びた雰囲気に満ちた「BLUE」においては渋いプレイでじわじわと聴かせ、その後にキュートでポップに開けた曲調が印象的な「煌めく」を披露する流れも良かった。特に後者は哀切なメロディにも関わらず、雄大なスケールで迫る歌と演奏が格別。
「元気やな、みんな。楽しいかい? 『一大事』リリース・ワンマン、みんな聴いておるのか?」と雫は話しかけ、新作収録の「ICHIDAIJI」が映画&TVドラマ主題歌『わたしに××しなさい』に起用されたことを受け、「映画、こっそり観に行く。ティナちゃん(主演女優:玉城ティナ)には50回ぐらい行くと言った(笑)」と自身の楽曲が流れることに興奮を抑えられない様子だった。続けて「『一大事』のレコ発は夏フェスと被るからツアーはできない。1回だけ」と本人の口から説明されると、観客も深く頷いているようだった。
「アンコールに大きな試み、MV撮影する。MVは当てぶりだから、1回聴きたくない? この曲やるの難しい」とこぼしつつ、ここで「パンドラボックス」をプレイ。イントロからギターが激しく火を噴き、そこに躍動感満載のドラムが追い討ちをかけ、顔面に先制パンチを食らわす鮮烈な幕開け。各楽器の手数も多く、曲のBPMもポルカの持ち曲の中でもトップ・クラスに位置するだろう。終始聴く者をジッとさせない、カオティックなバンド・アンサンブルは苛烈な勢いを放射していた。また、色とりどりのカラフルな照明も効果的で、観客も心を丸裸にして大騒ぎ。曲が終わると、すかさず「最高ー!」という観客の声が耳に入ってきた。これからの夏フェスはもちろん、ライブでも必要不可欠の重要ナンバーになりそう。
5曲目を終えた後、「いつもよりセット・リストは短め、アゲアゲの曲ばかりやる!」と宣言すると、ステージにポルカのライブではお馴染みのセイイエスマンを呼び込んで、「半泣き黒猫団のテーマ」が炸裂。体がムズムズ動くノリやすいテンポ感、『みんなの歌』のごとくポピュラリティの高い曲調、振り付けを用いて観客と一体感を図るアプローチも功を奏し、大いに盛り上がる。ちなみに音源で聴くことができたトーク・パートを省き、ライブならではのアレンジで聴かせる手法も堂に入っていた。
「今からここをダンスフロアに変える、初めて作った名刺代わりの曲!」と言うと、バンド名を冠した「ポルカドット・スティングレイ」へ雪崩れ込む。曲中に「ハルシのギター・ソロじゃなく、今日はワンマンだから3人のソロをやる」と告げると、ベース~ドラム~ギターとリレー形式で繋ぐソロ・タイムも実にスリリングで、会場のあちこちから熱狂的な歓声が飛び交った。
そして、夏の「問題作MV」2本立て企画として制作され、既にMVは公開済みの「リスミー」をここで披露。主人公の少女と、その彼女を甘やかす青年が登場した不思議な男女関係をストーリー仕立てに綴った映像。シナリオは雫本人が手がけ、どこかミステリアスなムード漂うMVは見応え十分。今日のライブでもこの曲は異質の輝きに満ちていた。吐息混じりのセクシーな歌声、音数を極力減らした張り詰めた空気感は、まさにあの映像世界を具現化している。聴く者を奥へ奥へ、底なしの音世界へと引きずり込むサウンド。まだまだ我々はこのバンドの氷山の一角だけを眺めているだけなのか。そう思わせるディープな表現力に思わず舌を巻いた。
本編は「シンクロニシカ」、「エレクトリック・パブリック」と怒濤の攻勢ぶりで会場を根底から焚き付け、全10曲というコンパクトな内容でひとまず終了。ここから初の試みでもあるオーディエンス参加型のライブ・シューティングを実施。摩訶不思議な「リスミー」とは対極に位置する「パンドラボックス」のMV撮影が行われ、観客は半泣きアイマスクを装着し、嬉々とした表情でこの場を最大限に楽しんでいるようだった。
最後は「あと1曲聴かせたい、大事な曲」と前振りして、新作の表題曲「ICHIDAIJI」を放つ。途中で大量の風船が天上から舞い落ちる演出効果もあり、ラスト1曲まで掉尾を飾る華やかなステージングを見せつけてくれた。
【取材・文:荒金良介】
【撮影:AZUSA TAKADA】
リリース情報
一大事
2018年05月09日
ユニバーサルミュージック
2.パンドラボックス
3.リスミー
4.煌めく
5.ICHIDAIJI
6.半泣き黒猫団のテーマ (※ CDのみボーナストラック)
セットリスト
ポルフェス29 #一大事 ワンマン
2018.06.26@EX THEATER ROPPONGI
- 01. 少女のつづき
- 02. テレキャスター・ストライプ
- 03. BLUE
- 04. 煌めく
- 05. パンドラボックス
- 06. 半泣き黒猫団のテーマ
- 07. ポルカドット・スティングレイ
- 08. リスミー
- 09. シンクロニシカ
- 10. エレクトリック・パブリック 【ENCORE】
- EN 01. ICHIDAIJI
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イベント広場(エスパルスドリームプラザ横)
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。