パスピエ キャリア史上最大の全国ツアー「カムフラージュ」完遂!!
パスピエ | 2018.07.15
7月14日、15日の名古屋公演(NAGOYA CLUB QUATTRO)でファイナルを迎えたパスピエの全国ツアー「パスピエTOUR 2018“カムフラージュ”」。キャリア史上最大の規模(全国15都市・全21公演)となった今回のツアーから、7月5日、6日の東京公演(EX THEATER ROPPONNGI)の模様をレポート。2daysによるライブは、最新ミニアルバム「ネオンと虎」にかけて“ネオン編”(5日)、“虎編”(6日)と名付けられ、パスピエの幅広い音楽性を感じることができた。
<1日目-ネオン編->
“ネオン編”はミニアルバム「ネオンと虎」のタイトルチューン「ネオンと虎」でスタート。80年代のテクノポップ、シンセポップのテイストを現代的にアップデートさせた楽曲によって、会場は一気にレトロフューチャー的な雰囲気に導かれる。さらに「トロイメライ」「メーデー」といった人気曲を披露し、クオリティと熱量の高さを兼ね備えたバンドサウンドによって、フロアのテンションを引き上げた。
「私たちのツアー“カムフラージュ”に来てくれて、どうもありがとう。今回のツアーは1dayの公演から始まって、途中から2days公演になったんだけど、東京でライブをやると帰ってきたなという感じがしますね。一緒に最後まで楽しみましょう!」という大胡田なつき(Vo)の挨拶の後も、ミニアルバム「ネオンと虎」の収録曲が次々と演奏される。緻密に構築されたバンドサウンド、ストリングスを交えたアレンジ、「とぅっとぅっとぅーる……」という印象的なサビのフレーズがひとつになった「Matinee」、プログレシッブ・ロックのテイストを取り入れたサウンドに圧倒された「かくれんぼ」、明るく振り切ったメロディラインとアグレシッブなギターフレーズ、「生まれ変わって新しい感覚連れてよ」というラインが絡み合う「トビウオ」、リズムを強調したアレンジのなかで言葉遊び的なリリックが響く「マッカメッカ」。そこに「YES/NO」「MATATABISTEP」といったアッパーな既存曲が絡み合い、パスピエにしか体現できない音楽世界が生まれる。高度なメソッドに裏付けられた楽曲を、卓越したテクニックを持ったミュージシャン(成田ハネダ/Key、三澤勝/Gt、露崎義邦/Ba、サポートの佐藤謙介/Dr)が肉体的に表現し、大胡田の歌が独創的な世界観を描き出す。それはまさに「これぞパスピエ!」と快哉を叫びたくなるシーンの連続だった。
MCではリラックスしたトークを披露。「以前、J-WAVEで番組を持たせてもらっていて。スターバックスに通って1000ポイントくらい溜まってるから、それを今日と明日で使わないと(笑)。ラジオでは大胡田もいろいろ身の上話もしたし、みなさんに自分たちのことを知ってもらったうえで、こうやってライブできるのは嬉しいですね」(成田)「私たちもまだまだいろんなことをやるから、もっともっと知ってほしいですね」(大胡田)というやりとりの後、ライブは後半へ。シャープなギターカッティング、ファンクネスを感じさせるリズムを軸にした“パスピエ流シティポップ”「オレンジ」によって観客は気持ち良さそうに体を揺らし始める。さらに「ハイパーリアリスト」「ワールドエンド」というライブアンセム、「ずっと大事にしている曲。“ライブのとき、こんなふうに思って歌ってるんですよ”ということを歌った曲です」(大胡田)という言葉に導かれた「トキノワ」へ。ラストはミニアルバム「ネオンと虎」の最後に収録された「恐るべき真実」。印象派クラシックをポップスと融合させるというパスピエのコンセプトを端的に示すこの曲によって、本編は終了した。
アンコールは「シネマ」「チャイナタウン」というアンセム2曲。何度もライブで聴いている曲だが、現在のバンドの状態の良さが反映されたパフォーマンスによって、楽曲の魅力がさらに引き出されていた。バンドのライブ中の「今日はミニアルバムの曲だけでじゃなくて、過去の曲もいろいろ曲をやって。“この曲、こんな感じだったんだ”という出会いがあったらいいなと思っています」(大胡田)というコメント通り、新旧の楽曲を通し、パスピエのカラフルな魅力を再発見できるライブだったと思う。
<2日目 -虎編->
2日目の“虎編”は、ミニアルバム「ネオンと虎」の全収録曲と、漢字と平仮名のタイトルの楽曲を中心に構成されていた(“ネオン編”は英語、カタカナのタイトルの曲が中心だった)。オープニングは「トビウオ」。前日の絶好調ぶりをそのまま引き継ぎ、冒頭から心地よい高揚感を生み出していく。童謡のような旋律と洗練されたバンドアレンジがナチュラルに一体化した「とおりゃんせ」によって、オーディエンスの興奮もさらにアップ。最初の数曲でしっかりとフロアを掌握する様子からは、ライブバンドとしての確かな向上が感じられた。「昨日ここで“ネオン編”をやらせてもらって、今日は“虎編”。同じ場所だけど、見える景色とか雰囲気がぜんぜん違うのね。とっても新鮮な気持ちでやらせてもらってます」(大胡田)という言葉からも、メンバーがこの場所を心から楽しんでいることが伝わってきた。
前日のMC中に生まれた新しい掛け声“いい女!”という声が飛び交うなか、ダイナミックなグルーヴのなかで和の要素を取り入れたメロディが響く「永すぎた春」、「抜き足 差し足 忍び足『生意気娘の目をぬすめ』」から始まる日本昔話風の物語に普遍的なメッセージを込めたポップチューン「つくり囃子」(ベースの露崎は熱演のあまり靴が脱げる)といった楽曲を重ねる。日本的、アジア的なテイストを色濃く感じさせるこれらの楽曲は言うまでもなく、パスピエの特徴のひとつ。その中心にあるのは、大胡田の描き出す歌詞の世界だ。
「東京、行くよ!」(大胡田)と高揚感と酩酊感がひとつになった「はいからさん」、疾走感のあるサウンドと“答えを見つけたら音の鳴る方へ”というフレーズが直結し、さらなる興奮を生み出した「音のなる方へ」などを披露したあと、2度目のMC。「以前、六本木のピアノバーみたいなところでピアノを弾くバイトをしていて。あるとき“ゴッドファーザーのテーマ”をリクエストされたんだけど、“怖いな”と思って、そこから寄り付かなくなって(笑)。でも、こうやって温かいみなさんの前でライブをやれて良かったです」(成田)「六本木恐怖症が克服されたんだ(笑)。このコーナー、いつもこういう謎の話になっちゃうよね」(大胡田)。メンバーのキャラが見える、気の置けないトークも最近のパスピエのライブの魅力だ。
そして「あかつき」「裏の裏」からライブはクライマックスへと向かう。「音にも言葉にも“これからやっていくパスピエ”を込めて作った曲です」(大胡田)という言葉にリードされた「正しいままではいられない」から、本編の最後は前日と同じく「恐るべき真実」。クロード・ドビュッシーを彷彿とさせる成田のピアノ、美しく、ドラマティックな大胡田のボーカル、緻密な構築美とダイナミックな音響がひとつになったこの曲は、現時点におけるパスピエの集大成と言っても過言ではないだろう。
アンコールでは「MATATABISTEP」「最終電車」というキャリアを代表する人気曲を演奏。それでもコールは鳴り止まず、再びステージに登場したメンバーは「S.S」を披露。凄まじい盛り上がりのなか、ライブはエンディングを迎えた。
大充実のツアーをやり遂げたパスピエは10月に初の野外ワンマンライブ「パスピエ野音ワンマンライブ“印象H”」(10月6日(土)/東京・日比谷野外大音楽堂 14日(日)/大阪・服部緑地野外音楽堂)を開催。こちらもぜひ楽しみにしてほしい。
【取材・文:森朋之】
【撮影:Yosuke Torii】
リリース情報
ネオンと虎
2018年04月04日
ATLANTIC JAPAN / WARNER MUSIC JAPAN
2.マッカメッカ
3.Matinee
4.かくれんぼ
5.トビウオ
6.オレンジ
7.恐るべき真実
セットリスト
パスピエ TOUR 2018 ”カムフラージュ”
2018.07.05-06@EX THEATER ROPPONGI
■2018.07.05 -ネオン編-
- 01.ネオンと虎
- 02.トロイメライ
- 03.アンサー
- 04.メーデー
- 05.スーパーカー
- 06.Matinée
- 07.プラスティックガール
- 08.かくれんぼ
- 09.(dis)communication
- 10.トビウオ
- 11.YES/NO
- 12.MATATABISTEP
- 13.マッカメッカ
- 14.オレンジ
- 15.ハイパーリアリスト
- 16.ワールドエンド
- 17.トキノワ
- 18.恐るべき真実 【ENCORE】
- EN 01.シネマ
- EN 02.チャイナタウン
■2018.07.06
-虎編-
- 01.トビウオ
- 02.贅沢ないいわけ
- 03.Matinée
- 04.とおりゃんせ
- 05.永すぎた春
- 06.つくり囃子
- 07.気象予報士の憂鬱
- 08.かくれんぼ
- 09.ネオンと虎
- 10.やまない声
- 11.はいからさん
- 12.音の鳴る方へ
- 13.マッカメッカ
- 14.あかつき
- 15.裏の裏
- 16.オレンジ
- 17.正しいままではいられない
- 18.恐るべき真実 【ENCORE】
- EN 01.MATATABISTEP
- EN 02.最終電車
- EN 03.S.S
お知らせ
「パスピエ 野音ワンマンライブ “印象H”」(パスピエ ヤオンワンマンライブ インショウエイチ)
10月06日(土) 東京/日比谷野外大音楽堂
10月14日(日) 大阪/服部緑地野外音楽堂
印象H特設ホームページ:
http://passepied.info/content/p/insyou_h