Ivy to Fraudulent Game 東京公演Zepp DiverCityをレポート
Ivy to Fraudulent Game | 2018.07.18
Ivy to Fraudulent Gameにとって過去最大規模の会場・Zepp DiverCityでのライブのオープニングは、メランコリックな音像が華麗に広がる「Utopia」からスタート。流れる川のように雄大に揺らぎながら高鳴っていくサウンドが圧倒的に心地よい。寺口宣明(G・Vo)、大島知起(G)、カワイリョウタロウ(B)、福島由也(Dr)が作り上げる黄金のアンサンブルを堪能しつつ耳を傾けている観客は、早くも恍惚の表情を浮かべている。ステージに投影された幻想的な映像とサウンドがシンクロして構築された空間は、とても濃厚であった。続いて「水泡」と「!」も披露されたが、クリーントーンのギターのアルペジオで穏やかな響きを生み出していたと思ったら、突然、歪んだ轟音が炸裂する瞬間もあり、片時も耳を離せない。瑞々しいメロディ、ドラマチックな展開、刺激的な音色に満ち溢れたこのバンドの音楽の真髄を、強く実感することができた序盤であった。
「7人くらいしか来ないと思ってたんだけど、結構来てるね。ありがとうございます。こういう会場初めてだから、本番前、メンバーの顔が見たことないくらい白くて。鏡見たら俺が一番白かった(笑)。3曲しかやってないけど、今までバンドをやってきた中で一番空に上がっていくような気がする気持ちいい3曲でした」――シニカルな表現を随所に挟みつつ和やかな笑いも誘う寺口ならではのMCを挟んで、再び演奏へ。躍動するシャープなビートに合わせて、観客が掲げた掌が力強く揺れていた「error」。妖艶なサウンドのベールが揺らめいた「Dear Fate,」。起伏に富んだ展開を遂げながら美しい世界を描き上げていた「she see sea」……様々な曲が披露される毎に、観客が深く引き込まれているのを肌で感じた。
インストゥルメンタル曲「Contrast with your beauty.」を挟んで、多彩なサウンドは、ますます鮮やかにきらめいていった。カワイが奏でるピアノと寺口の歌声が、絶妙に融け合っていた「最低」。ステージに投影された映像と、サイケデリックな残響に彩られたサウンドの併せ技で圧倒してくれた「徒労」と「E.G.B.A.」。タイトル未定の新曲も届けられた中盤は、視覚と聴覚の両方を刺激してくれる場面の連続だった。それぞれの曲が幕切れる毎に、夢から覚めたかのような面持ちで拍手をしていた観客。演奏を届けるだけでなく、作り上げた空間でも魅了するこのバンドのライブの醍醐味に満ち溢れていた。
「結成して8年。このメンバーになって約6年。僕たちは福島が作る曲をやって参りましたが、“俺が作ってみたらどうかな?”と。今日、特別な場所じゃないですか。ここで披露したら喜んでもらえるんじゃないかなと思ったんです」と言って、観客を湧かせた寺口。「こういう曲がIvy to Fraudulent Gameに欲しかったなと思って作りました。スーパーポップサウンドの曲ができちゃった。なぜ、すぐに始めないかというと……今から、歴史的な瞬間だから(笑)」と、嬉しそうに話し続けた末に、ついに披露した新曲は、明るいムードで会場全体を包み込んでいた。爽やかなメロディ、穏やかなビートに合わせて、観客は陽気に手拍子。寺口の言っていた通り、Ivy to Fraudulent Gameの新境地とも言うべき仕上がりであった。
「革命」「劣等」「青写真」「アイドル」……お馴染みのナンバーが連発されたことによって、さらに熱い昂揚感が漂い始めたZepp DiverCity。力強くサウンドを炸裂させるメンバーたちの姿が、とても凛々しかった。「今日で空っぽになっちゃうくらい、“今、俺、生きてる”って思えてます。ありがとう。24歳の夏、やっとZepp DiverCityに来られました。俺は今日のことを忘れない。みなさんの人生に強く刻み込めたらなと思いながら歌ってました。今日は届いた気がする。あなたの前で歌えてよかったです。音楽で人を救おうとか思えないです。自分を救うことで精一杯です。だけど、共感かどうかはわからないけど、どこか共鳴してくれて、みなさんはここに来てくれてる。だからみなさんを幸せにできたらなと、いつも思ってます」――本編ラストの曲を始める前に、寺口が語った言葉は、Ivy to Fraudulent Gameの音楽活動の核にある想いを示しているように感じられた。そして、届けられた本編ラストの曲「青二才」。迸る轟音、ホロ苦い哀愁を漂わせるメロディを受け止めながら、観客は真っ直ぐにステージを見つめていた。
アンコールを求める人々の歓声に応えてステージに戻って来たメンバーたち。そして、9月26日にメジャー1stシングル『Parallel』がリリースされることが発表され、観客が大喜びした後に届けられたのは「trot」。疾走感に満ちたサウンドが会場の隅々にまで勢い良く広がっていく様が、とても清々しかった。
「大人になるにつれて、自分の生きる範囲やキャパシティがちょっとずつわかってくるんだけど、大丈夫。ここがあるから。いつでも逃げ場にしてください。また必ず会いましょう」という言葉を添えて披露された「故郷」が、このライブのラストを飾った。決して良いことばかりではない自分の人生をあるがままに受け止めて、精一杯に生きていこうとしている姿が刻まれているこの曲は、現在のIvy to Fraudulent Gameが抱いている気持ちを映し出しているように感じられた。日々の暮らしの中で湧き起る迷い、苦しみ、痛みと真正面から向き合い、エモーショナルなサウンドと美しいメロディに託して表現するこのバンドの音楽は、とても深くリスナーの心に訴えかけるものを持っている。彼らに魅了される人々の輪は、今後も着々と広がっていくに違いない。
【取材・文:田中 大】
【撮影:Yusuke Satou】
リリース情報
Parallel
2018年09月26日
ビクターエンタテインメント
02. error
03. sunday afternoon
セットリスト
Ivy to Fraudulent Game
2018.07.01@Zepp DiverCity
- 1.Utopia
- 2.水泡
- 3.!
- 4.error
- 5.Dear Fate,
- 6.she see sea
- 7.Contrast with your beauty.
- 8.最低
- 9.徒労
- 10.E.G.B.A.
- 11.(新曲)
- 12.(新曲)
- 13.革命
- 14.劣等
- 15.青写真
- 16.アイドル
- 17.青二才 [ENCORE]
- En1.trot
- En2.故郷
お知らせ
TOKYO CALLING 2018
09/15(土)16(日)17(月)
新宿、下北沢、渋谷の約30会場
MURO FESTIVAL 2018
07/22(日) お台場野外特設会場
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07/26(木) TSUTAYA O-EAST
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08/3(金) 仙台JUNK BOX
rockin’on presents
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08/11(土) 国営ひたち海浜公園
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08/19(日) 名古屋クラブクアトロ
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08/26(日) 泉大津フェニックス
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08/29(水) TSUTAYA O-Crest
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09/08(土) T.O.P.S Bitts HALL
Saucy Dog
【ワンダフルツアー2018】
10/05(金) 松本ALECX
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。