THE PINBALLS、メジャー1stシングルを引っ提げ全国15カ所を回ったツアーは大成功!
THE PINBALLS | 2018.08.01
音楽やバンドを演り続けていくモチベーションは様々だ。ある者は自分の歌が多くの人に広まること、ある者は著名になること、ある者は自分の想いの吐き出しに、ある者はお金持ちになりたくて、大きな会場で演ることやテレビに出演することを目指している者もいるだろう。その憧れや夢、目標や着地点は千差万別。そこに優越は無い。では、ことTHE PINBALLSの場合はどうだろう?
衝動性、ダンサブルさ、ミディアムなバラード…。そんな3種の、今、そしてこれからの自分たちを体現した今春に発売されたメジャー1stシングル「Primal Three」。同作品と共に全国15カ所を回ったツアー「The Pinballs Leap with Lightnings tour」が7月20日の渋谷TSUTAYA O-WESTにて大成功のなか幕を閉じた。
この日のチケットはソールドアウト。会場は立錐の余地のないほどの満員であった。
SEに乗り、まずは中屋智裕(G)、森下拓貴(B)、石原天(Dr)の3人がステージに現われる。続いて古川貴之(Vo&Gt)も登場。ステージ中央にて両腕を広げ、「ようこそ! 俺らが全てこの両腕と胸で受け止めてやるからかかってこいよ!」そんなジェスチャーをみせる。
各位フォーメーションにつき、まずはガツンと4音によるデモンストレーション。その中から「いけるか~! 渋谷!!」と古川のシャウトと、ライブを船出させるべくライジング感溢れる「片目のウィリー」が現われる。石原のタイトな8ビートに森下のソリッドなベース、オルタナ混じりの中屋のギターといった彼らの真骨頂がいきなり炸裂。フロアとステージの距離を一瞬で縮めていく。続いての「ヤードセールの元老」では、スリリングさが場内に持ち込まれ、古川もガナるように歌い放つ。そして、待ってました! 中屋のギターソロが暴発。嬌声が上がる。
「I know you」に入ると、そこにブルースフィールがオンされ、ガリンガリンの森下のベースから入った「アンテナ」ではライブが更なる前傾姿勢を魅せる。
「最高だよベイビー! 今年の夏は暑すぎねえか? 俺たちのツアーがあって、お前らがいたからにちがいない!」と古川。さらに場内を熱くせんとばかりに「真夏のシューメイカー」へ。満場をヒートアップさせにかかる。この曲のハイライトは森下から中屋へのソロのリレーションでもあった。
ライブは “これでもか!"と言わんばかりにストイックに進んでいく。「20世紀のメロディ」では、愛しべき20世紀のメロディを誇らしげに放ちつつも、サビでのストレートさと上昇感がまるで21世紀の暗闇を照らし出していく灯火ように響き、場内の呼応をさらに強固なものにしていった。
「みんなのやばい笑顔をありがとう! これまでこんな気持ちになったことがなかったけど、今日は、(ここ東京でツアーファイナルを迎えることが出来て)なんか帰ってきた感じがする。ただいま! いつも俺たちのホームになってくれてありがとう」と満場と力強いアライアンスを交わす。
ミディアムな「299792458」では古川がマイクスタンドを抱くように大切に歌う姿も印象的であった。その姿はまるで気持ちを込めて不器用なラブバラードを歌うが如し。「覚めたくない夢の歌を歌うよ」(古川)と入った「沈んだ塔」では、再び妖艶さと艶めかしさが場内に呼び込まれる。また、その不穏さとスリリングさを増幅させた「カルタゴ滅ぶべし」では、グルーヴが身体に絡みつき、まとわりつきながら会場全体を惹き込んでいく様を見た。
「今日のチケットは完売。ありがとう。これもみなさんのおかげ。だけど、その売り切れたことよりも、みんながこうして観に来てくれた方が嬉しい」と古川が告げ、合わせて、「少ない動員だった頃に、届け! との気持ちを持って歌っていたことはけっして忘れないし、これからも忘れずに歌っていく。ここにいる一人ひとりに伝えたいです。ひとりぼっちじゃないって」と続け、「ひとりぼっちになんてさせない」と言わんばかりに「ひとりぼっちのジョージ」を始める。同曲に強引に抱きしめられるように会場が惹き寄せられていく。
ここで色がパッと変わる。パーティ感が呼び込まれ、カウパンクのりのロデオ感のある「重さのない虹」が会場を楽しそうにバウンスさせる。そして、「今日はみんなを貫きに来たつもりだったけど、逆に俺の方が貫かれたよ」とフロアのリアクションを嬉しそうに眺め発する古川。そしてメジャー1stシングル「Primal Three」から「Lightning strikes」を放つと、合わせて無数の拳がステージに向けて贈られる。まさに襲いかかってくるかのように響いた同曲。特上の雷に体が貫かれていく。続いてもメジャー1stシングルから「Voo Doo」が。腰にくるダンサブルな同曲が会場を艶かしく躍らせ、サバト化させていく。
ここからは後半戦。畳み掛けるようなナンバーが連射され会場を駆け抜けた。「今日が人生で一番熱くなった日だった。だけどそれを超えて更に熱くなろうぜ!」(古川)と入った「劇場支配人のテーマ」、そしてこの日最大の見どころは「carnival come」でのメンバー紹介も兼ねた演奏陣各人のソロのリレーションであった。石原から森下、石原に戻り、続いて現われた中屋のギターソロの際は、フロアのクラウドの上、サーフしながら気持ちよく弾いている勇姿を見た。また、「七転八倒のブルース」がソリッドなビートとブギーなサウンドでグルーヴィーに会場を締め上げていけば、本編ラストは「蝙蝠と聖レオンハルト」がスリリングなロックンロールで締めてくれた。
ここからはアンコール。「暗く怪しい雰囲気で作ったが、ライブで演っていくうちにお客さんの反応も相まって違ったふうに響くようになった」(古川)と語り入ったメジャー1stシングル「花いづる森」では、希望の出口とでも呼ぶべく夜明け感を味あわせてもらい。打って変ってスリリングでタイトな「十匹の熊」も場内を魅了していった。
ダブルアンコールでは、「最後は思い切りカッコつけて叫んで帰りたい」(古川)と「サイコ」に入り、客電全開のなか16ビートがパッピーに炸裂。会場もみんな幸せそうな笑みを浮かべ、この日の幕を引いた。
これまで私は彼らに、<ロックンロールを演る/ライブを演れることに楽しさを見い出しているバンド>との印象を勝手に抱いていた。しかし、この日を機に、それに要素が一つ加わった。「お客さんをも巻き込んでライブを成立させていく喜び」が更にオンされたのだ。“あぁ、バンドを続けてきて良かった”。そんな夜と出逢う為にTHE PINPALLSは、ここまでバンドを演り続けてきたのかもしれない……。この上ないほど楽しそうに演奏し歌っているメンバー各位の表情を見て、ライブ中、何度もそう思った。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:白石達也】
リリース情報
Primal Three
2018年04月25日
日本コロムビア
2. Voo Doo
3. 花いづる森
セットリスト
Leap with Lightnings tour
2018.7.20@TSUTAYA O-WEST
- 01.片目のウィリー
- 02.ヤードセールの元老
- 03.I Know you
- 04.アンテナ
- 05.真夏のシューメイカー
- 06.20世紀のメロディ
- 07.299792458
- 08.沈んだ塔
- 09.カルタゴ滅ぶべし
- 10.ひとりぼっちのジョージ
- 11.重さのない虹
- 12.Lightning strikes
- 13.Voo Doo
- 14.劇場支配人のテーマ
- 15.carnival come
- 16.七転八倒のブルース
- 17.蝙蝠と聖レオンハルト
- En-1.花いづる森
- En-2.十匹の熊 【ENCORE2】
- En-3.サイコ
お知らせ
TREASURE05X -SCREAM AMBITIONS-
08/19(日)[愛知]クラブクアトロ
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08/29(水)[宮城]仙台MACANA
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09/01(土)[大阪]泉大津フェニックス
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09/09(日)[東京]新宿BLAZE
FM802 MINAMI WHEEL 2018 〜20th Anniversary〜
10/06(土)〜10/8(月)[大阪]大阪ミナミエリア複数会場
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