teto、新しい風を呼び込んだワンマンツアー「始発」ファイナルをレポート!
teto | 2018.08.03
《光るまちに行こう 終電はもう逃そう》
これは、今年春に行われた『teto <60分2,800円ツアー>』で、毎回アンコールで歌っていた『光るまち』のフレーズだ。規則正しく生きて、終電前にちゃんと帰ることが、世間が言う真っ当な生き方なのだとすれば、ライブハウスで鳴り響く音楽に夢中になり、終電を逃してしまう人間はアウトローなのかもしれない。でも、tetoはこれまで、そんな“終電に間に合わない同志達”に向けて、嘘偽りのない歌を届けてきた。そして、彼らが1stワンマンツアーにつけたタイトルが、『始発』。かねてより期待の新星として注目を集めていたtetoだが、7月22日・渋谷WWW X、小池貞利(Vo&Gt)曰く、“日曜日の渋谷がすごい似合わない顔立ちのみなさん”と共に迎えたツアーファイナルは、tetoの本当の意味での始まりを告げていた。
「拝啓! ただ、普通に生きているだけなのに。ただ、普通に真面目に生きているだけなのに。終電を逃してしまう、全ての大馬鹿野郎に!」
小池貞利(Vo&Gt)がそう言い放つと、山崎陸(Gt&Cho)、佐藤健一郎(Ba&Cho)、福田裕介(Dr)も一体となって、衝動のままに『拝啓』からライブはスタートした。ギターを掻き鳴らしつつも、スタンドマイクに食らいつき、会場に集った同志達への想いを吐き出したかと思えば、早くも豪快に背面ダイブをきめる小池。それに煽られるようにクラウドサーファーが続出し、オープニングから凄まじい熱気がフロアを包んでいく。
「痛ぇことばっかだよ! 痛ぇことばっかだよ!」という嘆きに導かれ、間髪容れずに突入した『Pain Pain Pain』のAメロでは、ファストラップのごとく次々に言葉の弾丸を発射。その姿はとても勇ましく、無敵そのもの。だが、一方的に撃ち抜くのではなく、メンバーと観客が一緒に「あ~ああ~ああ~ああ~」と歌う様はじつに微笑ましい。
その後も、各曲に繋がるメッセージを言い添えながら、1stEP『Pain Pain Pain』のカップリングとして収録された『高層ビルと人工衛星』と『新しい風』を立て続けに披露。『新しい風』の冒頭で「今日、日曜日の渋谷で、新しい風を僕達に浴びさせてください! 俺らは俺らで新しい風を吹かせます! みなさんはみなさんで新しい風を吹かせてください!」と投げかけた通り、小池の歌を超越した生々しい叫びは、tetoの快進撃がまだまだ続くこと、いずれはロックシーンを揺るがす大きな存在になっていくことを予感させた。でもきっと、どんなに有名になったとしても、彼らは驕ることなく、ブレずに自分達の音楽を追究していくのだろう。小さなライブハウスから、日常に溢れる怒り、哀しみ、愛を叫び続けるスタイル。そんなひたむきさが、≪新しい時代をそっと新しい風で煽っていく≫という歌詞からは伝わってきた。
そして、『My I My』『散々愛燦燦』をゆったりと歌いつつ、捲し立てるような曲紹介から『トリーバーチの靴』へ。情感豊かな歌声と演奏に煽られ、再び疼き始めた衝動は、続く『暖かい都会から』で大爆発する。冒頭からフロアに充満した大合唱、全身で音を体感しようとするクラウドサーファー、滝のような汗で顔面を輝かせながら激情をぶちまけるメンバー達。一瞬でも気が抜いたら振り落とされてしまう、そんなスピード感で駆け抜けた。
本編中盤、「なんか、田舎の景色ってなんであんなに愛おしいんだろうと思って……」と小池がおもむろに切り出すと、観客が各々の故郷を思い浮かべる中、故郷・群馬で過ごした日々を切り取った『teen age』が溢れ出した。味、匂い、音。さまざまな感覚を観客と共有し、自身の思い出を追体験させるような歌声。それは、かつて飼っていた愛犬・ミニーの歌『マーブルケイブの中へ』で、咽び泣くような絶叫に変わり、ギュッと心を締め付けた。時折、ファルセットで弱々しく語りかけながら、ミニーにしがみつき、揺さぶるかのようにパワフルに歌い上げる小池。先程まで荒々しく拳を突き上げていた観客も、この時ばかりはその姿を一心に見つめていた。
「どうせ一番届いてほしい人には届かないんだろうけど。夏が終わる前に、この曲を歌います!」
そんな叫びから突入したのは、夏にピッタリのキラーチューン『9月になること』。ギターリフが清涼感溢れる風を吹き込んだイントロから、サビに向かって徐々に熱を帯びていくサウンド。体中から声を絞り出すように歌い上げる小池と、それを支えるように湧き上がる観客の歌声の掛け合いは、この日のハイライトだった。その余韻に浸りながら、『9月になること』のアンサーソングとして制作された新曲『溶けた銃口』(最新アルバム『手』収録曲)も披露された。
「許されるなら、何度だって輝いていきたいんです! 楽しいことだけして生きていきたいんです! それが許されないなら、たまにでいいので最高に輝いている日をください!」
後のMCで小池も言っていたが、この日のライブは本当にあっという間だった。予定外のWアンコールを含めても全20曲、時間にすれば2時間にも満たない短さ。でも、どの一瞬を切り抜いても、彼らは最高に輝いていた。それだけに、本編後半、『あのトワイライト』を歌う前に語ったこの言葉が、終演後もしばらく耳に残っていた。全力で生き抜くとは、音楽に人生を懸けるとは、こういうことなのだろう。バンドマンとしての貪欲な生き様を見せつけると、今度は、支えてくれる家族への想いを込めたミディアムナンバー『忘れた』を熱唱。本編ラストは、「この曲を最後にやって、ようやくtetoの始発が出るなって感じです」と、小池がアコースティックギターで『光るまち』を弾き語る。我が儘に、好きなように作っていた音楽が、ツアーを通して“ライブに来てくれるみんなの音楽”に変わっていった――そう語る彼の言葉が具現化した瞬間だった。
アンコールでは、15曲入りフルアルバム『手』のリリースと全国ツアー『teto ツアー2018「結んで開いて」』の開催が発表され、待ちに待ったアルバム発表にフロアが湧く中、タイトルチューン『手』を披露。最後は、『36.4』で思う存分暴れ倒した。しかし、全曲演奏してもまだ20時前、終電の時間はまだまだ先だ。後ろ髪を引かれる想いで退場しようとしていた観客達が、小池の「おばあちゃんに飯食わせてるのがこの時間だよ!(笑)」という声に呼び戻されると、4人は興奮冷めやらぬ様子で『朝焼け』を熱演。ワンマンツアー『始発』の終幕と共に、tetoという名の『始発』は走り始めた。
リリース情報
手
2018年09月26日
UK.PROJECT
2.高層ビルと人工衛星
3.トリーバーチの靴
4.奴隷の唄
5.市の商人たち
6.洗脳教育
7.種まく人
8.散々愛燦燦
9.マーブルケイブの中へ
10.Pain Pain Pain
11.拝啓
12.溶けた銃口
13.夢見心地で
14.忘れた
15.手
セットリスト
ワンマンツアー「始発」
2018.7.22@渋谷WWW X
- 1. 拝啓
- 2. Pain Pain Pain
- 3. 高層ビルと人工衛星
- 4. 新しい風
- 5. My I My
- 6. 散々愛燦燦
- 7. トリーバーチの靴
- 8. 暖かい都会から
- 9. this is
- 10. ルサンチマン
- 11. teen age
- 12. マーブルケイブの中へ
- 13. 9月になること
- 14. 溶けた銃口
- 15. あのトワイライト
- 16. 忘れた
- 17. 光るまち 【ENCORE】
- En-1. 手
- En-2. 36.4 【ENCORE2 】
- En-3. 朝焼け
お知らせ
teto ツアー2018「結んで開いて」
09/30(日)千葉LOOK
10/03(水)北浦和KYARA
10/04(木)横浜BAYSIS
10/10(水)岡山IMAGE
10/11(木)小倉WOW!
10/13(土)熊本Django
10/14(日)長崎Studio Do!
10/16(火)京都磔磔
10/20(土)福島out line
10/21(日)盛岡Club Change
10/25(木)松本ALECX
10/27(土)新潟CLUB RIVERST
10/28(日)金沢van van V4
11/08(木)群馬SUN BURST
11/10(土)梅田CLUB QUATTRO
11/11(日)名古屋CLUB QUATTRO
11/15(木)仙台enn 2nd
11/17(土)札幌BESSIE HALL
11/29(木)高松TOONICE
12/01(土)福岡CB
12/02(日)広島4.14
12/07(金)恵比寿LIQUIDROOM
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。