SANABAGUN. 超満員のTSUTAYA O-EASTツアーファイナル
SANABAGUN. | 2018.08.10
ライブレポートによく用いられるお約束のクリシェなどではなく、まさに最高の大団円を迎えたライブの幕が閉じる直前に、岩間俊樹(MC)はこう言った。
「これからもSANABAGUNは進撃し続けますので、よろしくお願いいたします」
SANABAGUN.の未来において間違いなく語り草となる素晴らしいライブだった。文句なしの最高傑作『OCTAVE』を携えて回った全国ツアーのファイナル、超満員のオーディエンスで埋め尽くされたTSUTAYA O-EAST。既報の通り、9月1日に福岡で開催される「Sunset Live 2018」への出演をもって櫻打泰平(Key.)が脱退する。大雨による公共交通機関の規制により8月31日に開催延期となった広島公演は残されているが、現体制で回る最後のツアーのファイナルということもあり、ウェットなムードがライブに帯びてもおかしくはなかった。しかし、そこはやはりサナバである。頂点をまざまざと更新するライブを繰り広げることで、オーディエンスの胸を強く打ってみせた。思い返せば、前ベーシストの小杉隼太のラストライブもそうだった。音楽に人生を賭す粋な男たちに過度のセンチメンタルは無用だ。
ライブは『OCTAVE』のオープニングと同じく「I’m back」から威風堂々とスタートした。そのまま「Yukichi Fukuzawa」へとなだれ込む。隅垣元佐(Gt.)、澤村一平(Dr.)、谷本大河(Sax.)、髙橋紘一(Tp.)、櫻打泰平、大林亮三(Ba.)の繰り出す音が渾然一体となったリフの強度と、高岩遼(Vo.)と岩間俊樹の2MCがステージの前線に立ったときの迫力がいきなり浮き彫りになる。続く8人のメンバーがソロ回しを交えながら当たるべからざる勢いの音楽集団ぶりを誇示する「8 manz」では粘度の高いファンクネスがフロアの熱をじっくりと引き上げていく。
「板ガムーブメント」からライブは開放的な様相を呈し、「これが、SANABAGUN.だ、味わえ!」の掛け声とともに鳴らされた「L.G.M」が出色のパフォーマンスだった。ラテンジャズ調のアンサンブルをバックに高岩が有無を言わさぬダンディズムに満ちたスキャットとスキットを紡ぎ、ハードに咆哮する岩間のラップが響き渡る。ホーンセクションを軸に性急なジャズグルーヴを転がしていく「Be-Bop」の極めてシュールなのに芯を食ってるようにも思えるリリックもそうだが、触れる者すべてが気圧されると同時に虜になるような──緊張と緩和を絶妙なさじ加減で駆使する──音楽力と存在感こそが、サナバの真骨頂である。
「Rainy Day」~「雨香」の流れでは岩間のリリシズムに富んだラップがメロウに刻まれていき、彼が「みんなの日常の中に少しでもSANABAGUN.の音楽がありますように」と口にして始まった「SFT」で会場を包み込んだ本質的な意味でソウルフルな高岩の歌は実に感動的だった。そして、サナバの首謀者として今このタイミングであらためて腹を括ったことを示すような高岩のステージングはここからが圧倒的だった。彼が緩急自在のフロウでアカペラのラップをかましてから始まった「Black Diamond」の演奏中には幾度となくフロアへダイブし、その無鉄砲なアクションに触発されたオーディエンスのテンションも熱狂的なものになっていく。あまつさえ「三種の神器」では特効演出を実施しエンターテイメント性も高めていく。正直、O-EASTのステージがとても小さく感じた。
その後、岩間には完全に内緒でセットリストに「大渋滞」を挟み込むという場面も。メンバーが仕掛けたスリリングな罠にもキッチリ対応する岩間も見事だった。
本編がクライマックスを迎えようとする前に高岩がMCで述べたある曲の導入がまた粋だった。今から5年前。池袋のデニーズに集ったメンバー。一晩かけて考えたバンド名。破ったルーズリーフに初めて“SANABAGUN.”と書いた日のこと。
「あれからいろいろありまして、5年とちょっと経ちました。出会いはまるで奇跡のようにメンバーが一人増え、一人増え、一人辞め──今日このステージに立って僕は思いましたね。あれ? SANABAGUN.、あのときのデニーズから考えると一歩一歩前進してるんじゃないかなって。それは、どれもこれもみなさんのおかげです、ありがとう。僕らは福岡から東京まで24時間かけてたどり着きました。ハイウェイに乗ったと思ったら、土砂崩れで交通規制。下道に行ったと思ったら、大渋滞でStuck IN Traffic。それはまるでSANABAGUN.のようだなと思いました。今日、僕はセットリストにはないけども、メンバーにも言っていないけども、その曲をやってSANABAGUN.の未来に賭けたいと思います。SANABAGUN.の未来に期待してくれている第一の男、櫻打泰平が“大渋滞”とこの“Stuck IN Traffic (jam)”をリクエストしてくれたんです」
そして始まった「Stuck IN Traffic (jam)」。かつて渋谷のストリートで熟成させたサナバ流のフリージャズを、渋谷で一番デカいライブハウスで体現したのだ。本編ラストの「FLASH」は、東京だけのスペシャルバージョンとして音源と同じくゲストコーラスに大坂朋子、Nao Kawamura、AAAMYYを迎えて披露した。そのパフォーマンスに「FLASH」がサナバの新たなキラーチューンとして息づいていることを思い知る。
アンコールはまず櫻打が一人でステージに登場。流麗で凛としたピアノソロを弾くと、高岩と岩間も現れる。ステージには3人。岩間が口を開く。
「今日は『OCTAVE』に収録した曲を全曲歌う予定で、あと1曲だけ歌っていない曲があります。それをこの3人でやろうかなと思います。自分にとっても大切な曲で、思い入れのあるリリックです」
そう言うと岩間はなんとも彼らしいメッセージを櫻打に送った。3人で奏でたのは「As time goes by」。袂を分かった者へ惜別の思いを捧げる歌だ。
一転して、櫻打が生で「シャタファカみなさんの」のピアノリフを弾くと、フロアから大歓声が上がる。そこから8人のマイクリレーへ。7人のメンバー一人ひとりがヴァースを回しながら櫻打と抱擁し、あるいは握手を交わす。さらに「人間」へと繋ぎ、最後の最後は路上時代から客を引きつけてきた「まずは「墓」。」を響かせた。
ここからまたサナバの新章が始まる。もっともっと大きなステージが、彼らのことを待っている。
【取材・文:三宅正一】
【撮影:小見山峻】
リリース情報
OCTAVE
2018年04月25日
ビクターエンタテインメント
2. 8 manz
3. L.G.M
4. Rainy day
5. 雨香
6. P・A・N・T・I・E
7. skit-1
8. Yukichi Fukuzawa
9. As time goes by
10. 三種の神器
11. Black Diamond
12. F-BOY
13. We in the street
14. skit-2
15. SFT
16. FLASH
セットリスト
SANABAGUN. TOUR OCTAVE
2018.7.13@渋谷 TSUTAYA O-EAST
- 01. I’m back
- 02. Yukichi Fukuzawa
- 03. 8 manz
- 04. 板ガムーブメント
- 05. L.G.M
- 06. Be-Bop
- 07. Rainy Day
- 08. 雨香
- 09. skit-2
- 10. SFT
- 11. Black Diamond
- 12. 三種の神器
- 13. 大渋滞
- 14. デパ地下
- 15. F-BOY
- 16. P・A・N・T・I・E
- 17. We in the street
- 18. Stuck IN Traffic (jam)
- 19. FLASH Enc-1
- 20. As time goes by
- 21. シャタファカみなさん
- 22. 人間 Enc-2
- 23. マイアミ
- 24. まずは「墓」。
お知らせ
SANABAGUN.夏祭り!2018
08/26(日)下北沢ケージ・ロンヴァクアン
TOUR OCTAVE 広島 (振替公演)
08/31(金)広島CLUB QUATTRO
26th Sunset Live 2018 -Love & Unity-
09/01(土)芥屋海水浴場・キャンプ場 特設ステージ
09/02(日)芥屋海水浴場・キャンプ場 特設ステージ
PACIFIC BEACH FESTIVAL
09/15(土)神奈川県茅ヶ崎市 サザンビーチ特設会場
RIPPLES vol.2 ~1990-199X~
10/11(木)恵比寿 LIQUIDROOM
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。