PELICAN FANCLUB、新体制初の全国ワンマンツアーでKi/oon Musicからメジャーデビューを発表!
PELICAN FANCLUB | 2018.08.13
決して立ち止まらずに音を鳴らし続ける――そう心に決めたPELICAN FANCLUBは、いままで以上に強くなっていた。今年4月、ギタリストのクルマダヤスフミ脱退後、新体制初の全国ワンマンツアー「TOUR 2018"PARALYZE PARADISE"」を開催したPELICAN FANCLUB。ツアーファイナルとなった渋谷WWW Xのステージには、カミヤマ リョウタツ(Ba)、エンドウ アンリ(Gt/Vo)、シミズ ヒロフミ(Dr)の3人だけでステージに立っていた。音源の再現性を求めるならば、サポートメンバーを入れるという選択もあったと思う。だが、その道を選ばず、これまでの楽曲を、スリーピースで演奏できるかたちへと変えてライブに臨んだ彼らの姿は、ロックバンドとしてのソリッドな一面が一層浮き彫りになると同時に、この先、どんなことがあっても3人で転がり続けるという強い結束力を感じるものだった。
アンコールでは、PELICAN FANCLUBが秋にKi/oon Musicからメジャーデビューすることを発表。数あるメジャーレコード会社のなかでも、Ki/oon Musicからデビューすることが夢だったと語る彼らは、インディーズとしては最後になるであろうこの日のワンマンで、結成から6年にわたり真っ直ぐに音楽と向き合ってきた「これまで」を経て、さらなる高みへと向かう「これから」に大きな可能性を感じるライブを見せてくれた。
会場に入ると、スクリーンには目から光線のようなものが放射するシュールな映像が映し出されていた。現代アートにも造詣が深い彼ららしい演出。開演時間――。ステージに姿を現したメンバーは、下手から、ベース・カミヤマ、ボーカル・エンドウ、 いちばん上手にドラム・シミズが1列でフロントに並ぶという変則的なスタイルだった。シミズが豪快にハイハットを打ち鳴らし、会場の静寂を打ち破る「深呼吸」を皮切りに、疾走感溢れるバンドサウンドがライブのはじまりを高らかに宣言する。野性的なドラムのリズムが軽やかなハンドクラップを巻き起こした「Dali」のあと、ダークなサウンドに怒りや混乱といった負の感情をのせた「Black Beauty」でエンドウのシャウトが炸裂、カミヤマが弾く骨太なベースラインが怪しげに躍動する「許されない冗談」へ。PELICAN FANCLUBのライブでは、狂気的なロックナンバーと、穏やかなポップソングとを自由奔放に行き来していく。
ダークな曲調を畳みかけたライブ序盤から一転して、花のように咲いた光の模様がフロアを優しく照らした「Chilico」、ポップに弾む初期のデモ音源「Telepath Telepath」へと、中盤は朗らかで明るい曲調が続いた。そんな流れのなかで、特にフレッシュで清涼感のある青春っぽさが印象的だったのが「クラヴィコードを弾く人」と「1992」。2013年にリリースされた1stミニアルバム『ANALOG』の収録曲だ。早耳のリスナーに彼らの登場を印象づけた『ANALOG』のころ、PELICAN FANCLUBのサウンドの特徴はネオアコやネオサイケというジャンルで語られていた。そこから、「プラモデル」や「Dali」などを収録したセルフタイトルの2ndミニアルバム『PELICAN FANCLUB』では、シューゲイザーへと傾倒、さらに「記憶について」や「M.U.T.E」に象徴される『OK BALLADE』では空間系のエフェクトをほとんど使わず、肉体的なロックへと進んでゆく。良い意味で気まぐれに、その時々で自分たちが好きなアーティストのテイストを貪欲に取り入れながら楽曲を作り続けてきたPELICAN FANCLUBのライブだからこそ、結果的に、ライブでの楽曲の振り幅が大きくなる。それは、ともすれば「掴みどころがない」と揶揄されがちかもしれない。だが、何にも囚われず、永遠に「ロック少年」の心を失わないまま、ひたすら夢想するような奔放さこそがPELICAN FANCLUBの武器であり、彼らの音楽にはジャンルの垣根を越えて、オルタナティブな感性で磨き上げられた独特の美しさだけが貫かれている。
本編はほぼMCはなし。11曲を終えたところで、「暑いなか来てくれてありがとう。涼しくなるように夜の曲を」とだけ紹介したのは、「夜の高速」だった。テンポこそ速くはないが、夜の高速道路をひたすら走り抜ける景色――ネオンの光が1本の長い線になり、センターラインが一定のリズムでビュンビュンと視界の後ろに逃げてゆくような単調でエクサイティングな景色――が目に浮かぶような、ペリカンらしい楽曲だ。そして、エンドウが「新曲を2曲続けて」と伝えると、矢継ぎ早に言葉を捲し立てて、荒々しく衝動を叩きつける新曲を初披露された。6月にライブ会場限定でリリースしたばかりの「ガガ」では、90年代グランジを彷彿とさせる不穏なサウンドにのせて、内包するエネルギーを爆発させる。前述のとおり、気ままに好きな音楽を貪るPELICAN FANCLUBの「いま」のモードというのは、どこか歪で激しいロックサウンドへと向いている、ということだろう。
ミラーボールの美しい光が会場の雰囲気をガラリと変えた軽やかなナンバー「Luna Lunatic」と「Night Diver」から、いよいよライブは終盤に向けて、ギアを一段階あげていった。“君が好き”という気持ちを、《もし明日もう1つ地球が出来たなら》という空想好きの青年らしいSFファンタジーと楽しい言葉遊びで描いた「ダダガー・ダンダント」のあと、エンドウは「楽しい……楽しくて震えるぜ(笑)」と呟くように言った。そして、最後に「素敵で無敵なみなさんと僕らの未来へ、また会いましょう」という言葉を添えると、ラストナンバーとして「朝の次へ」を届けた。大らかに刻む、スケール感のあるリズムのなかで、ウォーウォーと巻き起こる多幸感に満ちたシンガロング。穏やかな太陽の光に包まれて、過不足のない幸せを噛み締めるような爽やかな朝の歌が、ポジティブな余韻を残してくれた。
アンコールでは、本編の「Telepath Telepath」に続き、デモ音源からの楽曲となった「最後の青」で熱い衝動をぶつけると、エンドウが「PELICAN FANCLUBはソニーのKi/oon Musicからメジャーデビューします」と発表。集まったお客さんから悲鳴のような歓声が湧き、「おめでとうー!」という声がかけられると、「嬉しいです、本当に」と、メンバーは表情をほころばせた。本編はほとんどMCなしで音楽に没頭した彼らだったが、アンコールでは時間をかけて、エンドウの目線でこれまでの歩みを語った。10歳に頃にバンドに出会ったこと、カミヤマと「いつかメジャーデビューしたい」と話していたこと、大学卒業後にシミズが加入したことでバンドとしてのピースがピッタリとハマったのを感じたこと。それらを興奮気味に伝えると、カミヤマは「PELICAN FANCLUB、革命を起こしていきます!」と宣言。エンドウも、「お互い目に見えるものを信じて!」と、その次に歌う楽曲の歌詞を引き合いに出して、バンドのこれからに想いを馳せると、ラストナンバー「記憶について」では、全身を大きく揺さぶるエモーショナルな演奏でライブは幕を閉じた。
メジャーデビュー直後となる11月からは全国9都市をまわるツアーを開催するPELICAN FANCLUB。ファイナルは渋谷CLUB QUATTRO。
いよいよメジャーデビューを果たすPELICAN FANCLUBだが、これからも彼らには、自分たちが本当に大好きな音楽と、自分にとって大事なものをしっかりと胸に抱き締めて、これまでと同じように素敵な音楽を届け続けてくれることを願っている。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:伊藤惇】
リリース情報
ガガ
2018年06月30日
会場限定販売
セットリスト
全国ワンマンツアー
「TOUR 2018"PARALYZE PARADISE"」
2018.7.20@渋谷WWW X
- 1.深呼吸
- 2.Dali
- 3.M.U.T.E
- 4.Black Beauty
- 5.許されない冗談
- 6.プラモデル
- 7.Chilico
- 8.Teleapth Telepath
- 9.Police City
- 10.クラヴィコードを弾く婦人
- 11.1992
- 12.夜の高速
- 13.新曲1
- 14.新曲2
- 15.ガガ
- 16.Luna Lunatic
- 17.Night Diver
- 18.ダダガー・ダンダント
- 19.朝の次へ 【ENCORE】
- En-1.最後の青
- En-2.記憶について
お知らせ
サウンドクリエーター特別興行
「サンクリ夏休み!2018」
08/16(木)なんばハッチ
テスラは泣かない。「偶然とか運命とか」
Release Tour 【10周年とかツアーとか】
08/23(木)長野ALEX
RADIO BERRY ベリテンライブ 2018 〜HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2〜
08/27(月)HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
GREAT TRIANGLE TOUR 2018
09/04(火)愛知UPSET
09/06(木)大阪JANUS
09/07(金)広島4.14
09/09(日)福岡CB
09/12(水)宮城enn 2nd
09/13(木)SHIBUYA WWW
TOKYO CALLING 2018
09/17(月)SHIBUYA WWW
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。