Hilcrhyme 約9か月ぶりのステージに、たったひとりで挑んだ始動ライブ
Hilcrhyme | 2018.09.11
ステージの中央に立ったTOCが右手を高々と差し上げ、“Hilcrhyme, comeback!!”と叫び、コンサートが始まった。
Hilcrhymeとしては約9ヶ月ぶり、TOCひとりの新体制となってからは初めてとなるコンサートが、9月2日に日比谷野外大音楽堂で開かれた。朝から降り続いていた雨も、開演前には上がった。ステージ後方には、Hilcrhymeのロゴがデザインされた黒い横断幕が張ってあったが、コンサートが始まった瞬間にその横断幕が外されると、世界で活躍する墨絵画家の西元佑貴の手による、TOCと守護龍神とを描いた巨大な水墨画が現われた。Hilcrhymeにパワーを送っているかのような、カッコいいアートだ。コンサート・タイトルどおり、ステージにはTOCひとりだけ。バンドもいないし、DJブースもないし、ステージ・セットもない。ステージを囲むようにセッティングされた照明と、後方にポツンとドリンク用のテーブルが置いてあるだけだ。他には何もない。そして会場に流されるトラックをバックに、「トラヴェルマシン」と「RIDERS HIGH」というアップ・テンポのナンバーのメドレーからこの日のコンサートは始まり、Hilcrhymeの復活を長い間待ちわびていてファンたちも、それに呼応するように盛り上がっていく。
2曲が終わり「もう、何から喋っていいかわからない。……まず自己紹介します。MC TOC。Hilcrhymeです。今日は、絶対に特別なライブになるから」とTOCが語る。その声からは、やや緊張も感じられたが、続く「パーソナル COLOR」「ジグソーパズル」といった人気曲をみんなと一緒に歌い、さらに「Summer Up」で会場全体でタオルを回したりするうちに、次第にその緊張感も消え、いつものHilcrhymeのライブの感覚が戻ってきた。さらに“レゲエもいいね”と「FIESTA FIRE WORK~恋の炎」、“今日が新しい日の幕開けだ”と「New Era」、“自分に誇りを持っているやつはどれくらいいる? オレは持ってるぜ”と「パラレル・ワールド」、“みんなと一緒に歌いたいな”と「My Place」、“Hilcrhymeから、みんなにエールを”と「エール」と、一言一言、丁寧にメッセージを伝えながら、ファンに歌を届けていく。「DJもいないライブは初めてだけど、全然余裕だね。やっとここに帰ってきたって感じるよ。ただいまー!!」とTOCの歌声もさらに熱をおびていく。
これまでHilcrhymeのライブでは、映像も効果的に使って、それが演出効果をより高めてきたが、今回はそれも無い。まさにパフォーマーとしてのTOCひとりに、ライブのすべてが委ねられるという、ある意味とても過酷なシチュエーションだ。だがそれをあえて選んだ彼の強い思いが伝わってくるし、まったく物足りなさを感じさせない歌声とパフォーマンスもさすがという他ない。
ここでTOCが「もっとみんなに近付こうか」と言って、ステージから客席に降り、歩いて客席中央にあるステージへ。そして360度ファンに囲まれながら「ルーズリーフ」「春夏秋冬」の2曲を、みんなと大合唱した。Hilcrhymeは決してTOCひとりだけなのではなく、ファンのみんなもひとつになったのがHilcrhymeなのだ、ということが実感できた瞬間だった。
そしてTOCが再びメイン・ステージに戻り、「ここで、やっぱり皆さんにお詫びをしなきゃいけないと思う」と言って、昨年末の活動休止から、ファンに心配をかけ、不安にさせたことを詫び、深々と頭を下げた。そして「今日から、Hilcrhymeを始動させていただきます。これからは、自分の人生のすべてをかけてHilcrhymeを全うしたい、みんなにグッド・ニュースを届け続けたいと思っています。約束します」と熱く語り、再始動のニュー・EP『One Man』からの新曲「アタリマエ」が、じっくりと、その歌詞を噛みしめるかのように歌われた。その後も、“みんなの笑顔が見たい”と「Your Smile」、“愛を歌うぞ!”と「想送歌」、“大事なことは2回言う。今メッチャ気に入ってる曲”と新曲「愛更新」、“1と0と9”という大合唱が会場全体を包み込んだ「No.109」と、TOCとファンがひとつになって、Hilcrhymeのライブを作り上げていく。
だがHilcrhymeの魅力はこれだけではない。TOCのラップが畳みかけていく、メッセージ性の強いハードな楽曲も、Hilcrhymeのもうひとつの表情だ。そこで「押韻見聞録」「続・押韻見聞録 -未踏-」でTOCのラップが炸裂する。こういった激しい一面もしっかりと表現するというところも、やっぱりHilcrhymeらしい。
そして「オレはHilcrhymeと、みんなの日常を、必ず元に戻します」とTOCが宣言して「Side By Side」が歌われ、その後TOCがステージに座り、「この9ヶ月間、たくさん泣きました。でも涙の数だけ、花を咲かそうと思います。Hilcrhymeがみんなの居場所になれるように。いちばん思い入れのある歌です」と「涙の種、幸せの花」を高らかに歌い、本編は終了した。
そしてアンコール。「ここだけ、ステージを私物化させてください。今、このステージにいないバカ野郎のために歌いたいと思います」と、袂を分かった友に捧げた新曲「Good Luck」を切々と歌い上げた。この時だけ、会場がシーンと静まりかえり、観客もじっくりと聴き入っていた。そして“花は2度咲くんだよ”と「FLOWER BLOOM」、“来年、メジャー・デビュー10周年を迎えます。だから原点に戻ったつもりで。これからもHilcrhymeは、愛を歌うから”とメジャー・デビュー曲「純也と真菜実」が歌われた。さらにTOCが「今日わかった。全然1人じゃなかったわ。ありがとう、みんな。この一言が伝えたかった。Hilcrhyme, comeback!!」と叫び、ラスト・ナンバーとして選ばれたのは「大丈夫」。そう、Hilcrhymeも、ファンのみんなも、きっと大丈夫なんだと確認するかのように、みんなで歌い、この日のコンサートは幕を閉じた。なんと最後の曲が終わった瞬間に雨が降り出すという、ちょっとしたミラクルも起こった。
TOCの、Hilcrhymeをこれからも続けていくんだ、という強い意志と覚悟のようなものが感じられた、魂が込められたコンサートだった。これが、彼の“責任”の取り方なのだろう。またこの日、来年2月から全国ツアーが始まることもアナウンスされた。そう、Hilcrhymeは再び走り出した。ここからHilcrhymeの新たなる歴史が始まるのだ。
【取材・文:熊谷美広】
【撮影:高宮紀徹(67531graphics)】
リリース情報
One Man
2018年07月04日
ユニバーサルミュージック
2.Good Luck
3.愛更新
4.ルーズリーフ <Remake>
5.涙の種、幸せの花 <Remake>
セットリスト
Hilcrhyme LIVE 2018「One Man」
2018.9.2@日比谷野外大音楽堂
- 01.トラヴェルマシン
- 02.RIDERS HIGH
- 03.パーソナルCOLOR
- 04.ジグソーパズル
- 05.Summer Up
- 06.恋の炎
- 07.New Era
- 08.パラレル・ワールド
- 09.My Place
- 10.エール
- 11.ルーズリーフ
- 12.春夏秋冬
- 13.アタリマエ
- 14.Your Smile
- 15.想送歌
- 16.愛更新
- 17.No.109
- 18.臆病な狼
- 19.押韻見聞録
- 20.続・押韻見聞録-未踏-
- 21.Side By Side
- 22.涙の種、幸せの花 【ENCORE】
- EN 01.Good Luck
- EN 02.FLOWER BLOOM
- EN 03.純也と真菜実
- EN 04.大丈夫
お知らせ
TOC生誕祭 2018
10/04(木)恵比寿LIQUIDROOM
Hilcrhyme Official FC 4Seasons “桃源郷”Tour 2018<TALK&LIVE>
11/04(日)umeda TRAD
11/17(土)名古屋SPADE BOX
11/24(土)新宿ReNY
11/25(日)スカラエスパシオ
12/02(日)新潟LOTS
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。