今年の夏も多くのフェスに参加し、各地で勢いのあるパフォーマンスを見せつけてきたTHE ORAL CIGARETTES。そんな彼らが6月にリリースしたアルバム『Kisses and Kills』を掲げ、9月18日のZepp Tokyoを皮切りにライブハウスツアー『Kisses and Kills Tour 2018 Live house series ～Directly to various places～』をスタートさせた。当日はあいにくの雨模様だったが、会場周辺にはおびただしい数のファンが集結。熱気と期待感で初日らしい盛り上がりを見せていた。

　開演時間になり、メンバーがステージに姿を見せると、観客のエネルギーが一気に爆発！　瞬時にしてハイテンションのうねりがうまれる。この空気を楽しむように、山中拓也（Vo）、鈴木重伸（Gt）、あきらかにあきら（Ba）、そして中西雅哉（Dr）もいい表情でフロアを眺めていた。

　本編は『Kisses and Kills』を象徴するような内容で、ここ最近バンドが挑戦し続けている二面性が打ち出されたもの。彼らを長く見てきたファンならわかると思うが、オーラルは“負”の感情を起爆剤にしてきたバンドだと思う。キャッチーなサビをフィーチャーしながら、ヒネリが効いた湿り気のあるポップさとハードさが持ち味――そういうイメージがあった。それが前作『UNOFFICIAL』あたりから、吹っ切れたように広がりのある曲も打ち出すようになったのである。
　この新たな可能性、新たな魅力を、メンバーはこのところのライブでどんどん咀嚼し、このツアーではさらに表現の方法が進化するはずだ。

　さて、ライブに話を戻すと1曲目からフロアはジャンプで応戦し、とてつもなくアグレッシヴなノリが展開する。
　アルバム曲の「もういいかい？」「What you want」「容姿端麗な嘘」などは、観客との息もピッタリ！　初日とは思えない完成度だ（メンバーからしたら、まだまだなのかもしれないが）。

　ダークネスな一面を表現した「PSYCHOPATH」や「Ladies and Gentlemen」では、オーラルらしさ全開で押しまくってくれる。楽しみなのは、合間にはさんでくるなじみ深いレパートリー。新しい曲にまざることで、さらにパワーアップしつつあるのも聴きどころだ。
　今回のライブでバンドの二面性がどう表現されているのかは、まだライブ未体験の人もいると思うので詳細は控えるが、“そうきたか”とニヤリとするのは間違いない。もちろん、メンバーはいつも通り体全体で楽しんでいる……ということは付け加えておこう。MCでは拓也の“最初の頃は東京でのライブが苦手だった”という告白もあったが、どうやら今は楽しくてしょうがないようだ。そんなはじけた思いは観客にも伝染。曲によってはダイバーも発生し、拓也もフロアに身を乗り出して応戦。ライブハウスならではの光景が広がる。

　来年にはこのライブハウスツアーの延長として、アリーナツアー『Kisses and Kills Tour 2018-2019 Arena series ～Directly In a wide place～』（ファイナルは3月17日の横浜アリーナ）も決定しているが、初日でこのパワーなら、ファイナルはどうなってしまうのだろうか。グイグイと能力を開放しつつある彼らだけに楽しみだ。ちなみに、バンドがアリーナ公演に意欲を見せるのも、言ってみれば二面性のひとつだと思う。つまり、アリーナ会場でしかできないライブもあれば、ライブハウスでしか出せない空気もある。今のオーラルは、いずれの見せ方もしっかりと理解しているようだ。

　まだまだ先の長いツアーだが、チャンスがあれば、ぜひどこかで彼らのライブを体験して欲しい。成長期真っ只中にあるバンドの面白さを目撃する貴重な機会になるはずだ。

【取材・文：海江敦士】
【撮影：Viola Kam (V’z Twinkle)】