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テスラは泣かない。10周年の集大成となるバンド史上最多の全国ツアーファイナルをレポート!

テスラは泣かない。 | 2018.09.28

 「基石」「軌跡」「奇跡」「帰籍」…。シーン毎に異なる意味を持つ「きせき」という言葉たちが、めくるめく浮かんできた一夜であった。

 今年結成10周年を迎えたテスラは泣かない。が、今春発売したニューアルバム『偶然とか運命とか』と共に回った自身最多数の全国ツアー『10周年とかツアーとか』を無事完遂させた。間に夏フェスを挟み、夏中をかけて行われた同ツアーは、各地で所縁のあるバンドたちをゲストに迎え敢行。彼らの地元・鹿児島はSRホールと、ツアーファイナルとなるこの渋谷WWWのみワンマン・スタイルにて行われた。

 この日のライブは、最新アルバム『偶然とか運命とか』からの楽曲が軸となり、しかも収録全曲がしっかりと「ライブならではの新鮮味」や「作品とはまた違ったライブならではのテイスト」を交えてプレイされた。とは言え、初期からの曲を始め、各時代の代表曲といえる楽曲たちも満遍なく交えられ展開された、この日。そこでは確かに彼らの歴史の縮図は味わえたものの、それらからも多分に「これからさ」が感じられたのも興味深い。

 ニューアルバムのトップを飾っていた「万華鏡のようだ」のイントロ~サビの部分がインストとして登場SEとなり場内に響き渡る。それに乗り、躍り出るように、まずは吉牟田直和(B)、實吉祐一(Dr)、飯野桃子(Pf&Cho)の3人がステージに現れる。少し間を置き、村上 学(Vo&G)も登場。村上がギターを持つと、そのままそのSEをバンドアレンジへと化させていく。躍動感とエレガントさ、独特の雰囲気を持ったボーカルメロディといった彼らのカレイドスコープさが、一瞬で場内にぶわっと広がっていく。夢の中へと誘うように放たれた同曲が場内をマジカルな世界へと誘っていく。「最後まで楽しんでいきましょう! よろしく!」と村上が場内に向けて短く挨拶。間髪置かず、飯野の鍵盤の印象的なフレーズのリフレインを呼び声に、さらに深部へと惹き込むように中期の人気曲「Oh my God!」へ。サビでは「待ってました!」と無数の手が至福感とともに天に向け掲げられる。そして吉牟田のベースがリードする中、村上のボーカルが乗り、飯野との二声から初期の楽曲「cold girl lost fiction」にインすると、これまたライブならではのアレンジで現在の彼らを感じさせてくれた。この辺りでは、かつての曲ながら、今の自分たちだからこそのニュアンスやエッセンス、そして表現力を注入。相変わらずラストに向かう際の高揚感と共に、各曲の“最も伝えたかった部分”が浮き彫りにされた。

 序盤は新旧の縮図を見せてくれた彼ら。中盤に向けては、「貴石」とも例えられる、ニューアルバムから曲たちが立て続けに場内に放たれていく。村上がマイクスタンドを持ち歌うシーンも白眉だった「REAL」、「記録的な暑さを記録した、この夏を一緒に締めくくりましょう。これからまだまだやるので、今日はかっ飛ばしていくから」とのMCを経て、それを立証するように、「輝石」な曲が連射された。サビのストレートさと上昇感が快感を呼び込んだ「ダーウィン」が場内を駆け抜ければ、彼らお得意の変態変拍子が炸裂した「変なワルツ」では、魅力であった村上と飯野のボーカルのリレーションも堪能することができた。また、「正論」でも、ドラムの實吉がつなぎ、そこに吉牟田のベースが躍動感を加え、エレガントな飯野のピアノ音とツインボーカル性という彼らの真骨頂が炸裂。飯野もキーボード・ソロで魅せ場を生み出していく。

 「結成から10年経っておしゃれな曲もできた」(村上)と語り入った、アダルティでおしゃれなミディアムな「マグノイア」では、作品以上のアンニュイさが場内に染み込んでいく。また同曲では間にジャジーさも交え、こちらもライブならではさを楽しませてくれた。そして、これもライブならではの攻めを見せた、村上、飯野の男女ツインボーカル性が特性の「大人の秘密」でも、作品以上の上手い男女ボーカルの対比が育まれ、「輝石」のように目や耳を惹くものがあった。

 ニューアルバムからの楽曲ゾーンを抜けると待っていたのは、彼らのここまでの「軌跡」であった。ギターと歌の感情のこもった出だしから「Lie to myself」が、もう騙されちまえよ、と煽れば、「バンド名を英語訳すると『テスラはまだ泣き方を知らない。』となり、これは母親の胎内から、赤ちゃんが新しい扉を開け、産声を響かせる、そんな意味も込めている。その頃から自分たちの曲には涙にまつわる曲が多い」と説明。このテスラとして結成し初めて鹿児島のライブハウスで歌った曲でもあった出自的ナンバー「Arc」を始める。この曲に関しては、当初から宿していた今も漂う「生死観」の源を感じることができた。と、同時に彼らがサウンドや音楽性は変化やタイプを変えながらも、根本にある姿勢やコンセプト、想いはあまり変わっておらず、むしろブレていないことに改めて気づかされた。これぞ「基石」だ。また、人気のダンスナンバー「Imagination Gap Ground」では、村上が曲途中に飯野にギターを預け、飯野もいきなりのギター初挑戦。その分、村上がハンドマイクスタイルで場内を煽り立てる。

 後半に向けては新旧の盛り上がり曲が、これでもかと言わんばかりに次々にフロアに襲い掛かってきた。飯野のモントゥーノ的な鍵盤フレーズとサビから入った「名もなきアクション」では、会場もアクション&リアクションで応答。ここではメンバー紹介&ソロ回しも交え、再び「輝石」を魅せてくれた。

 「自分たちを知ってくれたタイミングは、みんなバラバラだろうけど、こうして集まってくれてありがとう。“これだよね!”というものが根っこにあったから、こんな個性も考え方も違ったメンバーながら、ここまで続けてこられた」と村上が謝意を述べ、「心から自然と溢れ出る声がロックだと思う」の言葉に続け、ここからは会場も交えての曲たちが連射され数々の「奇跡」を目の当たりにした。 会場中の友軍たちの声と共により雄々しく響いた「アテネ」、その火に油を注ぐように、この日最大の盛り上がりを魅せた「アンダーソン」、「10周年の向こう側に一緒に行こう!」と呼びかけ飛び込んだ怒涛性溢れる「サラバ」もフロアにぐりぐりと突っ込んでいき、会場中をグイグイと惹き込んでいった。

 「今年の夏は日本中で色々な事件が起こり、自分の非力さを痛感して落ち込んだけど、今日みんなの盛り上がっている顔を見て安心した。音楽は魔法を持っている。そんな気持ちを込めて歌います」と、ニューアルバムからロッカバラード「old time blues」を披露。場内も聴き浸りながら、「自分にとっての“そんな歌って何だろう?”との思いを巡らせる。本編ラストは“テスラのロックの真髄を魅せつけん!”とばかりに「Cry Cry Cry」へ。タイトルの反面、“でも、感傷に浸って泣いてる場合じゃないだろう”と、会場の明日への活力となるべく同曲が力強く放たれた。

 アンコールは、まさに「帰籍」感あふれる曲たちが鳴らされた。「色々なものを捨てたり、失くしたりしてここまで来たけど、今日、みんなの笑顔を見て、続けてホント良かっと実感した」(村上)、「メンバーとここまで来れて嬉しい。私は大学卒業以降、テスラに就職したようなもの。11年目以降もよろしくお願いします」(飯野)と、「夜明けのうた」に。最大限の謝意を楽曲に込め、<一緒に歩いていこう><これまでありがとう。これからもよろしく><まだまだこれからも一緒に歩いて行こう>感が場内にゆっくりと広がっていく。 そして、ここで次回のツアーの告知とそこで新曲も披露することを力強く約束。会場中がその期待に湧く。そして、「これからも色々な景色を見に行きましょう!」(村上)と、最後に放たれたのは帰巣ナンバー「Like a swallow」。この日の物語を締めくくるにはピッタリの選曲だ。より浄化されるごとく尊く響いた同曲。かつてはベースの吉牟田に向けて歌われていていた感のあった曲中に出てくる「君」のフレーズも、今ではすっかりここまでついてきたお客さんに向けての呼称に変わっていた。

 まさに様々な「きせき」の場面を眼前に広げてくれた、この日のテスラは泣かない。。まだまだ、彼らの「きせき」は、これからも違った意味を帯び、異なった言葉を用いて、作品を聴く毎、ライブを観る前の自分に去来させてくれることだろう。次は、いったいどんな「きせき」という言葉や漢字を、彼らは私に思い浮かばせてくれるのだろう?作品に、ライブに、これからも彼らの「きせき」たちの誕生の場への期待は膨らんでいく。

【取材・文:池田スカオ和宏】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル テスラは泣かない。

リリース情報

偶然とか運命とか

偶然とか運命とか

2018年05月23日

mini muff records

01.万華鏡のようだ
02.ダーウィン
03.大人の秘密
04.REAL
05.マグノリア
06.アテネ
07.変なワルツ
08.正論
09.old time blues
10.夜明けのうた

セットリスト

「偶然とか運命とか」Release Tour『10周年とかツアーとか』
2018.9.9@渋谷WWW

  1. 01.万華鏡のようだ
  2. 02.Oh my God!
  3. 03.cold girl lost fiction
  4. 04.REAL
  5. 05.ダーウィン
  6. 06.変なワルツ
  7. 07.正論
  8. 08.マグノリア
  9. 09.大人の秘密
  10. 10.Lie to myself
  11. 11.Arc
  12. 12.Imagination Gap Ground
  13. 13.名もなきアクション
  14. 14.アテネ
  15. 15.アンダーソン
  16. 16.サラバ
  17. 17.old time blues
  18. 18.Cry Cry Cry
【ENCORE】
  1. En-1.夜明けのうた
  2. En-2.Like a swallow

お知らせ

■ライブ情報

テスラは泣かない。presents
【 High noble MATCH ! 】
- 10th Anniversary Year クライマックスシリーズ -

12/02(日) [大阪]LIVE SQUARE 2nd LINE
GUESTあり
12/14(金) [東京]shibuya eggman
GUESTあり



リアクション ザ ブッタ Tour2018
09/30(日) [埼玉]西川口Hearts
w/リアクション ザ ブッタ / Half time Old

THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
10/07(日) [鹿児島]桜島多目的広場&溶岩グラウンド

MINAMI WHEEL 2018 ~20th Anniversary~
10/08(月・祝) [大阪]ライブサーキットイベント

[ Ascent ] AW2018_02
10/31(水) [東京]shibuya eggman
w/集団行動 / UNIDOTS

リアクション ザ ブッタ Tour2018
11/04(日) [仙台]space zero
w/リアクション ザ ブッタ / Cloque

街人【小さなハコから唄おうツアー】
11/16(金) [神奈川]横浜F.A.D
w/街人 / Mr.ふぉるて / Maki /and more

街人【小さなハコから唄おうツアー】
11/17(土) [群馬]前橋DYVER
w/街人 / and more

街人【小さなハコから唄おうツアー】
11/19(月) [千葉]千葉LOOK
w/ 街人 / OCEANS / ユレニワ

eyedentity pre.
『NEW GATE Ⅵ』~THE LAST~

11/24(土) [静岡]静岡UMBER
w/街人 / 灰色ロジック / DETOX / mabuta / todo

the quiet room presents《 New Flag Fes’18 》
11/25(日) [茨城]水戸LIGHT HOUSE / club SONIC mito / +1会場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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