新生the quiet room、原点を再確認した下北沢MOSAiCワンマン公演で新曲披露
the quiet room | 2018.10.03
この3人体制での新生the quiet roomとして挑む初ライブ、それをあえて、かつての東京でのホームグラウンドで、厳選されたお客さんの前で行う。それらから伺うに、正直、ここからまた一から始める感溢れる、もっと新生感に満ちた、リスタート性のあるライブを想像し会場に赴いた。しかし、結果は違っていた。停っていたくないとの思い、みんなを離したくない/少しでも離れたくない、いま自分たちも自覚している、この勢いや風、雰囲気や空気を逃したくない/失いたくない。それらの想いを詰め込み、まだ形が整い切れていないまま、あえて気持ち優先で走り出した彼ら。この日は、逆に良い意味で、これまでの延長線上を感じさせてくれる、実に彼ららしい、そして現在の彼らならではのライブを観ること出来た。
ドラマーだったコビキユウジの卒業後、初の新体制ライブ「the quiet room presents【Road movie vol.09】」が行われた。会場は下北沢MOSAiC。彼らが当初、東京でのライブの拠点としていた場所だ。初の自主企画ながらも、あえてワンマンにて行われた、この日。自分たちにも言い聞かせるように歌い、鳴らしていた感のある楽曲の数々が、まるで自身のアイデンティティの誇示や所信表明、そして厳選された者たちとの力強いアライアンスとして見事に可視化されたかのような一夜でもあった。
まずは、斉藤弦(G&Cho)、前田翔平(B)そして、サポートドラムの高浦充考の3人が先にステージに現れ、間を空け、菊池遼(Vo&G)も登場する。ドラムの前で4人が円陣を組み、各フォーメーションへ。ギターによる軽いフィードバック音の中、1曲目の「Prism」が現れた。先日のコビキの卒業ライブの本編の最後に飾った曲にして、ニューアルバムの1発目を飾っていた同曲からの走り出しに、まさにこのシチュエーションにぴったりのオープニングを感じた。疾走感のある同曲が早くもライブを走り出させていく。高浦もタイトなリズムを送り出し、スタートから好感触を得たのだろう。サビに入る前に菊地が力強く誇らしく腕を天に突き上げる。ラストに向けパッと広がっていく同曲が、彼らのこれからの前途を明るく照らしているかのようにも映った。
「俺たちがthe quiet roomだ!」と菊地が誇示するかのように頼もしくシャウト。そのままノンストップで「Fressy」に入ると、がらりと雰囲気が変わり、ポップなナンバーが会場に楽しさと軽さを運んでくる。斉藤もパラレルなフレーズをまるで泳がせるかのようにプレイ。前田のベースが躍動感を加え、歌われる大丈夫、きっと大丈夫が、ことさら信憑性を帯びていく。「みんなで歌いたい曲があります」(菊地)と入った「グラフィティ」ではつっこみ気味の四つ打ちが前進感と上昇感を寄与。ここではギターの斉藤のギターソロも炸裂し、間にはフロアタムでどっしりしたところも交え、彼らの幅を楽しませてくれる。
「色々な人たちの助けがあって新体制一発目を迎えられ、コビキが卒業してもこうして止まらずに、みなさんに新しい僕らを届けることが出来ました。今日は特別な日にして帰ってもらえたら嬉しいです」と菊地。「止まらないと決めた覚悟の曲です」(菊地)と続け、最新アルバムから「東京」が贈られる。宿した秘めたエモさが溢れる決意と覚悟が込められた曲だ。雄々しいコーラスとステージに向けられたフロアからの力強いコブシたちが、まるでガッチリと交わされた握手にも似た美しさを魅せる。続く「Vertigo」では、スリリングさが会場に呼び込まれ、不穏感が場内を支配していく。前田もスラップを交えその不穏感を掻き立てれば、それらをもっと募らせるように斉藤のギターソロが続く。それらを抜けた先のサビでの会場からの呼応が、天上からの蜘蛛の糸のように会場を救い出していく。また、会場に「力を貸してください」とフロア/ステージ交えて楽曲を完成させていった「Fanfare」では、《何度でも何度でも。君が望む方へ行こうぜ》のリリックがことのほか胸に刺さる。ミディアムアレンジの歌とギターの小曲「灯りをともして」を経て、おなじみの足音のSEを挟み「Cattleya」へ。ミディアムでウェットさを擁した同曲が、歌われる《隠した気持ちは忘れたふりをしてごまかした》《何度だって君に話したい》の想いと共に、会場中に染み込むように広がっていく。
ここでのMCは当初のホームだったこの場所でのワンマンを行うことについて、サポートドラムの高浦が短い準備期間にも関わらずキチンと全曲憶えて叩いてくれていることへの感謝、発表から短期間にも関わらず集まってくれたお客さんに向けての感謝の言葉たちが告げられる。
ここからは後半戦。まずはポップな「Number」が会場をパッと明るく照らした。サビでは会場中からも自然と手が上がり、《離さないで》《君がいるだけでいい。君といると落ち着くんだよな》等のフレーズがぐっとステージとフロアを近ずける。また、同曲では、「ギターヒーロー!」と菊地に呼び込まれ、斉藤が景色感溢れるギターソロをキメたのも印象深い。本編最後は会場も一緒に踊ろうぜと「Instant Girl」へ。アッパーでつっこみ気味のビートに会場も前傾姿勢。グイグイと惹き込まれでいく。途中、「ホント最高!」と菊池。この一言こそ、フロアの絶景を見た際、思わず口から出た彼の心の声だったに違いない。「俺たちは全然大丈夫だから、またライブハウスで一緒にライブしようぜ」との菊地の言葉を残し、彼らは一旦ステージを降りた。
アンコールでは、まずは菊地の口から、自前ではなく前田のスマホを使い(笑)、自身主催の地元・茨城で行うサーキットフェス「New Flag Fes’18」の第一弾アーティストの報告を行う。そこから「新体制一発目なので新曲を」と完成したばかりの新曲を披露。視界は良好、今までのことも笑って許して、退屈なんてこと今は言わないで等のフレーズも印象的。ちょっとした幸せ感があるポップソングのように響いた。そしてラストは、「僕たちを東京に連れて来てくれた曲です」と告げ、改めての所信表明のように、始まりの曲であり、決意の曲でもある「Hello Hello Hello」を会場に放った。これからの自身の新しい船出の背中を強く押すかのような同曲。「幸せは伝染するもの。これからも俺たちはその幸せを伝染させていく。まだまだ探している途中だから、その手を離さないでいて」と会場と誓う。その際のフロアからの力強い呼応は、「こちらこそ今後ともよろしく」と言ってるようにも感じられた。
「この日を迎えるまで、正直、不安もあった」とライブ中のMCで語った菊地。ぶっちゃけ、もっと盤石な体制での華々しい復活劇の方法論もあったろう。そんな中、あえて彼らがこの方法を選んだのは、彼らにとっても、今は不恰好かもしれないし、中途半端に映るかもしれない。でも、せっかくだったらここから自分たちがどう変化していくのか? 一緒に見届けて欲しい、そんな思いを交えてのことだったようにも感じられた。いかにも器用になり切れない彼ららしい選択肢だ。彼らはまたここから始める。この停まらなかった先に、結果、何が待っていたのか? その先を思い浮かべながら、その答え合わせも含め、今後も彼らと一緒に歩いていきたいと強く思った。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:中山優司】
リリース情報
色づく日々より愛を込めて
2018年07月04日
mini muff records
2.グラフィティ
3.シュガータイム
4.Landscape
5.ハイライト
6.海辺の街へ
7.夢で会えたら
8.東京
セットリスト
the quiet room presents
『Road movie vol.09』
2018.9.21@下北沢MOSAiC
- 1.Prism
- 2.Fressy
- 3.グラフィティ
- 4.東京
- 5,Vertigo
- 6.Fanfare
- 7.灯かりをともして
- 8.Cattleya
- 9.Number
- 10.Instant Girl 【ENCORE】
- En-1.新曲
- En-2.Hello Hello Hello
お知らせ
The Music Draws The Life Vol.59
10/2(火)東京・shibuya eggman
MINAMI WHEEL 2018 〜20th Anniversary〜
10/7(月・祝)大阪・ライブサーキットイベント
ハンブレッダーズ presents.
「秋のグーパン祭り東京編」
10/7(日)東京・下北沢SHELTER
Lenny code fiction LIVE TOUR 2018-2019
10/19(金)仙台enn 2nd
10/20(土)秋田LIVE SPOT2000
灯火祭2018
10/27(土)群馬県・高崎ライブサーキット
マカロニえんぴつ
【マカロックツアーvol.6〜甘すぎた青春の忘レモン篇〜】
10/27(土)宇都宮HELLO DOLLY
alcott presents.
「BUTA FES 2018」
11/23(金・祝)神戸5会場サーキット
the quiet room presents
《 New Flag Fes’18 》
2018.11.25(日)
水戸LIGHT HOUSE / club SONIC mito / +1会場
JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2018 WINTER
12/9(日) 東京・渋谷ライブサーキットイベント
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。