Anly ライブアーティストとしての進化を明確に示したツアーファイナル
Anly | 2018.10.23
8月31日の新宿LOFTを皮切りに全国各地をまわったAnlyのツアー「Anly“LOOP”Around the World~Track1~」。9月30日の名古屋CLUB QUATTRO公演が大型の台風24号の影響で中止となり、その振替として決まった12月14日の名古屋JAMMIN’公演(ソロ)がまだ残ってはいるものの、ツアーは10月8日の渋谷CLUB QUATTRO公演をもってひとまず終了。ループペダルセット(ソロ)で15公演(12月の名古屋を含めると16公演)、バンドセットで2公演。ライブアーティストとしての著しい進化を明確に示した充実のツアーとなった。
筆者はまずツアー初日の新宿LOFTでソロ公演を観た。ひとりきりで約2時間20分。楽器はアコースティックギターのみであっても、力強いストロークでジャカジャカ鳴らしたり、丁寧に優しく爪弾いたり、ループペダルでリズムとメロディを反復したりと、演奏形態は幾通りも。そうして鳴り音を変化させながら、透き通った高い声から迫力ありの低い声までボーカル表現も幅を見せた。MCも予め用意された言葉なんかじゃなく、その場での観客とのやりとりをAnly自身が楽しんでいたよう。ある曲ではツアー初日ゆえ歌詞がとんだりもしたが、瞬時にアドリブで笑いに変え、むしろそれを一体感へと変換させる頼もしさも見せた。キャリアの長いベテランアーティストであっても2時間20分もの長尺ライブをひとりだけで飽きさせることなくやりきるのはなかなかに大変なこと。しかしAnlyはいつのまにかそれをやれる力を身につけていたわけで、その成長の度合に筆者はかなり驚かされたものだった。
そこから全国をまわり、再び東京に戻って今度はバンドセットで強力なライブパフォーマンスを見せたのが、10月8日の渋谷CLUB QUATTRO公演。そのレポートをお届けしよう。
ボーカルとギターのAnlyに加え、バンドメンバーは男性4人。これまでのツアーでもAnlyをバックアップしてきた熟練ミュージシャン3人(ギター:佐々木“コジロー” 貴之、ベース:山崎英明、キーボード:堀 倉彰 /クラーキー)に加え、このツアーから加入したドラマーの上原俊亮は沖縄出身でAnlyと同い年の力ある若手だ。開幕曲は2ndアルバム『LOOP』のオープナーでもあった「DREAM ON」。打ち込みのビートと気怠げなボーカルが合わさったオルタナティブR&B調のこの曲で、まずは“新しい私”をアピールするAnly。続いてハジけるように『LOOP』の2曲目「COFFEE」へ。すっかり自分のものにしたループペダルスタイルを曲の土台とし、ギターフレーズの繰り返しにラップと歌を同居させつつ乗せていく。途中で「渋谷!」とシャウトすれば観客も腕を挙げて応え、“ココロもハレルヤ~~~”と“ヤ~”の部分を長く伸ばすところではその豊かな声量に感嘆の声が客席からもれた。“あがってこうね、渋谷”なんて言葉もラップのなかに盛り込んでその曲を歌い終えると、「“LOOP”Around the Worldツアーへようこそ。今日はみんな来てくれてありがとう。最後まで楽しんでいきましょう」と挨拶。続く「カラノココロ」ではアコギをかき鳴らしながら突き抜けるようなファルセットも聴かせ、《光 に その手 かざせ》と歌うと、観客たちはいつものように手をかざして応えるのだった。また同曲でAnlyと観客たちは“オ~オオオオ~”とシンガロングも。そうして早くも一体感がそこに生まれていた。
「次の曲は今回のアルバムのなかで一番メッセージを込めた曲です」「ありのままの姿が美しいんだと思ってくれたら。そう思って高校生のときに書いた曲です」。そのように話して演奏されたのは、ブラック校則に対して自身の考えをストレートに述べつつ、もって生まれたものの尊さについても歌った「MANUAL」。ソロでも非常に熱の入る曲だが、バンドと一体になった際は激しさがどんどん増していき、ベースソロとドラムソロがきてさらに熱量がアップする。とりわけジャムっぽく展開した間奏以降のAnlyのボーカルとギターの強度は凄まじく、バンドセットならでは迫力に圧倒された1曲となった。
激しいトーンから一転し、続いて録音ブツではL.A.を拠点に活動するシンガー・ソングライターのメイジー・ケイとコラボレーションした和風バラードの「DISTANCE」。ピアノの音に乗せて情感豊かに歌うAnlyは、さっきまで激しく「MANUAL」を歌っていた歌手とは別人のようだ。そして「この闇を照らす光のむこうに」を続けたあとは、バンドメンバーが一旦引っ込み、ループペダル使いのソロで1曲「Venus」を。リズム部分を弾いてループさせ、続いて声、ハーモニーと重ねていく。それはもう見事なもの。そのクオリティの高さは観客たちの拍手の大きさとして表れてもいた。思えばAnlyはデビュー当時から精力的にライブを行なって力をつけていったわけだが、エド・シーランに影響されて始めたループペダルを用いての演奏は当初、このようにバンドセットの中に組み込まれたものだった。そして今年の初め頃からソロで全編ループペダルスタイルのライブを行なうようになり、その積み重ねから彼女はライブアーティストとして完全に覚醒した感がある。力と同時に自信もつけた。先の新宿LOFT公演からはそのことが如実に伝わってきたものだったが、そうして再びバンドセットに組み込む形で披露されたこの日のループペダルによる「Venus」は、やはり心が震えるほどの素晴らしさだった。シンガーとしての巨大なポテンシャルに、そこにいる全員が圧倒された瞬間だった。
続く「Beautiful」ではフィドルの音色がアイリッシュ的なムードを醸し出し、Anlyはといえば前のほうの観客ひとりひとりの顔を見ながら気持ちのこもった歌を聴かせていた。そして「もう終盤戦です」という言葉を合図に、そこからライブは一気に躍動感のあるものに。ハンドマイクで舞台狭しと動いて歌い、ジャンプしたりもしながら激しくロックする「FIRE」だ。エレクトリックギターは火を噴くように鳴り、“オ~オ~”の部分に至ると全員が腕を振り上げて共に歌う。その熱さをキープしたまま、続いてAnlyのラップ調の歌が弾んでいく「ENEMY」へ。この「FIRE」から「ENEMY」への流れは圧巻だった。が、終わりに向けてまだまだ彼女は会場の温度を上げ続けていく。陽気なパーティチューン「OKINAWA SUMMER STYLE」。Anlyのフリに合わせて、みんなが沖縄のカチャーシーを踊り出した。さらにダンスホールレゲエとスパニッシュのサウンドが合わさったような「エトランゼ」へ。観客全員がタオルをヘリコプターのようにグルグル回し、会場内に熱風が巻き起こった状態になりながら本編が終了した。
当然、鳴りやまないAnlyコール(アンコール)。それに応えて再びステージにあがったAnlyは、リラックスしたトーンでしばらくMCをしたあと「笑顔」を歌い、さらにもう一曲「とっても大事な曲です」と言い、「今日は本当にありがとうございました」と続けて名バラード「北斗七星」を。言葉を噛み締めるように歌うAnlyの声にピアノを始めとするバンドの音が乗り、後半ではフィドルも加わってスケール感が増していく。《だから見ててね 私のこと 大好きなあなたへ》。その一節は幼い頃に亡くした兄への思いだが、それがここではそこにいる全員に対しての思いのようにも感じられたのだった。
先にも述べた通り、ループペダルを用いたソロライブを重ねることでライブアーティストとして完全に覚醒し、自信をつけたAnlyが、再びバンドとひとつになって強度とスケール感の増したライブを展開した、そんな約2時間。これほどまでに著しく進化を遂げていることを、もっともっと多くの人に知ってほしいと、そう思いながら渋谷の駅へと歩いた。
【取材・文:内本順一】
リリース情報
セットリスト
Anly“LOOP”Around the World~Track1~
2018.10.08@渋谷CLUB QUATTRO
- 01.DREAM ON
- 02.COFEE
- 03.カラノココロ
- 04.Moonlight
- 05.MANUAL
- 06.DISTANCE
- 07.この闇を照らす光のむこうに
- 08.Venus
- 09.Beautiful
- 10.FIRE
- 11.ENEMY
- 12.OKINAWA SUMMER STYLE
- 13.エトランゼ 【ENCORE】
- EN 01.笑顔
- EN 02.北斗七星
お知らせ
Anly’s Living Room ~いめんしょり~ vol.2
10/21(日)リビングルームカフェ&ダイニング(渋谷)
沖縄県・宜野座村祭
10/28(日)宜野座村農村公園・総合体育館
Newiee 06
11/15(木)shibuya eggman
ワングーフェス
11/25(日)つくばセンター広場
Anly"LOOP" Around the World ~Track 1~
12月14日(金) 名古屋JAMMIN’
Sing N’ Play
12/19(水)梅田Shangri-La
エアトリ presents 毎日がクリスマス 2018~Anly×K~
12/24(月)横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
[2019]
"Anly 22nd Birthday Live “ ~んふふ!~
01/20(日)shibuya eggman
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。