ハルカミライ、Hump Back、SIX LOUNGEが野音で共演!
THE NINTH APOLLO | 2018.10.26
大阪のインディーズレーベル・THE NINTH APOLLO主催のイベント『毎晩前日、毎日当日』が、10月7日に日比谷野外大音楽堂にて行われた。出演したのは、SIX LOUNGE、Hump Back、ハルカミライの3組。野音といえば多くのバンドやアーティストが「聖地」と憧れる舞台であり、あらゆる伝説的なライブが生まれてきた歴史的会場だ。そんなステージの上にはこの日、「若手バンド」と呼ばれる3組が各々の誇りと自信を音と唄で威風堂々と放っている姿があり、彼/彼女らから放出される漲り滾るエネルギーに終始面食らった一夜となった。
イベントの一番手を務めたのは、大分の3ピースバンド・SIX LOUNGE。ヤマグチユウモリ(Vo/G)の「大分から来ました、SIX LOUNGEです」との挨拶をきっかけにミディアムチューン「10号線」をプレイ。野外ライブらしい開放感を全身で感じながら「気持ち良いな!」と叫んだヤマグチは、イワオリク(B/Cho)と共に大股で構えて「STARSHIP」「ふたりでこのまま」を熱情込めて放った。改めて会場を見渡したヤマグチは「どうすか? 俺たち、日比谷似合うっしょ?ていうかここ椅子があるんすね。でもライブハウスだと思っていこうと思ってます。みなさんもそのつもりで来てるんじゃないんすか? この3バンドみたら分かるっしょ!? 」と語りながら、「聴こえる?このデカい音! 聴こえるか日比谷! これがロックンロールだぜ!」と「俺のロックンロール」を豪快にぶちかました。興奮気味なクラップやシンガロングを沸き起こし、曲中の《場所はいつでもライブハウス》とのフレーズからも彼らの誇り高き意志をビシビシと感じた。その勢いを落とさず、ナガマツシンタロウ(Dr/Cho)の強烈なビートが冴えるクールなド直球ロックンロールチューン「LULU」、「トラッシュ」と間髪入れずに続けた。憧れの先輩がこの場所に立っている姿を何度も見てきたという彼らは「最初にこの話が来た時に、嘘かな?って思いましたし、そのくらいヤベェって思いましたね…すげぇよなぁ…」と正直な想いを話しながら「忘れないように帰ります」と約束をし、ミディアムチューン「くだらない」をプレイ。日が暮れだした会場の空気を心地良いメロディとヤマグチのロングトーンが穏やかに揺らした。そしてラストスパートをかけるように「おい!そんな顔してんなよ! 笑ってくれよ! 君は笑っていてくれ! もう一回見せてくれ!」と叫び「ラストシーン」、ラストには「僕を撃て」をプレイして、フロアに上がる無数の拳の中でアクトを終えた。「くだらない」のサビに《革命は今どこでおこっているか/僕たちにはわからない》とあるが、それは今、この場で起こったのだろうと確信させるようなライブだった。
2番手に登場したのは、Hump Back。林萌々子(Vo/G)、ぴか(Ba/Cho)、美咲(Dr/Cho)の3人がステージに登場し各々セッティングを終えると、ゆっくりと会場を見渡した林が「リハーサルではとんぼが飛んでいて、今は虫の声が聴こえます。――夏の終わりを感じました」と話した後に、《あぁ/もう夏が終わるね》と歌う「ゆれる」でライブをスタートさせた彼女たちは、林の弾き語りでしっとりと始めながら「月まで聞こえるくらいでっかい声で歌って帰ります」と伝えた「月まで」、さらに「でっかいライブハウスででっかい声で歌いにきたぞ日比谷!」との宣誓をきかっけに「嫌になる」をエネルギッシュにプレイした。林は、SIX LOUNGEとハルカミライとの同年代3スリーマンである今回のイベントについて「めっちゃ情けないことを言ってしまうんですけど、SIX LOUNGEとハルカミライと一緒にライブする時は気が気じゃないというか、胸がモヤモヤするんですよ。かっこいいから。モヤモヤするしハラハラするしドキドキするし。でも、勝ちを教えてくれる友達よりも負けを教えてくれる友達と一緒におった方がおもろいんですよ! 私はこの瞬間もどんでん返しをずっと狙ってる」と語った。楽器を持ってステージに立った瞬間からそこに年齢や経歴、性別は関係なく、バンドが「どれだけ自分がカッコいいと思う音と声と想いを放てたか」が、その日にそのバンドが観客の心に残るライブをしたかが決まると思っている。Hump Backはいつだってその心意気を忘れずにライブをしていることはしっかり伝わってくるし、「短編小説」演奏中に林が言った「戦ったから負けたんだ!」との言葉が全てだった。日比谷野外大音楽堂という場所について、昔落選したオーディションの最終選考を観に林がこの場にひとり訪れては観客席にて悔しさで大泣きしたという想い出を語り、それでもこの3人でこのステージに立てたことを喜んでいた。そしてその頃の苦い想いも全て抱えて迎えたこの日に、「あの日からずっとこの曲をこの場所で歌いたかった。待たせてごめんと思うけど、あの時より今の方が自信を持って歌える」と「いつか」を放ち、そして最後に「また屋根のないところでも屋根のあるとこのでも、音のある場所でまた会いましょう」と「星丘公園」を届けた3人は、これまで以上にずっと気高く美しく、誰よりも格好良かった。
イベントのトリを務めたのは、東京八王子出身のパンクバンド、ハルカミライ。橋本学(Vo)、須藤俊(B/ Cho)、関大地(G/Cho)、小松謙太(Dr/ Cho)がステージに登場するや否や、橋本の「日比谷ぁー! 俺達も待ってたぜ! 八王子のハルカミライ、始めるぞぉー!!」の大声をきっかけに「君にしか」を爆音でプレイ! その瞬間からフロア一面に拳が上がり、4人の一声一音に反応して負けじと声が上がっていた。冒頭からそんな半端ないパワーを食らうも、そんなの序の口と言わんばかりに「ハルカミライ、大音楽会やるぞ!」との橋本の号令に合わせて歓声が上がった「カントリーロード」、さらに「ファイト!!」「俺達が呼んでいる」と間髪無しに連発! ステージ上を縦横無尽に走り回る橋本、ドでかい会場を前にした須藤と関も興奮気味に楽器を掲げ、小松も大きなアクションを繰り出していた。この夏ハルカミライが出演予定だったフェスの多くが悪天の為に中止になったことに触れながら、雨粒ひとつ降らない上に秋への移り変わりを予感させていた昨今の天候を覆す暑さを見せたこの日、彼らが野外でライブをしたことは決して偶然ではないように思えた。そんな夜空に星が光る最高の環境の中で「ウルトラマリン」をプレイし、「明日の事は、今はひとまず置いておけばいい。昔の事は、酒飲む時でいいと思います。将来のことは、家に帰って考えてくれ。今の事を、俺たちは、一緒に作っていこうと思っています」と語った橋本の言葉は、その日その時その瞬間の感情の動きをバカ正直といっていいくらいに真っ直ぐ真剣に放つ彼らそのものを言い表していた。そのまま最新曲「世界を終わらせて」、さらに「それいけステアーズ」と続け、演奏が終わると橋本は観客たちに席に座るように促した。そしてリーリーと鳴く虫の声が聴こえるくらいに静かになった会場に向かって、関のギターの音に寄り添ってもらいつつ「色んなものに助けられています。色んな人に、助けられています。世界中を変える! っていう歌はねぇのかもしれないね。でも俺の歌で、お前の世界が変わることはあるのかもしれないね」と話しながら、再び観客を立たせ「アストロビスタ」を会場全員で思いっきり歌った。「一体感」よりもっと濃い繋がりで会場とひとつになった彼らは、本編のラストを「俺達がお前と同じ時代を生きている限り、最高の瞬間は何度も何度も訪れるぜ。この先も俺達がこの4人で、この最高のバンドで、続けていくのさ!期待してろよ!」と「QUATTRO YOUTH」で締め括った。熱望されたアンコールで一曲入魂的にプレイされた「ファイト!!」に至るまで彼らは一切減速せず、初めての会場だろうと怯まず、自分の思うままにがむしゃらにライブをした。その姿を見て、昨日あった嫌なことを思い返したり明日も頑張ろうと思ったりする暇なんて一瞬もなかった。彼らが命燃やして今この瞬間に鳴らしている音と言葉に全身全霊が共鳴したあの気持ち良さを忘れないようにしたいと、ただひとつそう強く感じた一夜だった。
【取材・文:峯岸利恵】
セットリスト
THE NINTH APOLLO presents “毎晩前夜、毎日当日”
2018.10.07@日比谷野外大音楽堂
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SIX LOUNGE
- 1.10号線
- 2.STARSHIP
- 3.ふたりでこのまま
- 4.俺のロックンロール
- 5.LULU
- 6.トラッシュ
- 7.くだらない
- 8.ラストシーン
- 9.僕を撃て
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Hump Back
- 1.ゆれる
- 2.月まで
- 3.嫌になる
- 4.短編小説
- 5.拝啓、少年よ
- 6.今日が終わってく
- 7.ナイトシアター
- 8.いつか
- 9.星丘公園
-
ハルカミライ
- 1.君にしか
- 2.カントリーロード
- 3.ファイト!!
- 4.俺達が呼んでいる
- 5.春のテーマ
- 6.ウルトラマリン
- 7.predawn
- 8.ラブソング
- 9.世界を終わらせて
- 10.それいけステアーズ
- 11.アストロビスタ
- 12.QUATTRO YOUTH 【ENCORE】
- EN-1.ファイト!!