androp 初ワンマンも行った思い出深い会場で迎えたライブハウスツアー・ファイナル
androp | 2018.11.27
「見つめ直す」……言葉的には内省的な印象だが、個人的には前向きな言葉と捉えている。見つめ直すには自分と向き合う熱量が要るし、時にはふたをしていたものを開く勇気をも要する。しかしそれを経て反芻し、自分の糧にした人間は強い。自身の本質や本領、初志や本望を再び取り戻すからだ。きっと、その際の表情は打って変わってキラキラとし、さも希望に満ちていることだろう。
そして、この日のandropの面々からも、どこか自分たちを見つめ直した先に待っていた本質を手に入れられたかのような表情が見受けられた。
andropのライブハウスツアー『one-man live tour 2018 "angstrom 0.9 pm"』がこの日、代官山UNITの大成功をもって幕を閉じた。
9月より全18公演行われた同ツアーは、あえて小箱の会場ばかりが選ばれた。しかしそれらは各所、彼らにとって思い入れのある場所や会場を含めており、このツアーはあえてそこでやることに意義があった。
代官山UNITも彼らにとっては想い出深い会場。初めてワンマンを始め、「Voice」のMV撮影や5周年記念のライブなどが行われた会場でもあった。
前回のライブハウスツアー同様、今回もあえて必要最低限ながら最大限の自分たちを見せることを主眼にツアーを回った彼ら。楽器類の搬入やセッティングも極力自身で行い、待っていてくれているファンとの会話も含め、様々な改めての大切なものの発見や学んだもの、得たものがあったようだ。そして、あえてサポートキーボディストを入れず、4人のみでステージを務め上げたのも特徴のひとつであった。
今回のツアーは公演ごとにセトリを変えて挑んでおり、この日も前日に同会場で行われたライブとはセトリの多くを変えて臨んでいた。そんな中、この日はたぶん全セトリ中、かなり意外な滑り出しのパターンだったのではないだろうか?
青白く浮かび上がったステージにメンバーが現れる。通例ならゆったりとした始まりから生命力を徐々に帯びていく楽曲パターンなのだが、この日は違っていた。「MirrorDance」が、いきなり“ここではないどこか”へと会場中を誘ったからだ。いきなり予想外な曲の登場に会場中が嬉しくバウンスし、序盤から一体感が育まれていく。会場を交えてのナンバーは続く。次の「Voice」もスタジアムアンセムナンバー。内澤崇仁(Vo&Gt)の歌に続き、会場中から湧き上がる雄々しいコーラスをみながら謳歌する。そして、ラップ然とした内澤の歌が詰問するように胸元に突きつけられた「Sunny day」では、前田恭介(Ba)の超絶スラップで楽曲をグイグイと引っ張る箇所も特徴的だった。スリリングに切り裂くように突き進みつつも、突如現れる解放感が実に気持ちいい。よりソリッドに生まれ変わった「Arigato」も、いい意味で強引でぶっきらぼうな印象を受けた。とは言え感謝の気持ちはしっかりと伝わり、フロアからも無数の気持ちの込もった「ありがとう」が返される。また、「Joker」では、闇雲や悶々の先で待っていた真実を歌に乗せ声を上げていく。ここでも普段の同期はなく丸腰。それが故のソリッドなサウンドに乗せられた本来のエモさがより伝わってきた。対して、「Shout」はアコギのアルペジオと歌に、生命力を得ていくようにバンドサウンドが加わっていき、楽曲の完成を見せた。言葉にならない言葉、痛々しい本音が優しい歌と共に刺さってくる。
中盤では彼らのレパートリーの中でもやや変則的な楽曲が次々と現れた。ポストロック的アプローチながらも聴きやすいメロディで親しみやすい楽曲にまとめた「Merrow」では、前田のベースのシンコペーションとドラムの伊藤彬彦による拍数の多いドラミングも印象的だったし、内澤のハイトーンボーカル部分も調子良く伸びていた。また、佐藤拓也のギターカッティングも特徴的だったソリッドでタイトな「Sensei」では内澤もあえてギターを弾かず、ブームマイクスタンドを両手で握りしめるように歌う。そして内澤のファルセットも楽しめた「Meme」では、前田もスライドを活かしたベースと佐藤もアグレッシブなギターアクションで魅せる。
ここから内澤がギターをアコギに持ち替え、優しく柔らかい歌たちが届けられる。カントリー調の「Kitakaze san」では牧歌性を会場中に広げ、ジャグバンド風の演奏に会場も軽やかで楽しそうな表情を見せれば、佐藤もスライドを利かせたギター、前田もウッドベース風、伊藤もシャッフルなリズムを刻む。
「現在アルバムを絶賛作っている」と内澤が会場に報告。「めっちゃいいアルバムが出来てます」と前田が続け、来る12月19日発売のニューアルバム『daily』への期待を募らせる。
会場のみんなと繋がっていきたい。みんなで一緒に歌いたいとの想いから、合唱のハミング部分をみんなで歌った「Ao」に入ると、クラップやストリングスの同期も加わり同曲の昇華を見た。
「時々音楽の無力さを痛感するけど、僕ら4人はそんな音楽に救われた人間たち。だからそれでも音楽の力を信じていられる。もしかしたら自分の歌は思ったよりも伝わり切っていないかも知れない。それでもこれからも想いや気持ち、希望を込めて歌い続ける」と内澤。フロアから返る拍手は、「これからも一緒についていく!!」という力強い応答のようにも響いた。
「これからもみんなの光になれたら」と内澤。「Hikari」がしっとりと滑り出していく。佐藤が鍵盤に座りピアノの音色を絡め、そこに同期のストリングスが雄大に楽曲を包み込む。生命力のあるバンドサウンドには、光が見つかり手繰り寄せ、それに包まれていくかのような壮大な物語を感じた。
後半に入ると彼らのロックバンド然とした側面やダイナミズムが楽しめた。「Prism」で再びライブを走り出させた彼ら。キラキラとした「Bell」ではサビでのストレートになる部分で会場が一斉に手を伸ばす。また、「Pray」ではスカのリズムによる軽やかさやサビの2ビートも手伝い、キッズ具合も楽しめた。
それにしても「Run」での内澤が嬉しそうに先導するコール&レスポンスには驚いた。これまでもそのようなタイプの楽曲はあったが、どれも自主性を促すレベル。andropとお客さんとのコミュニケーションが変化してきていることが伺え、これまで見たことのない一体感が体感できた。
一緒に作り出し完成させていく曲は続く。「One」では、まさにステージとフロアがひとつになっていく様を見た。そして、最後は一緒に歌おうと「Yeah! Yeah! Yeah!」が。まさに抱かれるといった感覚が相応しく、神々しくも力が湧いてくる楽曲に、観客が自分だけのとっておきに包まれる瞬間を見た。
アンコール。まずはアコギを持った内澤がひとりステージに。「これからもみんなに届くような音楽をやっていきたい。受け取れたら受け取って欲しい。僕らはこんな気持ちでこれからもやっていく」と告げ、「Tokei」がしっとりと歌われる。まるで時間を分け合うような同曲に会場も聴き入り、ステージとフロアがこの日を振り返るように心をつなぎ合っているようだった。
ここからは再び3人も登場。「これまでで一番いいツアーだった」と伊藤が振り返る。シティポップ風のアプローチにて放たれた「SOS!」では自由にフレキシブルに、のびのびとした感覚が呼び起こされる。
本来ならここで終わり……のはずだったが、よほどこの日が楽しかったのだろう。特別に更に「Te To Te」が贈られた。「ライブハウスやライブは僕らの居場所でありホームだ」と語り贈られた同曲。本質であり変わらぬ原点であると同時に、ずっと以前から暗闇の中でも常に光を信じて、いつかそれらに包まれるのことを誓い歌にしてきた彼ら。ここにきてその辺りを改めて強く感じた。「いつも祈ってます。また音楽で会いましょう」との言葉を残し4人はステージを去り、ツアーは無事幕を閉じた。
このツアーを経て確実に何か「見つめ直し」が出来たに違いないandrop。それはステージを降りる際のメンバー各位のイキイキとした表情からも感じ取れた。次なる武器と出会えた感のあるこの日のライブ。彼らは改めてこのツアーで見つけたその確信を抱き、自身の武器として更に先へと進んでいく。もちろんみんなの心も一緒に引き連れて。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)】
リリース情報
daily
2018年12月19日
ユニバーサルミュージックジャパン
02.Blue Nude
03.Blanco
04.Saturday Night Apollo
05.Canvas
06.Home
お知らせ
Skream! X TOWER RECORDS X Eggs presents HAMMER EGG vol.10
12/11(火)TSUTAYA O-EAST
androp member page Special Live 2018
12/21(金)日本橋三井ホール
MERRY ROCK PARADE 2018
12/24(月)ポートメッセなごや
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
12/28(金)インテックス大阪
COUNTDOWN JAPAN 18/19
12/31 (月)幕張メッセ国際展示場
[2019]
J-WAVE INNOVATION WORLD LIVE PLUS
01/24(木)豊洲PIT
HMV GET BACK SESSION androp「anew」 LIVE
01/26(土)下北沢GARAGE
HMV GET BACK SESSION androp「relight」 LIVE
02/19(火)LIQUIDROOM ebisu
-LIVE HOLIC 5th ANNIVERSARY- uP!!! SPECIAL LIVE HOLIC extra vol.3 supported by SPACE SHOWER TV
03/30(土)幕張イベントホール
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