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BUCK-TICK ツアー中盤の豊洲PIT公演をレポート

BUCK-TICK | 2018.11.30

『TOUR No.0 - Guernican Moon -』と題して10月13日にスタートさせた、ライブハウスでの全国ツアーを順調に進めているBUCK-TICK。そのちょうど中程、彼らは11月10日の豊洲PITのステージに立った。約3000人が入るこの会場で彼らがライブをやるのは初めてだ。どんなライブになるのかと期待を抱く人たちで、フロアは満杯になった。

 3月にリリースした『No.0』をテーマにしたライブであることは言うまでもないが、同作品を携えてのホール・ツアーをすでに彼らは3月~7月に行なっている。ファイナルとなったNHKホール2days、追加公演の国際フォーラムAまで、意表をつくセットや映像などを駆使したライブ・パフォーマンスで、このバンドの持てる力を余すところなく見せた。それを経て、デビュー30年を超えて生々しいほどバンドそのものの存在感で圧倒する、これもまた彼らならではのライブとなっていた。

 手が届きそうな、と言うのは大袈裟だけれどそんな気持ちになるステージだ。星野英彦(G)、樋口豊(B)、ヤガミ・トール(D)、今井寿(G)が次々に登場し、歓声が沸き起こる中で演奏が始まると櫻井敦司(Vo)が姿を現した。ホール・ツアーでは壮大なセットや映像を駆使して『No.0』の世界観とBUCK-TICKの持つ美意識を示したが、このツアーではセットや映像は最小限。代わりにというわけでもないが緻密に構成されたライティングが、それぞれ見るものの想像力を掻き立て、深く楽曲に入り込ませる。セット・リストも、ホール・ツアーでの壮大な物語を綴っていく大きなうねりのような構成とは違い、一度アルバムの流れを解体して再構築したかのようで、思いがけないストーリーに誘われる。それは、会場がスタンディングであることも考慮してのものだろう。ヘヴィなサウンドで聴かせる「美醜LOVE」も後半には櫻井がマイクをオーディエンスに向け、ダンサブルなビートに合わせて手拍子を促した「光の帝国」はフロアが揺れる、といった具合に大きな振り幅で曲が進むあたり、まるでジェットコースター。ホールでは味わえない雰囲気で、「こんばんは。こんなにたくさん豊洲まで来てくれてありがとうございます。最後まで楽しんでってください」と語りかけた櫻井の口調にも、少しカジュアルなムードが感じられた。

 そんな雰囲気をメンバーたちも楽しんでいたのではないだろうか。ホール・ツアーは一人一人を包むようなセットがあったため動きが制約されるところもあったが、ここではステージ狭しと動くことができる。ホールに比べればステージそのものは狭いのだろうが、むしろ伸び伸びとしたライブになっているようにも思えた。何よりもオーディエンスとの距離の近さや、オーディエンス同士も自由に動き踊って楽しんでいることがバンドにも伝わっていたのだと思う。今井寿がセンターに進んでギターを弾いたかと思うといつものポジションに戻って歌い出した「IGNITER」は、櫻井との掛け合いが生む高揚感とバンドの一体感が相まってフロアを揺れる腕が埋め尽くし、そんな空気を切り裂いてユータのベースが響いた「BABEL」はドラマチックな櫻井の歌に引き込む。BUCK-TICKらしい重厚さもたっぷり含んだ演奏はバンドが奏でる音がそのままに響いてくるようで、いっそうステージとの近さを体感させていた。

 バンドとオーディエンスの親密さがさらに高まったのは「GUSTAVE」。愛猫に呼びかけるように歌い出した櫻井に合わせて、くるりと猫のように拳を巻いた手が曲に合わせて踊り出し、櫻井も同じようにした手を振る。”Cat,Cat”とリズミカルに繰り返す曲に合わせて動く、数えきれないほどの猫の手は壮観だった。そんな高揚感を途切れさせずにDJミックスのように曲を続けられては、誰もが踊り続けないわけはない。ライブハウスならではの自由な空気が高まっていく中、久々に演奏される曲に新たな興奮を覚えたり、今井と星野がステージ狭しと動く様子に目を奪われたり、アニイのカウントで気合いを入れた「薔薇色十字団ーRosen Kreuzer」で更に盛り上がる中、センターに踊り出して愛嬌たっぷりにベースを弾くユータに笑顔を誘われたりと、曲が進むほどにホールと違った開放感を楽しんでいるらしいメンバーにこちらも心が開いてくる。アコギも使って様々なダンス・ビートで踊らせてくれる彼らの楽器の音がリアルに伝わり、BUCK-TICKというバンドの唯一無二のサウンドの凄みを痛感することになる。

 振り返ればアンコールでも定番の人気曲は演奏されず、『No.0』収録曲の他は滅多にライブでは演奏しない曲も多かったのではないだろうか。今この瞬間のBUCK-TICKが鳴らしたい音、聴かせたい曲を揃えていたのだろう。だからと言って初めて彼らのライブに来たオーディエンスを置き去りにするようなことはなかったと思う。それは前述したように起伏に富んだ構成で、いつもにも増してオーディエンスと気持ちの応酬をしていたメンバーの思いが、いい流れの空気を作っていたからだ。そして櫻井の絶唱に言葉を失う「胎内回帰」に到るまで、『No.0』で彼らが伝えたいことを確実に描き出すことに、このライブは成功していた。それはホール・ツアーで見せたものと角度を変えながらも同じであり、よりシンプルだが研ぎ澄まされたものに感じられた。スタンディングのライブハウスでなければ、こんな感触は生まれなかったかもしれない。そして、デビューから30年を超えても、こうした新鮮なライブをやるBUCK-TICKというバンドの底力にも圧倒される思いがした。

 恒例となっている年末の日本武道館公演が、今年はシンプルに『TOUR No.0 -FINAL-』と題され発表された。この1年の前半に行なったホール・ツアーと、現在進行中のスタンディング・ツアーを総括するものになることを予感させるが、それがどんな内容になるのか。デビュー30年を経て更に自分たちを磨き続ける彼らが見せるものは、BUCK-TICK史上初となるに違いない。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:田中聖太郎写真事務所】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル BUCK-TICK

リリース情報

THE DAY IN QUESTION 2017

THE DAY IN QUESTION 2017

2018年12月26日

ビクターエンタテインメント

完全生産限定盤(3BD+PHOTOBOOK)
VIZL-1495 / ¥12,000+税
完全生産限定盤(3DVD+PHOTOBOOK)
VIZL-1496 / ¥11,000+税
通常盤(2BD)
VIXL-247〜248 / ¥7,000+税
通常盤(2DVD)
VIBL-922〜923 / ¥6,000+税


●DISC1(December 28th, 2017.)全22曲
●DISC2 (December 29th, 2017.)全22曲
●DISC3 全国各地を追いかけたツアードキュメント「THE DAY IN QUESTION 2017 Documentary」

[完全生産限定盤(Blu-ray/DVD共通)]
1)「THE DAY IN QUESTION 2017 Documentary」映像ディスク付属
2) LIVE PHOTOBOOK [全64P]封入
3) スペシャルパッケージ仕様

お知らせ

■ライブ情報

TOUR No.0 - Guernican Moon -
12/01(土)BLUE LIVE広島
12/02(日)高松festhalle
12/08(土)Zepp DiverCity(TOKYO)【ファンクラブ会員限定】
12/09(日)Zepp DiverCity(TOKYO)
12/15(土)福岡DRUM LOGOS【ファンクラブ会員限定】
12/16(日)Zepp Fukuoka
12/20(木)熊本B.9 V1
12/22(土)京都KBSホール

TOUR No.0 -FINAL-
12/29(土)日本武道館

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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