SUNNY CAR WASH『ポップコーンの匂いがする』東名阪ツアーファイナル
SUNNY CAR WASH | 2018.12.06
カンカン照りの晴れの日のように刺激的なそのバンドは、栃木・宇都宮から現れると一気に人々の注目をかっさらった。彼らが手にしている冠こそ、未確認フェスティバルの審査員特別賞かもしれない。しかし、その躍進はすさまじかった。下北沢BASEMENT BARでのワンマンライブから約4か月程という短いスパンで渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブを大成功させてしまったのだから。彼らこそ太陽を名にもつ3ピースバンド、SUNNY CAR WASHだ。
10月には『親友ツアー2018』をKOTORIと周り、翌月には東名阪でワンマンツアー『ポップコーンの匂いがする』を開催。さらに、音楽番組『バズリズム02」の音楽イベント「バズリズム LIVE 2018」で横浜アリーナの舞台に立つ等、勢いを増している。11月15日、渋谷CLUB QUATTROにて行われた東京編は、ツアーファイナルということもあり、彼ら至上最大キャパでの晴れ舞台を目にするべく、会場には多くの人が押し寄せた。
照明が消え大きな歓声が舞うなか、岩崎優也(Vo/Gt)、羽根田剛(Ba)、畝狹怜汰(Dr)の3人がステージ中央に集まって気合をいれる。最高のステージは岩崎の「俺らがSUNNY CAR WASHだ!」という掛け声により、封切られた。
オープニングを飾ったのは「ムーンスキップ」だ。舞台の上に立つ3人の姿はとても楽しそうで、緊張の色など微塵も感じさせない。音楽の生感が凝縮された彼らのロックンロールは、音が重ねられるたびに前のめりに人々の心を突き刺した。「1997」が奏でられ、心地いいフォークのリフに会場全体が左右に揺れる。ライブ前半戦にも関わらず、自分たちの音楽に観客を巻き込んでしまう手腕のすごさは「さすが」としかいいようがない。続く「夢で逢えたら」は女性目線でリリックが紡がれるナンバー。畝狹の生むバスドラには、いつも以上にズシンと響き1曲1曲に気合がこめられていることが、その音からも伝わってきた。
「僕の天使の歌です」とアナウンスされ始まったのは、11月21日に発売された最新作のリードトラックである「ファンシー」。いつも以上に大きなステージに立っているのにも関わらず、バンドマンとしての岩崎はひたすら自由でありのまま。そのフラストレーションやエネルギーを全部音楽に込めている感じが伝わってくる。「ハッピーエンド」では完成しきっていない向こう見ずな強さを魅せつけ、「てんてれ」ではメランコリックで瑞々しい少年像を描きだした。
MCで岩崎は「ワンマンってことは、みんな僕らを見に来てるから、みんなで(ライブ)を創ればいいんだ!」と笑顔を見せる。続く「それだけ」は、その言葉を体現したような時間となった。長く慣れ親しんだ曲の登場に、我慢できなくなった会場がゆらゆらと音の波を漂う。ステージの3人と渋谷CLUB QUATTROにいる観客と、すべての人が一体になった“みんなのライブ”をやってのけた。かと思えば、「ラブソング」では音の爆発力で、グッと惹きつけてみせる。赤い照明は夕焼けのように彼らを照らし、河川敷で弾き語りをしているような光景を創りあげていた。「こんな日を待っていた!」と叫び始まったのは、チルアウトな空気が漂う「週末を待ちくたびれて」。スローテンポな楽曲に込められている激情はとてつもなく濃縮されていて、その色濃さにめまいがするほどだ。荒々しいギターの音、感情を装飾せず吐き出したような歌声。それらは、決して“キレイ”とはいいがたいかもしれない。しかし、ステージに立つ彼らが奏でる音楽は間違いなく美しかった。今しか鳴らせない音を、命を削って産み落とす、そんな尊さがSUNNY CAR WASHの魅力なのではないかと改めて感じさせられるパフォーマンスだった。
「サニー」ではスイングにより晴れた夕日のうきうき感を表現し、「ワンルーム」では精一杯に曲の情景を描ききる。伸び伸びとしたステージングで会場を心酔させたのは「放課後」だ。ミディアムテンポな中間部を挟み、少しずつ狂気を増していく後半部分。その様は、彼らが他の20代すぎの若者と何か違うと感じざるをえなかった。
この日、1番の盛り上がりをみせたのは彼らの代表曲でもある「キルミー」。サビを迎えると会場中の手が一斉にあがり、彼らの音楽と呼応した。時に話しかけるように、時に怒るように歌う岩崎は本当に掴みどころがなく、その姿により一層魅了される。《故郷にも緑を》と歌う声は、もはや声になっていなかったが、それ以上に思いが飛んでいたことも間違いない事実だろう。3拍子の回転に人々を巻き込む「カーステレオ」、夢しか見なくていいと真摯に歌う「デイドリーム」と歌いあげ、ラストスパートをかける。ドラムのカウントに導かれ、最後を締めくくったのは「ティーンエイジブルース」だ。ギュインギュイン泣き叫ぶギターは、好きな人に甘噛みされるような心地いい傷みを伴い、聴く者の脳裏に忘れられない跡を残す。“エモい”の一言で表すには失礼だが、とてつもなくエモいブルースは若者の蒼さがそのまま転載されていた。一緒に口ずさむ観客の数が少なかったのは、それだけ彼らの音楽に浸りに来ている人たちが多いといっても過言ではないだろう。「ありがとう!」と地声で叫ぶと、彼らはステージから姿を消した。
最高のパフォーマンスへの拍手は鳴りやまず、ほどなくしてアンコールへ。この日2度目の「ファンシー」が演奏された。音楽に身を委ねる3人は、どこまでも自由でなんにでもなれそうな空気を放つ。成長しきってしまった大人には出せない、未知数を秘めた輝き。それさえも、彼らの魅力のひとつということなのだろう。
ワンマンライブのファイナルということもあり、当初の予定にはなかったWアンコールに繋がれる。そして叫ばれる“僕の大好きな人たちの歌”、「キルミー」。2番のAメロで起きたシンガロンに、「歌えるんだ!」と岩崎が嬉しそうに目を細めた。パワフルなドラミング、暴れ狂うベースライン、ハウリングが鳴くギターリフ。今持っている体力や精神力のすべてを舞台の上に吐き出し、はじける夜を締めくくった。
MCのなかで岩崎は「楽屋でタバコを吸っているのも、リハをしているのも、SUNNY CAR WASHじゃない。何がSUNNY CAR WASHなのか」と話をしていた。今回のライブは、その答えそのものだったような気がする。今ある全てを吐き出し、さらけ出し、間違いなく今しか鳴らせない音を鳴らす。命を削って真っすぐに叫ぶことの美しさを魅せつける。それこそ、SUNNY CAR WASHなのではないだろうか。まだまだ膨らみきってない希望の種が音楽に熱せられ、どんな膨らみを見せてくれるのか楽しみでならない。
【撮影:Takahiro Higuchi】
【取材・文:坂井彩花】
リリース情報
ファンシー(アナログ 7インチ)
2018年11月21日
OFUTON RECORDS
B side:デイドリーム
セットリスト
『ポップコーンの匂いがする』
2018.11.15@渋谷CLUB QUATTRO
- 01.ムーンスキップ
- 02.1997
- 03.夢で逢えたら
- 04.ファンシー
- 05.ハッピーエンド
- 06.てんてれ
- 07.それだけ
- 08.ラブソング
- 09.週末を待ちくたびれて
- 10.サニー
- 11.ワンルーム
- 12.放課後
- 13.キルミー
- 14.カーステレオ
- 15.デイドリーム
- 16.ティーンエイジブルース 【ENCORE】
- EN-1.ファンシー 【DOUBLE ENCORE】
- WEN-1.キルミー
お知らせ
ハンブレッダーズ「こどものままで おとなになろう」ツアー
12/15(土)名古屋APOLO BASE
BAND WAGON 2018
12/16(日)下北沢BASEMENTBAR / 下北沢THREE
SEVENTEEN AGAiN主催「リプレイスメンツFEST」
12/22(土)横浜BayHall
LIVE DI:GA JUDGEMENT 2018
12/31(月)渋谷CLUB QUATTRO / TAKE OFF 7
コウ企画 SPECIAL 2MAN LIVE
01/09(水)下北沢BASEMENTBAR
PUSH AND SHOVE vol.2
01/11(金)京都MUSE
日本工学院ミュージックカレッジ presents HACHI-ON
01/19(土)マイナビBLITZ赤坂
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ 冬の東名阪2マンツアー『今夜浮かれたい』
02/08(金)大阪Music Club JANUS
禁じられた遊び
02/10(日)新木場STUDIO COAST
DISK GARAGE MUSIC MONSTERS -2019 winter-
02/23(土)TSUTAYA O-EAST 他5会場
SUNNY CAR WASH TOUR2019
02/16(土)千葉LOOK
02/17(日)宇都宮HELLO DOLLY
02/22(金)札幌COLONY
02/28(木)京都Live House nano
03/1(金)岡山CRAZYMAMA 2nd Room
03/08(金)新潟CLUB RIVERST
03/09(土)仙台LIVE HOUSE enn 3rd
03/15(金)福岡graf
03/28(木)梅田Shangri-La
03/29(金)池下CLUB UPSET
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。