sumikaの本質を改めて感じた『sumika「ファンファーレ / 春夏秋冬」 Release Tour』
sumika | 2018.12.06
当初は、sumikaがこのタイミングで今回のスタンディング形式のライブハウスツアーを行うことに、多少懐疑的であった。いまいちそこに意味や意義を見出せなかったからだ。ややをもすれば、“なぜ今さら……”感もあり、実際に本人たちから当ツアーへの意気込みを訊いた際も正直そうピンとはこなかった。
と言うのも前回のホールツアーにて、彼らはようやく自身の音楽を広く多くの人が集える場所で演り、各所大成功に収めた。加えてシングル「ファンファーレ / 春夏秋冬」を経て、更に幅広く多くの人に広まり、観てもらえる時機。そんな中、来場者にもある程度の気概を要する会場群には、いささか疑問符が湧いた。
しかし観終わり、しっかりと肝銘した今は違う。今後いま一歩新たに進んでいく為にも、いま一度自身の足元を見つめるためにも、彼らはこのツアーをやらなければいけなかったんだと強く思っている。そして、ここで確信したものを抱いて更に彼らは飛躍し、多くの人に音楽を届ける方向へと持っていける。そのためにも必要だったし大切だった「自身の本質を確認するツアー」だったと今は納得し逆に同感している。
sumikaがライブハウスツアー『sumika「ファンファーレ / 春夏秋冬」 Release Tour』を行った。この日は追加公演も含めたZepp Tokyoの3Daysの2日目。ツアーの中間辺りであった。
会場に入り、まずは“あれっ?”と感じた。オールスタンディングとは言え、このZepp Tokyoはかなりの大箱。これまではこのクラスのワンマンではステージ上に様々なオブジェや飾りつけなどが我々を待っていた。しかしこの日の装飾類は、ステージ背後の大きなロゴのバックドロップのみ。このシンプルさからして、どこか原点回帰の丸腰感を覚えた。
会場のBGMが止まるとバックドロップにスポットライトが当たり、薄暗闇のなかにメンバーが登場する。前半は勢いのある曲や一体感溢れる曲が連射された。一条の光をバックにボーカルの片岡健太(Vo&Gt)の歌い出しから「ファンファーレ」が、この日のライブの幕を切って落とすと、夜や闇を超えて何度でも迎えに行くよと歌われる同曲が会場全体をグイッと抱き寄せにかかる。いきなりの“出逢えた感”が場内の隅々にまで広がっていく。早くも黒田隼之介(Gt&Cho)が切り裂くようなエモなギターを披露。歌により感情を加えていく。続く「ソーダ」ではハッピーさと清涼感、そしてちょっとした切なさが“ソーダ”の気泡のようにシュワシュワと立ち上っていくのを感じさせ、カラフルなライティングの中での「1.2.3..4.5.6」では、彼らの格好良さと会場を巻き込んだ楽しさの炸裂が伺えた。
短い挨拶を経て、彼らのファンキーな面も楽しめた「KOKYU」では、場内により一体感が育まれ、会場中にワイパーやクラップが生まれていく。
一体感や観客と一緒に作り出す曲の連射は続く。「ふっかつのじゅもん」が、会心の一撃をかまさんとばかりにここで飛び出し、嵐を切り裂き進んでいくかのような「チェスターコパーポット」が力強く場内も引き連れて大海原へと各人の宝箱を見つけに航海に出させた。同曲では小川貴之(Key&Cho)のエレガントな鍵盤に黒田のギターソロが続く場面も印象深かった。
片岡がアコギに持ち替え、「フィクション」では荒井智之(Dr&Cho)の生み出すシャッフルとテンポが、より牧歌性を醸し出し、思わず発したと思しき片岡の「幸せだ~!!」のシャウトも記憶に深く残った。
この日は珍しい曲も飛び出した。4年ぶりに演った「MY NAME IS」だ。片岡もハンドマイクで歌い、会場全体が楽しくバウンスを起こす。また、≪あわよくば僕のことを好きになっちゃえばいいのに≫とウィスパー気味の歌い出しから入った「いいのに」では、ホーンの音色も加わり、アダルトな雰囲気が広がる。セカンドラインのリズムも交えた荒井のドラムと黒田のギターのリレーションも見どころであった。
2018年のリリース・ホールツアー・夏フェス等を経て、お客さんの幅は今まで以上に上にも下にもより広がり、この日も多くの初見者も集っていた。そんな方々に向けての自己紹介も交えたメンバー紹介を経て、次曲は候補2曲(「グライダースライダー」、「sara」)から、1曲を当日のお客さんの拍手の音量で決める試みが。結果、タイトな8ビートとエモさも特徴的な「sara」が選ばれた。ちなみに前日も同企画を行い、同じく「sara」が選ばれたという。
ここまで比較的トバしてきた構成だったが、ここからは聴き浸れる楽曲たちが贈られる。これまた珍しい「溶けた体温、蕩けた魔法」では、小川のピアノにメンバー各位のハーモニーが加わり、優しく流れるように広がっていく。後半の歌詞にある、≪ちょっと面倒だけどね 欠かせない一手間を かけてやっと分かり合える筈だから≫のワンフレーズ。この言葉こそsumikaの本質であり、それを実践してきたが故の今に繋がっていることを思い起させた。また、片岡のアコギと歌い出しから入った「春夏秋冬」は、作品以上の感動があった。ダイナミックに広がり、より色づいていく同曲。心の温かい涙と共に会場中を慈しみ深い心持ちにさせてくれた。
後半戦に入ると更にライブはシフトアップ。その盛り上がりの口火を切った「MAGIC」では巨大なミラーボールも回り出し、キラキラとしたハッピーさやウキウキさを交えた魔法を起こせば、「Lovers」の≪ずっとずっと離れぬように≫≪最後の最期に あなた朽ち果てるまで 愛し抜いていきたいと思うのです。≫のフレーズが、会場中を一生の伴侶のようにギュッと抱きしめていく。
ラストスパートに向かい盛り上がり曲は続く。会場を夏に引き戻さんとばかりに、小川も2番を歌った「マイリッチサマーブルース」では、ソカのリズムも交えたタオル大旋回の壮観が楽しめ、その盛り上がりの火に更に油を注いだ「ペルソナ・プロムナード」ではグイグイと会場を惹き込み、グングン興奮度を上げていく。また、それらを経た「リグレット」では更に駆け抜けるかのような爽快感が味わえた。
ここで今回のツアーの意味や意義を片岡が語ってくれた。要約するとこうだ。このツアーはこの距離でやりたかった。どの距離感でやっても自分たちの音楽自体は変わらない。器によって違ってもいいと思って行った……等々。そして、「この曲はこの距離感で伝えたかった」とラストは片岡が18歳より大切に歌い続けてきた「「伝言歌」」が届けられた。箱のサイズは変われど本質は未だ変わらず。まさに先のMCを体現してくれた瞬間でもあった。今でも全く色褪せることなく集った者たちの背中を押し、明日へと向かう活力を与えてくれる。「一緒に仕上げよう!!」との会場の大合唱も合わさり、この日の同曲の完成を見た。
アンコールは2曲。転調もグッとくる「Amber」がまずは贈られた。
「毎日音楽を飽きずにやり続けてるけど、それって馬鹿だなぁ……と我ながら時々思う。自分はそんな馬鹿な人が好き。ステージとフロアの距離もだけど、大切なのは心の距離。その距離感だけは絶対に馬鹿にさせない! そんなくだらないことから守る色はやはりオレンジ…」と、暖色のように温かく包んでくれる「オレンジ」が最後に贈られる。「ただいま」「おかえり」と言える間柄のような、ステージとフロアの間に優しい気持ちがゆっくりと満ちていく。そう、やはり彼らの本質はここだ。だって彼らはいつでも誰でも入ってこれるように門戸を大きく広げているバンドなんだから。会場の大合唱が、それを強く立証してくれた。
「だだいまと言える場所がスタートになる。いつでもまたドアは開けておくから、心置きなく行ってらっしゃい。sumikaでした」(片岡)との言葉を残し彼らはステージを去った。
忘れたくないものがそこには常にあって、自分が自分でいる為にも必要な場所。出自でありながらも、時々戻ってきたくなる、まさに彼らにとっての「住処(すみか)」は、やはりこのライブハウスなんだと改めて確信した。と同時に、どうしてこのタイミングであえてこのツアーを行ったのか? そこに合点がいった。
見つめ直して、確信して、また次へと進む。今後も彼らは何かを確かめる為に、時折ライブハウスツアーを行っていくことだろう。そして、その度に強くなって、更に飛躍していくに違いない。だって、この場所(ライブハウス)が彼らの最初のホーム(すみか)なのだから。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:後藤壮太郎】
セットリスト
sumika「ファンファーレ / 春夏秋冬」Release Tour 2018.11.15@Zepp Tokyo
- 01.ファンファーレ
- 02.ソーダ
- 03.1.2.3..4.5.6
- 04.KOKYU
- 05.ふっかつのじゅもん
- 06.チェスターコパーポット
- 07.フィクション
- 08.MY NAME IS
- 09.いいのに
- 10.sara
- 11.溶けた体温、蕩けた魔法
- 12.春夏秋冬
- 13.MAGIC
- 14.Lovers
- 15.マイリッチサマーブルース
- 16.ペルソナ・プロムナード
- 17.リグレット
- 18.「伝言歌」 【Encore】
- EN-1.Amber
- EN-2.オレンジ
お知らせ
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12/23(日)ポートメッセなごや1号館~3号館
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12/27(木)インテックス大阪
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12/30(日)幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
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