yonige、奥深い才能を改めて実感できた『君のおへその形を忘れたツアー』
yonige | 2018.12.11
yonigeが全国ツアー『君のおへその形を忘れたツアー』のファイナル公演を11月30日に東京・Zepp DiverCityで行った。2018年10月にリリースしたミニアルバム『HOUSE』を伴った今回のツアーは約1カ月で全7公演。『HOUSE』に関するインタビューで牛丸ありさ(Vo/Gt)は「今回のミニアルバムの曲は「早くライブでやりたい」と思ってます。ライブ映えしそうな曲ばかりだなって」とコメントしていたが、その言葉通り、この日のライブからは、ステージで演奏し、曲を伝えることに対する強いモチベーションをはっきりと感じ取ることができた。
Jay Somの「Peach Boy」が流れるなか、牛丸ありさ、ごっきん(Ba)、サポートドラマーのホリエがステージに登場し、いきなりオープニングナンバーの「リボルバー」を放つ。エッジの効いたギターフレーズ、骨太にして鋭利なベースライン、爆発的なパワーを生み出すドラムとともにツアータイトルの由来となった《君のおへその形すらもう忘れてしまっている》という歌詞が響き渡り、一瞬にしてyonigeの世界が広がっていく。さらに解放的なサビのメロディと《一体何が起こるのかな/怖くはないよ》というフレーズに心を揺さぶられる「our time city」、どうしようもない週末をあからさまに描いた「バッドエンド週末」を次々と披露し、観客を惹きつける。
「こんばんは。大阪、寝屋川、yonigeです。『君のおへその形を忘れたツアー』ファイナルツアーファイナル、Zepp DiverCity TOKYOにようこそ。よろしくおねがいします」(牛丸)というMCの後は、新作『HOUSE』の収録曲を続けて演奏。"自転車で走ってたら顔に虫が当たって死んだ"という、誰もが経験したことがある(でも、誰も歌にはしない)シチュエーションを描いた「顔で虫が死ぬ」、そして、過去の出来事に対する後悔と諦念が渦巻くミディアムチューン「2月の水槽」。3つの音がぶつかり合うことで立ち上がる生々しくてシャープなアンサンブル、"穏やかな絶望"とでも形容すべきボーカルからは、今回のツアーによってyonigeの表現力がさらに向上したことが伝わってきた。
手拍子、コール&レスポンスといったありがちな演出は一切なく、ただひたすら演奏に集中し続けるステージングも魅力的だ。曲によっては観客が手を挙げる場面もあるが、全員が一斉に同じ動きをすることは皆無で、ひとりひとりがyonigeの音楽としっかり向き合っていることが感じられる。そう、みんなで楽しく盛り上がることだけがバンドの楽しいみ方ではない。ステージで奏でられる楽曲を"1対1"の感覚で向き合うことも、バンドのライブの醍醐味なのだ。
「ツアーファイナルです! 11月の頭にはじまって、11月の最後に終わるって、めっちゃキレイじゃないないですか?」(ごっきん)というMC、ガレージ系ロックンロール「あのこのゆくえ」から始まった中盤では、このバンドが持つ奥深い音楽性を体感できる場面が続く。特に心に残ったのは、やはり『HOUSE』の楽曲だった。フォーキーな手触りのサウンドのなかで、"先のことはわからないけど、いまはこのままでいい"という気持ちを紡ぎ出す「ベランダ」、軽やかなポップネスを感じさせるメロディ、諦めと刹那的な希望が入り混じった歌が広がる「どうでもよくなる」。これまでの作品に比べてキーを低めに設定した旋律、そして、日常のなかにある何気なくて大切な感情を映し出す歌詞を軸にした『HOUSE』の楽曲は、ライブという場所においてもじんわりとした感動を呼び起こしていた。牛丸のボーカリストとしての奥深い才能を改めて実感できたのも、このツアーの収穫と言えるだろう。
終盤では「センチメンタルシスター」「アボカド」などの代表曲を次々と放ち、フロアの熱を上げていく。クライマックスはやはり『HOUSE』に収録されている「春の嵐」。静寂と爆音を行き来するようなサウンド、叙情的な雰囲気のメロディとともに《だいたいのことは暇つぶし/あの日のことも許して》というフレーズが響き、本編は終了した。
コールに応えて再びステージに登場したメンバーは、まず「笑おう」で会場を盛り上げる。その後、ツアーの追加公演が決まったことが発表され、追加公演を行う3か所をダーツで決めることに。メンバーは1回ずつダーツを投げ、「島根県」「埼玉県」最後に牛丸が<?>マークの「海外」の3か所が決まった。
そして最後に「さよならバイバイ」を披露。「大阪、寝屋川、yonigeでした。またライブハウスで会いましょう」(牛丸)という言葉によってツアーはエンディングを迎えた。
【撮影:太田好治】
【取材・文:森朋之】
セットリスト
『君のおへその形を忘れたツアー』
2018.11.30 @東京・Zepp DiverCity
- 01.リボルバー
- 02.our time city
- 03.バッドエンド週末
- 04.顔で虫が死ぬ
- 05.2月の水槽
- 06.最終回
- 07.悲しみはいつもの中
- 08.あのこのゆくえ
- 09.最近のこと
- 10.最近のこと
- 11.ベランダ
- 12.しがないふたり
- 13.沙希
- 14.どうでもよくなる
- 15.センチメンタルシスター
- 16.ワンルーム
- 17.アボカド
- 18.さよならアイデンティティー
- 19.春の嵐
- 20.さよならプリズナー
- 21.最愛の恋人たち
- EN-1.笑おう
- EN-2.さよならバイバイ
お知らせ
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