teto、ツアー『結んで開いて』で純度100%のライブを披露!
teto | 2018.12.20
9月26日にリリースした初のフルアルバム『手』を引っさげ、ツアー『結んで開いて』を開催したteto。初日・千葉LOOK公演が台風のために開催延期(振替公演が12月27日に行われる)になるというアクシデントはあったものの、20本超えとなるツアーは各地で熱狂を巻き起こした。そうして辿り着いた恵比寿リキッドルーム。ソールドアウトとなったこの場所で、4人はどんな熱を発し、どんな思いをぶちまけたのか? ロックンロールの衝動とバンドのポテンシャルが爆発したライブの模様をレポートする。
いきなりだが、tetoは「言葉」のバンドだ。より正確にいえば、「言葉のロマンを知っている」ロックバンドだ。歌詞に刻まれた言葉、そして曲と曲のあいだに話す言葉。フロントマンの小池貞利は曲の合間にも隙あらば何かを喋っている。そうやって放たれたひとつひとつの言葉が集まって、大きな流れとなって、その場の空気を包み込み、バンドの心とオーディエンスの心を同調させていく。この日の1曲目が「光るまち」だったのもそれを象徴している気がした。ライブハウスという狭い空間に、何よりも眩しいものを見出し、この場所を「光るまち」と言い切るところから、この日のライブは始まったのだ。
ギターリフが唸る2曲目「拝啓」で小池貞利(Vo&Gt)は早くもフロアにダイヴし、続く「Pain Pain Pain」でリキッドルームは最初のハイライトを迎える。オーディエンスは拳を突き上げ、それに応えるようにバンドの演奏もガンガン熱量を上げていく。早口でまくしたてられるささくれだった感情。《午前2時43分32秒マスカラが落ちてしまいそう》という強烈な具体性がサビでその場全体のテンションへと転化され共有されていく様はやっぱりマジカルだ。
いわゆる青春パンク的な見方もされているtetoだが、その歌に刻まれている感情は決してそんなにイノセントなものではない。「トリーバーチの靴」「hadaka no osama」「奴隷の唄」といった『手』の収録曲が畳み掛けられる展開の中で感じるのは、彼らが常に、行き場を失った気持ちをロックンロールの推進力と爆発力でギリギリぶっ放してみせようとしているということだ。だから危なっかしい。だから孤独に見える。そしてだからこそ、そこには確固たる覚悟が浮かび上がる。ドシャメシャに見えるアンサンブルも、隙あらばフロアに飛び込もうとする小池の姿も、まるで細い糸を必死に辿ってバラバラの心と心を結びつけようとするような切実さをもっている。
「誰かの意志とか命令とか興味ない」とうそぶき、徹底的にパーソナルでリアルな感情の風景を叩きつける。《いつしか本当のところ本物の心なんてものは無くなっていた》と歌う「暖かい都会から」、《逃しちゃったんだ/失くしちゃったんだ/どこにも帰れない》という「散々愛燦燦」。埋もれて揉まれて消え去りそうな「ひとり」の感情を、爆音に乗せて解き放つtetoのロックンロールは、テンションが上がり激しさを増せば増すほど優しく心の扉をこじ開けていく。ライブが進むにつれて、ステージとフロアの境界線がどんどん溶けていって、どの曲もまるで自分のことを歌われているように感じるから不思議だ。
柔らかなギターの音色と繊細な小池の歌声がそれまでと違う雰囲気を連れてきた「マーブルケイブの中へ」ではライブの激しさと裏腹の文学性をさらけ出し、対になる物語が語られた「溶けた銃口」と「9月になること」で夏の終わりの切ない情景を描く。そして「何度でも輝いて生きてたいよ」と歌う「あのトワイライト」へ。クライマックスに向けてどんどんエモーショナルになっていくリキッドルームで、フォーキーなバラード「忘れた」が優しく歌い上げられた瞬間、周りの風景が全部消えて、世界にバンドと自分だけになったような感覚がやってきた。僕たちがロックンロールを聴く理由、彼らがロックンロールを鳴らす理由、ライブハウスなんていう小汚い場所に夢が集まる理由、そのすべてを明らかにしてしまうような瞬間。素晴らしく感動的でロマンティックだ。
明日からも続いていく毎日を力強く肯定するような「手」を歌い終えたあと、小池は「本当にこの曲が歌いたいだけなんです」と言って「高層ビルと人工衛星」を歌い始めた。堰を切ったように暴れまくるフロア。世界が寄ってたかって嘲笑ってくるような感覚に襲われているのは僕たちも一緒だ。ここに来るまでに経験してきたすべてのやるせないことや失望や痛みが、ドライヴするギターと8ビートとメロディによって美しく輝き出す。なんでもない日々が、ロックンロールのマジックによって特別な何かに変わる。
アンコールでは「36.4」を披露して一度引っ込んだあと、鳴り止まない「One more!」の声に再びステージに帰ってきたメンバー。ダブルアンコールで、「これを聴いたら早く帰って」と言いながら彼らが演奏したのは「新しい風」。めちゃくちゃ短い、でもtetoのロックンロールの美しさが凝縮されたようなこの曲を終えると、4人は日常へと帰っていった。僕たちも家に帰らなければならない。それでもリキッドルームのドアをくぐる前と今とでは、確かに何か違うものが胸の中でキラキラしている。ロックンロールの言葉と音が届けてくれた何か。特別なロックンロールバンドだけが知っている魔法。tetoのリキッドルームワンマンには、間違いなくそれがあった。
この日フロアを埋め尽くしていたオーディエンスは、老若男女本当に幅が広かった。学校帰りと思しき制服姿の高校生もいたし、仕事を必死で切り上げて駆けつけたのかもしれないスーツ姿のサラリーマンもいた。tetoの歌う本当に小さな風景や物語が、これだけさまざまな人の心にぶっ刺さるというのは見ていて痛快だし、感動的ですらある。それでもあえていうなら、tetoは今の世代の少年少女、あなたたちのバンドだ。ティーンエイジャーのうちにこのバンドに出会えたなら、その出会いは一生ものだ。おっさんやおばさん(つまり僕などですが)を蹴散らす勢いで、バンドを追いかけて熱狂してほしい。まだ始まったばかりのtetoのストーリーがどんな時代を作るのか、僕はそれを見てみたいと思う。
【撮影:松木宏祐】
【取材・文:小川智宏】
リリース情報
手
2018年09月26日
UK.PROJECT
2.高層ビルと人工衛星
3.トリーバーチの靴
4.奴隷の唄
5.市の商人たち
6.洗脳教育
7.種まく人
8.散々愛燦燦
9.マーブルケイブの中へ
10.Pain Pain Pain
11.拝啓
12.溶けた銃口
13.夢見心地で
14.忘れた
15.手
セットリスト
ツアー「結んで開いて」
2018.12.07@恵比寿LIQUIDROOM
- 1.光るまち
- 2.背景
- 3.Pain Pain Pain
- 4.トリーバーチの靴
- 5.Hadaka no osama
- 6.奴隷の唄
- 7.市の商人たち
- 8.洗脳教育
- 9.暖かい都会から
- 10.teen age
- 11.散々愛燦燦
- 12.マーブルケイブの中へ
- 13.溶けた銃口
- 14.9月になること
- 15.あのトワイライト
- 16.忘れた
- 17.手
- 18.高層ビルと人工衛星 【ENCORE】
- EN-1.36.4 【DOUBLE ENCORE】
- WEN-1. 新しい風
お知らせ
ヒッピハッピシェイク-イナズマ2マンSP-
12/12(水) 新宿red cloth
04 Limited Sazabys 『SOIL tour 2018』
12/15(土) 宮崎WEATHER KING
12/16(日)熊本DRUM Be-9 V1
teto ツアー2018「結んで開いて」振替公演
12/27(木) 千葉LOOK ※ワンマン
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
12/28(金) インテックス大阪
COUNTDOWN JAPAN 18/19
12/30(日) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
Livemasters Inc. countdown "GT2019" supported by スマチケ
12/31(月) Zepp Divercity
KICK OFF VIVA!!! 【北浦和KYARA編】
2019/01/12(土) 北浦和KYARA
2019/02/10(日) 禁じられた遊び ~ファーストインパクト~
新木場STUDIO COAST
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019
2019/02/21(木) 福岡BEAT STATION
2019/02/23(土) 広島CLUB QUATTRO
2019/02/24(日) 高松MONSTER
2019/02/28(木) 札幌cube garden
2019/03/02(土) 仙台MACANA
2019/03/03(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2019/03/05(火) 名古屋CLUB QUATTRO
2019/03/06(水) 大阪BIGCAT
2019/03/09(土) 東京マイナビBLITZ赤坂
VIVA LA ROCK 2019
2019/05/03(金祝) , 04(土) , 05(日) , 06(月祝)
さいたまスーパーアリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。