No Big Deal Recordsの若手が競演したスペシャルライブ!
No Big Deal Records | 2018.12.28
04 Limited Sazabys、THE PINBALLSらが所属するレーベル・No Big Deal Records主催の『No Big Deal Night vol.2 -Primal Blow-』が12月23日、新宿SAMURAIにて開催された。この日は04 Limited SazabysのRYU-TA(G/Cho)が転換DJで出演予定だったものの、インフルエンザを罹患してしまい、急遽キャンセルを余儀なくされた。けれど、会場は多くの観客でごった返し、同レーベル所属Wienners.の∴560∵(Ba/Cho)に加えTHEPINBALLSの森下拓貴(Ba)もDJを務めイベントに華を添えた。各アクトの熱量高いライブに魅せられた同イベントの模様を、ここにレポートしたい。
開演18時にシークレットO.Aで登場したのは、デストロイはるきち(Vo/G、みそっかす)、だいじろー(G/Cho、JYOCHO)による弾き語りユニット、はるきちとだいじろー。2人で漫才のような息の合ったやり取りを繰り広げながら、みそっかすの楽曲を3曲披露。歌謡性の高いはるきちの哀切なヴォーカルはアコギをバックに一段と映え、新曲「月の船と星の海」も魅惑的な楽曲であった。
続くは東京を拠点に活動する3ピース・バンド、Plot Scraps。「少女徘徊」で幕を開けると、すぐさまバンド独自の世界を作り上げる。陶山良太(Vo/G)の裏声を含む透き通るような美声と、繊細にして大胆な演奏を武器に聴く者をグイグイ引き込む。時折挟むテクニカルなギター・フレーズやスラップ・ベースもいいフックとなり、ロックとポップスのいいとこ取りとも言える演奏に興奮した。
そして、16年に京都で始動したJYOCHOが三番手にお目見え。このバンドは編成からして、ちょっと変わっている。男女混合の5人組で鍵盤に加え、フルート奏者が在籍しており、いろんな意味でブッ飛んだ音楽性で真っ向勝負。牧歌的なメロディを歌い上げる猫田ねたこ(Vo/Key)とは対照的に、両手を駆使した超絶技巧タッピングで度肝を抜くだいじろー。ポップスとプログレが正面衝突したサウンドの上をフルートが優雅に舞い踊り、なんだこれは!? という驚きを禁じ得なかった。眼前で繰り広げられるパフォーマンスを凝視しつつ、何より表現欲求にリミットをかけない奔放っぷりにやられてしまった。セットリストは12月5日に出たばかりの1stアルバム『美しい終末サイクル』の楽曲をメインに据え、マスロック調の目くるめくインスト曲「sugoi kawaii JYOCHO」から「family」に?ぐ流れも鳥肌モノ。「一切ノレない楽曲をやってます。明るかったり、暗かったり、情緒不安定な曲が多い(JYOCHOだけに)」と言い得て妙なだいじろーのMCにも深く納得。とはいえ、透明度の高いポップなメロディが炸裂した「pure circle」では観客と手拍子で一体感を図ったりと、聴き手を意識したアプローチも功を奏していた。一度、二度と聴けば聴くほどヤミツキになりそうなJYOCHOが奏でる音楽。このラビリンスな音色やアレンジは絶対クセになる。今後がさらに楽しみなバンドである。
場の空気をガラッと変質させたのはINNOSENT in FORMALだ。「映画のスクリーンの中から飛び出してきたロックバンド」という4人組で、その正体は謎のベールに包まれている。メンバー全員が黒の帽子に黄色のパーカーを羽織って姿を見せると、reGretGirlの平部雅洋(Vo/G)を呼び込み、彼のヒューマンビートボックスの上でぽおるすみすがラップを決める。ド頭から奇を衒うセッションをかまし、「Footloose」で本編開始。アッパーな曲調で焚き付けると、これまたノリのいい「I wanna…」をプレイ。00年前後のミクスチャー・ロックを彷彿させるラップ・ヴォーカルが耳に引っ掛かったが、彼らのサウンドはその枠内に到底収まらない。「Night cruising」ではラップと歌メロを使い分け、大人びたクールなサウンドでパーティー感を演出。観客は手を横に振って、楽曲の世界観に吸い寄せられていた。かと思えば、「日向が少ないこの街で」に突入すると、THE PINBALLSの中屋智裕(G)をゲストに招き、躍動感漲るギターロックを叩き付けてくる。その振れ幅にも軽い衝撃を受けた。それから来年2月に発売される新作『INNOSENT 1?Into the new world』から「Highway」を挟み、ラストは「One for you」でビシッと締め括り、ハイセンスな演奏で観客の心を鷲掴みにした。
「今年1年の嫌なことを忘れましょう!」と平部が言い放つと、大阪を拠点に活動する3ピース・バンド、reGretGirlがステージに現れる。今年10月に出た2ndミニ・アルバム『take』冒頭曲「Shunari」でスタートを切ると、哀切なメロディを会場一杯に染み渡らせる。間髪入れずに疾走感溢れる「after」に移行し、切実なエモーションを爆発させた演奏に観客も拳を突き上げて大騒ぎ。「レーベル・イベント、まさかのトリでニヤニヤしてます」と零すと、ここで「黒鳥山公園」を披露。情景と心情をシンクロさせた歌詞を丁寧に歌い上げる様に多くの人が聴き入り、その雰囲気を継承するようにミドルテンポの「デイドリーム」をプレイ。中盤に語り口調のパートを挟み、それから限界ギリギリまで張り上げたハイトーン・ボイスは凄味に満ちていた。「1年前にここ(新宿SAMURAI)でやって、今はここじゃ狭いと言われるようになるくらい、みんなが来てくれるようになった」と感慨深げに告げると、最後に「ホワイトアウト」を放つ。演奏が始まるや自然とハンドクラップが起き、歌詞を大声で歌い上げる観客たち。バンドとフロアは完全に一つになり、前方では涙をそっと拭う女性の姿も目に入った。「レーベルのイベントやから、アンコールはやらない予定だったけど、みんなの声援に応えて・・・」と言うと、特別に「ピアス」をプレイ。ラスト1曲まで涙色のエモーションを振り絞った熱演に、感情を激しく揺さぶられてしまった。
【撮影:上原俊】
【取材・文:荒金良介】
ライブ はるきちとだいじろー Plot Scraps JYOCHO INNOSENT in FORMAL reGretGirl DJごむお DJ森下拓貴
セットリスト
No Big Deal Records presents No Big Deal NIGHT Vol.2 ~Primal Blow~
2018.12.23@新宿SAMURAI
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はるきちとだいじろー
- 1.アメリカと中国と静岡
- 2.月の船と星の海
- 3.黄昏サンセット
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Plot Scraps
- 1.少女徘徊
- 2.レーゾンデートル
- 3.新曲
- 4.Cover Story
- 5.水銀灯ウォッチャー
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JYOCHO
- 1.グラスの底は、夜
- 2.sugoi kawaii JYOCHO
- 3.family
- 4.Lucky Mother
- 5.pure circle
- 6.太陽と暮らしてきた
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INNOSENT in FORMAL
- 1.Footloose
- 2.I wanna...
- 3.Night cruising
- 4.日向が少ないこの街で(featuring THE PINBALLS・中屋 智裕)
- 5.Highway
- 6.One for you
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reGretGirl
- 1.Shunari
- 2.after
- 3.黒鳥山公園
- 4.デイドリーム
- 5.ホワイトアウト 【ENCORE】
- En-1.ピアス