ウソツキがツアーファイナルの渋谷クラブクアトロで最高峰の輝き魅せる
ウソツキ | 2018.12.27
振り返ってこの2018年はウソツキにとって大きな進化を遂げた、エポックと呼ぶべき1年になったのではないだろうか。“遅れてきた青春を取り戻す”を年間のコンセプトに掲げ、その第一歩として3月にゴリゴリのファンクナンバー「恋はハードモード」を配信リリース、MVでは全員がバッドボーイズになりきってエッジの効いたダンスを披露して話題を呼んだのを始め、そんなバッドボーイズぶりを体現してみせたエイプリルフール恒例ライブ『ULTRA USOTSUKA NIGHT?俺たちバッドボーイズ!?』や、さまざまな青春の在りようを模索した当サイト連載企画『第2次ウソツカ内閣 「青春を、取り戻す。」』で、あるいは盟友・アンテナ、ココロオークションの2バンドとともに3年ぶりに“ハレソウ”を復活するなど多彩かつ充実の活動を展開。そうした中で生み落とされたのが3rdフルアルバム『Diamond』だった。サウンドに反映された洋楽的エッセンスと日本人の情緒をど真ん中で刺激するメロディ、さらには竹田昌和(Vo& Gt)が彼ならではの感性で綴り、表現する唯一無二の詞、歌。バッドボーイズどころか彼らがずっと標榜してきた“王道歌ものバンド”をさらに一皮も二皮も剥いてまさにダイヤモンド級に磨き上げた今作を携え、彼らは全国5都市のツアー“Diamond Tour”に出た。12月13日、東京・渋谷クラブクアトロはそのファイナル公演であり、またウソツキの2018年を締めくくる集大成のステージだ。
♪ファッファーン、ジャコジャコジャコジャコ……暗転した場内に聴き慣れた汽笛の音が近づいてきた(正確には汽笛ではなく、吉田健二(Gt)の手によって精巧に汽笛を模したギターリフ)。1曲目は「新木場発、銀河鉄道」。いつもはエンディングに据えられることの多いこの曲をオープナーに持ってくるとは、のっけからなんという果敢さか。しかも最初は汽笛をSEとして使い、途中でガラリとけたたましい打ち込みサウンドに取って代わらせた上で4人がステージに登場し、そこから満を持して「新木場発、銀河鉄道」の演奏に入るという三段構えの演出が面白い。例えば打ち込みSEと連動させたことで、初めて彼らのライヴに参戦した観客の中には最初の汽笛を本物だと思い込んだ人もいるかもしれない。それが目の前のプレイで種明かしされるのは驚きであり、快感でもあろう。セットリストの柱となるのはもちろん『Diamond』の楽曲だが、定番曲にもひと捻り加えて、新鮮に届けようという彼らの気概がひしと伝わってくるようだ。爽やかな浮遊感とダンサブルなビートが推進力となってフロアを軽やかにはずませたアルバムのサブリード曲「夏の亡霊」、ラブソングという今作の肝とも言うべき分野を切り拓くきっかけとなった彼らのエポック曲「一生分のラブレター」を序盤で披露してしまえるところにもバンドの、格段の成長が見て取れる。
「お手を拝借! 手のひらが赤くなって痒くなるまで続けてください」とタンバリンを手にオーディエンスを誘い、満場のクラップがはじける中で扇情的な一面を垣間見せた「口内戦争」や、「恋はハードモード」前半ではハンドマイクでヴォーカルに徹し、後半は首の後ろに担いでギターヒーローばりの背面弾きを見せつけたりと、いつにも増してアグレッシヴな竹田のパフォーマンス。かと思えば「知ってる」の前には藤井浩太(Ba)がボスハンドタッピングなどを交えた華麗なベースソロでフロアを沸かせる一幕が。「知ってる」本編の哀愁を帯びたジャジーなアンサンブルも今の彼らでなければ、こんなにもエモーショナルに響いてはこなかっただろう。ボコーダーを通したコーラスが近未来的アクセントとなった「M.N.E.」の突き抜けた疾走感、藤井のスラップベースに吉田と竹田によるツインギターの掛け合い、林山拓斗(Dr)のダイナミックなドラムソロと見せ場をリレーしたのちに、全員で怒涛のごとくなだれ込んだ分厚い間奏にはウソツキの、ロックバンドとしての本領が存分に発揮されていたと思う。
「最高です! 渋谷のみなさん、本当に今日はここまで来てくれてありがとうございます」
上気した表情で感謝を口にする竹田にフロアから盛大な拍手が贈られた。それに対して「こちらこそ」とさらなる笑顔で拍手し返す彼の無邪気さ、律儀さが微笑ましい。そうして「今までやってなかったことをここでやりたい」とやにわにメンバーひとり一人が自己紹介を始めるという実にシュールなコーナーに突入。だが、身長、体重、血液型に出身地、星座……とプロフィールそのままの自己紹介に添えられた各自のひと言はよかった。今日が2018年のライブ納めであることに触れ、「来年はもっともっといい年にしたいし、“COUNTDOWN JAPAN”にも出たい。頑張ります!」と藤井が意気込めば、「来年デビュー5周年ですが、ウソツキをやっていて今が本当にいちばん楽しい」と林山。「バンドで唯一の正直者」を自称する吉田は「正直、ライヴというものがなくて、こうやってお客さんと会うことがなかったらバンドなんて続けてこられなかった。本当にみなさんのおかげです」と素直な心情を告白する。それを受けて竹田も「本当に吉田君の言う通り。みなさんのおかげで今、音楽やれてるなと思ってます。いつもありがとうございます」と再度感謝を告げた。どの言葉も彼らの本音で、それを衒いなく伝えられる彼らの今はこの上なく健やかだ。4年前にリリースされた1stミニアルバム『金星人に恋をした。』に収録の「アオの木苺」と最新作の「レトルトの彼」「超ひも理論」を連ねて何の遜色もなく、まるで一続きの物語を編むようにして鮮やかな情景を描き出せる彼らの今も。
「ちょっと弱音を吐いちゃうけど……高校生のときに音楽を始めて、音楽が大好きで、だけど怖いことばっかりでした。今もすごく怖いです。いつか歌えなくなる日が来るんじゃないか、それは明日かもしれない。大好きなはずの音楽だけど、こんなに怖いならもうやめちゃおうかなって考えることもたくさんあります。だけど今日、みんなが来てくれたから、まだ続けられるって心の底から思えました。これからもずっと一緒に音楽をやれるように……なかなか言葉にはできないので、そういう曲を作りました」
終盤戦、竹田がフロアにそう語りかけると、林山のスティックがカウントを打った。朗々と溢れ出す「名もなき感情」。切実で、けれど伸びやかな竹田の歌声を、温かくも力強い演奏が支えて、どこまでも飛ばす。《バーンってなってグーってきて/ぎゅーっとなって泣けてくる ずきんってなってビビっときて/君をずっと見つめてる》心地好く繰り出される言葉にならない言葉たちが気持ちの隙間にぴたりとハマって、もう抜けない。こんな音楽が他にあるだろうか。「ここに来たらいつだってワクワクできるように」と願いを込めて歌われた「時空間旅行代理時計」、サビで沸き起こった大合唱のなんと温かく美しかったことか。世界をまわすのも、世界を変えるのも人の想いなのだ、きっと。はっきりとそう思える。ラストは「ラブソングは無力だ」。ここに託されたウソツキらしい意思表明が渋谷クラブクアトロを埋めた800人の“たった一人”にたしかに手渡されていく。それは希望の光景だった。
アンコールではグッズ紹介を挟んで、その日21時解禁のビッグニュース、2019年4月1日にまたも恒例のエイプリールフールライヴ“USOTSUKA NIGHT HOME”の開催決定がひと足早く告知された。その後、まだ『Diamond』の中で1曲だけ演奏していなかった曲があったと「パン」を、そして最後の最後に「ダル・セニョールの憂鬱」を披露して大団円。「また必ず会いましょう」と約束を交わし、ステージを降りていく4人の後ろ姿はこれまでに見たどの背中より頼もしかった。
【撮影:高田真希子】
【取材・文:本間夕子】
リリース情報
Diamond
2018年09月26日
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT
02.偽善者
03.名もなき感情
04.口内戦争
05.レトルトの彼
06.パン
07.恋はハードモード(Album Mix)
08.M.N.E.
09.知ってる
10.超ひも理論
11.ラブソングは無力だ
セットリスト
『Diamond』リリースワンマンツアー
2018.12.13 @渋谷CLUB QUATTRO
- 1. 新木場発、銀河鉄道
- 2. 夏の亡霊
- 3. 一生分のラブレター
- 4. 口内戦争
- 5. 旗揚げ運動
- 6. 恋はハードモード
- 7. 知ってる
- 8. M.N.E.
- 9. 偽善者
- 10. アオの木苺
- 11. レトルトの彼
- 12. 超ひも理論
- 13. ハッピーエンドは来なくていい
- 14. 名もなき感情
- 15. 時空間旅行代理時計
- 16. ラブソングは無力だ 【ENCORE】
- EN-1. パン
- EN-2. ダルセニョールの憂鬱
お知らせ
ウソツキワンマンライブ
「USOTSUKA NIGHT HOME」
日程:2019年4月1日(月)
場所:渋谷WWW X
時間:OPEN 18:15 / START 19:00
前売り3,500円 / 当日4,000円(税込・オールスタンディング)
チケットオフシャル先行2次(2019.1/5 12:00~1/14 23:59まで)
※オフィシャル先行のみピクチャーチケット仕様