緑黄色社会、ワンマンツアー『溢れた音の行方』ファイナルをレポート!
緑黄色社会 | 2018.12.28
時には、溢れ出てしまったり、漏れてしまったり、こぼれ落ちてしまったり、湧き出したり、流されていったり、漲ったり(みなぎったり)…。“感情”を常にしっかりと胸の奥底にしまっておくのはなかなか大変なことだ。しかし、その感情が溢れ、漏れ、こぼれ、湧き、流れ、漲り、それがメロディに乗ったものの先に「歌」が生まれるとも私は思う。
もともと緑黄色社会はさまざまなタイプの感情を、楽曲に込めたり、秘めたり、託したり、擁し、それを歌やサウンドに乗せて形にし、放ち、聴く者の多くがそこに自身の想いを重ね、“自分の歌”として響かせてきた。そしてこの日は、その一つ一つが堰を切ったように次から次へと現れては我々の胸や心を揺さぶっていった。
緑黄色社会が全国ツアー『溢れた音の行方』を完遂。そのファイナルをこのマイナビBLITZ赤坂でソールドアウト満場のなか大成功させ、その幕を下ろした。
このツアーは今秋発表したミニアルバム『溢れた水の行方』と共に全国7箇所を回ったもの。同作品からの全曲を始め、次々と現れた、その各曲毎に込められた“感情”が、フロアに“想いの込もった楽曲”として次々と放たれていく場面を何度も目撃した。
この日は会場に入るなり、いつもと違うこれまでで最大級のステージ装飾類が我々を出迎えてくれた。大小様々なサイズの白いバルーンや大きなしゃぼん玉のようなクリアなバルーンが釣り下げられ、大きなロゴのバックドロップ、そして銀紙で包装された装飾物のそれらは、どこかファンタジーでメルヘンチックさを擁して我々を歓迎してくれた。
そんなステージに幻想的でな登場SEが鳴り響く。色とりどりのライトによるカラフルさがファンタジーに無人のステージを変化させていく。そんな中、まずは小林壱誓(G)、穴見真吾(B/Cho)、peppe(Key/Cho)とサポートドラマーがステージに現れる。まずは穴見がステップに立ち、ベースのイントロから「Alice」へ。ステージセンター奥に用意された階段の最上段から、ハンドマイクスタイルの長屋晴子(Vo&G)が現れる。これまでライブのラストや後半の盛り上げハイライトで起用されていた楽曲がいきなり1曲目から飛び出し驚いた。しかも、通例ギターを弾き歌う長屋が頭からのハンドマイク姿。そこからも、どこか次のフェイズ感を受けた。疾走感と共に会場をグイッと惹き込んでいく同曲。リリックにある《待ってよ待ってよ》は会場側のセリフだ(笑)。
「ようこそ、今日は楽しんでいってね」と長屋。続く「恋って」ではpeppeによるエレガントな鍵盤メロディと共にポップで弾んだ雰囲気が会場に寄与されていく。この曲では長屋もミニタンバリンを持ち歌唱。会場中が同曲の特性でもあるハミング部を一緒に歌う。
小林が「その手拍子を続けて」と会場をひと煽り。オブリの効かせたギターをステップ上で披露し、そこから上昇感のあるニューミニアルバム収録の「Bitter」が会場をここではないどこかへと誘っていく。
ここで長屋がギターを持つ。「いよいよファイナル。今の時間を迎えるにあたって色々な気持ちを抱いてこのステージに臨んだ。このツアーは気持ちを大事にし、感情の共有を目指してきた。今日も色々な感情を歌うので、みんなも各々で受け止めてほしい。今日は一緒にいい日にしようね」と語り、聴き浸らせる曲ゾーンへと移る。
隙間が多く幻想的な「視線」では、愛と呼ぶにはまだ早いと自分に言い聞かせ、届かなくてもいいけど君に触れたいとの愛しい気持ちが溢れていく。強がりで健気な曲は続く。「またね」ではPeppeのコーラスも切なく絡み、途中より現れる疾走暴発気味のサウンドが、その心の涙を振り払うように疾走を魅せる。
「出来立てほやほやの新曲を持ってきました」とは穴見。ここで新曲「ひとりごと」が披露される。ちょっとスウェイする曲にして、オートチューンも交えたこれまでに無かったタイプの印象を受けた。
ここでアーシーでダイナミズムを有した楽曲にして、このツアータイトルの根幹ともなった「サボテン」が贈られる。注ぎ溢れてしまった愛情が可視化されたような同曲に、いつかその愛情が巡り巡って報われる時がくることを集まった者たちの中で祈らさせた。
「今回の作品は曲毎に自分と向き合うことが多く、その度に新たな発見があった」とは長屋。ここからは自身と向き合い、自身に向けて歌われたかのような曲たちが次々と現れた。ミディアムでキュンとした気持ちを広げていった「regret」、長屋がブームマイクスタンドを両手で包み込むように握って歌った「Re」では、やり直せないことなんてない、何度でもやり直せることを信じさせ、反面、後半に秘めたエモさが暴発した「大人ごっこ」では、気持ちがどんどん堰を切ったように溢れ出、それが歌と化していく様を見た。
ここで各人からツアーを振り返るトークが。「皆さん最強だよ」と語り出した小林は、ツアー先の各地でカレーを食べ比べたことが語られ、peppeはみんなが一緒に各楽曲を歌ってくれ、それがステージから凄くよく聞こえていたこと。穴見は各地土地土地で表情も違っていたこと。また、「これからこうしようああしようといったアイデアが色々と浮かんできたツアーだった」ことが告げられた。
後半戦からは会場の雰囲気がパッと明るく変わった。まずは「君が望む世界」が会場のワイパーと共にそばにいるよ、君を連れて行くよと歌えば、スリリングな「Never Come Back」では小林のコントラストの効いた追いかける歌も耳を惹いた、また、peppeのパラレルな鍵盤フレーズから入った「アウトサイダー」では、疾走感と開放感を携えた同曲が会場全体を眺めの良い場所へと引き連れていく。そして、「リトルシンガー」に於いては更にライブが会場と並走し疾走を魅せ、ドライブ感溢れる「真夜中ドライブ」がラストスパートへと走り出させていった。
「まだまだ広い世界を見たいし、もっともっと大きな場所にみんなと行きたい」と長屋。本編ラストは「あのころ見た光」を誇らしげに高らかに場内に響き渡らせた。同曲のテーマの一つにあった、21歳の頃の自分に向けて放たれた想い。それが昇華された瞬間をここでは見て取ることが出来た。コーラス部はお客さんと一緒に完成させていった同曲。まさしくアンセム化していく様も印象深い。
「また会おうね。大好きだよ」(長屋)の言葉を残し、4人並び深々とお辞儀を残しステージを一旦去った。
アンコールは場内を一つにしてくれる曲たちで一気に駆け抜けた。とその前に穴見によるグッズ紹介と長屋から感謝の意も込もった「もっともっと大きくなるから、大きな場所でみんなと会いたい」との言葉が贈られる。アンコールはpeppeによるステップ上からの煽りから「want」にて走り出した。続く「始まりの歌」では、どこまでも駆け続けるような、いつまでも初心を忘れない宣言かのように、高らかに誇らしげに放たれた。この際も含め終始、もっと大きなステージに立ってる緑黄色社会の姿がオーバーラップしたのはけっして私だけではなかっただろう。「また会おうね」(長屋)の誓いを残し4人はステージを降りた。
結果、これまで以上に数々の感情を溢れさせ、漏れし、こぼし、湧かせ、流し、漲らせていったこの日のライブ。その溢れた想いや、歌、演奏の先には我々への胸や心の養分、そして、どこか明日へとより強く向かわせてくれるエネルギーやバイタリティや心を潤わす養分が待っていた。
“溢れた水“ 、“溢れた音”は、巡り巡って、その先の私たちの下に届き、注がれ、そこに含まれていた“愛情”という養分で、我々をより豊潤なものにしてくれた。なんだか、そんな豊かな気持ちと共に帰路につくことが出来た一夜であった。
【撮影:安藤みゆ】
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
溢れた水の行方
2018年11月07日
EPIC Records
2. 視線
3. Never Come Back
4. サボテン
5. Bitter
6. リトルシンガー
セットリスト
ワンマンツアー『溢れた音の行方』
2018.12. 21@マイナビBLITZ赤坂
- 1.Alice
- 2.恋って
- 3.Bitter
- 4.視線
- 5.またね
- 6.ひとりごと
- 7.サボテン
- 8.regret
- 8.Re
- 10.大人ごっこ
- 11.君が望む世界
- 12.Never Come Back
- 13.アウトサイダー
- 14.リトルシンガー
- 15.真夜中ドライブ
- 16.あのころ見た光 【ENCORE】
- En-1 want
- En-2 始まりの歌
お知らせ
KOZA RIOT2019
2019/01/26(土)ミュージックタウン音市場
メイプル超音楽フェス
2019/02/15(金)ダイアモンドホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。