The Floor 全国ワンマン『fantastic!! Tour』 東京公演
The Floor | 2018.12.27
「闇」も、そこを抜け、時を経ると、いつしか懐かしい想い出ばなしへと変わっていたりする。「そんなこともあったっけ…」と遠い目をして振り返り、いつしかそれは、どこか尊くも経験して良かったと思わせる「良い想い出」へと変換されていたりする。
The Floorもデビュー年の2018年度を振り返った際、同年の春~秋頃までは、自身で称するところの「闇」であったと語る。そして、その闇の中を走り続け、遂には今秋のニューシングル「革命を鳴らせ」に辿り着き、が故に、そこから抜け出せた実感が湧いた、とも。そう、あの「革命の鳴らせ」こそ、彼らを闇から引っ張り出してくれ、その闇さえも過去の良き想い出へと変えてしまうエポックな楽曲であったと私も同感する。
そんな「革命を鳴らせ」と共に回った、The Floorの全国ワンマン『fantastic!! Tour』が、この12月20日の東京・新代田FEVERのファイナルの成功をもって幕を閉じた。ソールドアウトした場内は立錐の余地もないほどの満場だ。
登場SEが流れ、まずは永田涼司(G, Cho)、ミヤシタヨウジ(B, Cho)、コウタロウ(Dr, Cho)がステージに現れスタンバイ。間を空けササキハヤト(Vo, G)も登場し、「いくぞ!!」的に拳を何度も力強く突き上げる。1曲目は最新シングルから「FASHION」。通例はギターを持って歌うササキだが、この日はいきなりのハンドマイク姿。これまでも何度かその光景は目にしてきたが、それはいざという時に見られたもの。それがのっけから現れたこともあり、いささか驚く。と同時に、彼らの「これから感」を既に感じた。ミッドでどっしりした同曲が4つ打ちながらダンサブルさとは違った躍動感で場内を引き連れていく。「さあ、生まれ変わろう!!」、「好きなように楽しんで!!」と誘う同曲の気概が場内に満ちていく。ササキもジェスチャーを交えて歌い、途中ではサンプラーを操作する場面も。
「ファンタスティックツアー~!東京~!!」とササキがシャウトし、ライブを走り出させるかのように「Wannabe」へ。一体感が会場とステージをグッと近づける。夢に向かうストーリーに終わりはないのさと謳われる同曲。明日へと皆が手を伸ばす。次曲の「Toward Word World」ではミヤシタのベースがグイグイと楽曲を引っ張っていく。ここで永田がトリルを利かしたギターソロを魅せ、ステージフロントにてプレイ。場内を沸かす。
「どうなってんだ?東京。めっちゃ熱いじゃん。これ以上ないってぐらい楽しもう」とササキ。「共に今日をドラマのように素晴らしいものにしよう!」と「ドラマ」へ。弾んだポップさが場内に呼び込まれる。続けて、「ドラマもいいけど俺たちが作るのはノンフィクションだろ?」と「ノンフィクション」に突入すると、夢を信じて進んでいった結果がきちんと理想になっていたことを満場のみなに信じさせてくれる。
幻想的なシンセ音でつなぎインストナンバーへ。ミヤシタのグルーヴィなフレーズに各パートがじわじわと高揚感を寄与し、徐々にダイナミズムが場内に広がっていく。同曲のピークをくぐり、現れたのは「イージーエンターテインメント」であった。場内もバウンスしながら一緒に呼応。ハンドマイクなことも手伝ってか、この日のササキの歌声は全体的に以前に比べ、通るし上手くなった印象を受けた。
永田のギターとコウタロウのドラムがつなぎ、そこにミヤシタのベースが乗っかり、ライブアレンジされた長めのイントロを経て「POOL」に入ると、ブリッジ部分ではコウタロウのタムを活かした土着的で生命力のあるドラミングも映える。また、「はたらく兵隊さん」では、会場全体がユラりユラりプカりプカリとフロートしていく光景を見た。
ここではたと気づいたのだが、この日はこれまで以上にライブならではのアレンジも目白押し。どれもがメリハリや抜き差し、コントラストが意識され、それが高揚部分やピーク感、カタルシス部分へと結びつかせ、曲に更なるドラマティックさを与えていたのも特徴的であった。この辺りの多くには、いわゆるダンスミュージックの構成論を伺わせるストーリーも多かった。
この日はいち早く新曲も披露された。2月20日発売のミニアルバムからタイトル曲の「Clover」だ。サビでの雄々しいコーラスも印象的な同曲。ミディアムでどっしりしながらも、花を咲かせる準備を虎視眈々と狙っていくような前向きなメッセージが込められている印象を受けた。
いつもより若干アップ目に響いた「リップサービス」ではコール&レスポンスも交え、それを経て「Teens」がライブをストレートに走り出させていく。大丈夫だからそのまんま進んで行け!!と10代だった頃の自分へのメッセージにも響いた同曲。また、「僕らをずっと支え続けてくれた曲をやります」というササキの言葉の後、永田の長めのギターイントロからの「夢がさめたら」が場内各人の自身の夢を重ね合わさせる。
後半に向けライブは激化した。再会を約束してくれるような「マジック」が眺めの良い光景へと誘えば、更にドライブ感を増した「SING!」が、場内を次なる高見へと連れ出す。また、「ハイ&ロー」が加速度とボルテージを増々上げ、「これからも革命を鳴らし続けていくから、一緒によろしく!!」という言葉の後、本編最後は、この日の大本命とも言うべく「革命を鳴らせ」に。サビをあえてギター一本から歌い出した同曲が誇らしく高らかに満場のアンセムへと変わっていく瞬間を見た。と同時に、暗闇を切り裂き、みんなを引き連れる旗手となり、先頭を突き進んでいく彼らの誇らしい勇姿がオーバーラップした。
アンコールは非常にこれからな気持ちにさせてくれる曲たちが贈られた。「ファイナルなんでまた会えるようにと約束の歌を」(ササキ)と「内緒話」に。「僕らのこのメロディを忘れないように、再びここで会おう」と誓うかのように同曲を場内いっぱいに響かせれば、「18」では、「僕らしか歌えない歌が遠くまで届くように」との願いが込められ歌われた。そしてラストは、今回のツアーの裏テーマでもあった「笑っていこう」を体現すべく「Cheers With You」が会場中に笑顔の花を咲かせていった。「明けない夜なんてない」と歌う際に、それを最も実感していたのは、この満場の中、他ならないThe Floor自身だったのではないだろうか。
本編ラストの「革命を鳴らせ」に入る前にササキは場内に、「勢いが大事な一年目だったにもかかわらず、くすぶってしまった一年だった。前回のワンマンから間が空いてしまった……」と、冒頭の「闇」であった、この春~秋を省みるように語った。しかし、「革命を鳴らせ」を完成させた今となっては、それらも過去の良き想い出へと変わろうとしている。そして、何年か後に自身を振り返って笑い話として想い返すことだろう。“あの頃、「革命を鳴らせ」が自分たちを闇から抜け出させてくれたんだっけ……”と。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
CLOVER
2019年02月20日
ビクターエンタテインメント
2.Lullaby
3.Hate you, Cathy
4.Keep On Crying
5.allright!!!
6.Through The Night
セットリスト
fantastic!! Tour
2018.12.20@新代田FEVER
- 1.FASHION
- 2.Wannabe
- 3.Toward Word World
- 4.ドラマ
- 5.ノンフィクション
- 6.イージーエンターテインメント
- 7.POOL
- 8.はたらく兵隊さん
- 9.寄り道
- 10.Clover
- 11.リップサービス
- 12.Teens
- 13.夢がさめたら
- 14.マジック
- 15.SING!!
- 16.ハイ&ロー
- 17.革命を鳴らせ 【ENCORE】
- EN-1.内緒話
- EN-2.18
- EN-3.Cheers With You
お知らせ
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2018
2018/12/27(木)インテックス大阪
O-Crest YEAR END PARTY 2018 Special 4DAYS!
2018/12/28(金)渋谷O-Crest
GROUND OF KIDZ
2019/02/09(土)心斎橋 BIGCAT
空きっ腹に酒会場限定シングル「泥.ep」リリースツアー
2019/02/14(木)札幌 COLONY
パナフェス 2019
2019/02/17(日)神戸ライヴハウス3箇所
マイアミパーティ「つれづれ / レイトショー」Release記念 “君の街まで”札幌編
2019/03/08(金)札幌 Sound lab mole
僕らは日常の途中tour2019 FINAL 迎えた今日に陽を灯せ
2019/03/29(金)札幌 COLONY
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。