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WOMCADOLE、対バンツアー『己の炎を絶やすなツアー』東京公演で見た衝撃

WOMCADOLE | 2019.02.12

 全身の毛穴がブワッと開くような、背筋がゾクゾクとするような、そんな感覚を覚えた。ライブの最後、満を持して鳴らされた最新シングル「ライター」で巻き起こされた大合唱。インタビューのときも樋口侑希(Vo&Gt)は「みんな歌ってくれるんすよ」と言っていたが、そんな軽いもんじゃないだろうこれは。もともとWOMCADOLEのライブはお客さんの熱意がものすごいとはいえ、やはり「ライター」の刺さり方はまったく違うのだ。

 その「ライター」のリリースツアーとして開催された対バンツアー『己の炎を絶やすなツアー』。各地でガチンコの2マンを繰り広げるなか、渋谷クラブクアトロでの東京公演で“対戦相手”として招かれたのはtacicaだった。ちょっと意外というか、今回の対バンラインナップのなかでも異色である。世代も違えば、醸し出す雰囲気もまるで正反対。WOMCADOLEは圧倒的に「動」のバンドだが、一方tacicaは「静」の印象が強い(この日のライブ、1曲目で猪狩翔一は「つい暴れてしまった」と言っていた)。しかし、WOMCADOLEが彼らを呼んだ背景にはメンバーの強い思いがあった。彼らにとってtacicaは憧れの存在であり、ヒーローだったのだ。美しいメロディのなかに激情を秘めた猪狩の歌、そして感情の奥底を丁寧に掘り起こす歌詞とバンドサウンドは、確かに、WOMCADOLEのロックのなかに息づいているDNAでもあるのだ。

 そのtacicaが「ワンマンライブのつもりで来ました」という猪狩の言葉どおり濃密なライブを展開したあと、いよいよ本日の主人公WOMCADOLEの登場を待つあいだから、フロア前方に詰めかけたファンから熱気が漂う。そんな中、SEとともに登場した古澤徳之(Gt)、安田吉希(Dr)、黒野滉大(Ba)、そしてフロントマン樋口。いきなり「渋谷クアトロ、やる気あんのか! ぶっ壊してやるよ!」と樋口がフロアを煽り、「追想」からステージは幕を開けた。続く2曲目「人間なんです」ではオーディエンスが声を合わせて大合唱。のっけからすさまじいテンションでライブが展開していく。「独白」ではフロアから幾本もの拳が突き上げられ、黒野は全身を激しく動かしながらベースを弾き、古澤は長い髪を振り乱しながら強烈なリフをお見舞い。樋口が「みんなで気持ちよくなりすぎて、事件みたいな日にしましょう」という言葉もまんざら言い過ぎではない。演る者と観る者とう垣根がはなっからぶっ壊れた、そこにいる全員当事者みたいなヤバい匂いがぷんぷんする。

 曲間、事あるごとにフロアを煽り、「まだまだやれんだろ?」「音楽は頭で聴くもんじゃねえんだよ」と挑発的な言葉をオーディエンスに投げつけていた樋口だが、その喧嘩腰の裏には、ファンへの絶対的な信頼がある。「ここ渋谷で踊れるやつはどんだけいるんだよ?」と問いかけて始めた「絶望を撃て」では黒野がフロアに身体を投げ出し、それをお客さんが受け止める。フロアには目をランランと輝かせて腕を挙げ、絶唱する人の姿もたくさん見られた。まるで運命共同体。一蓮托生の熱い夜が、曲を追うごとにボルテージを上げていく。

 それにしても、このバンドの巻き込み力の強さは何なのだろう、と改めて思う。普通クアトロぐらいのスケールになれば様子見のお客さんがいたりするものだし、ましてや今回のツアーは2マンである。にもかかわらず、誰一人として「余所者」がいない感じなのだ。WOMCADOLEの楽曲には樋口の個人的な感情や経験が出発点になっているものも多いし、決して意味明瞭な言葉だけを使っているわけでもない。だがこんなにも巨大な共鳴を呼ぶのは、すべての曲が常に「今をどう生きるか」という大命題に向き合っているからだと思う。バンドの歴史やメンバーのパーソナリティを知らずとも、その音楽に触れた瞬間から心と心ががっちりと結ばれる、そんな感覚がWOMCADOLEにはあるのだ。ステージがピンク色のライトに照らされ妖艶な雰囲気を醸し出した「69」、「ライター」のカップリング曲「ノスタルジックアパート」を披露し終えたあと、樋口はこの日の対バン、tacicaを「俺の青春」と形容したあとで、「みなさんにとって青春とは何ですか? 今が大切です、リアルが。あんたが今沸騰した瞬間、それが答えなんです。俺は今年もそうやって生きていきたい」と語った。常に「今」と向き合い、「今」を鳴らしてきたWONCADOLEだからこそ、地道にではあるがこれだけ濃いファンと出会うことができ、これだけ熱いライブを繰り広げることができているのだろう。「人間、そのまま突っ走るほうがかっこいいんだよ! 俺は知ってるんだよ、それがロックっつうのを!」。そんな言葉とともに鳴らされた「アオキハルへ」は、この日のライブのハイライトだった。

 そして――本編ラストに披露されたのが、冒頭に書いたとおり今回のツアーの「主役」である「ライター」だった。安田の「負けんなよ! 俺たちがここにいる!」という頼もしい言葉からなだれ込んだイントロの時点でとてつもないシンガロングが生まれ、その歌声は曲が終わるまで途絶えることがなかった。シンプルな言葉とストレートな音。WOMCADOLEにとって特別な曲となっていくに違いないこのアンセムは、このバンドがずっと続けてきたこと、そして着実に築き上げきたファンとの信頼関係をどこまでも強固で揺るぎないものにする。不敵な笑顔を浮かべつつ熱唱する樋口も満足そうだ。

 アンコールではグッズのTシャツに着替えて登場した樋口。ベースの黒野の着ていたシャツがいつの間にか破れていたことが判明し、ライブがいかに激しいものだったかを物語る。最後の1曲に選ばれたのは「唄う」だった。ステージ前の柵の上に仁王立ちし、目を見開いて歌う樋口に応えるように、オーディエンスもこの日最後の大合唱を響かせたのだった。

【撮影:ハライタチ】
【取材・文:小川智宏】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル WOMCADOLE

リリース情報

ライター

ライター

2018年11月28日

UNCROWN RECORDS

1.ライター
2.追想
3.ノスタルジックアパート

セットリスト

WOMCADOLE w/tacica
2019.1.17@渋谷クラブクアトロ

  1. 01.追想
  2. 02.人間なんです
  3. 03.独白
  4. 04.月
  5. 05.夜明け前に
  6. 06.絶望を撃て
  7. 07.リム
  8. 08.69
  9. 09.ノスタルジックアパート
  10. 10.アオキハルヘ
  11. 11.アルク
  12. 12.ライター
  13. 【ENCORE】
  14. EN-1.唄う

お知らせ

■ライブ情報

WOMCADOLE pre.瀧昇 二〇一九 五本目 独奏謝謝春嵐編
03/02(土) 広島
03/15(金) 東京渋谷TSUTAYA O-Crest
03/16(土) 静岡UMBER
03/30(土) 宮城仙台LIVE HOUSE enn2nd
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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