阿部真央、昨日の続き”でもなければ”あの日を懐かしむ”でもないデビュー10周年ライブ
阿部真央 | 2019.02.12
今年1月21日にデビュー10周年を迎えたシンガーソングライターの阿部真央が、その翌日となる1月22日、日本武道館で『阿部真央らいぶNo.8~10th Anniversary Special~』を行った。昨年11月から全国12ヶ所でライブを行って来ているが、SNSの反応などを見ていてもとにかく期待以上の声ばかり。この日は5年ぶりの日本武道館ということでスペシャルな要素も組み込まれてはいたが、彼女のテンション、選曲、そして何よりオーディエンスと作り上げていったライブの空気感などが、ここまでの1本1本がいかに充実していたかを伝えていたようにも思えた。
10年間を振り返るオープニング映像が終わると、晴れやかな笑顔で大きく手を振りながらステージに現れた阿部真央。1曲目は、真っ赤な照明に照らされながらギター1本の弾き語りで披露された「デッドライン」だ。いきなり《ねぇ、私の何を知っているの》なんて突き刺さるような言葉を投げかけながら、《私たちまだ 何も始まってなんかない》と、目の覚めるようなことをとんでもないエネルギーで歌いきる。10年かけて積み上げてきたものはもちろん沢山あるけれど、彼女のライブは”昨日の続き”でもなければ”あの日を懐かしむ”でもない。いつも潔くゼロから始まり、瞬間瞬間を確かに刻んでいくのだ。バンドインして華やかに演奏された「Believe in yourself」、「ふりぃ」と、ステージはジェットコースターのようなスピードと興奮で進んでいく。凄まじい楽しさに一瞬で心を奪われた。
「みんなと一緒に武道館で会えるの、楽しみにしてました!今日はお祝い。私からみんなへの感謝の気持ちを伝えるためのライブでもあります。今日は最後まで存分に楽しんでいってください!」
目の前の光景が嬉しくてたまらないといった様子で挨拶をし、キャッチーでポップな「K.I.S.S.I.N.G.」へ。カラッとしたギターロックは、彼女のボーカルスタイルにとてもよく似合っている。「この時間だけここをダンスフロアにしてほしい! OK!?」と促して四つ打ちのビートを響かせた「immorality」は、彼女が大好きだという岡崎体育がアレンジを手がけた曲。柔らかい歌声を聴かせる「貴方の恋人になりたいのです」、裸の心を取り出して見せたかのような生々しさが胸に迫る「morning」などが歌われたこのゾーンでは、ひとつのイメージに縛られず、振り切る時は思い切って振り切り、それぞれの表現に全力で向き合ってきた彼女の歩みを目の当たりにしたようだった。
5周年の時の日本武道館での映像を挟み、白のドレスに衣装チェンジした阿部真央が登場。アコギ2本で「母である為に」、ピアノ1本をバックに「Don’t leave me」、そしてピアノとチェロによる「いつの日も」を披露。こういったアコースティックセットになると、彼女の言葉はもちろんだが、ひとつひとつのコード進行やメロディーの存在感に改めてハッとさせられる。この日はスペシャルということで(正確には、ファイナルの神戸ワールド記念ホールにも)、「キレイな唄」と「側にいて」、「マージナルマン」の3曲には徳澤青弦ストリングスも登場。どこから流れてきたとしても必ず耳を奪われてしまうといっても過言ではないほどの力を持ったメロディーを、よりキャッチーに、よりドラマチックに響かせ、阿部真央の楽曲の魅力をさらなるものとして届けてくれた。
「10年間いろんな曲を作ってやってきたけど、もしみんながここまでの時点ですごく楽しんでくれていたとしたら、それが私の10年間の活動の答えだと思ってます。誰かに感動してほしいとか共感してもらえたら嬉しいって気持ちで曲を書き始め、それがこんなにたくさんの人に届いて伝わって。でもこんな性格だから、本当にみんなの心が震えてないと意味がないというか。でもライブは届いてるなってわかる瞬間だから本当に楽しい」
本来は長く喋るところじゃないんだけどと笑いながらも、間のMCではそんな風に今の気持ちを語っていた。いわゆる試験問題における”正解”はひとつなのかもしれないけど、こういう場合の”答え”はそれぞれの解釈だし、いくつあったって、後々どう変化したっていいはずだ。彼女が伝えたかったことが伝わり、みんなが彼女の音楽を自分のものとして日々に取り込みながら、お互いの存在を誇りに思っている。拍手や歓声、そして大合唱。それぞれがそれぞれのやり方でアピールした10年分の返答を、彼女はこの日終始、その目や耳にしっかりと焼き付けていたはずだ。
ライブ後半戦は、メインステージから繋がるサブステージで思いっきりタオルを振り回した「loving DARLING」から。「なんにもない今から」、「ポーカーフェイス」、そして「変わりたい唄」。さぁ、ここからも一緒にと心で手を取り合うような3曲が続いた。そして、振り上げる拳の力強さが、今もいろんな世代の「君」を支え続けていることを伝えていた「モットー。」。彼女はここでも「みんなの笑顔が私にとっての10年間の結果。嬉しいです」と気持ちを伝え、「10周年は通過点。こういうライブの場所をずっと作れるような活動ができたら嬉しく思います。私からは以上です(笑)」と笑いを取りながら、「ロンリー」のジャンプと大合唱で本編を終えた。
アンコールでは、「まだ僕は生きてる」と「それぞれ歩き出そう」の2曲を披露。友達のような距離感で最近の流行りについて笑いあったりしつつ、「音楽は本来自分たちの中に染み込んでいくもの。10年前は「私を見てくれ!」っていうただの少女だったけど、尊い仕事をさせてもらってるんだなと思うようになった。いろんな人の日々に寄り添っていくような曲を作っていきたいし、予定さえ合えばまたライブにも来てください。いつでもいいライブ、やってるんで」と語っていた。頼もしいような、でも逆にすごく肩の力が抜けているような。心から信頼し合えている様子が伝わってくるバンドメンバーを送り出し、Wアンコールに応える彼女。歌われたのは、5年前の武道館でもアンコールで披露されていた「ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~」と、音源化はせずライブのみで歌い続けてきた「母の唄」だった。
「この10年は、応援してくれるみなさんにすごく成長させてもらった。誰かと共にある人生の素晴らしさを教えてくれた。どこか自分で閉ざしていた扉みたいなものがあって、それをみんなが見つけてくれたから、開けることができた。誰かと一緒に何かを育むこと、人と関わるってこんなに幸せなんだなっていうのを学びました。10年間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」
素晴らしき通過点の最後を、祝福の拍手と共に駆け抜けた阿部真央。公演終了後には、新曲「答」が4月から放送開始のTVアニメ「消滅都市」の主題歌に、また「君の唄(キミノウタ)」が5月公開の映画「チア男子!!」の主題歌に決定したことが発表された。8月には8年ぶりとなる日比谷野外音楽堂でのワンマンも行われるということで、改めて、彼女の音楽とともに始まる明日からの新しい日々が待ち遠しくなるようなエンディングだった。
【撮影:笹森健一】
【取材・文:山田邦子】
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リリース情報
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阿部真央ベスト
2018年01月23日
ポニーキャニオン
01.ふりぃ
02.キレイな唄
03.デッドライン
04.Don’t leave me
05.17歳の唄
06.伝えたいこと
07.I wanna see you
08.貴方の恋人になりたいのです
09.いつの日も
10.私は貴方がいいのです
11.未だ
12.モンロー
13.ポーカーフェイス
14.ロンリー
15.morning
16.モットー。
17.じゃあ、何故
18.ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~
<DISC 2>
01.側にいて
02.戦いは終わらない
03.天使はいたんだ
04.Believe in yourself
05.それぞれ歩き出そう
06.這い上がれMY WAY
07.Don’t let me down
08.女たち
09.逝きそうなヒーローと糠に釘男
10.母である為に
11.K.I.S.S.I.N.G.
12.immorality(Arranged by 岡崎体育)
13.喝采
14.まだ僕は生きてる
15.変わりたい唄
16.なんにもない今から
17.クソメンクソガールの唄
18.28歳の唄
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セットリスト
『阿部真央らいぶNo.8〜10th Anniversary Special〜』 2019.1.22@日本武道館
- 1.デッドライン
- 2.Believe in yourself
- 3.ふりぃ
- 4.K.I.S.S.I.N.G.
- 5.immorality
- 6.19歳の唄
- 7.貴方の恋人になりたいのです
- 8.morning
- 9.母である為に
- 10.Don’t leave me
- 11.いつの日も
- 12.キレイな唄
- 13.側にいて
- 14.マージナルマン
- 15.loving DARLING
- 16.なんにもない今から
- 17.ポーカーフェイス
- 18.変わりたい唄
- 19.モットー。
- 20.ロンリー 【ENCORE】
- EN-1.まだ僕は生きてる
- EN-2.それぞれ歩き出そう 【DOUBLE ENCORE】
- WEN-1.ストーカーの唄〜3丁目、貴方の家〜
- WEN-2.母の唄
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お知らせ
NHK福岡制作 音楽特番「がめにライブ」
02/19(火)Zepp Fukuoka
阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~
07/27(土)大阪城音楽堂
08/31(土)日比谷野外音楽堂
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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