フレデリック、三原兄弟・29回目の誕生日と最新作のリリース日が重なった奇跡のライブ!
フレデリック | 2019.02.28
昨年11月から始まった「飄々とインセプション」ツアーに続く今ツアーは、ライブハウスツアーとしては最大規模のZepp会場を中心にした全10公演。その8本目となる2月20日のZepp Tokyo公演は、2ndアルバム『フレデリズム2』の発売日であり、ボーカル三原健司とベース三原康司の双子兄弟の29歳の誕生日とも重なった。そんなスペシャルな日だからこそ、ふだんはストイックに自分たちの音楽を突き進むフレデリックには珍しく、メンバーが感極まった表情も見せる熱い一夜になった。
ステージに「飄々とイマジネーション」というツアータイトルがデザインされた巨大フラッグが掲げられたZepp Tokyo。BGMにはChic「Everybody Dance」やRoosevelt「Montreal」といったフレデリックの楽曲にも影響を与えていそうなクラシックなダンスナンバーが流れるなか、定刻を迎えた。色鮮やかな照明がライブハウスをダンスホールに変える。メンバーの登場で一気に会場が大歓声に包まれると、「シンセンス」からライブがはじまった。これがフレデリックの唯一の無二の“センス”である。そう主張するスケール感溢れるダンスナンバーでは、健司のファルセットが軽やかに弾んだ。そこから一糸乱れぬクラップがフロアから湧き上がった「かなしいうれしい」へ。高橋武(Dr)が叩き出すキレのあるドラムが口火を切った「パラレルロール」では、康司と赤頭隆児(Gt)がステージの両端で向き合い、笑顔を見せながら楽し気に演奏をしていた。最初の転換を迎えるまでの4曲はまさに一瞬のようだった。古き良きロックンロールやファンク、歌謡曲から最新のダンスナンバーといったあらゆる音楽を独自の配分で混ぜ合わせ、自分たちだけの音に作り上げるフレデリックの世界は「沼」だ。気がつけば、その世界にどっぷりと引きずりこまれていた。
「フレデリズムツアー、飄々とイマジネーションへようこそ」(健司)。最初のあいさつは手短かに、オリエンタルな隆児のギターフレーズにのせて、《今この日をこの瞬間を待ち望んでいた》と、リスナーと対話をするように言葉を紡いだのは「シンクロック」。さらに、昨年フレデリックを一回り大きなバンドへと成長させた「TOGENKYO」では、踊るようなメロディがバンドの理想郷を描き出す。ギターと歌のみではじまり、バンドの演奏が加わっていくなかで圧倒的な昂揚感を作り出した「FUTURE ICE CREAM」のあと、スペイシーなサウンドのなかで、健司が「体を揺らしていこうぜ!」と誘った「真っ赤なCAR」は、『OTOTUNE』(2015年)からの楽曲だ。それは、いまのフレデリックのかたちへとアップデートされてはいたが、まだブレイク前夜と言われた当時から、彼らが鋭敏な感性をもって、誰にも真似できない唯一無二の音を鳴らしていたことを改めて痛感するものだった。
ステージ上のふたつのミラーボールがまわった「NEON PICNIC」ではビビットな照明がフロアを染めた。その怪しげな雰囲気に身を委ねていると、この曲は、康司が台湾の夜市で迷子になったときの体験をモチーフにした、と言っていたことを思い出す。そして、ステージの背面に現れた無数の銀盤が照明の光を乱反射して、巨大なダンス空間を演出した「LIGHT」は圧巻だった。シンセサウンドを大胆に取り入れた強靭なEDMナンバーのなかで、健司は「俺たちの音楽でダンスミュージックの概念を変えませんか?」と力強く叫んだ。フロアから湧く熱い歓声。ロックバンドの枠組みを超えて、新しいダンスミュージックの可能性に立ち向かおうとするバンドの気迫がフロアの熱狂を加速させていく。
「今日は何の日ですか?」。後半のMCで健司が問いかけると、会場は双子の29回目の誕生日を祝うバースデーソングが響き渡った。この日はリハーサルでも大勢のスタッフがふたりをお祝いしたという。「レーザーで“三原健司 三原康司 ハッピーバースデー”って書いてくれて。しかも紙吹雪もうわーって出してくれて。あと先、考えんとやってくれました(笑)。ほんまにスタッフに愛されて誕生日を迎えることができました」と、健司。弟の康司も「むしろ、みんなが生まれてくれてありがとう!」と感謝を伝えると、ドラムの武も「ふたりの29歳、最初のライブを最高のものにしたいなって思う。康司くんが良い曲を書いてくれて、健司くんが良い歌を歌ってくれるから、俺も良いドラムが叩ける。いつもありがとう!」と熱い気持ちをストレートにぶつけた。「なんなん!? メンバーに恵まれてますわ」と照れる健司と康司の笑顔に、会場からも「おめでとう!」の声がやまなかった。
ひとしきりお祝いムードで包まれたあと、「リリリピート」からライブは終盤戦へ。最新アルバムからのロックなナンバー「エンドレスメーデー」に続く、「バジルの宴」が素晴らしかった。混沌と爆発を繰り返す一筋縄ではいかない楽曲をクライマックスの起爆剤として投下する強気なセットリストには、いまのフレデリックの無敵感が漂っていた。「まだまだ遊べますよね? 踊ってない夜は気に入らないですか!?」と言って大合唱を巻き起こした「オドループ」では、途中で健司が感極まって、声を詰まらせてしまう瞬間もあった。歌い終えて「ずっと我慢しとったわ……」と堪えきれなかった涙について触れると、会場からはひときわ大きな歓声が起こった。「やめなさい。みなさんのそういうところが嫌いです(笑)。でも、嫌いになれないんです」。そんなふうに歌詞を引き合いに出した、ラストソングはリピート感が心地好いフレデリックの真骨頂「スキライズム」だった。メタリックなギターソロを奏でる隆児をビカビカと照らしたド派手な照明が最高だ。最後に健司が「29年間生きてきて、今日がいちばんでした! 」と言うと、健司の両サイドに康司と隆児が寄り添って終演。1年に一度の特別な一夜だからこその素敵なワンシーンだった。
アンコールでは、「15分前のことは忘れて(笑)」と、「オドループ」で、思いがけず涙したことを振り返った健司。「本当は康司から誕生日プレゼントでもらったシャツを着てこようと思ったけど、それどころじゃない。も~……好き!」と、照れたような笑顔を見せた。そして、この日リリースされたアルバム『フレデリズム2』について、「この音楽業界の中でロックスターやポップスター、それぞれで1位を獲る人がいますが、俺たちは「フレデリズム」という別の国を作って好き勝手やろうと思った。気づいたら世間も巻き込んでいる、そんなバンドになりたくて『フレデリズム』を作ろうと決心しました。『フレデリズム2』はその第2弾」というような説明すると、「俺たちの国に逃げ込んできてください」と伝えて、最新アルバムからのファンキーポップな「逃避行」、続けてツアーのタイトルにも通じるアンセムソング「飄々とエモーション」を披露した。「Zepp Tokyo、最後にもう1回、声を聞かせてもらっていいですか!?」。バンドの音すべてを消して、ウォーウォーと呼応し合う健司とオーディエンスの勇ましい歌声。「飄々と」、つまり、風に吹かれるように心のままに、自分たちのやり方を貫いていくフレデリックというバンドの在り方を示した楽曲を、その場所に集まった全員で作り上げる光景はあまりにも美しかった。
このツアーを終えたあと、4月13日に新木場コーストで開催する「FREDERHYTHM TOUR 2019 ~夜にロックを聴いてしまったら編~」を皮切りに、再び全国ツアーをまわり、2020年にはフレデリック初の横浜アリーナでのワンマンライブを行なう。
思えば、1年半前に初めてフレデリックがZeppDiverCityでライブをしたとき、健司は「俺たちはずっとZeppなんて絶対に埋まらないと言われてきた」と言っていた。当時、作りたかったのは“オンリーワンダーランド”と呼ぶ、フレデリックのテーマパークのような空間だった。それが、この日は「国を作りたい」と、いまは少し小さくすら感じたZepp Tokyoのステージの上で、自信に満ちた表情で宣言していた。誰にも真似することのできないオンリーワンを手にして、飄々と、光へと突き進むフレデリックの夢は限りない。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:ハタサトシ】
リリース情報
フレデリズム2
2019年02月20日
A-Sketch
02.かなしいうれしい
03.エンドレスメーデー
04.対価
05.逃避行
06.スキライズム
07.他所のピラニア
08.TOGENKYO
09.YELLOW
10.CLIMAX NUMBER
11.夜にロックを聴いてしまったら
12.シンセンス
13.飄々とエモーション
セットリスト
『FREDERHYTHM TOUR 2019~飄々とイマジネーション~』
2019.2.20@Zepp Toko
- 1. シンセンス
- 2. かなしいうれしい
- 3. パラレルロール
- 4. KITAKU BEATS
- 5. シンクロック
- 6. TOGENKYO
- 7. FUTURE ICE CREAM
- 8. 真っ赤なCAR
- 9. NEON PICNIC
- 10. LIGHT
- 11. リリリピート
- 12. エンドレスメーデー
- 13. バジルの宴
- 14. オドループ
- 15. スキライズム 【ENCORE】
- En-1. 逃避行
- En-2. 飄々とエモーション
お知らせ
【SEASON 1】
□FREDERHYTHM TOUR 2019〜夜にロックを聴いてしまったら編〜
04/13(土) 会場:新木場STUDIO COAST
【SEASON 2】
□FREDERHYTHM TOUR 2019〜リリリピート編〜
06/04(火)兵庫 神戸 太陽と虎
06/06(木)福岡 DRUM Be-1
06/13(木)宮城 仙台enn 2nd
06/14(金)新潟 CLUB RIVERST
06/21(金)香川 高松 DIME
06/22(土)広島 CAVE-BE
07/02(火)大阪 BIGCAT
07/03(水)愛知 名古屋 ElectricLadyLand
07/07(日)北海道 札幌 COLONY
07/09(火)東京 恵比寿LIQUIDROOM
【SEASON 3】
□FREDERHYTHM TOUR 2019
10/11(金)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
10/12(土)広島 BLUE LIVE
10/14(月/祝)高知 キャラバンサライ
10/18(金)宮城 仙台Rensa
10/20(日)新潟 LOTS
10/22(火/祝)石川 金沢 EIGHT HALL
【SEASON 4】
□FREDERHYTHM TOUR 2019
11/16(土)北海道 Zepp Sapporo
11/29(金)愛知 Zepp Nagoya
12/07(土)福岡 Zepp Fukuoka
12/14(土)大阪 Zepp Osaka Bayside
【FINAL】
□FREDERHYTHM ARENA 2020
2020/02/24(月/祝)神奈川 横浜アリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。