Uru、デビュー以来続くチケット即完・超満員の東京ドームシティーホールで「プロローグ」を初披露!
Uru | 2019.03.20
Keri Nobleの「how far you’ve come」(邦題「夢がかなうまで」)など、女性ボーカルのナンバーが会場内に静かに響いていた開演前。単独公演としては過去最大規模となるTOKYO DOME CITY HALLでは、約2500名の観客が主役の登場を待ちわびていた。暗転した会場に、滴る水の音。ストリングスとピアノの音色が重なっていき、無数の蛍のような光が舞い上がっていく。オーガンジーの幕の向こうで見え隠れする人影。その美しいシルエットを捉えた客席前方から、波紋のように拍手が広がっていった。そこには、客席に向かって深々と頭を下げるUruの姿があった。
幻想的な光に包まれ、ライブは「The last rain」からスタートした。ステージにはピアノ、アコースティックギター、コーラス、そしてUru。ささやくようなボーカルから後半は次第に熱を帯び、スケールの大きな世界観を表現していく。あからさまにメリハリをつけるようなボーカルスタイルではないのに、1曲の中で見事に、その声が描く景色を変えていく。ひそやかな恋の行方を歌う「PUZZLE」、別れた恋人を想い続ける「366日」(HYのカバー)などの楽曲では、主人公の切なすぎる心情を静かに熱く伝える声の力があるからこそなのだろう、ステージを覆っている幕そのものが発光しているように見えた。楽曲を美しく彩るのみならず、Uruの心と連動したような視覚的演出が本当に素晴らしい。
最初のMCでは、今回のツアータイトル「Uru LIVE『T.T.T.』supported by uP!!!」に込めた思いを語る。『T.T.T.』というのは、まず東京でライブをするのが3回目ということで「Third Time Tokyo」の頭文字であること。そして「To Tender Tomorrows」――柔らかく優しい明日へという思いが込められていることも明かしてくれた。「私の歌は背中を押してあげたり、元気が出るような歌ではないかもしれないけど、聴いてくれた人がふと、肩の力が抜けたり、隣でそっと寄り添っているような気持ちになってくれる、そんな歌を歌えていたらいいなといつも思っています」とUru。ところが、「今日ここに来てくださった方が、優しい気持ちで明日を迎えられるようにという気持ちを込めて歌います」という丁寧な言葉に続いて飛び出した話題が、まさかの”TT兄弟”(笑)。このツアータイトルを発表した時期に、ちょうどお笑い芸人チョコレートプラネットのこのネタが話題になっていたため焦ったそうだが、「会場に着いてTを探してみたりした(笑)」、「ちょうど私の足元に、立ち位置を示すTがある(笑)」という思いがけないトークの展開に、会場は笑いに包まれていた。
4曲目は「いい男」。恋人と別れた翌日の男の気持ちを歌ったものだが、そのプロローグともいうべき短編の朗読を添えて披露。続けて中島美嘉の「雪の華」、MISIAの「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」とカバーを2曲。名曲が、さらなる深みや輝きをまとって届けられていた。中盤のMCではものすごくマズかった春キャベツの話や、人生でいちばんきれいな二度見をしたスイカの話、パン屋さんでの妄想とその後の現実など、なぜか身の回りでよく遭遇するという面白エピソードをポツリポツリと。トーン低めで話すその感じが妙に味わい深く(笑)、程よく保たれていた緊張感もほぐれ、会場の空気が一気に柔らかくなっていった。そこからは、みんなの手拍子とともに披露された「ごめんね。」、「No way!!」や、「私の大好きな曲です」と言葉が添えられていたエレファントカシマシの「今宵の月のように」など、アップテンポなナンバーを披露。カラフルな照明に照らされたオーガンジーの幕の向こうで、Uruも気持ちよさそうに体を揺らしていた。
ライブ後半に歌われた「アリアケノツキ」は、彼女が幼い頃に亡くなった父親のことを想って、母が書いた日記から歌詞を書いたそうだ。時折涙を拭うような仕草を見せながら、「この曲を歌う時はいつも、歌っていいのかなとか、誰かの悲しみをなぞるだけになってないかなとかいろいろ迷うけど、おはようとか、ただいまとか、おかえりとか、そういう言葉を交わす日常がすごく尊いことだと伝えたくて、いつも歌っています」と、声を詰まらせながらゆっくりと語る。大切な人がずっとそばにいてくれる保証はどこにもないからこそ、大切な人をずっと大切にしてほしいーー。悲しみだけではない、前を向く強さも秘めたその声に、会場のあちこちからすすり泣きが聞こえていた。続く「娘より」も、大切な家族を見つめた1曲。彼女の歌で思い切り涙を流すこともまた、柔らかく優しい明日を迎えるための大切なプロセスだ。
この日は、ドラマ「中学聖日記」の主題歌になった「プロローグ」をライブ初披露。彼女自身も毎週楽しみに見ていたらしく、「当時は、街を歩く制服の男の子がみんな黒岩くんに見えた」、「聖先生が着ていたようなコートを思わず試着してしまった」など、ここでもクスリとさせるエピソードを交えつつ、「人を好きになるっていいなあと思わせてもらえたドラマです」と」感謝の言葉を伝え歌へ。揺れ動く気持ち、気付いてしまった自分の本当の気持ち、そしてその気持ちの行方…。主人公たちのピュアな眼差しを思い起こさせるような、情感豊かな歌声だ。ドラマチックに展開していくサウンドが、彼女のエモーショナルな一面を引き出していた。感嘆のためいきと拍手で熱を帯びた客席が、満天の星やオーロラなど、壮大な宇宙を思わせる照明に包まれ、本編は「フリージア」で幕を閉じた。
アンコールでは、まずドラマ「コウノドリ」の主題歌になった「奇蹟」から。「ステージが大きくなるたびに、ライブをさせていただくたびに、いつも応援してくださってる皆さんやスタッフの方々に、心から感謝します。いつもありがとうございます」と丁寧に伝えると、「ひとつお知らせがあります」とUru。この夏から始まるアニメ「グランベルム」のエンディングテーマを担当することになったと発表し、会場からは大きな拍手が寄せられた。
アンコールの最後は、「すごくすごく大切な曲になりました」というデビュー曲「星の中の君」。イントロが流れ始まると幕が上がり、一歩、二歩とステージ前方へ出て来るUruの姿があった。客席からはもちろん、この日いちばんとも言うべき大きな拍手が沸き起こる。曲の後半ではオーディエンスみんなのあたたかな合唱に包まれ、幸せそうに会場を見渡すUruの笑顔がはっきりと見えた。
アンコールも含め、全19曲が歌われたこの日のライブ。日々のつぶやきのような言葉や、大切な人を想う掛け替えのない気持ちを歌った楽曲などを聴いていると、ドラマや映画などの作品に寄り添うだけではなく、その声や歌は、自分自身の人生にも同じように寄り添ってくれていることに気付いてハッとする瞬間が何度もあった。またこの声に会いたいーー。そんな余韻を残してくれたライブだった。
【撮影:渡邉 一生】
【取材・文:山田邦子】
リリース情報
プロローグ
2018年12月05日
Sony Music Associated Records
2. PUZZLE
3. 雪の華
4. 奇蹟 Self-cover ver.
5. プロローグ -instrumental-
6. PUZZLE -instrumental-
セットリスト
Uru Live 「 T.T.T 」 supported by uP!!!
2019.03.10@TOKYO DOME CITY HALL
- 1.The last rain
- 2.PUZZLE
- 3.366日 (HY)
- 4.いい男
- 5.雪の華 (中島美嘉)
- 6.アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN) (MISIA)
- 7.ごめんね。
- 8.No way!!
- 9.今宵の月のように(エレファントカシマシ)
- 10.fly
- 11.君を忘れない(松山千春)
- 12.remember
- 13.アリアケノツキ
- 14.娘より
- 15.プロローグ
- 16.フリージア