LAMP IN TERREN、全国ワンマンツアー『BABY STEP』ファイナル公演
LAMP IN TERREN | 2019.03.26
「今回は生まれ変わったツアーでした」。LAMP IN TERRENが2月から開催してきた全国ワンマンツアー『BABY STEP』のファイナルを飾った恵比寿リキッドルームのステージで伝えた言葉だ。昨年12月にリリースしたアルバム『The Naked Blues』を携えて、全国8ヵ所をまわった今回のツアー。それは、『The Naked Blues』というアルバムで、初めて自分自身の弱さや葛藤を曝け出したLAMP IN TERRENが、ライブという場所でも同じように、嘘偽りない自分のままステージに立つことができたという意味で、革命的なライブだった。
恵比寿リキッドルームのフロアへと降りる階段の壁には、今回のツアータイトル『BABY STEP』の文字と足跡がデザインされていた。ささやかな“おもてなし”が、「テレンのライブに来た」というワクワク感を掻き立ててくれる。定刻、BGMで流れていたショパンの美しいピアノ曲が終わると、真っ暗なステージにメンバーが登場した。1曲目は松本大(Vo/Gt)のピアノと歌のみではじまる「I aroused」だった。暗い。よくあるライブの「華やかな幕開け」とはほど遠い、異質な始まり方だ。続く「New Clothes」は、童話「裸の王様」をモチーフに、“理想に呑まれた自分”への皮肉を込めて歌っている。バンドサウンドの広がりとともに、電飾であしらわれたステージの“LAMP IN TERREN”の文字が鮮やかなピンク色の光を放った。アーッと言葉にならない声で叫ぶ松本。心に蠢(うごめ)くドロドロとした感情を、その濃度を一切薄めずに音楽へと活写した楽曲の闇は深い。
「今日は、自分たちでもわかるぐらい様変わりした姿を、みなさんに証明しにきました」(松本)。最初のMCでそう伝えると、川口大喜(Dr)が刻む軽快なスネアのリズムが楽曲をリードした「Dreams」から「at (liberty)」へと、途切れさせることなくバンドの演奏でつないだ。「at(liberty)」は意外な選曲だったが、自分を閉じ込める籠(かご)からの“解放”をテーマにした楽曲だからこそ、今回のツアーに欠かせない1曲だろう。“どうか弱い僕にも/生きる意味がありますように”と悲痛な祈りを捧げる「亡霊と影」、中原健仁(Ba)が繰り出した妖しげなベースを合図に、「どっちのほうが頭かがおかしくなれるか対決しましょう。かかってこいよ」とフロアを挑発した「凡人ダグ」へ。中盤も、ひたすら心を剥き出しにした楽曲が続く。電飾が心臓の鼓動を表すにようにゆっくりと点灯した「heartbeat」や、荒ぶる演奏を聴かせた「innocence」といった過去曲は、これまでのライブで何度か聴いてきた楽曲だが、こんなにも血の通った生々しい歌として聴こえたのは初めてだった。
「テレンは生まれ変わった」とは、どういう意味なのか。端的に説明するなら、とてもリアルなのだ。インタビューで、松本は、これまでのライブは「ショー」だったと言っていた。「理想の世界」を演じることを正義としていた。だが、いまのテレンは違う。松本大が「松本大」のまま言葉を紡ぎ、叫び、身体を動かし、感情を爆発させ、その姿に触発されたメンバーの演奏が、曲を追うごとに鋭利なものになっていた。ぬぐいようのない闇を纏いながら、それでも光に憧れる。そういう人間の本質を、音楽で、ありのままに捉えようとしていた。ライブの後半、《あの光のように/暗闇のむこうへ》と歌う「Beautiful」、そして、赤裸々に自分を曝け出した「花と詩人」で、長く闇のなかを彷徨っていたライブに少しずつ光を差し始めた。そこまでフロアには拍手をすることすら憚られるような緊張感が張りつめていたが、その演奏を終えたあと、ずいぶん長いことフロアからは拍手が鳴りやまなかった。
「長い拍手だな(笑)」と、松本がつぶやいて、ようやく挟んだ二度目のMCで、今回のツアーを振り返った。「短く感じた」という川口に、「年のせいかな?」と、からかう大屋真太郎(Gt)。北海道からの移動で乗ったフェリーでは、激しい揺れに完全に船酔いしていた大屋の横で、松本は熟睡していたという話もあった。「俺、海賊になれる(笑)」。そんな松本の言葉で会場が和やかなムードに包まれると、陽性のアップナンバー「キャラバン」を皮切りに、いよいよライブは後半戦へと突入した。フロアが一斉にジャンプした「地球儀」では、松本が「まざってもいいかな?」とフロアへと降りて、お客さんと一緒にもみくちゃになって歌った。力強く「愛してるよ!」と叫んだ「オーバーフロー」、ひとりでは輝けないバンド自身のことを歌い上げた「月のこどもたち」。前半で、これでもかと苦しみや葛藤を歌い抜いたからこそ、終盤で歌われる光の歌たちは眩しいほど美しかった。
最後のMCで松本は語りかけた。「俺はずっと周りに憧れてたから、自分に足りないものを探して、それを埋めるように音楽を作ってきました。理想の自分になれれば、それが叶うと思ってたけど、理想に近づけば近づくほど、空っぽになって。気づいたら、自分のことを嫌いになってました。でも、音楽が好きだし、どうやったら歌い続けていられるかを考えたら、自分がやってることを、自分がいちばん信じること、愛することでした。だから、いまは胸を張って言います。俺はこのバンド、いまの自分が大好きです」と。さらに、「俺が自分を愛せたのと同じように、あなたたちも、自分を、僕を、俺を、わたしを愛せるような音楽を鳴らしていきたいと思います」と言うと、最後に、集まったお客さんの背中を押す曲として、「BABY STEP」を届けた。4人全員が一音一音に思い込めるように、身体を動かしながら伝えたのは、《僕が僕として生きることこそが/偉大な一歩目だから》というメッセージだ。長い間、自分との戦いを続けてきたテレンだったが、最後に、その歌を、自分のためだけではなく、「あなたへの歌」として届けることができたことが本当に素晴らしかった。
「本当は「BABY STEP」で終わりたかったんだけど……」(松本)と言いながら、再びアンコールで登場したメンバー。最後に届けたのは「緑閃光」だった。長くテレンの代表曲であり、ライブ本編に欠かせない曲だったが、いまは他にも素敵な曲が増えたことで、最近は演奏しない日も増えている。それが少し寂しいけど、うれしくもある。その曲の途中で、松本は「このなかに自分が嫌いだっていう人がいても、俺らの音楽を愛してくれる人を全力で愛します!」と伝えた。その言葉にフロアからは、この日いちばんの歓声が湧きあがった、
この日のライブでLAMP IN TERRENは7月28日に日比谷野音でワンマンライブ「Moon Child」を開催することを発表した。昨年、松本の声帯ポリープ手術からの「復帰の舞台」として、初めて野音に立ったテレンにとって、二度目の野音になる。あの日は、特別な意味を帯びたライブだったけれど、今回は本当に表現したいことために、同じステージに立つ。いまのテレンを、ぜひ多くの人に目撃してもらいたい。間違いなくかっこいいから。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:浜野カズシ】
リリース情報
The Naked Blues
2018年12月05日
A-Sketch
02.New Clothes
03.オーバーフロー
04.BABY STEP
05.花と詩人
06.凡人ダグ
07.亡霊と影
08.Dreams
09. Beautiful
10.おまじない
11.Water Lily
12.月のこどもたち
セットリスト
LAMP IN TERREN ワンマンツアー 2019 「BABY STEP」
2019.03.16@恵比寿リキッドルーム
- 01.I aroused
- 02.New Clothes
- 03.Water Lily
- 04.Dreams
- 05.at (liberty)
- 06.亡霊と影
- 07.凡人ダグ
- 08.heartbeat
- 09.innocence
- 10.Beautiful
- 11.花と詩人
- 12.キャラバン
- 13.オーバーフロー
- 14.地球儀
- 15.月のこどもたち
- 16.BABY STEP 【ENCORE】
- EN-1.緑閃光
お知らせ
LAMP IN TERREN 定期公演ワンマン「SEARCH」 渋谷Star lounge
3/26(火)「SEARCH #012」
4/26(金)「SEARCH #013」
5/26(日)「SEARCH #014」
6/26(水)「SEARCH #015」
7/26(金)「SEARCH #016」
8/26(月)「SEARCH #017」
爆弾ジョニー×LAMP IN TERREN 2MAN SHOW "Birthday’s"
3/23(土) 新代田FEVER
w) 爆弾ジョニー
鳴ル銅鑼 6th Anniversary 3days
3/31(日) 岐阜 柳ヶ瀬ants
w) 鳴ル銅鑼 / Large House Satisfaction
MAGIC OF LiFE presents DON’T STOP MUSIC FES.TOCHIGI 2019
4/13(土) 栃木市栃木文化会館・大ホール
Bentham『MYNE』リリース記念「GOLD RUSH TOUR 2019」
4/20(土)松山double-u studio
w) Bentham / and more
Bentham『MYNE』リリース記念 「GOLD RUSH TOUR 2019」
4/21(日) 高松DIME
w) Bentham / and more
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4/23(火) 岡山ペパーランド
w) Bentham
ムロナナイトカーニバル ~O-Crest 15th Anniversary day2~
4/30(火) 渋谷TSUTAYA O-Crest
w) The Floor / MAGIC OF LiFE / Mr.ふぉるて
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。