-KARMA- 下北沢シェルターでの自主企画『チャレンジャーin東京』
KALMA | 2019.04.09
開場直後からたくさんのオーディエンスが集まった3月21日、春分の日の下北沢シェルター。この日は-KARMA-の自主企画イベント『チャレンジャーin東京』。トップバッターは、昨年1月に活動を始めた大阪・高槻発のバンド、anicaだ。“センチメンタルギターロックバンド"というキャッチコピーの通り、もう会えない「あなた」への想いをキャッチーに歌に込めることができる彼らの、爽やかさとエモーショナルさが入り混じるステージだった。
そして二番手は-KARMA-と一緒にツアーをまわったこともあるMr .ふぉるて。稲生司(Vo/Gt)が今回のイベント出演について「スケジュールが詰まってるから最初は断ってたのに、悠月くんが何回も電話をかけてきたから……本当に何回も何回も!」と話して場を和ませていた。ライブでは女の子目線の歌詞にドキッとさせられたり、言葉の表現に独特な感性をほとばしらせる楽曲を若さみなぎるサウンドで届けると、会場の熱気がグッと上がった。
最後に登場したのは、-KARMA-。ふたつの同世代バンドたちに良い刺激を受けてか、1曲目の「ハレルヤ」から緊張感のある引き締まった表情でプレイする畑山悠月(Gt /Vo)、斉藤陸斗(Ba&Cho)、金田竜也(Dr&Cho)の3人。その緊張は馬力に満ちたビート感を生み出し、高校を卒業した春の不安なんて吹き飛ばすような疾走感となり何とも心地良い。
その勢いのまま「SORA」へと突入し、しっかりとメッセージ性のある“歌"を届けながらも、そこにある意味以上に楽しい気持ちにさせてくれるのが-KARMA-が生み出すポップ・ソングの凄さだなとあらためて思い知った。10代のバンドマンが歌う“等身大"の多くは、テーマ的には青春や恋愛、モチーフは学校やバイトやバンド、などである。リアリティを追求すれば、その一方でスケール感は小さくなりがちだが、畑山悠月(Gt /Vo)の手にかかれば、お金が欲しいとか、今日はついてないとか、バイトが続かないとか、そんなことを歌っていても聴いてるこっちは不思議と心が踊るような楽しい気持ちになる。その時、“等身大のスケール感"なんてとっくにはみ出して、どこまでも遠くに飛んでっちゃえる軽やかさがあるのだ。素晴らしいポップ・ソングのほとんどが、そういうものであるように。-KARMA-はもしかしたら、いつかホームランをかっ飛ばせるんじゃないかって、そんな夢を一緒に見させてもらえるバンドなのだ。
しかしMCで畑山がいったん喋り始めると、グダグダすぎて心配になるほど(笑)。この日は「東京は暑い!」と言い、しかし北海道在住なので「でも空港までが寒い!」とこぼす。斉藤と金田にも同意を求めるが、このふたりはそんな畑山にいつも通りクールに対処している。ステージ上でパーカーやジャージを着ている彼らに「その服、暑くないの?」と畑山が聞くと、斉藤と金田は「衣装だから」と涼し気な表情で答えていた。この掛け合いの温度差が最高(笑)。
そんなグダグダ感が和みを生んだMCを挟み、2月に配信リリースされたタイムリーな卒業ソング「クラスメート」へ。高校1年生の時に-KARMA-としての歩みが始まり、かけがえのない経験を重ねた高校時代を振り返りながら書かれた曲だけれど、今だからこそ強く心にある未来への決意のようなものを感じさせる演奏だった。それは冒頭に感じた引き締まった表情や緊張感に通じるもの。
この日は更に、未発表の新曲も披露してくれた。「クラスメート」での別れを経て、彼らが新たに目にする景色への予感が歌われているような印象を受けた。まるで3人のロードムービーを見ているような雰囲気だけれど、ミディアム・テンポで綴られている故の堂々たる佇まいが素晴らしい。若さと勢いにまかせた疾走感ではなく、ちゃんとこの歌を伝えたいんだという意志が伝わってきて、何だか“これからの-KARMA-もきっと大丈夫だ"と思った。
終盤は「イノセント・デイズ」から本編ラストの「僕たちの唄」で会場は更に楽しいムードになっていく。《部屋の明かりを点けたまま》(「イノセント・デイズ」)のコール&レスポンスや、オーディエンスの大合唱も生み出すライブ展開。満足気な3人の表情と共に、アンコールは「くだらん夢」で、最後にやりたい放題のエネルギッシュなパフォーマンスで魅了した。
3月23日に地元・札幌で行われる高校時代最後のワンマンライブを控え、東京で同世代バンドを集めて凄まじい熱気を生み出した、この日の-KARMA-の自主企画ライブ。終演後、畑山は「下北沢シェルターはやっぱり憧れのライブハウス」と言っていたが、今後は東京でも、もっと大きな会場に立つ日もそう遠くはないだろう。高校卒業という岐路に立ち、しっかりと未来を見据えている3人の気持ちが真っ直ぐに伝わってくる清々しい夜だった。
【取材・文:上野三樹】
【撮影:優瞳】
リリース情報
北海道限定・枚数限定シングル『クラスメート』
2019年03月20日
KARMA RECORDS
02.17歳になって
03.知らない世界
セットリスト
チャレンジャーin東京
2019.3.21@下北沢SHELTER
- 1.ハレルヤ
- 2.知らない世界
- 3.SORA
- 4.クラスメート
- 5.年上の、お前
- 6.イノセント・デイズ
- 7.僕たちの唄
- 【ENCORE】
- EN-1.くだらん夢