オメでたい頭でなにより 「“1”マンツアー ~今 いくね くるね~」
オメでたい頭でなにより | 2019.04.22
「思いやりのブツけ合い」。これはここ最近、オメでたい頭でなによりのボーカル赤飯がライブ中に頻繁に口している言葉だ。
同じライブ会場へと集まった仲間を信用し、各位をぶつけ合い受け止め合う中から生まれ、育まれていく信頼感や絆感、そして一緒にライブを成立させているような達成感とも捉えられる、この楽しみ方。それは他のラウドロックバンドからはけっして味わえない、彼ら独特のものだったりもする。
基本、彼らのライブは激しくハードでヘヴィだ。にも関わらず、そこに無数のダブルピースや至福な表情、笑顔を会場中に溢れさせているのは、やはりその「思いやりのブツけ合い」が成されているからに違いない。そしてそんな彼らが今年頭に発売した1stフルアルバム『オメでたい頭でなにより1』は、あえてダークな部分や奥底もさらし、それを経たが故に辿り着けた約束の地へと皆を案内するかの作風も手伝い、より信憑性や信頼度をアップさせた。まさにこの日のライブは、その辺りをありありと感じ取れた一夜でもあった。
彼ら史上最大となる全国ワンマンツアー「オメでたい頭でなにより"1"マンツアー ~今 いくね くるね~」のちょうど中盤となるライブが、このマイナビBLITZ赤坂にて行われた。
この日は折しも彼らのメジャーデビュー日からちょうど1年目。彼ら最大規模のキャパシティにも関わらずワンマンにてソールドアウトを記録し、彼ら至上最大規模のライティングやビジョン、演出や特効等の助力もあり、これまでで最も「思いやりのぶつけ合い」が全開のライブを体験することができた。
いつもながら彼らのライブのおもてなしは入場時から始まっている。ステージ上の装飾類を始め、安全にライブを観覧できる「デリケートゾーン」、親子揃って楽しめる「大五郎シート」、そして今回はそれらに加え、時には声を出したり拳を挙げてもOK、あくまでも常識の範囲で程々に騒いでも良い「サイドギャザー」も新設された。老若男女が思い思いに自分のペースで楽しむことが出来る為の配慮はさすがだ。また、開演時には「オールナイト会場」と題した恒例の赤飯による疑似ラジオ風番組が場内を和ませてくれた。中でもオープニングアクトの赤飯、ぽにきんぐだむ(Gt&Vo)、植田知成(マッチョ29)の登場の際には、ここ最近、鍛え上げてきた己の自慢の筋肉も惜しみなく披露。喝采を浴びていた。
オレンジのライトでステージが発光する中、ミト充(Dr)、324(Gt)、ぽにきんぐだむ、mao(Ba)の順にメンバーがステージに現れる。ちょっと間を置き登場した赤飯は、バンドロゴの入ったバスタオルを雄々しく掲げながらの悠々なる登場だ。オープニングは「日出ズル場所」が飾った。ヘヴィながらポップさを同居させたまさに彼らの面目躍如な楽曲が、飛び交うレーザー光線の中、会場を一つにしていく。早くも324はステージフロントのステップに上がりギターソロをキメ、ぽにきんぐだむも得意のラップパートをぶちかましていく。
「やってきましたよマイナビBLITZ。今日はちょうどメジャーデビュー1周年だから」と、彼らのメジャーデビュー曲「鯛獲る」に。三味線の音色も混じり、彼らの自己紹介ソングが会場にますますの一体感を育んでいく。間には赤飯による「BLITZソールドアウト獲ったど!!」も。その際の彼の誇らしげな顔も印象深い。
「wosushi~ウォールオブ寿司~」では各ブロック毎にシャリ、ネタに分かれるも、この日は4つのブロックに別れウォールオブお寿司を展開。見事に4つの大きな思いやりのブツけ合いという共同体が育まれていくのを見た。各人のソロのリレーションから、「日頃のヤなことを全て置いて行けよ!」と「えんがちょ!」に入るとバックのスクリーンに雷(いかずち)も出現。サビで現れるストレートさも伴い、重いはずのサウンドが疾走感と共に会場中を軽やかに駆け抜けていく。同曲では赤飯の絶叫スクリームも炸裂。レーザーの効果と相い交わりハイライトの一つを作り上げていく。
中盤はよりライティングや様々な仕掛けが我々を次々に驚かせた。サビで現れるラテンポップが会場を一つにした「言葉のあやや」では場内にライトが徘徊し、情報量の詰まった言葉たちの連射とそこを抜けたあとのストレートさが痛快な「HELL"O"」では幻想的なレーザーライトも楽しめた。そして、mao もスラップをキメた「サイレンとジェラシー」にて、場内を2ステップからラテンポップ、はたまたハードロックと多種多様に会場をバウンスさせ、彼らの歌がきっかけでカップルになった逸話に捧げられた「ピ」ではミラーボールも回り出し至福感で場内が包まれていった。
中盤以降は、よりエンタテインメント性の高いナンバーが連射された。作品同様、会場を、えっ、ド●カムのライブ?と惑わせた「終わらない恋からの脱出」では、ぽにきんぐだむもMr. P・KDとしてピアニカを、そして次いでミニサックスを用意し我々を飽きさせない。また、2種類のバージョンを楽しませてくれた「鯛アップ」を経て、「推しごとメモリアル」の際には、彼らならではのバラエティさが炸裂。ラウドロックとアイドルの融合を楽しませてくれた。また、「ダルマさんは転ばないっ」での1000人越えのだるまさんが転んだのフリーズ状態には壮観さすら感じた。
ここからは後半戦。ライブはクライマックスへと走り出していく。
その口火を切った「スーパー銭湯~オメの湯~」では、今回もアヒルのボートに赤飯が乗り会場を航海。レーザーも飛び交う中、ぽにきんぐだむのラップも会場をグイグイ惹き込んでいく。そしてタンクトップ姿のオメディ・マーキュリーが映画「ボヘミアンラプソディー」ばりのスキャットのコール&レスポンスを経て入った「We will luck you」では、みなが歌い、彼らの歌がみんなの歌に変わった瞬間を見た。
実は赤飯は2015年8月に当時自身のバンドであった、赤飯ロマン横丁でもこのBLITZにはワンマンで立っている。そのことも振り返り、こう語った。「むちゃくちゃその時に悔しい思いをした。その日は自分の誕生日だったけど、なんでこんなに裏切られるんだろうという気持ちをプレゼントされ自己嫌悪に陥った。だけど、それが今やこの光景。もうこれで俺は十分。過去への最高の反撃ができた。そしてそれを実現させてくれたのがバンドのメンバーでありスタッフ、そしてやはり皆さんのきっかけのおかげ。残念ながらわしらは直接みんなのことを幸せは出来ない。幸せの形は人により千差万別だから。でも、何か前に進む、ワクワク出来るキッカケぐらいは作れるかもしれない。そして、その使命に気づかせてくれたり、自覚させてくれたきっかけを与えてくれたのはみなさんに他ならないんです。これからはそのもらったきっかけを感謝で返していくから」と決意を力強く述べ、「お前らワクワクしてるか?わしはむちゃくちゃワクワクしている!俺たちがお前たちをワクワクさせてやる!!」と入った、革命&航海ソング「ザ・レジスタンス」では、満場に勇気と希望の風に帆を膨らませるように悠々と船出していく様を見た。同曲で会場中から掲げられた無数のピースサイン。そのピースをダブルピースに変えたのは本編ラストの「オメでたい頭でなにより」では、紅白の紙吹雪が放出されフロアいっぱいに舞ったのも印象深かった。「俺たちとお前たちを合わせてオメでたい頭じゃ!!」と放たれた同曲が一旦場を大団円で締めた。
アンコールでは一歳の誕生日を祝うのと同時に、これからの躍進を約束してくれるような楽曲やMCが印象深かった。「VIVA!ハピバ」では、レインボーのライトの中、とめどないほどのカラフルな風船がフロアに降りおりていく壮観を見たし、お手を拝借の大団円ソング「宴もたけなわプリンセス」、正真正銘のラストの「チャバシラタッター」ではフロアに大きなサークルの湯呑みを作り出し、客電全開の中、みんなが一斉にジャンプしライブを締めた。やり切った表情と沢山の幸せそうな笑顔を残し彼らはステージを去った。そのあと、場内にはしばらくほのかな幸せさだけが残っていた。
このツアーは4月21日(日)のヴォーカル・赤飯の出身地である三重県松阪市(赤飯が松阪市ブランド大使でもある)のM’AXAまで続いていく。是非とも彼らのデビュー1周年をお祝いすると同時に、彼らとの思いやりのブツい合いも大いに楽しんで欲しいと思っている。そこにはちょっとした激しさを伴うかもしれないが、終演後には得もしれぬ温かさや活力、そして入場時よりもちょっと優しくなり思いやりを持った自身と出会えるはずだから。
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
オメでたい頭でなにより1
2019年01月09日
ポニーキャニオン
02.鯛獲る
03.鯛アップ(TVサイズ)
04.日出ズル場所
05.言葉のあやや
06.We will luck you
07.ピ
08.サイレンとジェラシー(オメワン Ver.)
09.終わらない恋からの脱出(妄想LIVE Ver.)
10.歌謡サスペンス劇場~わたしがやりました~(オメワン Ver.)
11.HELL”O”
12.チャバシラタッター
セットリスト
オメでたい頭でなにより
"1"マンツアー ~今 いくね くるね~
2019.4.4@マイナビ赤坂BLITZ
- 1.日出ズル場所
- 2.鯛獲る
- 3.wosushi~ウォールオブ寿司~
- 4.えんがちょ!
- 5.言葉のあやや
- 6.HELL"O"
- 7.サイレンとジェラシー
- 8.ピ
- 9.終わらない恋からの脱出
- 10.鯛アップ
- 11.推しごとメモリアル
- 12.ダルマさんは転ばないっ
- 13.スーパー銭湯~オメの湯~
- 14.We will luck you
- 15.ザ・レジスタンス
- 16.オメでたい頭でなにより 【Encore】
- En-1.VIVA!ハピバ
- En-2.宴もたけなわプリンセス
- En-3.チャバシラタッター
お知らせ
オメでたい頭でなにより"1"マンツアー ~今 いくね くるね~
04/21(日)松阪M’AXA
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。