SHE’S ツアーファイナル バンド初のZEPP東京
SHE’S | 2019.05.08
3rdアルバム『Now&Then』(2019年2月)のリリースに伴う全国ツアーのファイナル、Zepp Tokyo公演。これまでで最大規模のキャパシティ、チケットはソールドアウト。超満員のオーディエンスの前でSHE’Sは、(“Now&Then”というタイトル通り)バンド本来のオリジナリティと新たな音楽的挑戦がひとつになった素晴らしいステージを見せてくれた。
SEが止まり、会場の照明が落とされ、大歓声のなかでメンバー4人がステージに登場。井上竜馬(Key/V)が歌い出し、ライブがスタート。「The Everglow」の壮大なストリングスとともに“あの頃と変わらないものはない”“今も色褪せないものは/まだこんなにもあるよ”というフレーズが聴こえてきた瞬間、一気にSHE’Sの音楽世界が広がっていく。この曲は井上に“何にも捉われず、もっと自由に音楽をやっていこう”というモチベーションをもたらし、アルバム『Now&Then』の起点になったナンバー。
さらにエレクトロのテイストを取り入れたトラックが響き、観客のハンドクラップ、コーラスの大合唱が生まれた「Un-science」、井上がレスポールを弾いたギターロックチューン「Used To Be」、「1年前より1か月前より1週間前より1日前より、常に進化と変化を求め続けてきたツアーファイナルを見せます」(井上)という言葉に導かれた「Change」を続けて披露。広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)による骨太にしてしなやかなグルーヴ、服部栞汰(G)のロッキンな迫力と鮮やかなメロディを共存させたギタープレイ、楽曲の軸となる井上の鍵盤のフレーズがひとつになったバンドサウンドも最高。井上の言葉通り、このツアーによってSHE’Sのアンサンブルは確実に進化を果たしたようだ。
「今日はツアー“Now&Then”ファイナルということで、初めてのZeppTokyoです。初めて来た人も、そうでないない人も、みなさんでひとつになって最高の1日を作れたらなと思います!」(服部)という挨拶の後も、アルバム『Now&Then』の楽曲を中心に進行。最新鋭のエレクトロと本来のバンドサウンド、エッジ―なギターソロを自然に結びつけ、SHE’Sにしか体現できないポジティブな高揚感を生み出した「歓びの陽」、時計の音を想起させるSEから始まり、エモロック~トロピカルハウスを融合させたトラックとともに“時を止めて、君といたい”という切実な思いを描いた「Clock」、虚しい気分を抱えながらも、それでも光を求めてしまう心情をエモーショナルに表現した「Set a Fire」、そして、エキゾチックな手触りのメロディ、ダイナミックなバンドグルーヴが渦巻いた「Upside Down」。ジャンルの壁を果敢に打ち砕き、まさに“今”と“これまで”を有機的に融合させた音楽性、そして、生々しい感情を反映させた歌。アルバム『Now&Then』の収録曲は、SHE’Sのライブ表現の幅をしっかりと広げていた。それこそが今回のツアーの最大の収穫だろう。
「4月になって、新生活が始まって。そのなかでペースがわからなくなったり、焦ったり。そのなかで、思ってもないことを言ってしまったり、言いたいことが言えなかったり、大切な人を傷つけてしまうこともあると思います。自分にとって大事なことをポケットにいれて、やばいときは思い出してほしいなと。それがSHE’Sの曲だったら嬉しいなと思って書いた曲です」という言葉に導かれたのは、「Tonight」。リスナーの日常に寄り添い、前を向いて進んでいく力になりたい――そんな真摯な願いが込められた楽曲が存在していることも、このバンドが支持を広げている理由なのだと改めて実感できるシーンだった。
ライブ中盤では、ミディアムナンバー、バラードを続けて演奏。洋楽テイストの洗練されたメロディラインと“どんな困難があっても、希望を捨てずに旅を続ける”という意思を込めた歌が静かに広がった「ミッドナイトワゴン」。服部のフィードバック・ギターから始まり、哀切な思いを含んだ旋律とともに“ここにはいない人”に向けられた感情を響かせる「Ghost」。そして、もっとも心に残ったのは「月は美しく(Album ver.)」。“あなたに会いたい”という純粋な恋心を歌ったこの曲は、サウンドと同様、歌詞においても“枠”を取り払い、表現の幅が大きく広がっていることを証明していた。
「大阪から上京してきて、2年経って。やっと東京に馴染めてきました」(木村)という話から“東京のなかで好きな場所”トークで和んだ後は(ちなみに木村さんのお気に入りは吉祥寺だそうです)、ライブは後半へ。観客と一緒に“ワン、ツー、ワンツースリーフォー!”というカウントから始まったパーティーチューン「Sweet Sweet Magic」ではベース、ドラム、ピアノ、ギターの順番でソロ演奏を挟み、ステージとフロアの距離をさらに縮めていく。さらに軽快なストリングス・サウンドとともに華やかな空間が生まれた「Over You」、ブラスを大胆に取り入れたソウルフルなグルーヴで会場全体がダンスフロアに変貌した「Dance With Me」も。服部、広瀬もステージの前方に進み、積極的にオーディエンスとコミュニケーションを取る。SHE’Sのライブでここまで気持ちいい一体感を味わえたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「自分が落ち込んだりとか、“うーん”と思ったときに、いままでもらってきた言葉を思い出します。そのひとつひとつが自分を作ってきて、自分を支えていて。行く先を照らしてくれてるような気持ちになります。何より、みなさんに支えられて音楽を続けられているなって」。そんな言葉とともに奏でられたのは「Stand By Me」。“出逢えて良かったんだ”という強い思いが真っすぐに伝わるこの曲で本編は終了した。
アンコールでは、「新曲もバンバン書いてるんですよ。まだ曲名も決まってないんだけど、やっていい?」(井上)と新曲を演奏。“この先のSHE’S”を少しだけ感じさせながらライブはエンディングを迎えた。9月から10月にかけて、全国11か所の対バンツアー「SHE’S UNION Tour 2019」、さらに管弦楽団を迎えたホールワンマンライブ「Sinfonia “Chronicle” #2」(11月22日/NHK大阪ホール、12月3日/中野サンプラザ)も決定。音楽性、ライブのスタイルを含め、さらなるスケールアップを続けているSHE’S。結成8年目、メジャーデビューから3年目を迎えた彼らはいま、大きな飛躍の時期を迎えているようだ。
【取材・文:森朋之】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
Now & Then
2019年02月06日
ユニバーサルミュージック
02. Dance With Me
03. Used To Be
04. Clock
05. 歓びの陽
06. Set a Fire
07. ミッドナイトワゴン
08. Upside Down
09. 月は美しく(Album ver.)
10. Sweet Sweet Magic
11. Stand By Me
お知らせ
SHE’S UNION Tour 2019
9/15(日) 鹿児島・SR HALL
9/16(月・祝) 熊本・B.9 V1
9/20(金) 福井・CHOP
9/23(月・祝) 栃木・HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
9/28(土) 山口・周南RISING HALL
9/29(日) 香川・DIME
10/5(土) 静岡・LIVE ROXY
10/13(日) 北海道・札幌Sound Lab mole
10/14(月・祝) 北海道・旭川CASINO DRIVE
10/19(土) 山形・ミュージック昭和Session
10/20(日) 岩手・CLUBCHANGE WAVE
Sinfonia “Chronicle” #2
11/22(金) 大阪・NHK大阪ホール
12/3(火) 東京・中野サンプラザ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。