My Hair is Bad バンド史上最大規模の横浜アリーナ2 DAYS
My Hair is Bad | 2019.05.09
『ファンタスティックホームランツアー』のファイナルを飾ったのは、バンド史上最大規模の会場である横浜アリーナでの2 DAYS公演。17日も前日に続き、2階のスタンド席の奥までが約1万2千人の観客で埋め尽くされていた。
開演時間となり、ステージに現れた椎木知仁(G・Vo)、山本大樹(B・Cho)、山田淳(Dr)を包んだ歓声。そして、3人が一斉に鳴り響かせた爆音を起爆剤として「惜春」がスタートした。広大な会場を熱いサウンドが染め上げた様をまざまざと体感した観客は、早くも居ても立ってもいられない様子で大興奮。続いて「グッバイマイマリー」と「18歳よ」も披露されたのだが、3人のアンサンブルの熱量の高さが、とにかく半端ではない。ライブハウスで叩き上げられたMy Hair is Badのサウンドは、アリーナ会場でもリアル極まりないものであることが、オープニングの3曲で既に堂々と示されていた。
「新潟県上越市から来ましたMy Hair is Badです。よろしくお願いします! 2日目にして俺ら一番いい状態。まあ俺らもそうだし、特に俺! 自分のことだからよくわかる。一番いい状態でここに来てます。思いっきり楽しんで帰るので、みんなも楽しんで帰ってください」――椎木のMCを挟んで突入した「微熱」は、瑞々しいメロディと疾走感に溢れたバンドサウンドが圧倒的に気持ちよかった。そして、さらに届けられたのは、「愛ゆえに」と「接吻とフレンド」。繊細に揺れ動く心情、奥行き深い物語性、パンキッシュなパワーが融合しているサウンドが抜群にきらめく場面が続いた。
スポットライトを浴びた椎木がエレキギターを弾きながら歌った後、山本と山田の演奏も合流。赤色の照明で染まったステージからエネルギッシュなサウンドが一気に迫ってきた「真赤」は、彼らの豊かな表現力をまざまざと体感させてくれた。そして「悪い癖」と「運命」も披露されたのだが、瑞々しいエモーションが歌と演奏の両方に漲りまくっていた。じっくりとストーリーと心情を語るかのように届けられた「卒業」がエンディングを迎えた瞬間、感極まった観客は一斉に拍手。爆発的なサウンドが誘う開放的な発汗×美メロによる涙腺の刺激というマイヘアならではの粋な併せ技が冴えわたっていた。
歌っている時は絶好調なのに、MCとなると途端に噛みまくった自分に苦笑いしながら「舌を返してくれよ!」とボヤいていた椎木。そんな和やかな小休止を挟んで雪崩れ込んだ中盤戦は、観客を激しく巻き込む曲の連発で幕開けた。「アフターアワー」「クリサンセマム」「ディアウェンディ」「元彼氏として」「燃える偉人たち」……あらゆる曲が生々しいエネルギーの塊として迫ってきた。そして、椎木が観客に語りかけた言葉とメッセージが、そのまま自ずと曲と化していくかのようだった場面にも、ぜひ触れておきたい。「ワンマンでライブをやる。それに対して俺が持ってる一番の気持ちは、“いいライブをしたい”“いい歌が歌いたい”“次のCDが売れればいい”じゃなくて“ありがとう”です。このバンドをやってて一番の目標は、“喜ばせたい”と“びっくりさせたい”の2つ。共感してくれたやつ、俺らの曲に自分を重ねたやつ、俺に似てるやつ、そいつらを俺は絶対に救う。今夜ここの全員を救ってやるよ!」と語った後、「問われてるのは“誠実さ”。そして“優しさ”。その2つだけで人生丸ごと動いていくものだと思ってる。繋がれる唯一の手段は“共感”だ。“同調”じゃない。温度のない“共感”なんていらない」と、ギターを弾きながら言葉を重ねた椎木。そして、「価値をつけるのは誰かじゃない。お前だよ。他人の価値を信じるなよ。他人に言われた価値より、自分で見つけた価値だ!」というメッセージを添えて突入した「フロムナウオン」は、観客の心に優しく寄り添いつつ、激しく奮い立たせているのを感じた。
「裸」と「戦争を知らない大人たち」も披露した後、「自分の人生が1本の映画だったとして、バッドエンドの映画にしたくないんだよ。観た人が羨ましいと感じるような、そういう映画になったらいいなと思ってる。人生が1本の映画だったとしたら、みんなはどういう映画にしたいですか? そういう曲です」というMCを挟んでスタートした新曲「芝居」は、温かいメロディが観客を包みこんでいた。そして、再び迎えたMCタイムで、椎木は横浜アリーナでワンマンライブができていることの喜びを改めて語り、所属事務所の社長やスタッフ、「My Hair is Badは、横浜アリーナでやると思うよ」と言って彼らを信じてくれたレコード会社の担当者、支えてくれているファンに感謝。「まだまだいっぱい挑戦していきたくて。応援してください。応援したくなるようなかっこいいバンドでいます!」という力強い言葉は、大きな拍手を巻き起こしていた。
現在の彼らに漲っている熱いエネルギーが、そのまま表現されている曲として届いてきた「次回予告」。星空のような電飾に彩られたステージから放たれ、観客の大合唱を誘った「ドラマみたいだ」。3人が一丸となったサウンドが横浜アリーナ全体を心地よく揺さぶった「告白」で本編は終了。メンバーたちはステージを後にしたが、高まる一方の手拍子と歓声、全エリアの客席で掲げられたスマホの真っ白いライトに応えてアンコールが行われた。演奏を始める前に、昨日、この会場でライブをした後、自宅に戻ってからのことを語った椎木。余韻に浸りながらセンチメンタルな気持ちになっていた彼は、LINEグループに長文を送ったのだという。それに対して「明日も頑張っていこう!」というような反応があるのを期待したのだが、メンバーやスタッフたちが繰り広げたのは、砕けたトーンのにぎやかなトーク。納得がいかないまま、さらにもう1通の長文を送っても、変なスタンプが返ってくるのみ……。「クヨクヨしてたらLINEが入って、やまじゅんからの長文が来てました。俺、“まじで救われる”って返信したもん(笑)」――明かされたエピソードは、時にはふざけながらも、ちゃんと支え合っているメンバー同士の関係性が窺われて、とても心温まるものがあった。
「いいメンバーと、チームと、みんなに恵まれて、とにかく幸せです。本当にどうもありがとう! みんなにも幸せになってもらいたいんだよ。じゃあ、My Hair is Badで一番あったかい歌を」と椎木が言って、アンコールの1曲目に届けられた「いつか結婚しても」で沸き起こった観客の大合唱は、穏やかな幸福感に満ち溢れていた。そして、「音楽家になりたくて」と「エゴイスト」も披露されて迎えた完全燃焼のエンディング。明るい笑顔を浮かべながら何度も手を振っていたメンバーたちを見送った拍手と歓声は特大級だった。
歌と演奏の迫力が圧倒的だったのはもちろん、3人の心も間近に感じられたこのライブは、彼らの活動の規模がどれだけ大きくなっても決して変わらない本質が貫かれているのを感じた。椎木のMCでの言葉を借りるならば、My Hair is Badの活動の根底に存在し続けるのは“喜ばせたい”“びっくりさせたい”という素朴な願いであり、“誠実さ”“優しさ”という真っ直ぐな姿勢なのだと思う。それを再確認することができたこのライブは、彼らの今後の活動への期待をますます大きいものにしてくれた。
【取材・文:田中大】
【撮影:藤川正典】
リリース情報
hadaka e.p.
2018年11月07日
EMI Records
2.惜春
3.微熱
4.天才っていいな
5.裸
セットリスト
ファンタスティックホームランツアー
2019.4.17@横浜アリーナ
- 1.惜春
- 2.グッバイマイマリー
- 3.18歳よ
- 4.微熱
- 5.愛ゆえに
- 6.接吻とフレンド
- 7.真赤
- 8.悪い癖
- 9.運命
- 10.卒業
- 11.アフターアワー
- 12.クリサンセマム
- 13.ディアウェンディ
- 14.元彼氏として
- 15.燃える偉人たち
- 16.フロムナウオン
- 17.裸
- 18.戦争を知らない大人たち
- 19.芝居
- 20.次回予告
- 21.ドラマみたいだ
- 22.告白
- en-1.いつか結婚しても
- en-2.音楽家になりたくて
- en-3.エゴイスト
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※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。