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THE BEAT GARDEN ソールドアウト公演 東京・TSUTAYA O-WEST

THE BEAT GARDEN | 2019.05.16

 まだまだ道半ばであること。彼らの夢が辿り着く先は未だ遥かに思えるくらいに遠く、そう易々とは手が届かないだろうこと。そんなことは過ぎるほど充分にわかっていて、なお洋々と未来を見つめて揺るがない視線。想像するだに立ちすくんでしまいそうなその距離を前に、怯むことなく踏み出し続けた一歩一歩がTHE BEAT GARDENを再びこの場所に連れてきた。この場所とはそう、約1年8ヵ月ぶりに立つ東京・TSUTAYA O-WESTのステージだ。前回はメジャーデビュー後初のワンマンライブにして“Sprout Tour”と題された東阪ツアーの最終日として行なわれたが、今回は2ndアルバム『メッセージ』を携えて6都市6公演を回る初の全国ツアー“one man live tour 2019「Message」”の初日を飾る。同じ会場だからこそ、そのコントラストと格段のスケールアップにTHE BEAT GARDENというグループの着実な成長が窺い知れるというものだろう。

 改元直後の5月5日、令和の時代にを迎えて最初のワンマン公演となったこの日。チケットは待ちに待った全国ツアーの開幕をメンバーとともに祝そうと駆けつけたオーディエンス、すなわち“Beemer”と彼らが親愛を込めて呼ぶ大勢のファンたちによって見事にソールドアウトした。パンパンに膨れ上がった期待をかろうじて押しとどめていた理性の箍が4人の登場によってあっさりと決壊すれば、瞬く間にO-WESTはビートとサウンドが色とりどりに咲き乱れる百花繚乱のガーデンパーティと化す。腹の底から突き上げる重くて太いリズムの上で、伸び伸びとその肉体を躍らせるU、REI、MASATO。3人の背後に控えるDJ SATORUも激しく体を揺らしては腕を振り上げ、フロアを煽る。のっけからエンジン全開で迫る4人の勢いに、しかしオーディエンスもただ呑まれてなどいるはずもなく、率先して大声で合唱しては彼らと一緒になって拳を挙げ、と全身全霊の一体感で応えにかかるのだからなんと頼もしいことか。『メッセージ』のリリースからまだ2ヵ月足らずだが、どの曲もすっかりBeemerたちの血肉となっていることに感嘆せずにいられない。THE BEAT GARDENから受け取ったメッセージを今度はBeemerが返す番だ、そんな意気込みがひしひしと伝わってくる。

 まさに相思相愛と呼びたい、ステージとフロアの阿吽の呼吸。それを如実に感じたのは「花火」でのことだった。♪君が好き、というUの頭サビから始まるこの曲だが、気負い過ぎたのか、その歌い出しの場面で珍しくUがピッチを少々見失ってしまう。即座に「ズレてる、ごめん!」と自己申告して謝るUを笑顔で受け止めつつ、続きを歌うオーディエンス。その温かさに励まされたのだろう、Uもすぐに自分を立て直し、結果として曲は途切れることなく最後まで、ひときわ情感豊かに紡ぎ上げられたのだ。もちろん最初から仕切り直したってそれはそれでよかっただろうし、そこで失速してしまうほど今のTHE BEAT GARDENは脆弱ではない。きっとBeemerもそれは知っているはずだ。とはいえ、できることならスタートダッシュの勢いを削ぎたくはないし、削がせたくもない。そうした互いの無言の機微が共鳴し合って生まれた小さな奇跡。それがこの場面だった気がするーーと書いては大げさだろうか。デビューからまもなく3年、THE BEAT GARDENが誠実に積み上げてきた信頼、結んできたファンとの絆のかけがえなさを改めて見せつけられたようにも思う。

 7月21日まで続くツアーゆえ、曲目などの詳細にはここでは触れずにおくことにするが、『メッセージ』を主軸にしたステージは想像以上に新しく、彼らが次なる高みにのぼろうとしていることを予感させた。フロントの3人3様の自在さでありながら揃えるところは揃え、決めるところは確実に決める絶妙至極なパフォーマンス。それは活動の当初から彼らが標榜するEDR(エレクトリック・ダンス・ロック)の枠を越えていっそう広がった音楽性の幅に伴ってさらに磨きがかかり、各々の声にもメッセージ性の色濃く宿した歌を放ってなお説得力のある滋味や厚みが備わった。胸を打つミディアムバラードも、アグレッシヴかつ妖艶なロックチューンも、おバカでお茶目にはっちゃけた「ダンシング・マン」も、それぞれに特化して表現できるのが今のTHE BEAT GARDENの強みだろう。ここにきていや増すSATORUの存在感も然り。実は彼がグループのキーパーソンかもしれないとうっかり思わせてしまうほどこの日のステージでも大活躍を見せた。

 何より特筆すべきは徹頭徹尾、彼らが等身大だったこと。歌っているときの端正な佇まいとMCで顔をクシャクシャにしてバカ笑いするUのギャップも、匂い立つような妖艶さを纏ったかと思えば少年のごときあどけなさを垣間見せるMASATOの一瞬も、曲紹介ですごくいいことを言っているのに肝心の部分で噛んでしまうREIの人間味(それをごまかさず「ごめん、噛んだ」と照れつつ告白する潔さも)、前には出てこなくとも口元を見れば明らかに熱唱しているSATORUのグループ愛も、何もかもを彼らはありのままにさらけ出し、オーディエンスに対峙する。彼らの歌がまっすぐに胸に刺さるのは、そうした姿勢が音楽にも滲んでいるからに違いない。もとより計算のない、直球なステージングが魅力の彼らだが、『メッセージ』のタームに入って以降、さらに純度を増した印象がある。オーディエンスとともに♪ウォーオーオーとコーラスを響かせた「本当の声で」が今日も胸に迫るのは歌詞に描かれた主人公の、葛藤や逡巡を抱えながらなお夢に手を伸ばそうとする姿が4人とリアルに重なるからこそ。生身の彼らが立体的に浮かび上がるから、この曲は聴き手の背中をも力強く押すのだろう。アルバムのタイトルナンバーでもある「メッセージ」に綴られた“泣きじゃくった瞳にしか映らない/未来があるはずだから”という、彼らでなければ出てこなかっただろう一節がいつまでも耳の奥にこだまして止まない。

 「今日ね、来られていない仲間もたくさんいるんですよ。だから……まだ発表できないんだけど、もうワンステップアップした大きい会場で年内にやりますので、楽しみに待っててください」

 『メッセージ』がチャートで自身最高位をマークしたこと、5月25日にアメリカ・北カリフォルニアで開催される最大級のアニメコンベンション“FanimeCon”への出演が決定したことを報告し、それらはすべてみんなの応援のおかげ、みんなで勝ち取ったものだとアンコールのMCで口にしたUは、続けてそんな嬉しいニュースをも明かした。大阪で出会い、上京して右も左もわからないまま手探りで必死にもがいてきた自分たちをここまで支えてくれたBeemerやスタッフへ改めての感謝、「これからも一緒に歩んでください」という心からの願いも。そうして歌われたのは最新曲「ぬくもり」だった。彼らにとってこれまた初ドラマタイアップとなる『都立水商!~令和~』の主題歌にして、初披露となるこの曲にオーディエンスのクラップが自然発生的にはじける。EDMを基調としたアップテンポなサビをメインに据えながらもアコースティックなニュアンスや緩急のメリハリが心地好い、THE BEAT GARDENの世界を大きく拓くだろう会心の1曲だ。

 「初日で正直、すごく不安でした。みんなは絶対助けてくれるってわかってたけど、やっぱりみんなには喜んでほしいから、それに負けないくらい準備して、本当に最高の時間を過ごすことができました。この気持ちを持って次の会場に行きます。行けない人も一緒に走ってるつもりで、ツアーだけじゃなくその先も一緒に歩んでください。みんな、大好きです!」

 ひっきりなしに注ぐ拍手の中、エンディングを噛み締めるようにUがそう語りかけた。マイクを通さぬ生の声だが、その言葉と込められた想いはもれなくオーディエンスに届いたはずだ。すべてを出し切ることができたのだろう、肩を組んだ4人の清々しく誇らしげな表情に新たな旅の始まりを実感する。先述の「ぬくもり」がこのツアー中、6月26日にシングルリリースされること、カップリングである「スタートボタン」も映画『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』挿入歌に決定した。いよいよ快進撃の始まりか!? 彼らの足取りからますます目が離せなくなってきた。

【取材・文:本間夕子】
【撮影:西槇太一】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THE BEAT GARDEN

リリース情報

ぬくもり

ぬくもり

2019年06月26日

ユニバーサルシグマ

01.ぬくもり
02.スタートボタン
03.ヒューマン
04.ぬくもり (Instrumental)
05.スタートボタン (Instrumental)
06.ヒューマン (Instrumental)

お知らせ

■ライブ情報

THE BEAT GARDEN
one man live tour 2019「Message」

5/24(金)【大阪】梅田CLUB QUATTRO
6/15(土)【愛知】名古屋RAD HALL
6/29(土)【岡山】岡山IMAGE
7/13(土)【宮城】仙台MACANA
7/21(日)【香川】高松DIME

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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