パノラマパナマタウン、新曲も披露したワンマンツアー『HUMAN PARTY』ファイナル!
パノラマパナマタウン | 2019.05.28
初めて全国9都市で開催したパノラマパナマタウンのワンマンツアー『HUMAN PARTY』が恵比寿リキッドルームでファイナルを迎えた。これまで東名阪のみのワンマンツアーを開催したことはあったが、今回のように細かく全国各地をまわったワンマンツアーは、バンド初の試み。そのファイナルのステージで岩渕想太は、「どれだけ人数が集まっても、俺は一人ひとりに伝えるためにやっていきたいです」と力強く語りかけた。ツアータイトル「HUMAN PARTY」=人間集会と名付けたライブは、演者と観客、あるいは、ステージ上とフロアというお互いの立ち位置に関係なく、そこにいる全員が「人間 対 人間」としてぶつかり合い、全力で「生きること」を肯定する熱く泥臭い一夜だった。
「はじめようぜー!」。真っ赤な照明に照らされて、メンバーがステージに現れると、「Top of the Head」からライブがはじまった。「ギターヒーロー、浪越康平ー!」。岩渕の言葉を合図に、ステージ際まで歩み出た浪越が繰り出した、「これぞ、ギタリスト!」と叫びたくなるようなフレーズが会場の興奮を一気に高めていく。ダーティなヒップホップの危険な匂い、古いロックンロールのいなたさ、キャッチーなメロディ。それらが絶妙なバランスで混じり合うパノラマパナマタウンのロックは、他の誰にも似ていない、圧倒的にオリジナルなスタイルだ。「別に100点のライブをしにきたわけじゃないぜ!ついてこい!」(岩渕)。フォロワー数、試験の結果、CDの売り上げ枚数……あらゆる価値基準を“数字”に委ねることへの反骨心を剥き出しにした「$UJI」にかけた熱い煽り文句を投げかけながら、この日、4人は“数字”では表せない何かを持ち帰ってもらうためにステージに立っていた。
冒頭の4曲でラッパーのようにハンドマイクで身振り手振りを大きく使いながら言葉を紡いでいた岩渕が、エレキギターを弾きながら歌ったのは、バンドの地元、神戸・新開地に捧げた「SHINKAICHI」だった。田村夢希(Dr)が重厚感のあるビートを叩きだし、タノアキヒコ(Ba)が頭の後ろでベースを弾く派手なパフォーマンスでも魅了すると、軽快なパワーポップ“Sick Boy”では、もし、世の中に馴染めないなら「あなたは病気です」と、思いっきり皮肉を込めた歌詞を投げかけてくる。他の人と違っていい。人間はベルトコンベアーで作られる大量生産品じゃない。この日、パノラマパナマタウンは、ときにドキッとするほど鋭い言葉を使いながら、そんなメッセージを何度も訴え続けていた。
ツアーファイナルに向けて頭を坊主に丸めたタノをイジったり、ツアー中に美味しいものを食べて太ったという浪越のMCで会場を和ませると、「人間の見えない部分こそ大事なんじゃないか」と問いかけた「月の裏側」から、ライブはディープな方向へと加速していった。スリリングに躍動するサウンドにのせて“君だけダンスを踊れ”と誘惑する「月の裏側」、無限ループするようなフレーズに中毒性がある「シェルター」。そういった楽曲は、いわゆるアガるパーティチューンで心が解放されるのとは対照的に、深く深く沈み込むことで、逆に心が自由に解き放たれるような、そんな言い様のない高揚感を生み出してくれる。
岩渕の地元・北九州市の寂れたシャッター街を歌った抒情的なロックバラード「真夜中の虹」を渾身の演奏で聴かせたあと、その曲ができた経緯について、岩渕が丁寧に語りかけた。かつて両親が商店街で昔ながらの手作りの餅屋を営んでいたこと。近所にイオンができて、そこに人が流れていったこと。けれど、その寂れた商店街も好きだったこと。両親と同じように、自分も自分にしか作れないものを作りたいと思っていること。そのうえで、「マニュアルを読んだら作れるものよりも、そいつにしか作れないもののほうがかっこいいと思う。どれだけクサい、ダサい、お前のメッセージは若いって言われても、俺は人間臭いままでいたいと思ってます。そういう“HUMAN PARTY”を作っていきたいと思います」と、今回のツアータイトルに「HUMAN PARY」と名付けた想いについても説明した。それぞれがそれぞれのままで肯定される場所、それが、パノパナが目指す「HUMAN PARTY」だ。
「Waterfront」から「Who am I ???」へと、エレクトロな音色をフィーチャーしたバンドの新機軸となる楽曲を挟みながら、音楽にのせずに韻を踏んだラップだけで《自分のやり方で生きろ》と訴えた「distopia」、誰かのルールに縛られて生きるのはくだらないと一瞬する「くだらnation」。ライブがクライマックスに向かうにつれて、メンバーの演奏も、放つ言葉も、どんどん熱を帯びていき、同時にフロアのボルテージも天井知らずに上げていった。「何も無理しないでいい、自分のやりたいように!」と伝えた「フカンショウ」では、岩渕は最前列の柵へと身を乗り出して「間違ってねえ!」と、集まった一人ひとりの人生の正しさを認めるように叫ぶと、「いまなら何でもできる気がする、体からパワーが湧き上がる気がする。この気持ちを持って帰って!」という言葉と共に、本編のラストを「めちゃめちゃ生きてる」で締めくくった。生きることに何も特別な意味などいらない。自分の意思で、自分の価値観で、自分らしく生きているだけで、誰もがめちゃめちゃ生きてる。これ以上ないほどストレートなメッセージが、圧倒的な無敵観を与えてくれるフィナーレだった。
「パノパナパパラッチ」と称して、全編が撮影OKタイムだったアンコールでは、インディーズ時代から歌い続けているアンセム曲「世界最後になる歌は」で、岩渕が生声で歌い出したフレーズに、煽らずとも、お客さんの歌声が自然に重なると、タノが作曲を手がけた新曲「ずっとマイペース」を初披露した。この曲について、岩渕は子どもの頃に“男だから”というだけで押し付けられた価値観に腹が立ったエピソードから生まれた曲だと説明。タノによる豪快なスラップベースが炸裂して、田村が吹くホイッスルが鳴り響いた遊び心も溢れる楽曲は、パノパナが何度も訴え続けている“自分らしく生きる”というメッセージと同時に、最新アルバムで掲げた「情熱とユーモア」の精神もしっかりと引き継がれた新曲だった。ラストの「いい趣味してるね」では、この日、披露されたどの楽曲よりも激しく衝動をぶつけて終演。メンバーがステージを去ったあと、いつまでも鳴りやまなかった「PPT!」コールが、この日のライブの成功を何よりも物語っていた。
蛇足かもしれないが、「今日、売り切れなかったんですよ。それが、俺はすごく悔しくて」と、MCで岩渕が言っていたことも、あえて書き残しておこうと思う。ワンマンとしてはバンド最大キャパとなったこの日の恵比寿リキッドルームは、残念ながらソールドアウトすることができなかった。それを、あえて誤魔化さないところも愚直な彼ららしいが、この日のライブが最高にかっこよかったからこそ、次はこの会場を満員にしたパノパナのライブを見てみたいと思う。彼らならば、それも遠くない未来に実現できると信じている。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:Atsuko Tanaka】
リリース情報
リリース情報
情熱とユーモア
2019年02月13日
A-Sketch
02. Sick Boy
03. $UJI
04. めちゃめちゃ生きてる
05. 世界最後になる歌は
06. 月の裏側
07. 真夜中の虹
08. distopia
09. くだらnation
10. Waterfront
11. Who am I ???
12. からの
13. 俺ism
お知らせ
Distinct Musics ~それぞれのロッケンロール バラバラですわっ!Part4~
05/31徳島 club GRIND HOUSE
アラスカナイズロックフェス2019
06/01(土) 神戸Harbor Studio
Bentham『MYNE』リリース記念 「 GOLD RUSH TOUR 2019」
06/08(土)静岡Live House UMBER
06/14(金)HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
感覚ピエロ 5-6th anniversary『LIVE - RATION 2019』
~奮い立たせてなんぼでしょ~
06/15(土) music zoo KOBE 太陽と虎
MOSHIMO 2019初夏ツアー「猫かぶるのヤメマシタ」対バン編
06/18(火) 岐阜ants
Wienners presents BATTLE AND UNITY TOUR 2019
06/21(金)新潟GOLDENPIGS BLACK STAGE
07/12(金)梅田Shangri-La
ネコフェス2019
06/23(日)神戸のライブハウス全9会場
見放題 2019
07/06(土)大阪ミナミアメリカ村周辺複数会場
rockin’on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019
08/11(日)国営ひたち海浜公園
MASH A&R presents MASHROOM 2019
08/14(水)新木場STUDIO COAST
パノラマパナマタウン presents 『渦:渦 vol.2~大阪編~』
09/21(土)梅田Shangri-La
09/27(金)新宿LOFT
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。