BUCK-TICK 初となる幕張メッセ2DAYS単独公演「ロクス・ソルスの獣たち」
BUCK-TICK | 2019.06.07
BUCK-TICKが「ロクス・ソルスの獣たち」と題して、5月25・26日に初の幕張メッセ公演を行なった。恒例の日本武道館や何度か主催してきた野外イベントなどとは、また一味違ったBUCK-TICKを見せる最高のライブとなった。
ステージの背景に設置された円形スクリーンに、命あるものと無機的なものが錯綜する映像が映され、重厚なSEが流れる中をメンバーが次々に登場、そして最新シングル曲の「獣たちの夜」が始まると櫻井敦司(Vo)がライトに照らされ浮かび上がった。ダンサブルなビートに合わせて、たちまち広いフロアが揺れ動く。続く「GUSTAVE」でさらにフロアの熱気は上がり、「cat,cat」との歌詞に合わせて猫の手が揺れる。マイクを差し出す櫻井の口元は鮮やかなルージュで彩られ、いつもにも増して妖艶だ。間奏ではアニマル柄のロングシャツに紅色のストールを巻いた今井寿(G)と黒のノースリーブに羽をあしらった衣装の星野英彦(G)、ヘアスタイルを新しくした樋口豊(B)がセンターから伸びる花道を進み、その先にあるサブステージへ。その周囲のオーディエンスから歓声が飛んだのはいうまでもない。
櫻井はアカペラで「オー、シャンゼリゼー」と誰もが知る曲を一節歌うと、その言葉が歌詞にある「PHANTOM VOLTAIRE」へ。いよいよBUCK-TICKらしい濃密なフェイズへと進んで行く。「Lullaby-III」のイントロでは、歌の主人公のマダムのように「ようこそ、いらっしゃい」と独白が入り、芝居がかった歌い回しで刹那なパーティへと誘う。「謝肉祭-カーニバル-」では手に持った仮面と口元を近づけた。
今井が「白鳥の湖」のメロディで思わせぶりなイントロを奏でた「キラメキの中で...」は重厚なサウンドと歌がせめぎ合う。今井がメインで歌う「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」では、ステージから姿を消した櫻井が、まるで水の中にいるような映像でスクリーンに出現。意外な演出に目を奪われていると、「ICONOCLASM」のイントロ。アンコールで演奏されることが多い初期からの人気曲をど真ん中に持ってくるとは!
一気にフィナーレさながらの熱気にフロアが包まれたのはいうまでもない。そしてアグレッシヴな「タナトス」から、樋口のベースが導いた「BABEL」では、赤いライトに彩られたステージに白いジャケットに変えた櫻井が浮かび上がり、力強い歌でフロアを圧倒した。
ステージに両脇から伸びる階段の上手側に櫻井が、反対側に今井が腰掛けた「Moon さよならを教えて」ではガラリと違う風景を描き、「Tight Rope」では櫻井がサブステージに向かって綱渡りするように揺らめきながら歌って、スポットライトに浮かぶ一瞬一瞬がまるで映画のワンシーンのよう。
「どうもありがとう。次はもう1曲の新曲。皆さんお馴染みの、あのTVのキャラクターでございます。ご縁があってエンディング・テーマにしていただきました」と言うと、今井がお馴染みの主題歌のメロディを弾いてみせた。アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」エンディング・テーマとなった「RONDO」だ。ホログラムで浮かび上がる、ここにはいない彼ら。鬼太郎たちのように闇に潜むものたちのようで、不思議な感覚を味わった。
闇から日差しのもとへと、ポップな「THE SEASIDE STORY」。今井がサブステージに進んでギターソロを弾き、櫻井はステージ脇を客席に向かって進んで行く。広いフロアが彼らの動きに連れて揺れた。大らかな「BRAN-NEW LOVER」でさらにフロアを多幸感で満たしたところで、櫻井は言った。「どうもありがとう。後ろの方までたくさん来てくださって、ありがとうございます。幸せ者です。それでは、例の曲を」
この言葉を受けて今井がギター鳴らすと、また歌の主人公となった櫻井が呟く。「パーティは終わる。よくきてくださいました。それでは、ごきげんよう」。ラスト・チューンは「DIABOLO」。どっしりしたヤガミ・トールのドラムに合わせて空中ブランコなどをコラージュした映像が円形スクリーンに踊り、楽しい宴の最後を彩る。歌い終えた櫻井は「ありがとう、またね」と言い残してステージを降りた。
最も驚かされたのはアンコールだ。フロアの通路を、通路の両脇から差し出される手に触れ、声援に応えながら5人は進み、サブステージに立った。スマートフォンで客席を撮影する今井を尻目にメンバーは楽器を用意し、櫻井は「スタッフの皆さんが徹夜で準備してくれました。今井さんのアレンジで、数曲聞いてください。また違ったBUCK-TICKを感じていただけたらと思います」と、サブステージで他のメンバーと向き合いスツールに座った。このアンプラグドのセットでの1曲目は「スズメバチ」。原曲はハードなロックンロール・ナンバーだが、今井と星野はアコギを抱え樋口は控えめにエレキベースを弾く。ヤガミのドラム・セットもシンプルだ。こんな編成での演奏はBUCK-TICK史上初。聴いたことのないBUCK-TICKサウンドの中で、ノースリーブTシャツに着替えた櫻井の声が一段と伸びやかに響いた。5人が外側に向きを変えた「BOY septem peccata mortalia」はアコースティックなアレンジが無垢な少年の煩悩をあぶり出し、ロマンチックな「形而上 流星」にフロアが酔いしれた。
客席を通り抜けて去った彼らは、再度のアンコールに応えてメイン・ステージに登場。この公演では久々に演奏する曲がいくつかあったが、「愛ノ歌」もその一つ。楽曲が増えれば埋もれていく曲があるのはやむを得ないが、こうした曲が入る本公演のセットリストは、ファン投票をもとに選曲した30周年記念盤へのBUCK-TICKからの返答のようにも思えた。そんな曲が多いからこそ、アンプラグドなど思いがけない楽しみを提供してくれたのでは、とも思う。続いた「さくら」は、櫻井が亡き母に捧げた曲だけにバンドにとっても重要な曲の一つ。思いを込めた櫻井の歌を支える演奏にもひときわ力が入り、スクリーンに桜の花々が映し出されると場内には花吹雪が舞い広がった。 「2日間どうもありがとうございました。ではメンバーを紹介します。ヴォーカル櫻井敦司です」と櫻井が自分から紹介。続いて今井、星野、樋口と名を呼んでいき、ヤガミが紹介されるとドラム・ソロに。再び口を開いた櫻井は「31年目。長いですね。でもみなさんが楽しんでくれるので、また次いいもの作ろうという気にさせてもらえます。またどこかでお会いできる日を楽しみに生きています。ありがとう」
フィナーレを飾った「HEAVEN」で、ステージ両脇の階段と繋がるように円形スクリーンに映し出されたのは、天国への階段か。濁った地上から清らかな世界へ登るようなこの曲を歌い終えて櫻井は、「みなさん、幸せに、幸せに」と呟きながらステージを降りた。今井のギターが鳴り続ける中、他のメンバーも手を振りながらステージを降り、フロアが明るくなったところでスクリーンに浮かび上がった文字は、恒例の年末ツアーの告知。そして12月29日は日本武道館ではなく、国立代々木競技場第一体育館で行われると発表された。またもBUCK-TICKの新しいページが開かれるようだ。
【文:今井 智子】
【撮影:田中聖太郎写真事務所】
リリース情報
獣たちの夜 / RONDO
2019年05月22日
ビクターエンタテインメント
02.RONDO
03.獣たちの夜 - version of Cube Juice -
リリース情報
TOUR No.0
2019年04月24日
ビクターエンタテインメント
Blu-ray 通常盤 VIXL-261 ¥6,000+税
DVD 完全生産限定盤 (2DVD+PHOTOBOOK)VIZL-1529 / ¥11,000+税
DVD 通常盤 VIBL-936 / ¥5,500+税
[完全生産限定盤(Blu-ray/DVD共通)]
1) 「TOUR No.0 - Guernican Moon -」映像ディスク付属
2) LIVE PHOTOBOOK [全64P]封入
3) スペシャルパッケージ仕様
セットリスト
ロクス・ソロスの獣たち
2019.5.26@幕張メッセ
- 01.獣たちの夜
- 02.GUSTAVE
- 03.PHANTOM VOLTAIRE
- 04.Lullaby-III
- 05.謝肉祭 -カーニバル-
- 06.キラメキの中で...
- 07.相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり
- 08.ICONOCLASM
- 09.タナトス
- 10.BABEL
- 11.Moon さよならを教えて
- 12.Tight Rope
- 13.RONDO
- 14.THE SEASIDE STORY
- 15.BRAN-NEW LOVER
- 16.DIABOLO
- 01.愛ノ歌
- 02.さくら
- 03.HEAVEN
お知らせ
THE DAY IN QUESTION 2019
12/3(火) 群馬:高崎芸術劇場 大劇場
12/12(木) 愛知:愛知県芸術劇場 大ホール
12/18(水) 大阪:フェスティバルホール
12/19(木) 大阪:フェスティバルホール
12/29(日) 東京:国立代々木競技場第一体育館
Yagami Toll ~57th Birthday Live~
IT’S A NOW!2019
8/10(土) 愛知:名古屋APOLLO BASE
8/19(月) 東京:下北沢GARDEN
8/24(土) 大阪:梅田Shangri-La
[出演] Yagami Toll & Blue Sky
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。