「一緒に戦う武器ではなくて、みんなを守る盾でありたい」――聴く者の心に寄り添うreGretGirlが支持される理由とは?
reGretGirl | 2019.06.13
初ワンマンを行う時期は、バンドごとにまったくもって異なる。全国流通盤リリース前に地元のライブハウスで開催するバンドもいれば、メジャーデビュー後に開催するバンドもいる。ではreGretGirlの場合はどうだろう。2017年4月に公開した「ホワイトアウト」のMVの反響を受け、同年12月に初の全国流通盤ミニアルバム『my』リリース。それ以降もSNSなどを通じ、彼らの音楽と存在は広まり続ける。2018年には2ndミニアルバム『take』をリリースし、2019年春に行った「忘れられないツーマン」は全会場でソールドアウトとなった。
その流れのなか満を持して開催された初ワンマンライブシリーズ「忘れたくないワンマン」。持ち曲すべてを披露した初日の渋谷WWWはバンドの積み重ねてきた実力や自信、歴史、ソングライター・平部雅洋(Vo/Gt)の過去を味わえたことに加え、初ワンマンならではの初々しさも感じられた。そのコントラストがreGretGirlの持つ感情の機微を大いに引き立てており、このタイミングでの初ワンマンは彼らにとって打ってつけだったと言っていいだろう。
お馴染みのSE、Back Mushroom「リンク」でステージに登場すると、平部が「お待たせしました、よろしく!」と景気よくフロアに向けて声を掛ける。今にもとめどなく溢れそうな気合いや興奮、喜び、緊張を堪えながら丁寧に演奏して歌う姿は、どこを切り取っても青い。だが浮足立つことはなく堂々としているし、平部は2曲目の前に1曲目のような言い回しをしてしまったことに対して自分で「あ、2曲目か!(笑)」とツッコミを入れたりと、気負うことなくどこまでも自然体だ。そういられるのも、これまでの経験の賜物だろう。
十九川宗裕(Ba)はメロディアスな低音でグルーヴを作り、前田将司(Dr)は的確なリズムでしっかりと土台を作る。キャッチーなメロディを辿る平部の歌はどこか泣き声のように響き、歌詞の持つ感傷性を引き立てた。MCは平部が歯切れのいいトークをして、十九川と前田はゆったりと語るという図式。「ワンマンっていいなあ~。来てくれるお客さん全員僕ら目当てっていうのがうれしい!」と喜びを伝えた平部は、「今日はreGretGirlしか出ないので、僕らのやりたい曲をやってもいいですか?」と続け、初めて出した自主制作盤『おわりではじまり』に収録されている、19歳の時に作ったという楽曲を披露した。
ライブ本編の中盤、観客たちは曲終わりの拍手すら忘れるほどじっくり曲に聴き入っていた。reGretGirlの歌詞に綴られているのは失恋の後悔や、あの時伝えられなかった感情といった、とても個人的な出来事と感情だ。腹を割って話してくれる人に心を開けるのと同じように、彼らの音楽の前だとリスナーも忘れられない恋に対して素直になれるのだ。情けない部分を一切隠さず、本音を誤魔化さずに堂々と歌う平部の姿からは強い信念が溢れていて、弱々しさなどは感じられない。十九川のドラマチックなベースラインと前田の強弱の効いたビートも楽曲のスケールを作るには非常に重要な役割を担う。そんな3人の頼もしさも、観客一人ひとりが自分たちの想いを重ねられる理由のひとつなのではないだろうか。
まっすぐな想いが通ったバラードは、曲の最後に堪えていた悲しみが溢れてくるところが非常にリアルでありながらドラマチックだった。彼らの「失恋ソング」は「まだ好きで仕方がない」という強い気持ちの結晶だ。胸が痛くなるほど切実なラブソングを歌う彼や、それに涙を流す観客の女の子を見ていて、ここまで深く悲しみを覚えるほど人を好きになれた彼らのことが羨ましかったし、reGretGirlには素敵な恋愛をしてきた人たちがこんなにたくさん集まってきている事実に、非常にあたたかい気持ちになった。
本編終盤で平部は「『がんばれよ!』とか、『お前ならできるぞ!』とか、そういう言葉を掛けてあげることはできません。でも僕たちは隣に寄り添って『無理すんなよ!泣きたいならもっと泣いていいぞ』と言ってあげられます。一緒に戦う武器ではなくて、みんなを守る盾でありたい。背中を押すんじゃなくて、隣で手をつないでいたい。きっと僕らはそうやって大きくなっていくんだと思う」とまっすぐ語り、曲中では高らかに「最後みんなで一緒に歌うぞー!」と呼びかけていた。本編最後の曲を演奏後には「みんな大好き! ありがとうね!」と笑顔で叫ぶ。ストレートに気持ちを伝えるその姿に、観客も全力の拍手と笑顔で応えていた。
アンコールでは新曲を披露。「失恋がテーマです」と平部が告げた時に、観客から「ですよね」と言いたげな笑いが零れるところも微笑ましい。平部のファルセット、より躍動感を増した演奏、ドラマチックなアレンジからも、バンドの成長が見えた。「一生心に残るような忘れられない夜にしよう!」と言い、最後に1曲キラーチューンを届けてライブは終幕。平部は「これからもずっと好きでいてくれよ!ずっと愛してくれよ!ライブ来いよ!」など、素直な心情を吐露する。投げキスをしてステージをあとにする際に、左耳についているピアスがさり気なく輝くところも小粋だった。
最初から最後まで迷いのない、まっすぐなパワーが感じられる熱演だった。目指す道がはっきりしている人間が、着実に力をつけてきたからこそ、そういうライブになったのだろう。そんな彼らが初ワンマンという新しい経験を経たことは、今後のバンド人生にとっても多少なりとも影響が出るはずだ。reGretGirlはまだまだ可能性を秘めているという事実を目の当たりにする一夜だった。
【取材・文:沖さやこ】
【撮影:ハギワラ ヒカル (@jr0330)】
リリース情報
take
2018年10月17日
No Big Deal Records
2. replay
3. (L)ONLY
4. イズミフチュウ
5. よわむし
6. ピアス
7. 黒鳥山公園
お知らせ
reGretGirl presents「忘れたくないワンマン」
6/15(土)【愛知】池下CLUB UPSET
6/30(日)【大阪】梅田Shangri-La
JOIN ALIVE KICK OFF EVENT
JOIN US 2019
6/16(日)【北海道】札幌cube garden
FREEDOM NAGOYA2019
6/22(土)【愛知】名古屋大高緑地特設ステージ
見放題2019
7/6(土)【大阪】ミナミエリア複数会場
JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2019 SUMMER
7/13(土)【東京】渋谷エリア複数会場
JOIN ALIVE
7/14(日)【北海道】いわみざわ公園
OSAKA MUSE presents
”メッチャエエカンジ~夏の4マンSHOW~”2019
7/31(水)【大阪】OSAKA MUSE
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019
8/4(日)【茨城】国営ひたち海浜公園
TREASURE05X 2019
-HEADING FOR TOMORROW-
8/10(土)【愛知】ell3会場
SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO
20th Anniversary
SHELTER presents THE REAL THINGS
8/15(木)【東京】新宿LOFT
BAYCAMP 2019
9/14(土)【神奈川】東扇島東公園特設会場
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