神様、僕は気づいてしまった 初のワンマンとなる『1st Tour ”From 20XX”』
神様、僕は気づいてしまった | 2019.06.14
数日経ってもあの日感じた興奮が覚め切らない。これが新式の"ロック"か…そう感じられた一夜。TBS系火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』の主題歌に抜擢された「CQCQ」から、その名が一気に知れ渡った”神様、僕は気づいてしまった“が、6月4日、Zepp Tokyoにて、初のワンマンライブとなる『1st Tour "From 20XX"』を開催。デビュー当時は、悲劇を示すような高音のボーカル、ギタメロを放つ痛烈なバンドサウンドに、衝撃を受けた人も多かったはず。だからこそ、生の演奏は凄まじいだろうと予想はしていたものの、実際は予想に留まるその程度ではなく、終わってからも言葉を失うほどであり、ここ数年でも何とも言えない感情体験をしたといってもいい。
そもそも、これまでのインタビューでは、ワンマンライブをやるからには〈哲学のないライブのやり方はしたくない〉(https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/kamisama-bokuha-kiduiteshimatta/1000001445)と話していた東野へいと(Gt.)率いる彼らが、実質16曲にのぼるセットリスト構成のワンマンライブを開催するに至ったのは、哲学的な要素が揃ったということ。それが何なのかは、この日のライブが物語っていた。
開演前からフロアは超満員。高揚感に満ちた会場が暗転すると同時に、ステージを覆う紗幕に映像が投影されていくなか、ステージ脇から歩いてきたのは覆面姿の、蓮(Dr.)、和泉りゅーしん(Ba.)、東野へいと(Gt.)、どこのだれか(Vo.)。
「神様、僕は気づいてしまった」
電流を流したような、どこのだれかの呟きをもってライブは開幕を告げた。彼らは常に、ステージを覆う紗幕の奥で演奏を進行する。通常であれば観客にとって距離を感じやすいステージ構成といえるが、そんな常識を彼らは覆す。むしろ、その一心不乱な歌声とサウンドで、紗幕を突き破ってまでも前に猛進してくるような闘志すら感じさせてくる。一曲目「オーバータイムオーバーラン」から、そのように、台風の目になって会場中の"僕”たちを巻き込んでいくような演奏をする彼らを目撃。一瞬にして度肝を抜かれた。
二曲目が終わると「東京!!」とどこのだれかが叫び、歓喜の声が上がる。今まで出演したサマソニ、CDJでの彼らのライブステージにはMCがなければ、どこのだれかも演奏以外に特別に言葉を発することはないが、この日は違うようだ。
ここまでは比較的、照明がない状態で紗幕の奥にいる彼らが、赤、青などの照明に一体に照らされながら、演奏を繰り広げていく。加えて、眩しいほどの光彩がステージ上を行き交い始めたのは、「20XX」、「UNHAPPY CLUB」。「UNHAPPY CLUB」からは、バンドメンバーが自由に身体を揺らし始めたと思えば、「私の命を抉ってみせて」では、肝が据わった状態で歌い続けていたどこのだれかも解放的になっていく。
彼らの大半の作詞作曲を担っているのは東野へいとだが、どこのだれかも担う。ふたりの作る楽曲に共通して感じるのは、負の感情をエネルギーとした攻撃的な歌詞。伝えたいことに一貫性があるからこそ、例え東野へいとが作る曲でも、どこのだれかは自分の曲を歌うかのようにして、心の底に宿るリアルな叫びを歌えるのだろう。
後半戦の合図は「TOKIO LIAR」。ここからは一瞬で時間が過ぎていく。英詞を含む「Troll Inc.」では、ギターを置いたどこのだれかと、3人が凶悪なオーラを纏い、奔放に動いては頭上で手を叩く。その様は、会場の"僕”たちを共犯者側へと招き入れるかのよう。孤独を歌う彼らは、常に救済ではなく"共犯”を求めているのだ。一切、映像の投影がなくなったのは、「青春脱出速度」「大人になってゆくんだね」。押し寄せるような演奏に負けることがない、どこのだれかの一縷の迷いすら感じさせない歌声は、彼らが十分、映像がなくても迫力ある演奏を届けることができることを証明していた。
どこのだれかが、「最後の曲です」と力強く告げると、ラストには、彼らが2016年11月28日に初公開した楽曲「だから僕は不幸に縋っていました」。光彩が会場中を埋め尽くす光景は神秘的。彼らの楽曲には、どこのだれかの低音と高音の声を上手く使い分けるなかでも、最も重要なサビなどは高音で締めくくる構成が多い。最後に矢のように突き抜ける声色を残すことで、すべての"僕”の心になんらかの感情を植え付けているのかもしれない。
ステージに盛大な拍手が送られた後に、すぐさま自然とアンコールの拍手に切り替わり、映像が流れると紗幕の奥ではすでに4人がスタンバイ。
「神様、僕は気づいてしまった」
続くようにして、「アンコールありがとう!」と叫ぶ、どこのだれか。この日、最も歌声がリアルなものとして届いてきたのが、アンコールの「CQCQ」だった。
ギターを存分に掻き鳴らし、会場の"僕”たちに「ありがとう!」と、どこのだれかが一礼すると、彼に続いて3人もステージ脇に姿を消していった。
恐らく、彼らはボーカルとサウンドに伝えたいことのすべてを託せると見破っていたからこそ、ワンマンライブをおこなうに至ったのだろう。なにも口にしなくても、彼らのライブからは"ロックとはこうあるべき”そんな言葉が聴こえてくるようだった。今後も彼らは、共犯者になるべき"僕”たちを共犯者へと巻き込んでいくのだろう。
【取材・文:小町碧音】
【撮影:国府田利光】
リリース情報
20XX
2019年05月15日
ワーナーミュージック・ジャパン
02.メルシー
03.Troll Inc.
04.20XX
05.匿名
06.deadlock
07.UNHAPPY CLUB
08.TOKIO LIAR
09.破滅のオレンジ
10.ストレイシープ
11.沈黙
12.ウォッチドッグス
13.Endpoint(Instrumental)
セットリスト
1st Tour ”From 20XX”
2019.6.4@Zepp Tokyo
- 01.オーバータイムオーバーラン
- 02.ストレイシープ
- 03.20XX
- 04.UNHAPPY CLUB
- 05.僕の手に触れるな
- 06.私の命を抉ってみせて
- 07.天罰有れかしと願う
- 08.メルシー
- (Instrumental)
- 09.TOKIO LIAR
- 10.Troll Inc.
- 11.deadlock
- 12.青春脱出速度
- 13.ウォッチドッグス
- 14.大人になってゆくんだね
- 15.だから僕は不幸に縋っていました
- 01.CQCQ
お知らせ
SUMMER SONIC 2019
08/16(金) ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。