古川未鈴、相沢梨紗、成瀬瑛美、藤咲彩音、鹿目凛、根本凪による6人体制となってから初の全国ツアー「UHHA! YAAA!! TOUR!!! 2019」が、いよいよ6月26日・東京・オリンパスホール八王子公演からスタート。このツアーは、8月28日・大阪・NHK大阪ホール公演まで続くので、具体的な内容に関する言及は控えておくが、ネタバレにならない範囲で初日の模様をお伝えするとしよう。

　まず、セットリストに関してだが、新旧の曲を絶妙なバランスで盛り込んだものとなっている。「あの新曲、ライブで聴いてもすごくいい！」と思ったり、「懐かしい！　いい曲！」と興奮したり、「この曲、新体制だとこうなるんだ！」と発見できたりする場面の連続だ。スクリーンで流れる映像、華やかなライティング、6人のパフォーマンスが美しく融合していたステージは、各曲の中に広がっているストーリーを、とても豊かに伝えてくれた。歌、ダンス、様々な演出が一体となり、多彩な物語を次々と浮き彫りにしていくでんぱ組.incのライブに関して「洗練されたミュージカルみたいだなあ」と思ったことは今までに何度もあったが、その印象が一層強まる内容でもあった。曲それぞれに異なる色合いの物語をじっくり噛み締め続けている内に、どんどん深まっていく夢見心地の感覚……竜宮城で過ごした浦島太郎のように、時が経つのも忘れて楽しんでしまう観客が、今回のツアーの各地でも続発することになるだろう。

　今までのでんぱ組.incがあまりやっていなかった要素がいろいろ盛り込まれていたのも、とても注目させられるポイントであった。この部分に関して具体的に書き過ぎるのは、さすがに許されないネタバレになってしまう……。しかし、次の2つに関しては、触れても問題はないだろう。まず、公式サイトなどで既にアナウンスされている通り、『ファンラブ企画』というファン参加型の企画が、各公演のために用意されている。これは「お気に入りの楽曲」「その楽曲の思い出エピソード」「ツアーに参加する会場のハッシュタグ（#ウッハヤー東京、#ウッハヤー福岡、#ウッハヤー名古屋、#ウッハヤー仙台、#ウッハヤー札幌、#ウッハヤー金沢、#ウッハヤー大阪……のいずれか）」という3点のツイートを募集する企画だ。ツアー初日のオリンパスホール八王子公演で届けられたのは、「STAR☆ットしちゃうぜ春だしね」だった。各地で選ばれた曲は、ショートバージョンで毎回披露されることになるらしい。そして、『でんでんメモリー』というタイトルが掲げられていたコーナーも、各公演で内容が変わることになるので、紹介してもネタバレにはならないはずだ。『でんでんメモリー』は、メンバーが各公演の会場がある街の名所や名物などを堪能する旅番組的な内容となっている。八王子観光の映像収録に参加したのは、相沢と鹿目。名物の都まんじゅうを買って食べたり、八王子ラーメンの名店で舌鼓を打ったり、オリンパスホール八王子が入っている建物の近くまで行ってワクワクした様子の表情を浮かべたり……2人は、大いに八王子を楽しんでいた。このコーナーは、今後も各地の観客を沸かせることになるだろう。どのメンバーが、どこを訪れて、何を紹介するのか？注目すべきポイントの1つだ。

　新体制となってから初のツアーだったこともあり、メンバーたちはかなり緊張しながらライブに臨んだらしいが、どんどんリラックスしていって、アットホームと言っても良いくらいの雰囲気で観客を包んでいたのも、印象的だった点だ。そんなムードが最大限に漂ったのは、終盤のMCで起こった予想外のハプニングであった。「ここで皆様に嬉しいお知らせがあります。今回のツアー、全国を回っていくんですけど、2DAYS、9月18日、19日、スペシャル公演が決まりました！」と発表して大喝采を浴びた古川。しかし、会場は「Zepp DiverCity」が正解なのに「Zepp Tokyo」と言ってしまい、「最後まで噛まなかったのにー！」と崩れ落ちた。観客は大爆笑。実に悔しそうな表情を浮かべながらメンバーたちに慰められていた彼女の姿は、我々をとても和ませてくれた。

　メンバーたちがライブ中のMCで語っていた言葉によると、「いつも応援してくれるファンへの感謝を歌とダンスでお返しする」というのが今回のツアーの大きなテーマらしい。まさに、そういうものになっているのを感じた。心をこめた全力のパフォーマンスは、やはり何と言ってもファンへの最大のプレゼントとなる。精力的なライブ活動によって実力を磨き、着々とたくさんの人々を魅了していったのが、でんぱ組.incの軌跡だ。その原点に改めて立ち還っているとも言える「UHHA! YAAA!! TOUR!!! 2019」は、この6人体制ならではの揺るぎない魅力と煌めきを彼女たちに授けるツアーとなるに違いない。

【取材・文：田中 大】
【撮影：チェリーマン】