エモーショナルに、チャーミングに。eillがフロアを揺らした初ワンマンライブの模様をレポート!
eill | 2019.07.09
「混みますよ」と事前に聞かされてはいたが、正直ここまでとは。10代20代の男女はほぼ半々、さっぱり小奇麗なファッション、新しい音楽の波に敏感な健康優良音楽ファンでみっちり埋まった渋谷clubasia。7月4日、eillの1st ONEMAN LIVE”MAKUAKE”は、彼女の運命を変えた1曲「MAKUAKE」のリリースから約1年でたどりついた未来への大きな扉。時刻は午後7時半、位置についた4ピース・バンドが刻むタイトなリズム、誰もが待ちわびたアニバーサリーな一夜の幕が開く。
1曲目はベースの重低音をたっぷり効かせた、トラップ調のスローチューン「メタモルフォーゼパラマジーノ」。アクティブなパンツルック、ポニーテール風にまとめた髪に長いリボン、マイクとコード、全て白のコーディネートが決まってる。ゆったりクールな出だしから一気にスピードを上げ「MAKUAKE」へ。満面の笑みで「盛り上がる準備はできてますか!」と叫び、強力な四つ打ちに乗って飛び跳ね、クラップを求め、フロアにマイクを向け歌わせる姿から、誰よりもこの日を楽しむ意欲がほとばしる。いい雰囲気だ。
「今日は来てくれてありがとう。もっといけますか? Clap your hands!」
ワウ・ギターを活かした粘り気のあるファンクチューン「HUSH」は、オーディエンスに手を挙げさせるクラバーなノリで賑やかに。攻め攻めのラップが聴けた「流されね」ではさらにアッパーにファンキーに、大きなグルーヴと力強い重低音でフロアが揺れる。エアリー成分多めでファルセットと地声を行き来する、ウィスパーっぽいのに生バンドの迫力にまったく負けない、なんて不思議で魅力的な声だろう。コール&レスポンスでは目の合ったオーディエンスに呼び掛けたりいじったり、天真爛漫のパフォーマンスが文句なく楽しい。
「みんなの笑顔はすごい。さっきまで緊張してたのに、今はすごく楽しいです!」
昨晩は不安で眠れず、大好きなBLACKPINKのダンスを練習して気を紛らわせたというエピソードにみんなにっこり。彼女のルーツにはJ-POPとともにK-POPがあり、ダンスや手振りなどパフォーマンスにもその影響がたしかにある。そこにUSのR&Bや先鋭的なダンスミュージックのエッセンスが加わって出来上がるのが、ジャンルレスのeillミュージック。リリースほやほやの配信シングル「Succubus」はその最新の成果で、ファンク、R&B、ハウス、トラップなどをセンス良く混ぜ込んだ音に乗せ、うぶな少年を翻弄する小悪魔女子を演じる姿がかっこいい。軽快なステップを踏みながら、クラップでフロアをひとつにする姿から自信が溢れ出して見える。
音数少なくひんやりクールに、透明な情緒溢れる「shoujo」に続いて披露されたスローチューン「初恋」は、個人的にはこの日のハイライト。ピアノをバックに歌うファースト・ヴァースのエモーショナルな歌唱に息を呑み、バンドが加わるセカンド・ヴァースからの、幼い恋の切なさと激しさを伝える豊かな表現力に目をみはる。サトウカツシロ(G)のソロも素晴らしい。スローバラードな曲調なのにしっかりフロアが揺れている、eillの曲にはどれもしたたかなグルーヴがある。
「ここから後半戦行きますよ!」と、元気のいい掛け声に合わせステージに飛び込んできた伊達男はKick a Show。「スーパーヒーローになっちゃいますか?」とeillが煽る、曲はKick a Showの最新EP「Purple Sugar」から「Super Hero」。Kick a Showのメロウなオートチューン・ボイスがリードする、心地よくスムースなポップチューン。ふたりのラップの掛け合い的なパートもあり、息の合ったコンビネーションにフロアも諸手を挙げて大歓迎だ。
彼を送り出したあと、YOSA&TAARの最新アルバム『Modern Disco Tours』収録の「Red」でファンキーに踊らせ、さらにテンポを上げ1stミニアルバム『MAKUAKE』の中でも屈指のダンスチューン「ONE」をぶち上げる。オーディエンスが指で作る「No.1ポーズ」がフロアを埋め尽くす、とことんハッピーでポジティブなダンスタイム。そのエネルギー源はオーディエンスをリードするeillの笑顔だ。さらに「おととい出来たばかりの新曲です」と言って歌った「この夜が明けるまで」は、バンドのキーボーディスト・宮田’レフティ’リョウとの共作で、繊細なビートが徐々に太い四つ打ちへとメタモルフォーゼしてゆく、知的でポップでドラマチックな魅力溢れる曲。きらめくミラーボールの下、誰もが気持ちよく体を揺らしてる。リリースが待ち遠しい。
「1年前は、こんなに素晴らしい景色が見れるなんて思っていませんでした。不安で、自信のなかった1年前の自分に、自信持ちなよ!って言ってあげたいです。だから1年後の私はきっともっと輝いている。そう思わせてくれたのはみんなです。ありがとう―ー」
声を震わせながら、思いの丈を言い切った見事なMC。それを受け取ったオーディエンスからの、フロアいっぱいの拍手と歓声。大きく新しい未来は自分で作る――「最強の20s」に突入したeillからの強力なメッセージソング「20」は、K-POP的な高揚感溢れるサウンドと等身大のリリックで、同世代のアンセムとして大きな曲になってゆくはずだ。「みんなの心に寄り添えるような音楽を」とeillは言った。「MAKUAKE」から「20」へ、eillを支持する層は着実に広がり始めている。
アンコール。「special girl」を自らキーボードを弾きながら歌う、プレイヤーとしてのスキルの高さに驚かされる。グッズ紹介で笑いを取りまくる、トークの上手さに脱帽する。彼女の中にはきっと、まだまだいろんな才能が隠れている。秋に行われる1stワンマンツアー「BLUE ROSE 2019」の日程もここで発表された。青いバラの花言葉は「夢は叶う」らしい。eillの夢は果てしなく大きなものになるだろう。
「今日は来てくれて本当にありがとう。最後の曲、盛り上がっていきますか!」
ラストを飾るのはやはりこの曲「FUTURE WAVE」。強力な四つ打ちに乗ってバンドメンバーもジャンプで盛り上げ、ステージとフロアを分ける境界線はもはやない。そういえばeillは、謎のシンガーとか神秘のヴェールに包まれたとか、ちょっと前まで言われていたっけ。今ステージでメンバーと手を繋ぎ、大歓声に応えているのは、キュートな笑顔とオリジナルな歌声を持ち、新時代のポップスを切り開く意欲に溢れたとても魅力的な生身の女性だ。eillの初ワンマンライブを体験できて良かった。ここが夢への第一歩だ。
【取材・文:宮本英夫】
【撮影:岩澤高雄】
リリース情報
配信リリース「Succubus」
2019年06月26日
リリース情報
MAKUAKE
2018年10月03日
02.FUTURE WAVE
03.ONE feat. K.vsh
04.HUSH
05.メタモルフォーゼパラマジーノ
06.shoujo
07.初恋
08.special girl
09.HUSH -MONJOE Remix- feat. Kick a Show
セットリスト
1st ONEMAN LIVE”MAKUAKE”
2019.07.04@渋谷clubasia
- 01.Intro
- 02.メタモルフォーゼパラマジーノ
- 03.MAKUAKE
- 04.HUSH
- 05.流されね
- 06.Succubus
- 07.shoujo
- 08.初恋
- 09.Super hero feat.Kick a Show
- 10.Red
- 11.ONE
- 12.この夜が明けるまで(新曲)
- 13.20
- 01.special girl
- 02.FUTURE WAVE
お知らせ
eill 1st ONEMAN TOUR
"BLUE ROSE 2019"
11/16(土) 大阪 アメリカ村BEYOND
11/17(日) 愛知 今池GROW
11/28(木) 東京 渋谷WWW
e+最速先行チケット
販売期間:7月5日 12:00-7月15日 23:59
URL: https://eplus.jp/eill/
YOUNG POP CLUB vol.5
08/14(水) 心斎橋JANUS
NEIGHBORS COMPLAIN presents
「Block Connection!」
08/30(金) Moxy Osaka Honmachi !F ロビーラウンジ
LOCAL GREEN ROOM FESTIVAL
08/31(土) 横浜赤レンガ地区野外特設会場
DEDE MOUSE presents.
パルテノン多摩大階段音楽会
09/15(日) 東京パルテノン多摩 大階段ステージ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。