CHAI JAPAN TOUR 2019「PINKなPUNKがプンプンプン トゥアー!」ファイナル公演
CHAI | 2019.07.11
6月29日、CHAIの「PINKなPUNKがプンプンプン トゥアー!」ファイナルが新木場STUDIO COASTにて行われた。当公演はジャパンツアーのファイナルであると同時に、3月の全米ツアー、5月の全英及び欧州ツアーから長く続いた旅の言わば終着駅。よって単独公演としては今までで一番大きなハコであるSTUDIO COASTが満杯となり、始まる前から観客たちの期待感がフロアに渦巻いていた。
「写真OK、ムービーOK、はしゃぐのOK」。確かもういくつかOKがあったが、メンバーによるそのようなアナウンスが開演前に2~3回流れた。ライブ中のスマホによる写真撮影をOKとするアーティストは、最近、以前に比べてずいぶん増えた。メジャーともなればそれをノーとするアーティストはまだまだ多いが、あの宇多田ヒカルも昨年の国内ツアーで写真撮影をOKとし、そのことはファンたちに親近感を抱かせることにもなった。だが、写真はともかく、ムービーもOKとするアーティストは現状少ない。ダメとは言わずに観客の自己判断に任せるアーティストもいるが、今回のCHAIのようにメンバー自身の言葉で「写真OK、ムービーOK」とわざわざアナウンスされた上で始まるライブを経験したのは自分にとって初めてであり、そこもまたCHAIらしさであるなと感じた。包み隠さなくちゃならないものなんて何もないのだし、これが私たちなんだし、それを撮られてアップされたところで困ることも恥ずかしいことも何もないのだから、どんどんアップして私たちの音楽をライブに来れなかった人にも見せて(聴かせて)あげて……と、恐らくはそういう開かれた気持ちなのだろう。それは即ち「コンプレックスはアート(個性)なり」という彼女たちの基本姿勢を裏打ちすることでもあり、そこに嘘も飾りもない。ライブにまつわる何かに対してこれっぽっちも制限をかけたくない、自由であることをみんなと共有したい、という彼女たちなりのPUNKの表われでもあるのだろう。
「CHAIだよ~」と登場した4人はどこまでも人懐っこく、初めに「“PINKなPUNKがプンプンプン トゥアー!”ファイナルにようこそ~。イッツ・ショー・タイム!」と一声。「CHOOSE GO!」をオープナーとし、続いてオルタナティブ感のあるロックギターとブリブリしたベースが以前よりも迫力を増した「ボーイズ・セコ・メン」へと続けた。と、目立った場面を紹介するより先にステージの作りを簡単に書いておくと、この日はユナ(Dr.&Cho.)のドラムセットだけがほかより一段高いところに。またステージ中央からせり出すように花道があって、何度かそこをメンバーがダンスして歌いながら歩き、フロアの観客たちはすぐ近くに彼女たちを感じることができる作りになっていた。そうやってステージの上と下(こっち側とあっち側)という関係性を少しでも崩したかったのだろう、きっと。
3曲終わるとマナ(Vo.&Key.)とカナ(Gt.&Vo.)がレコードサイズの『PUNK』を持って花道へ。リズム隊だけでのカルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ」の演奏に合わせ、“カーマ・カマカマカマ・カマカメ~レ~オン”と歌われるサビ部分を“ネ~オ・カワカワカワ・ネオカワ~イイ~”と変えて歌ったり。そんな和みの場面もありつつ、5曲目で演奏されたお馴染みの代表曲「N.E.O.」ではバンドアンサンブルの強靭さに「おおっ」と声が出そうになった。とりわけ際立っていたのはリズム隊。ユウキのベースとユナのドラムがひとつになることで生まれるグルーブは、強く、ぶっとく、その上しなやか。国外のツアーを経て4人が得たものは、そりゃあ山ほどあるだろうが、この日のライブで自分が特に感じたのは、そのようなリズム隊の演奏力の向上だ。端的に書くなら、以前よりもリズムの厚みとその迫力が増したということである。
7曲目の「GREAT JOB」(昨年リリースされたCHAIにとっての初シングル曲)もこの日の聴きどころのひとつだった。リリース時にインタビューした際、この曲はライブで観客が盛り上がっている様をイメージしつつ、ベースメント・ジャックスのメロディの幅感やノリを意識して作ったと話していたが、メロディ自体はさほど上下するわけではないものの、コーラスに動きがあって、ナマで聴くとどんどん巻き込まれていく感覚があった。「ザ・ゴー!チームの音数の多さに影響受けて、音をガチャガチャさせたかった」ともそのとき話していたが、『PINK』の頃とはそこが絶対的に違っていて、カナのギターとマナのシンセがガチャガチャ鳴りながらもユナのパワフルなドラムがそれをひとつのカタマリにしているあたりに現在のCHAIの音の放ち方の面白さを強く感じた。
そのあとテンポをグッと落として「カーリー・アドベンチャー」や「ほれちゃった」といったスロー曲を続けると、前者にはスケール感、後者には可愛らしさ込みの広がりが生まれ、観客たちは静かに揺れながらそのメロディアスな味わいを堪能。一旦ステージからはけて再登場した際には揃いのダンスの衣装で花道を行き、“見せて楽しませる”4人にやんやの歓声と喝采が起きた。またマナとカナが花道で歌って踊った「ハイハイあかちゃん」では観客全員が手を上下に動かし、「ぎゃらんぶー」ではお馴染みの「ブー!」コールもいつも以上に大きなものに。本編最後の「フューチャー」は確かに4人の未来と希望が感じられ、長く続いたツアーの大団円感もまたSTUDIO COASTいっぱいに広がった。
アンコールでもう一度ステージに登場した4人は「嬉しいよ~」「ありがと~」と喜びをストレートに表し、そしてマナがこんな言葉を。「アメリカ回って、ヨーロッパ回って、日本のツアーを最後に持ってきたのは、私たちは日本人だし、私たちの大きくなった姿を日本のみんなに観てもらいたかったから!」。確かに彼女たちは大きくなった。とりわけ言葉以外のコミュニケーション方法……例えば先述した演奏力ももちろんそうだが、揃ってダンスするといった“見せ方”の部分にも創意工夫が感じられ、より立体的なライブを見せるようになったという印象があった。
といっても特に演出に凝っていたわけではない。会場の特性を活かしていたのは、花道があってそこで踊ったり歌ったりしていたこと。電飾がグレードアップされて派手になっていたこと。それと、アンコール2曲目「sayonara complex」で巨大なミラーボールが回り出し、その光がフロアとステージ上の4人を輝かせていたこと。そのぐらいのものだ。4人にしても、ツアーファイナルだからといってヘンに気張っているところは見られなかった。つまりいつもの自分たちを見せていた。が、だからこそ尚更、成長が如実に見て取れた。ワールドツアーを通して身につけた自信と、どこに行っても自分たちは自分らしく自由であればいいのだという確信が今のCHAIを動かしている。そのことがハッキリ伝わってきた。かっこよさと逞しさを大いに感じた約80分。と同時に、そこにいるみんなとの信頼関係――、換言するなら“信じることの大切さ”を強く感じたライブでもあった。
【取材・文:内本順一】
【撮影:中磯ヨシオ】
リリース情報
PUNK
2019年02月13日
OTEMOYAN record
2.GREAT JOB
3.アイム・ミー
4.ウィンタイム
5.THIS IS CHAI
6.ファッショニスタ
7.FAMILY MEMBER
8.カーリー・アドベンチャー
9.Feel the BEAT
10.フューチャー
セットリスト
CHAI JAPAN TOUR 2019
「PINKなPUNKがプンプンプン トゥアー!」
2019.6.29@新木場STUDIO COAST
- 1.CHOOSE GO!
- 2.ボーイズ・セコ・メン
- 3.ファッショニスタ
- 4.自己紹介
- 5.N.E.O.
- 6.クールクールビジョン
- 7.GREAT JOB
- 8.カーリー・アドベンチャー
- 10. ほれちゃった
- 11. Feel the BEAT
- 12. THIS IS CHAI
- 13. ハイハイあかちゃん
- 14. ぎゃらんぶー
- 15. FAMILY MEMBER
- 16. フューチャー 【ENCORE】
- en1. アイム・ミー
- en2. sayonara complex
お知らせ
CHAI presents「CHAIとみてみチャイ」
12/13(金)大阪・BIG CAT
12/14(土)名古屋・BOTTOM LINE
12/19(木)東京・マイナビBLITZ赤
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。