Ghost like girlfriend 1stフルアルバムを携えて行われた「Tour Virgin」
Ghost like girlfriend | 2019.07.13
シンガーソングライター岡林健勝によるソロプロジェクト・Ghost like girlfriend。先日リリースされた1stフルアルバム『Version』によって、ますます熱い注目を集めるようになっていることが、恵比寿リキッドルームのフロアに漂っていたムードからも伝わってきた。開演時刻を迎えて、バンドメンバーたちが登場すると、一斉に湧き起こった拍手。最後に現れた岡林が、薄暗いステージ上でお辞儀をすると、待ちわびていた人々は、大喜びしていた。そして、スタートした1曲目「ghost」。透明感に満ちたメロディ、躍動するビートに誘われて、観客は穏やかに身体を揺らす。スタンドマイクに向かって歌声を響かせていた岡林が「東京!」と呼びかけると、明るい歓声が上がった。
続いて「sands」と「(want) like (lover)」も届けられたが、各曲がエンディングを迎える度に、観客は心をこめて拍手。盛り上がる様を眺めながら、岡林がますます伸び伸びと歌声を響かせているのを感じた。「お越しいただき、ありがとうございます。1曲目から泣きそうになって、情緒が安定しないんですけど(笑)。雨降ってましたか? 降ってない? 雨が降ってる用のMCを用意してたんですけど。今日、ライブをやるって、半年くらい前から決まってたんですよね。なので、どうせ俺のことだから雨が降ると思って(笑)。先日発売したアルバム『Version』にそういう曲を収録したので、聴いてもらえたらと思います」というMCを経て披露された「Under the umbrella」。瑞々しいサウンドが、観客の手拍子を自ずと誘う。続いて、「煙と唾」と「cruise」も届けられたが、歌いながらビートを乗りこなし、軽快にステップを踏む姿が、実に楽しそうだった。
「引き続きよろしくお願いします!」という言葉の後にスタートした「burgundy blood」は、会場内のムードを一気に塗り替えた。ステージは真っ赤なライトで彩られ、生々しく迫ってきたアンニュイな質感の音像。幻想的な世界へと深く引きずり込まれるかのような恍惚をじっくりと味わうことができた。そして、「Othello」へと突入すると、会場内に漂っていた空気は、爽やかなものへと一転。続いて披露された「あれから動けない」は、美しいメロディが観客の瞳を潤ませる……Ghost like girlfriendの多彩な作風を、高密度で体感させられるひと時であった。
「この街の歌を歌いますね」という言葉を添えて、「fallin’」がスタート。東京の風景、懸命に生きている人間の心を浮き彫りにするこの曲を、こうして東京の街のひとつである恵比寿で体感できるのは、感慨深いものがあった。そして、アバンギャルドとキャッチーの併せ技とも言うべき「shut it up」が、大いに異彩を放った後に迎えたMCタイム。「残すところ5曲。ここまでやってきて、わかっていただけたかもしれませんけど、わりと感情的であるがゆえに、この間発売したアルバムは、暗いものになっております(笑)。ちょっとどんよりさせちゃったから、ここからは身を粉にしてみなさんを盛り上げていこうと思います」――ウィットを利かせた言葉が和やかな笑いを誘ってから突入した「pink」は、清々しいエネルギーを湛えながら高鳴っていった。
「Midnight Rendez-Vous」「髪の花」「girlfriend」も披露した後、岡林は想いを語った。「昨日の夜、案の定、あまり眠れなくて。本棚を見たら“記事が載りましたよ”と、いただいた雑誌と、8年前、自分が音楽を目指す前に読んでた頃の雑誌があったんです。だから“どの辺のポジションに今、俺はいるんだろう?”と、見比べてみたんですけど(笑)、どこにも辿り着けてない気がして。8年前の雑誌に載ってる人たちのような輝きが、自分にはまだないなと……。落ち込んだんですけど、確実に景色は変わってきているんですよね。こんなにたくさんのみなさんに観ていただけるような機会は、今までに一度もなかったですから。でも、落ち込んだ先で思ったのは、“変わることはできなかったけど、生き延びることはできたな”ということです。8年前と変わらずに、このままでどこまで行けるのか? それを試していこうと思います。自分の音楽は質としては変わらない気がするので、引き続き安心して楽しんでください(笑)。“変われない”っていうことに失望しがちだけど、生きることはできるから。そのまま進んで行った先で、今から歌う曲をずっと歌っていけたらなと思っております」――そして、届けられた「Last Haze」が本編を締め括った。想いをこめて歌い上げるメロディが、まっすぐに迫ってくる……。《明日死んでも良いなんて全て叶うまで無しにしようぜ》というフレーズは、先ほどのMCを踏まえて受け止めると、ひと際深く胸に沁みた。
白岩萬里(G)、Shigekuni(B)、白根賢一(Dr)、トオミヨウ(Key)――バンドメンバーたちを紹介した後、岡林は観客に語りかけた。「“一生ずっとやってくぜ”という気持ちをこめたアルバムをリリースした後なので。約束しちゃったもんですから、破らないように……っていうか、絶対に破らないので、よかったらついてきてください。自分が今思ってる気持ちと真逆の歌をこれから歌うんですけど、基本的にはこの曲の中で歌ってることを思いながら日々過ごしています。よかったら自分の曲を楽しんだり、支えにしてくれたりしてくれたら嬉しいです。また会いましょうね、みなさん」――そして、アンコールで届けられたのは、「feel in loud」。ピアノの伴奏と歌からスタートして、やがてギター、ベース、ドラムも合流。少しずつ狂おしい光に満ち溢れていくかのようなサウンドが美しかった。孤独感が激しく滲んでいる曲だが、観客の震える心で満たされていた空間では、安らぎを帯びた曲として響き渡っていた。歌い終えた後、ステージからの去り際に「君たちは綺麗です」と言った岡林。彼がこのライブのステージから見た風景、受け止めたたくさんの気持ちは、今後の彼を支える大きな力となっていくのだろう。
【取材・文:田中 大】
【撮影:神藤 剛】
リリース情報
Version
2019年06月19日
ユニバーサルミュージック
02.girlfriend
03.Midnight Rendez-Vous
04.sands
05.pink
06.あれから動けない
07.shut it up
08.burgundy blood
09.Under the umbrella
10.fallin’
11.feel in loud
セットリスト
「Tour Virgin」
2019.7.1@恵比寿LIQUIDROOM
- 1.ghost
- 2.sands
- 3.(want)like(lover)
- 4.Under the umbrella
- 5.煙と唾
- 6.cruise
- 7.burgundy blood
- 8.Othello
- 9.あれから動けない
- 10.fallin’
- 11.shut it up
- 12.pink
- 13.Midnight Rendez-Vous
- 14.髪の花
- 15.girlfriend
- 16.Last Haze 【ENCORE】
- En.feel in loud
お知らせ
JAPAN’S NEXT渋谷JACK2019 SUMMER
07/13(土)渋谷サーキットイベント
AmPm Thinking“SUMMER”
07/21(日)表参道WALL&WALL
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