踊Foot Works 「GALAXY MOTEL Vol.2」
踊Foot Works | 2019.07.17
4月に配信リリースされていたアルバム『GOKOH』にニューシングル「KAMISAMA」をカップリングする形でフィジカルリリースした踊Foot Worksが、まさにその発売日に東京で最高のパーティをぶち上げた。自主企画「GALAXY MOTEL」の第2弾は、オドフットの勢いはもちろん、音楽集団としての誠実さと新しさ、そしてエモーショナルな本性をストレートに伝えるものとなった。
この日のゲストはトラックメイカー/MPCプレイヤーのSTUTS。機材がセットされたステージにふらっと現れると、「Renaissance Beat」を皮切りにバラエティ豊かな音を繰り出していく。MPCを叩いて作り出すリズム、シンセから奏でられるメロディ。小さなテーブルに収まるガジェットから生まれる、文字通り「生きた音」にフロアも揺れる。汗だくになりながら体を揺らしてキレキレのパフォーマンスを演じながら、丁寧な挨拶とともに「STUTSといいます。こんな感じでやってます」と穏やかに話す姿とのギャップもおもしろい。自身のアルバムからのトラックはもちろん、ペトロールズのカバーアルバムに収録されていたKID FRESINOとの共作による「アンバー」、Alfred Beach Sandalと組んで発表された「Daylight Avenue」、STUTS×SIKK-O×鈴木真海子の名義でリリースされた「Summer Situation」などなど、幅広いメンツとコラボレーションを行っているこの人ならではの幅広さの中でフロアを温めていく。終盤にはSTUTS随一のクラシック「夜を使いはたして feat. PUNPEE」も投下。クアトロの気分をぐっと高め、本日の主役へとバトンをパスした。
そしてステージに登場した踊Foot Works。「HORSEMAN DRIFT ROMANCE」からメロウにスタートするというちょっと意表をつくスタートだ。ヴォコーダーを通したPecoriの歌がじんわりとフロアに広がるなか、続く「JELLY FISH」で一気にギアをアップ。「Let’s go!」とシャウトするPecori。サポートドラマーの大井一彌(DATS / yahyel)が叩き出すタイトなビート、SunBalkanのベースが生み出すグルーヴに、Tondenheyのギタープレイとfanamo’のコーラスが色を加えていく。3曲目で早くもドロップされたアンセム「NDW」ではきらきらとミラーボールが輝くなかシンガロングも起き、ステージとフロアのあいだに親密でホットな空気が生まれる。Tondenheyのやたらエモいギターソロが、オーディエンスの胸を打つ。この曲にかぎらず、この日のライブのエモーショナルな部分を多く担っていたのは彼のギターだったように思う。というか、この日の踊Foot Worksはどこを切ってもエモかったし、人間くさかった。もちろんいつもそうなのだが、ことさらそれが強調されているように思えた。それはお客さんのノリが生んだことかもしれないし、STUTSのパフォーマンスに感化されたのかもしれないし、そもそも『GOKOH』がそういうアルバムだからということもあるかもしれない。
「ようこそ、調子どーすか?『GALAXY MOTEL』2回目にしてこんなにお客さん広がってんのやばくね?って話」とPecori。この日発売されたアルバムを買った人ー?とフロアに問いかけるが意外としょっぱいリアクションに「わかる、わかる。1年後には1枚10万でメルカリで売れるから買ってほしいなと思います」とジョークをまじえて自信を表明する。その新作からの「メスゴMirror」ではfanamo’がドスの効いた歌声を響かせ、Pecoriも「クアトロ、夢を語ろうよ」と歌詞をカスタム。「髪と紺」では「歌え!」と一体感を醸成していく。「梅雨まっさかりという感じで。ほんと梅雨ってやんなっちゃうんですけど、これが明けたら楽しい夏が待ってるから。一期一会を楽しもう……何言ってるかわかんない」というPecoriのMCは思わず「不器用か!」とツッコミたくなる感じだが、その、うまく言葉にできない感情とか、ちょっと鼻がむずむずしそうな照れくさい気持ちとか、言葉にしたら嘘くさくなってしまいそうな思いとか、そういうものは全部オドフットの音に入っている。久しぶりにやるという「短夜」はまさに、じつはセンチメンタルでウェットなオドフットの一面をよく表していた。
その余韻を逆噴射するかのように「VIRTUAL DANCER」で再びボルテージを上げると、Pecoriはなんとスピーカーによじ登る。「さわげー!」。ラップのキレはもちろん、歌としての繊細さも、バンドミュージックとしての熱さや生々しさも、踊Foot Worksは自然体で表現していく。『GOKOH』のイントロ「2019 IN EXCAVATE」を挟み「Bebop Kagefumi」のストロングスタイルで後半戦になだれ込むと、場内をハンドクラップの音色が覆った「NEASE」から「テレコになって」へアルバムからのキラートラックを連発。「SEASONS」ではメンバーのマイクリレーも決め、最後にはSunBalkanによる「男湯で伝われ」のパンチラインがフロアの喝采を浴びる。
本編のラストはちょっとメランコリックな「GIRAGIRA NEON」。「今日は本当にありがとうございました」というPecoriの挨拶とともにいったんメンバーはステージを降りたが、もちろんこれで終わるはずがない。拍手に応えてカムバックしたバンドが鳴らしたのは、そう、言わずと知れた大名曲「GOKOH」。イントロが始まり、初っ端のフックをPecoriが歌っているので、あれ、出てこないの?と思ったら、やっぱり登場しました、オカモトレイジ。その姿に大歓声が巻き起こるなか、Pecoriとの2MCで華々しくフロウをぶちかましていく。Pecoriは「最高の先輩だよ。最高のソンベ(韓国語で先輩とか兄貴とかそういう意味)」とレイジへのリスペクトを示し、「KAMISAMA」へ。歌詞の上でもサウンドの上でも早くも『GOKOH』のひとつ先を提示する最新最高のチューンがパーティのフィナーレを彩った。
ちなみにそのあとも興奮冷めやらぬフロアからはアンコールを求める拍手が鳴り止まない。バンド(とレイジ)はもう一度ステージに呼び戻されたのだが、かといって何も曲を準備していない。ということで披露されたのは伝家の宝刀「GOKOH THE FINAL」(Pecori談)。要するに「GOKOH」をもう一回やるだけなのだが、レイジはヴァースを丸々……いいか、そこはあの日あの場にいた人だけの秘密にしておきたい。とにかく最後まで楽しくて、しかも踊Foot Worksというバンドの人間的な魅力も120%伝わる、いい夜だった。
【取材・文:小川智宏】
【撮影:Machida Chiaki】
リリース情報
new album with newest single “GOKOH + KAMISAMA”
2019年07月03日
ビクターエンタテインメント
01. 2019 IN EXCAVATE
02. JELLY FISH
03. 髪と紺 feat. AAAMYYY
04. HORSEMAN DRIFT ROMANCE
05. PRIVATE FUTURE
06. HELAGI
07. VIRTUAL DANCER
08. NEASE
09. GIRAGIRA NEON
10. テレコになって
11. SEASONS
12. GOKOH feat. オカモトレイジ
CD-2: single “KAMISAMA”
01.KAMISAMA
02.メスゴMIRROR
セットリスト
「GALAXY MOTEL vol.2」
2019.7.3@渋谷クラブクアトロ
- 01. HORSEMAN DRIFT ROMANCE
- 02. JERRY FISHGOKOH
- 03. NDW
- 04. メスゴMIRROR
- 05. milk
- 06. 髪と紺
- 07. 短夜
- 08. VIRTUAL DANCER
- 09. PRIVATE FUTURE
- 10. Intro
- 11. Bebop Kagefumi
- 12. NEASE
- 13. テレコになって
- 14. SEASONS
- 15. GIRAGIRA NEON [ENCORE]
- 01. GOKOH featuring オカモトレイジ
- 02. KAMISAMA
お知らせ
「GOKOH」
09/13(金)名古屋CLUB UPSET 「GOKOH NAGOYA」
10/12(土) 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd「GOKOH SENNDAI」
10/25(金)札幌 COLONY「GOKOH SAPPORO」
11/22(金)渋谷 CLUB QUATTRO「GOKOH FINAL」
12/20(金)大阪 Music Club JANUS『』
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。