パスピエ TOUR 2019 “ more You more “ツアーファイナル Zepp Tokyo
パスピエ | 2019.07.23
ステージに登場した大胡田なつき(Vo)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)、サポートプレイヤーの佐藤謙介(Dr)を出迎えた大きな歓声。そして、「だ」の演奏がスタートした。鮮やかな赤色の衣装を揺らしながら歌う大胡田を中心にして、みるみる内に最強のアンサンブルが構築される。独特なタメを交えつつ展開するメロディが、とてもユニークでスリリング。5月にリリースされた最新アルバム『more humor』によって、パスピエの新境地が一気に切り拓かれたことを、強く実感させられるオープニングであった。
続いて、「術中ハック」と「音の鳴る方へ」も披露した後、大胡田がメンバーを代表して挨拶。「今日は生でパスピエのユーモアを感じてください」という言葉を経て、さらに多彩な曲が届けられた。「BTB」「ユモレスク」「グラフィティー」など、『more humor』の曲が存在感を発揮していた中、特に異彩を放ったのが「ONE」。最先端のヒップホップをイメージさせるトラックに包まれながら、ミステリアスなメロディを歌い上げた大胡田の姿が、パスピエが辿り着いた新しい世界を鮮烈に示していた。
「ちょっと待って。楽しいんだが(笑)。すごいね。壮観って感じ!」――満杯のフロアを実に嬉しそうに見回した大胡田。今日、会場入りする前、自宅から駅へと向かう途中にある畑で、猫の写真がプリントされたクッションが頭部となっている案山子を見かけて驚いた……という旨のことを彼女が語って観客を和ませた後、『more humor』の収録曲の1つ「resonance」を皮切りに、ライブは後半へと突入した。「煙」「waltz」「R138」が最新型のパスピエを我々に印象付けたと同時に、過去の曲たちが実に刺激的だった点にも、ぜひ触れておきたい。現実の都市の風景を映し出しているようでありながら、SF映画的な仮想空間のムードも醸し出していた「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」。何度も繰り返される印象的なフレーズが、妖しい異界の扉を開く呪文のように響き渡った「つくり囃子」。夢中になって踊る観客が幸福感に溢れたフロアを作り上げた「オレンジ」……唯一無二の音楽を生み続けてきたパスピエの軌跡を再確認することができた。
「ツアーは、おしまいだけど、CDで会えるよね? 音源とか、映像とか。そういうところで会えるって、稀少、珍しい……なんて言うんだろう? 特別な関係だとすごく思ってるから。帰ってから今日のことを思い出してね。こういうのってバンドのキャラじゃないかなあって思うんだけど、『more humor』っていうアルバム、正直、一生懸命作ったから!みんなが音を聴いて、会いに来てくれてるわけじゃない?だからこうやってライブができて嬉しいの。本当にどうもありがとうございます!」――じっくりと想いを語って、特大級の拍手を浴びた大胡田。そして、「私が言いたいことは、全部この歌に書きました」という言葉を添えて、本編を締め括ったのは、『more humor』のラストに収録されている「始まりはいつも」だった。他の何者にも似ないバンドであり続けたいという願い、様々な試練をありのままに受け止める覚悟を示しつつ、何処か飄々とした佇まいも滲ませているこの曲は、パスピエの現在の実像なのだと思う。熱く高鳴る演奏と歌声からも、彼らの抱えている想いが、まざまざと伝わってきた。アウトロに差し掛かった時、「いつまでも繋がっててくれー!」と叫んだ大胡田。その姿が、とても雄々しく迫ってきた。
アンコールを求める歓声に応えてステージに戻ってきたメンバーたちは、今後の予定を発表。「2020年2月16日 パスピエ結成10thアニバーサリー公演『十周年特別記念公演 “EYE”(読み:いわい)』を開催」という告知を受けて、観客は大いに湧いていた。成田曰く「今までに見たことがないようなパスピエ、新しいパスピエをちょっと見せようかなと。いろんなミュージシャンも呼びながら、面白いことができたらなと思っているので、ぜひ来てください」とのことだった。これは見逃せないライブとなること必至だろう。
「ONE(after humor remix)remixed by 成田ハネダ」の配信がスタートしたこともアナウンスされた後、露崎と三澤も観客に挨拶。「ありがとうございました。お知らせがあったけど、僕たちも楽しみだから、ぜひチェックしてください!」(露崎)。「10年間バンドやっててよかったって思いました。これで終わりじゃないんで、まだまだやるぞ!と(笑)」(三澤)。今回のツアーをサポートプレイヤーとして支えて、『more humor』のレコーディングでもドラムを叩いた佐藤も、観客の拍手喝采を浴びた。そして、アンコールの1曲目に披露されたのは「トキノワ」。観客の力強い手拍子も加わったことにより、とても清々しい一体感が生まれていた。
「恐るべき真実」も届けた後、手を振りながらステージを後にしたメンバーたち。これにて終演を迎えたように思われたのだが……観客の熱い声に応えて、急遽、ダブルアンコールが行われた。「ギブとテイク」によって、再びものすごい熱気で包まれた会場内。疾走感に溢れたサウンドが、圧倒的に心地よかった。終盤に出てくる《だって勝負はまだこれからよ》という部分が、今後のパスピエの活動を予告しているように感じた観客は、結構いたのではないだろうか。耳にした瞬間、とても嬉しい気持ちになるフレーズだった。
こうして、『パスピエ TOUR 2019 “more You more”』の全公演は終了。広がり続けている作風、豊かな表現力を堂々と示したツアーだったと言えるだろう。彼らのアクティブな活動はまだまだ続く。現時点でも既に猛烈に魅力的なパスピエだが、今後、さらに進化を重ねながら、かけがえのない存在感を深めていくに違いない。
【取材・文:田中 大】
【撮影:鈴木恵】
リリース情報
more humor
2019年05月22日
ワーナーミュージック・ジャパン
02.ONE
03.resonance
04.煙
05.R138
06.だ
07.waltz
08.ユモレスク
09.BTB
10.始まりはいつも
セットリスト
パスピエ TOUR 2019 ”more You more”
2019.7.15@Zepp Tokyo
- 01.だ
- 02.術中ハック
- 03.音の鳴る方へ
- 04.BTB
- 05.(dis)communication
- 06.ユモレスク
- 07.スーパーカー
- 08.グラフィティー
- 09.電波ジャック
- 10.とおりゃんせ
- 11.ONE
- 12.resonance
- 13.トーキョーシティ・アンダーグラウンド
- 14.煙
- 15.くだらないことばかり
- 16.waltz
- 17.つくり囃子
- 18.△
- 19.R138
- 20.ハイパーリアリスト
- 21.オレンジ
- 22.始まりはいつも 【ENCORE】
- 01.トキノワ
- 02.恐るべき真実
- 03.ギブとテイク
お知らせ
パスピエ 十周年特別記念公演“EYE”
2020/02/16(日) 昭和女子大学 人見記念講堂
FM802 30 PARTY ROCK KIDS 802
-OCHIKEN Goes ON!!-SPECIAL LIVE HIGH! HIGH! HIGH!
08/02(金) なんばHatch
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019
08/04(日) 国営ひたち海浜公園
UNISON SQUARE GARDEN
「Thank you, ROCK BANDS!~UNISON SQUARE GARDEN15th Anniversary Tribute Live~」
08/28(水) 新木場 STUDIO COAST
J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2019
09/28(土) 六本木ヒルズ
SHE’S「SHE’S UNION Tour 2019」
10/19(土) 山形 ミュージック昭和Session
10/20(日) 岩手 CLUB CHANGE WAVE
SCOOBIE DO「踊り散らす音符たちの夜」
10/23(水) 渋谷CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。