ウソツキ ~USOTSUKA NIGHT STORIES #2 cosmo~
ウソツキ | 2019.07.24
「ロマン」という言葉がある。漢字で「浪漫」と表記もされるもはや日本語然としているこのワード。語源はフランス語の「ROMANCE=ロマンス」から派生しているという。辞書によれば、「小説のように変化に富み、かつ甘美な筋をもった出来事を表す際に用いられる」との意味を持ち、どこか悠久さや時空を超えた遥か向こう側へと想いを馳せさせてくれる言葉だ。
この日のウソツキのライブは、まさしくその「ロマン」溢れる曲たちが次から次へと現れた。満場に向け次々と贈られた楽曲たちは、折々に詰め込まれた想いを時空を超えて伝えると共に、曲毎にそこに込められた想いや気持ち、願いや祈り、情景や光景、距離や時間に、時に想いを馳せさせ、悠久を感じさせ、憧れたり、省みさせたりさせた。と同時に、集まった者たちを、その曲毎で繰り広げられる物語の中に自身を佇ませ、旅をさせ、受け手各人の心の帰還や目的地への到達へと至らせるものがあった。
ウソツキが6月より行っている3ヵ月連続の東京マンスリーワンマン「USOTSUKA NIGHT STORIES」の第二回目が青山月見ル君想フで行われた。「~cosmo~」と副題が付けられた今回は、彼らの楽曲の中でもテーマやシチュエーション、シーンやストーリー等が、聴いていてなんとなく宇宙観や時空を超えた距離感が味わえ、想起させる楽曲を中心とした選曲によるもの。そんな中、この日の青山月見ル君想フは、ステージバックの超巨大な満月の映像がデフォルトで投影されている場所柄、今回のテーマにお似合いの会場と言える。
そんな巨大な満月を正面に、ミラーボールがゆっくりと回る幻想さの中、サイファイなBGMが流れ、登場するウソツキを満場の会場と共に待つ。
場内がスッと暗転すると、SEに乗り、「新木場発、銀河鉄道」の際のメタルライクなトレインギターが場内に流れ出す。そこに林山拓斗(Dr)、藤井浩太(Ba)、サポートギターの坂本遥(エドガー・サリヴァンG.)が飛び出すように現れる。間を置き、竹田昌和(Vo/Gt)も登場。「嘘をつかないバンド、ウソツキです。今日は銀河鉄道に乗ってあなたに逢いにきました」(竹田)と、そのまま「新木場発、銀河鉄道」の本編へと突入していく。会場全体を引き連れるが如く場内いっぱいに広がっていった同曲。“さて、今日は一体どこに連れって行ってくれるのか?”サビの開放感と共にワクワクとした気持ちが膨らんでいく。「今日は最高の1日にしましょう!」と竹田。幻想的な坂本のギターと、そこを突き破って現れたのは「過去から届いた光の手紙」だった。さらに情景を広げていった同曲が、何万光年も先の恒星から過去に放たれた光が時間を超えて届くかのように、各人の胸に響く。歌われる、“美しいもの、永遠なものは、時を経ても変わらない。なぁ、そうだろう?”と、歌を通して会場に問いかけてくる。また、トロピカルな同期を交えた「夏の亡霊」ではトレンドさも呼び込まれ、会場もたゆたうように合わせて揺れ踊る。後半に現れた4声のハーモニーが同曲にふくよかさを寄与していく。
最初のMCでは上述のこの日の選曲のコンセプトが竹田より伝えられた。と言いつつ、次曲は「今回のテーマから外れるけど、どうしてもやりたかった曲を」と「ミライドライバー」に。キャッチーなフレーズと適度な4つ打ちが会場をバウンスさせていく。とはいえこの曲も遠いこの先へと想いを馳せさせるもの。コンセプト的には範疇内に映った。4つ打ちで、遠くへと想いを馳せさせる曲は続く。「金星人に恋をした」では適度な上昇感に乗せ、心に染みついて離れない幻影への想いが場内いっぱいに広がっていくのを見た。また、林山のドラムから「明日世界は終わらない」に入ると、同曲がこれからも物語は続いていくことを信じさせてくれた。
<君の無限性を少しでも多く知りたい>とばかりに、ドッシリ、ジワジワとそのダイナミズムを浸透させていった「君は宇宙」と、タイトながら疾走感を帯びたサウンドが会場を並走させた「Roll Roll Roll」。特に後者ではライブが走り出していくのを実感した。また、「人生イージーモード」では頑張り過ぎなくていいと楽曲が促してくれ、歌が進んでいくうちに気持ちが楽になっていくのを感じた。同曲では会場の歌声が楽曲を一緒に作り上げていく光景も印象深い。藤井による魅せるベースの超絶早弾きから「水の中から空見てる」に入ると、更にパーッと明るく一気に気分も高揚。シュワシュワとした弾けた清涼感が会場の隅々にまで染み渡っていく。坂本のロングなギターソロを経て、林山、藤井も交えたグルービーでストーナーロック的一面が現れ、再び本編に戻る箇所にはグッとさせられるものがあった。
「僕たちだけでこの空間を作り出したくてマンスリーワンマンをやってる。結成当時から宇宙が好きでよく宇宙の話をしていた」とのかつてのエピソードを交え、竹田が振り返り伝える。
ここからは終盤戦。鍵盤の音を交えた「超ひも理論」での、“僕らおじいちゃんおばちゃんになっても並んで一緒に過ごそう”という微笑ましさが歌を通し綴られると、銀河を感じさせた「転校生はエイリアン」では、ちょっともの哀しい問題提起のようなストーリーが各人の胸を締めつけていく。また、同曲での誰も仲間はずれにしたくないし、一人ぼっちにさせたくない、その人恋しさを経てグイッと力強くこちらに引き寄せたのは「惑星TOKYO」であった。聞こえていますか?応答願いますか?の気持ちが、その向こうの、届いてくれ!伝わってくれ!解ってくれ!という願いや祈りとのリンクを見せる。対して「時空間旅行代理時計」では、“回る回る世界は回る。世界は変わる”という歌内容が輪廻やエターナルさを伴い最後はとてつもない高みへと引き上げてくれた。
本編の最終コーナーを回りラストの直線に入ると、精いっぱいの愛情を込めて優しく包み込むように「名もなき感情」が感謝を込めて歌われ、「最後はみなさん一つになりましょう!!」と竹田が促し「偽善者」へ。君と出会えたという喜びが、16ビートが生み出す上昇感に乗りフロアまで降りてくる。会場全体も合わせてバウンス。「最高の時間でした。また会いましょう!!」(竹田)の言葉と共に4人は一旦ステージを去った。
アンコール。まずは9月18日に色々な人の0時2分が描かれたコンセプトミニアルバム『0時2分』のリリースと、ワンマンライブツアーが12月より全国5カ所で行われることを告知。同作からタイトル曲の「0時2分」が、この日も作品に先駆け披露された。ファルセットも交え優しくもちょっと人恋しい楽曲印象を受けた同曲。未来へと想いを馳せつつ、永遠と刹那が描かれたような、最後まで歌わない「もしも…」を各人が考え、想いを馳せさせるナンバーだ。そして正真正銘の最後は、「一生分の愛を込めて」(竹田)とばかりに「一生分のラブレター」が。最後にパーっと永遠性を広げるように放たれた同曲。キラキラとした前途に向けて、あの時の気持ちを伴ったまま何回でも恋をしようと、永遠性を保ったまま最後はグイッと場内を引き寄せたのだった。
8月には渋谷Mt RAINER HALL PLEASURE PLEASUREにて、ゲストにスキマスイッチの常田真太郎を迎え、このマンスリーワンマンライブ第三弾も控えている彼ら。「party」と副題が付けられた次回は、このシリーズのパーッとした大団円も、アルバムにも収録されるコラボレーション楽曲「大丈夫。」の披露も期待できそうだ。
宇宙にまつわる曲はもとより、広がったり、永遠性を感じさせたり、広がりを感じさせる類の曲たちが次々と贈られたこの日。身近に感じさせつつ永遠性を擁した楽曲たちと共に永遠と刹那をより感じることが出来たのも印象深い。彼らの楽曲のメカニズムが更に紐解けた気がした一夜は、こうして幕を閉じたのだった。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:山野浩司】
セットリスト
~USOTSUKA NIGHT STORIES #2 cosmo~
2019.7.20@青山月見ル君想フ
- 01.新木場発、銀河鉄道
- 02.過去から届いた光の手紙
- 03.夏の亡霊
- 04.ミライドライバー
- 05.金星人に恋をした
- 06.明日世界は終わらない
- 07.君は宇宙
- 08.Roll Roll Roll
- 09.人生イージーモード
- 10.水の中から空見てる
- 11.超ひも理論
- 12.転校生はエイリアン
- 13.惑星TOKYO
- 14.時空間旅行代理時計
- 15.名もなき感情
- 16.偽善者
- 01.0時2分
- 02.一生分のラブレター
お知らせ
~USOTSUKA NIGHT STORIES #3 party~
08/21(水) 東京・渋谷Mt RAINER HALL PLEASURE PLEASURE
「0時2分」リリース記念 “timeless tour”
12/03(火) 仙台enn 3rd
12/06(金) 名古屋ell FITS ALL
12/11(水) 福岡Queblick
12/13(金) 大阪Shangri-La
12/18(水) 渋谷CLUB QUATTRO
UKFC on the Road 2019
08/22(木) 東京・新木場STUDIO COAST
Up And Coming
09/03(火) 東京・Zher the ZOO YOYOGI
TOKYO CALLING 2019
09/16(月) 東京・渋谷複数会場
tonetone presents「JAMJAMJAM!!!」
10/12(土) 東京・西永福JAM
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。