Official髭男dism グッドミュージックにあふれた最高の時間となった『one-man tour 2019』ファイナル
Official髭男dism | 2019.07.25
サポートプレイヤーたちに続いて、藤原聡(Vo/Pf)、小笹大輔(Gt)、楢崎誠(Ba/Sax)、松浦匡希(Dr)もステージに登場。鳴り響くSEに包まれながら4人が手拍子をすると、観客の手拍子もひと際力強さを増した。そして、「1階も2階も、近いも遠いも関係ない。全員でグッドミュージックにあふれた最高の時間を作りましょう。どうぞ、最後までよろしくお願いします!」と藤原が呼びかけて、「異端なスター」がスタート。ヒゲダンのメンバーたちの演奏に、ホーンセクション、パーカッション、キーボードも加わり、一気に開花したメロディ、ハーモニーが眩しい。マイクを握り締めて歌声を響かせる藤原が、実に心地よさそうな表情を浮かべている。続いて、「Amazing」と「What’s Going On?」も披露されたことにより、完全に熱気で満たされたZepp DiverCity。藤原の言葉を借りるならば、“グッドミュージックにあふれた最高の時間”の華麗な幕開けだった。
「ツアーファイナルです。集まってくれてどうもありがとうございます。ツアーファイナルってことは、やっぱり僕らも名残惜しいですから、MCもどんどん長くなっていくんでしょうが(笑)。そこも込みで、1個のグッドミュージックショーとして、みんなと一緒に作っていけたらなと思ってます」と語った後、キーボードに向かった藤原。そして、届けられた「Tell Me Baby」は、観客の興奮にますます火を点けた。一斉に掲げられたタオルが回転する様が壮観だった「始まりの朝」。ソウルミュージックとハードロックの併せ技とも言うべきグルーヴィー且つ骨太なサウンドが炸裂した「FIRE GROUND」。観客の大合唱が爽やかに響き渡っていた「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」……多彩なサウンドが広がっていった。
メンバー各々の前に置かれている小型扇風機が話題の中心となったMCタイム。「昨日気づいたんだけど、4人の中でならちゃん(楢崎)の前にだけ扇風機がないんだって。予算の都合上、削るんだったらそこかな(笑)」と小笹が言った後、観客が一斉に手をパタパタさせて風を送り始めたのを見て、「この景色、すごい! ちょっと涼しくなった(笑)」と大喜びしていた楢崎。藤原が「今日は、ファイナルなんで、みんなに風を当てよう」と言って、足元にある扇風機を観客側に向けると、明るい笑い声が起こった。そして、「上京する前に作ってた曲で、東京に出てきてからいろんなライブハウスで演奏してました」という言葉を添えながら届けられた「コーヒーとシロップ」。様々な想いが刻まれているこの曲は、ヒゲダンにとって大切な存在となっているのを感じた。
「バッドフォーミー」と「115万キロのフィルム」によって、温かい昂揚感に包まれたフロア。続いて届けられた「55」は、ヒゲダンとサポートプレイヤーたちによるグルーヴを濃厚に体感させてくれた。吹き鳴らされたトランペット、藤原が弾いたピアノの調べがスタイリッシュなムードを漂わせた後、他の楽器も合流。躍動するディスコサウンドを体感しながら、自ずと踊り始めた観客。ブラックミュージックのエッセンスを絶妙に採り入れた作風で幅広い層のリスナーをときめかせることができるヒゲダンの実力が光っていた。このような刺激的なひと時の直後、「セットリスト的に、ここがMCのツアーファイナル」だからと、藤原が話し始めたのだが……オートチューンがかけられている声だったので意表を突かれた。「大事なMCファイナルを、メカ・サトシ(オートチューンをかけた機械的な声を、こう呼んでいるらしい)で乗り切ろうとしてるな?」と小笹がツッコミを入れると、観客は大爆笑。そして、普段のライブではなかなか喋る機会のない松浦への質問コーナーが突然始まった。「Q:最近釣った魚は? A:最近釣れてないけど、直近で釣ったのは鯛」「Q:得意料理は? A:ビーフシチューです。市販のルーは偉大だ(笑)」。観客から募った質問によって、彼の近況と興味深い一面が明かされた後、カラオケで歌う曲についてメンバーたちは語り合った。松浦は「宇宙戦艦ヤマト」とASIAN KUNG-FU GENERATION、小笹はT-BOLANを歌うのが定番なのだという。チューリップの「サボテンの花」が十八番だという楢崎は、突然始まったメンバーたちの伴奏に合わせて1コーラスを大熱唱。自由奔放にトークが繰り広げられたMCタイムであった。
「歌ってほしい曲があります。声を貸してください。最近、ライブでしかやらない、みんなとひとつになるために作った曲を今から歌おうと思います」と藤原が言ってからスタートした「明け方のゲッタウェイ」。メンバー各々がソロで歌う場面が織り込まれていて、観客の歌声と手拍子も加わるこの曲は、会場内に漂う熱気をさらに上昇させた。続いて、楢崎がバリトンサックスを吹き、藤原がステップを踏みながら歌っている姿が、実に楽しそうだった「Rolling」。ピアノを弾きながら響かせた藤原の歌声、エモーショナルなバンドサウンドが融け合う様が美しかった「Pretender」。金色と銀色のテープが観客に降り注ぎ、熱い大合唱を巻き起こした「ノーダウト」……終盤も素晴らしい演奏の連続だった。そして、本編を締め括ったのは「宿命」。ホーンセクションに彩られながら躍動したこの曲は、前進を続ける意欲に満ちているヒゲダンの姿も真っ直ぐに伝えてくれた。
「ヒゲダン!ヒゲダン!ヒゲダン!」という熱い声に応えて、ステージに戻ってきた4人は、サポートプレイヤーの5人もステージに招き入れた。次のホールツアーもこの編成で回り、現在制作中のアルバムにも9人で演奏した曲が収録される予定らしい。そして、披露されたアンコールの1曲目「ブラザーズ」は、今回のツアーで深まったアンサンブルへの愛着と自信が漲っていた。ドラムセットを叩いている松浦の周囲を藤原、バリトンサックスを手にした楢崎、サポートメンバーの5人が、演奏をしながらパレード。陽気なパーティーミュージックが、観客を明るく盛り上げていた。
「明日から始まる未来を経た先に、またライブで再会できますように。みんなとバンドの絆の歌で終わりにしようと思います」と藤原が言い、ラストに披露されたのは「Stand By You」。先日の日本武道館公演でも感じた印象だが、観客の手拍子と大合唱が加わることにより、ゴスペルを思わせる神々しさを帯びるのが、この曲の不思議な魅力だ。ツアーファイナルで生まれた音の響きも、メンバーにとって心底嬉しいものであったに違いない。歌詞の一部をアレンジして藤原が発した《今夜みんなと歌えたことが俺は一番誇らしい!》というフレーズは、共に美しい空間を作り上げた観客への感謝の気持ちにあふれていた。
「これからもバンドとして、より良い音楽をみんなに届けられるように、しっかり精進していこうと思ってるし、みんなが次のツアーとかで会える時間を楽しみにして、明日からの日々を乗り切っていければ、このバンドとして、こんなに嬉しいことはないと思います。みんなと同じくらい、もしかしたらそれ以上くらいに、僕たちもまたみんなと時間を過ごせることを楽しみにしてます。ヤバいアルバムを作って、ヤバいアルバムを引っ提げて、また会いに行こうと思います!」と、藤原が挨拶。そして、「日曜日のラブレター」がBGMとして流れる中、あらゆるエリアに向かって何度も手を振ったメンバーたち。「またホールツアーやフェスで会う時までお元気で!」という言葉を残してステージを後にした彼らを、大きな拍手と歓声が見送った。観客の満ち足りた様子を眺めながら、ヒゲダンのインディーズ時代のインタビューが、ふと思い出された。当時から彼らは、“聴き手の人生といかにタイアップできるかを大事にしています”という旨を語っていたのだが、このライブの空間は、掲げていた理想が今でも揺るぎないことの何よりもの証明だったと言えよう。彼らはこれからもリスナーの人生に寄り添うバンドであり続けるに違いない。
【取材・文:田中 大】
【撮影:TAKAHIRO TAKINAMI】
リリース情報
宿命
2019年07月31日
ポニーキャニオン
M2.宿命(instrumental)
セットリスト
Official髭男dism one-man tour 2019
2019.7.22@Zepp DiverCity
- 01.異端なスター
- 02.Amazing
- 03.What’s Going On?
- 04.Tell Me Baby
- 05.始まりの朝
- 06.FIRE GROUND
- 07.犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!
- 08.コーヒーとシロップ
- 09.バッドフォーミー
- 10.115万キロのフィルム
- 11.55
- 12.明け方のゲッタウェイ
- 13.Rolling
- 14.Pretender
- 15.ノーダウト
- 16.宿命
- 01.ブラザーズ
- 02.Stand By You
お知らせ
Official髭男dism one-man tour 19/20
【2019年】
10/26(土) [千葉]市川市文化会館
10/30(水) [奈良]なら100年会館 大ホール
11/01(金) [大阪]グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
11/02(土) [大阪]グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
11/07(木) [埼玉]大宮ソニックシティ 大ホール
11/10(日) [石川]本多の森ホール
11/15(金) [北海道]小樽市民会館
11/17(日) [北海道]札幌文化芸術劇場 hitaru
11/23(土) [香川]サンポートホール高松
11/24(日) [兵庫]神戸国際会館 こくさいホール
11/29(金) [愛知]愛知県芸術劇場 大ホール
11/30(土) [東京]オリンパスホール八王子
12/07(土) [岐阜]長良川国際会議場メインホール
12/08(日) [愛知]本特殊陶業市民会館 フォレストホール
12/13(金) [広島]広島文化学園HBGホール
12/15(日) [島根]島根県民会館 大ホール
12/20(金) [宮城]仙台サンプラザホール
12/22(日) [福島]いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
【2020年】
01/04(土) [福岡]福岡サンパレス
01/05(日) [福岡]福岡サンパレス
01/12(日) [神奈川]パシフィコ横浜 国立大ホール
01/13(月) [神奈川]パシフィコ横浜 国立大ホール
01/19(日) [鳥取]米子市公会堂
01/21(火) [岡山]倉敷市民会館
01/26(日) [新潟]新潟テルサ
01/31(金) [鹿児島]宝山ホール
02/02(日) [熊本]熊本県立劇場 演劇ホール
02/10(月) [神奈川]パシフィコ横浜 国立大ホール
02/11(火) [神奈川]パシフィコ横浜 国立大ホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。